No.489330

真・恋姫無双 ~新外史伝第76話~

今回の作品は、蓮華さんの扱いがあまりよくありません。どうしても未熟さを先行させるあまりこういう風になってしまいました。

桃香さんに次いで、蓮華も劣化させすぎだと思いますがご容赦願います(因みに蓮華は嫌いではありませんよ。むしろ好きな部類です)。

このような作品になりましたが、第76話どうぞ。

2012-09-28 00:05:06 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:6051   閲覧ユーザー数:4973

軍議の翌朝、朝靄の中、呉の陣で見張りをしている二人の兵が眠たいのを堪えて立っていたが…

 

「「ヒュンッ!!」」

 

「「グサッ!」」!

 

その兵から見えない位置から紫苑と璃々が放った二本の弓矢が、二人の兵の首を貫通し確実に倒して

 

いた。そして璃々が

 

「行くよ!突撃開始!」

 

そして紫苑と璃々、それに二人の後方に控えていた紫苑が引き連れた手勢二千の弓騎兵は、蓮華の軍

 

勢に得意の朝駆けの奇襲を敢行した。そして紫苑たちは陣の外から火矢などを放つと呉陣営の一部の

 

陣幕などはすでに炎上していた。

 

この奇襲に驚いたのが、呉の兵たちであった。夜襲は警戒していたが、夜が明けてからの奇襲は想定

 

外だったようで、兵の大半が寝ていたため、突然の奇襲で場は混乱を来した。

 

そしてそんな騒ぎの中

 

「一体、どうした何の騒ぎだ!」

 

睡眠中であった蓮華は陣の奥に控え、兵の騒ぎで眼が覚めたことから、紫苑たちの奇襲にまだ気付い

 

ていなかった。そして蓮華の声が聞こえたのか、直ぐに思春が駆け付け、

 

「蓮華様!今、賊が奇襲を掛け、現在応戦中でありますが、一部の陣幕などが焼くなどして混乱して

 

いますが、現在、晶様や明命、亞などが兵たちの混乱を宥めています」

 

蓮華は思春の報告を聞くと、また不機嫌な表情をしながら

 

「思春!何としても賊を撃退しなさい!」

 

「ハッ!」

 

蓮華は感情を露にして叫ぶと思春は返事をするとすぐに前線に向かった。

 

一方、奇襲に成功した紫苑たちは呉の陣の混乱ぶりを見て、そしてようやく陣から応戦の部隊が出て

 

きそうだったので

 

「まずは第一段階成功ね。璃々、兵を纏めて引き上げるわよ」

 

「分かった!皆、引き上げるよ!」

 

璃々は紫苑からの指示を受けると兵たちに撤退命令を出して引き上げて行った。

紫苑たちが引き上げると、呉の将たちは蓮華の元に集まっていたが、戦の先手を打たれ、そして一方

 

的被害にあった所為で蓮華の表情は硬いままであった。

 

「それで被害は?」

 

「はい蓮華様、現在も調査中ですが予想以上に被害も多く、兵士たちの士気の低下は否めません」

 

「クッ…」

 

「敵もやるな。ハハハ!」

 

亞莎の報告を受け、苦虫を潰した様な表情をして蓮華の横で豪快な笑いを飛ばした晶であったが、そ

 

の笑いが気に食わなかったのか蓮華が

 

「晶、何、笑っているのよ!敵を褒めている場合じゃないでしょう!」

 

「蓮華様、落ち着いたらどうですか。大将がそんな一言でこのように動揺されては兵たちにも影響し

 

ますぞ」

 

晶から指摘されると蓮華は沈黙した。

 

すると偵察に出ていた明命が報告の為に陣幕に来ると

 

「申し上げます!賊の兵約二千が先程の奇襲の間に城から出て北に向かい逃走しています!」

 

「何だと!賊ども、我々が奇襲に遭った隙を狙って逃げる気か!」

 

「そうはさせないわ!思春!明命!追撃の準備よ!」

 

「ち、ちょっと待って下さい。蓮華様。明命、敵の騎馬隊は退却した中にいなかったの?」

 

「ええっ。出てきたのは歩兵ばかりの部隊で、かなりの駆け足で退却しています。我々も早く追撃し

 

ないと逃げられる恐れがあります」

 

「分かったわ。では私、思春、明命の部隊で敵歩兵部隊の追撃をするわ。晶の部隊は城を攻撃、亞莎

 

は陣に留まり負傷者の手当てと陣の守備をして」

 

亞莎の質問を答えた明命から情報を聞いた蓮華が命令を下そうとしたが

 

「れ、蓮華様。この時に態々、敵の歩兵だけが退却するのは余りにも不自然です。敵に何らかの罠が

 

あるかもしれません。追撃は控えた方が宜しいかと……」

 

「何!亞莎、貴女、みすみす敵を見逃せというの!?」

 

亞莎が遠慮気味に進言を聞くと、蓮華はその内容を聞いて声を荒げた。

 

「蓮華様、まずは落ち着いて、亞莎の意見は一理あります。まず、今言った様に罠の可能性もありま

 

