No.485555

おやこ 140字SSまとめ

一色 唯さん

【Last Updata:2012/08/19、Remove:2012/09/18】

養子親子設定のお話で、Twitterの140字作文として流しているものをまとめました。
二次創作だけど、半分フィクション、半分ノンフィクション。
(pixivで公開していたものを移転)

続きを表示

2012-09-18 03:22:45 投稿 / 全24ページ    総閲覧数:1387   閲覧ユーザー数:1386

[chapter:Ep.01]

 

 

ちいさな箱庭のなかで、おもちゃが紡ぐ言葉のない物語。

精神疾患の治療として用いる療法で、子供の銀時が無心に表現していく。

『次は大切なものを入れようか』

その言葉に顔を曇らせる様は、まるで条件反射みたい。

「いっしょうのおねがい。」

人形を二つ寄り沿わせ、涙をぽつりと零す。

深い、心の傷へ。

 

 

Posted on 2012/03/17

Keywords:条件反射みたい。/「いっしょうのおねがい。」/ちいさな箱庭のなかで

[chapter:Ep.02]

 

 

「パパ、きれいになった?」

銀時が歯ブラシを片手に、イーっと白い歯を見せる。

「おぅ、もういいぞ」

髪を撫でると、嬉しそうにニッと笑った。

最初は硬くしていた表情が、日々少しずつ解れていくことに喜びを感じる。

赤いマフラーを首に巻き、手をつなぐと指を握り返す小さな手。

日常の中に隠れた幸せ。

 

 

Posted on 2012/03/17

Keywords:マフラー/白/歯ブラシ

[chapter:Ep.03]

 

 

パパと一緒にお風呂へ入るのは好き。

その後に、ふかふかのお布団で手をつないでくれる時が一番好きな時間。

まだ眠くない。

そう言ったら、絵本を読んだり、影絵をしたり、寂しくないように一生懸命遊んでくれた。

でも、手をつないでてくれるのは寝る前まで。

ねぇパパ。

離したくないって言ったら、怒る?

 

 

Posted on 2012/03/29

Keywords:風呂/影/ふかふか

[chapter:Ep.04]

 

 

スズメのさえずる声で意識が浮上した。

『寝ちまった…』

手を繋いだまま、迎えた朝。

夢の中で銀時はとても幸せな顔をしていて、このまま目が覚めなければ良いと願ったけれど。

朝になった、夢じゃなかった。

あどけない寝顔は、まだ幸せそうに微笑んでる。

ずっと隣で笑っていて欲しい…

それが、父親の夢。

 

 

Posted on 2012/03/30

Keywords:朝になった、夢じゃなかった/あどけない寝顔/ずっと隣で笑っていて欲しい

[chapter:No.214 ep.05]

 

 

さくらーさくらー、と音程の外れた歌声が洗面台から聞こえる。

「楽しそうだな」

小さな姿を覗きに行くと、かがみの中に落とし物をした銀時が

「うん!」

と微笑んだ。

その口元には歯磨き粉の拭き残し。

(もしかして、それって天然?)

無自覚と無頓着=鈍感。

そこが可愛いと思う俺は、親バカかもしれない。

 

 

 

*山桜の花言葉は『あなたに微笑む』。

 

Posted on 2012/03/30

Keywords:無自覚と無頓着=鈍感/(もしかして、それって天然?)/かがみの中に落とし物

[chapter:Ep.06]

 

 

保育園のお迎えに行くと、部屋の片隅で銀時が膝を抱えていた。

楽しそうに遊ぶ子供たちの中で、一人だけ寂しげな顔。

「銀ちゃん、お迎え来たよ」

先生に促されて俯いていた顔を上げると、一目散に走ってきて足にしがみつく。

「どうした…?」

しゃがんで目線を合わせ問いかければ、無言のまま泣き出した。

 

 

こんな時、安心ってなんだろうと考えさせられる。

不安な気持ちを和らげ、また自然な笑顔を咲かせてあげるための―、仕事