す。…それに敵は我々が追っても相手にせず、ひたすら逃げるだけことも考えられます。今いたずら

 

に兵を動かすと敵に反撃の機会を与えてしまいますので、よくお考え下さい」

 

「なるほど…、それで城に残っているのは先程攻撃した弓騎兵のみ。もし我々が城攻めをしても包囲

 

する前に城を放棄して逃げられたらどうしようもないですね…」

 

「しかしこのまま敵を追撃もせず見逃せば、我々の面目丸つぶれになるぞ」

 

晶の意見に明命や思春もそれぞれ意見を述べたが、なかなか結論が出そうに無かった。

 

「それでしたら、我々は追撃すると同時に、そして襄陽にいる漢に使者を送り挟撃を依頼したらどう

 

でしょうか?」

 

亞莎が新たな案として漢の軍勢との挟撃を進言したが…しかし蓮華は怒りと屈辱を押えた声で

 

「……たかが二千…」

 

「たかが二千の騎兵ごときに、我が孫呉の軍勢が虚仮にされてもいいの!それに私たちは敵より数で

 

上回っているのに……漢に頼むなんてできないわ!何としても私たちの手で討ち取るのよ!」

 

蓮華は亞莎の案を却下して、追撃を決意すると他の将も蓮華の指示に従うしかなかったのであった。

一方、一刀は紫苑の作戦に従い愛紗たちの兵と共に帯同、一刀の護衛に星と璃々が引き連れて来た弓

 

騎隊500騎も一緒であった。

 

軍議の後、お互い真名を交わしたが、移動の道中、星はからかいがいある愛紗を相手にしていた。

 

「どうした愛紗、気難しい顔して」

 

「ああ星か、いや敵に追われていると思うと不安でな」

 

「流石の猪娘も不安は隠せないか」

 

「誰が猪娘だ!全く…お前は私に娘と言うが、私と年が変わらないだろうが」

 

「年はお主とそんなに変わらないか…フッ、確かに女としては、お主はまだまだ子供だからな…」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「うむ。実は私は主と結婚しているのだ。ああ一応、第一夫人は紫苑だが、他にも璃々や馬超、馬

 

岱、諸葛亮、黄忠殿とも結ばれているがな」

 

「……はぁ!?」

 

星の突然な発言に愛紗は驚きを隠せず声を上げると、そんな愛紗を無視して星は更に言葉を続けた。

 

「愛紗言っておくが、主は無理やり私たちを妻に迎えた訳ではないからな。まあ主がどのような人物

 

か自分で見定めるといいさ。もしお主が我々の戦いに参戦する気があるならいつでも受けて立つぞ」

 

星は笑みを浮かべながらその場を離れ、

 

「なぜ星は私にあのような事を言ったのだ……」

 

残された愛紗は、星がなぜ自分にそのようなことを言ったのか戸惑いと疑問しか浮かばなかったので

 

あった。

 

一方麦城では紫苑と璃々は残り、呉陣営の動きを監視していた。

 

「お母さん、呉に動きがあって、ご主人様を追撃する部隊と城攻略部隊、そして陣に留まる部隊に分

 

けているよ」

 

「そう…璃々、それでこちらに来ている部隊は?」

 

「旗は『太史』と書かれていたから、恐らく太史慈さんの部隊だと思うよ。でも…城を攻める様子が無く、こちらの動きを見ている感じなの」

 

「相手が動かないのなら、仕方ないわね…」

 

璃々の報告を聞いて紫苑は部隊に新たな命令を下していた。

城攻略部隊では太史慈こと晶の副官が

 

「太史慈様、なぜ城を攻撃なさらないのですか?」

 

「態々、敵が捨てようとしている城を包囲して攻める必要はないだろう。それに今から包囲する時間

 

もない。逆に包囲したらまだ城に残っていると思う騎馬隊に各個撃破されるのがおちだよ。ここは黙

 

って動かないのがいいのさ。その代り、敵が城を捨てた場合、すぐに兵を動かす準備だけはしておけ

 

よ」

 

晶が副官に指示すると副官は頭を下げて立ち去り、晶は城をじっと眺めているのであった。

 

一方蓮華たち追撃部隊は、一刻も城を脱出した一刀たちに早く追い付くため、かなりの速度で追い上

 

げていた。

 

特に兵の練度の高い思春や明命の部隊は速さが売りであったので、追撃には持って来いであったが、

 

その追撃の速さに付いていけるのは五千しかいなかった。そしてその後に蓮華の部隊七千が続いてい

 

た。

 

呉の軍勢は追撃の道中で、一刀たちが撤退途中で邪魔になった武器などを放棄し散乱されていたのを

 

発見したのであった。

 

これを見て思春や明命は内心、敵は算を乱して逃げており、このまま追撃すれば敵の背後を付けるこ

 

とができるのではないかというという気持ちが出てしまった。

 

そして更に追撃の速度を上げたため二人の部隊と蓮華の部隊の間が広がってしまったのであった。

 

呉の追撃部隊の姿は一刀たちにも確認することができ、

 

「一刀様、敵の部隊がやって来ましたが大丈夫でしょうか」

 

愛紗が不安な表情で訴えると一刀は笑顔を見せて

 

「大丈夫だよ。あれを見て」

 

一刀が指差した方を見るとかなりの土煙が上がっているのが確認できた。

 

「よっしゃー西涼騎馬軍団の恐ろしさ、呉の連中にその身にたっぷりと叩き込んでやるぜ!全軍突

 

撃!!」

 

その土煙の正体は城外で待機して翠の部隊であった。翠の部隊騎兵二千は城外で散々待たされ鬱憤が

 

溜まっていたのか、憂さを晴らすかのように呉の軍勢に突撃をした。

 

これに驚いたのは呉の軍勢で思春と明命の部隊は追撃の為、守りを固めていなかったので、翠の突撃

 

をもろに受けてしまった。

 

そして翠の部隊は二人の部隊を縦横無尽に駆け巡った。幾ら兵数が多くとも騎兵に対する備えが無け

 

れば、人間より巨体な馬を止めるのは至難であった。

 

そして翠が敵兵を蹴散らせていると

 

「はぁ?何で、戦場で鈴の音が聞こえてくるんだ?」

 

翠の耳にチリンと鈴の音が聞こえてきた。翠は、鈴の音のする方に目を向けると、そこからは一人の人影が物凄い勢いで飛び出してきたのだ。

 

「貴様がこの部隊の将か!その首、この甘興覇!貰い受ける!!」

 

思春は起死回生の一撃を狙い、叫びながら、自分の愛用の曲刀『鈴音』を振り翳しながら翠に襲い掛

 

かったが

 

「舐めんなっての!そんな物で私を討ち取ろうなんて10年早いんだよ!」

 

翠は思春の凶刃を銀閃で食い止めると、そのまま力まかせに思春を弾き飛ばしたが、思春も翠の力を

 

利用してそのまま飛び下がり間合いを取った。

 

「貴様!どこの手の者だ!」

 

「そいつは言えねえな。どうしても知りたけりゃ、私を倒してから聞くんだな」

 

翠が自信ありげに答えると思春は翠の徒ならぬ気合を感じ、簡単に倒せる相手ではないと分かった。

 

「明命、蓮華様にこれ以上の追撃は無用!すぐに兵を引くように伝えよ!」

 

思春は翠と対峙しながら、感でこれ以上に追撃すれば、蓮華に危険が及ぶと感じて明命に撤退するよ

 

うを依頼したのであった。

 

「は、はいなのです」

 

明命もこの状況ではこれ以上の追撃は無理と分かっていたので、この場を思春に任せ、蓮華を止める

 

べく後退した。

一方、翠の突撃を確認した一刀たちは

 

「翠の突撃で、敵も混乱しているが…。しかし紫苑も戦巧者だけはあるよな」

 

今回、紫苑が立てた作戦は騎馬隊の機動力を生かした攪乱による撤退戦。

 

最初にこちらが先手を取れば、戦経験の浅い蓮華の心をかき乱すこととなり、更に翠の伏兵で引っか

 

き回して動揺させる。

 

そうすれば経験の浅い蓮華の判断を鈍らせて、敵陣全体に混乱を広める。

 

翠の奇襲、部隊の反転攻勢、そこから一刀が指揮する弓騎隊の突撃。そして城から脱出した紫苑たち

 

とで蓮華の部隊を挟撃。

 

流石に兵力に差があるので、討ち取ることは困難でも部隊の崩壊を引き起こせ事は十分可能。そして

 

痛撃を与えることでこれ以上の追撃の意志を挫折させる、これが今回の作戦の目的である。

 

この一連の奇襲で相手をかく乱するには、相手に余裕を与えてはいけないが、当初、流石に全員は一

 

刀の突撃には反対した。

 

しかし紫苑は一刀が、璃々が戦場に立っている限り、自分が後方に下がることが嫌がることを分かっ

 

ていたので一刀に一撃離脱の方針を伝え、万が一これを破ると後でお仕置きすると伝える一刀は顔を

 

青ざめて了解したのであった。

 

「星!愛紗!兵を左右に展開して」

 

「応!!」

 

「了解です!!」 

 

一刀の指示を受け、星(護衛の兵を一刀に預け、愛紗の部隊を分割して指揮)と愛紗の部隊が素早く

 

展開しようとする。

 

そして一刀は部隊を展開しようとする愛紗に声を掛けた。

 

「愛紗、無理したら駄目だよ。これから君も大事な仲間なんだからさ」

 

「は、はい!あ…ありがとうございます!」

 

一刀は屈託のない笑顔で言うと、愛紗はその笑顔に呆けてしまい、そして先程の星の言葉を思い出す

 

と、返事をして顔を赤くして一刀に目を背けたのであったが、一刀は何故愛紗が顔を赤くしている理

 

由には気付いていなかった。

 

「全く…主は無自覚であれだから…、これは帰ってから逆にお仕置きする必要がありますな」

 

その様子を横で見ていた星が、苦笑いしながら一刀に聞こえない声でぼやいていたのであった。

 

そしてまもなく一刀たちの戦いの火蓋が切られようとしていた。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
58
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択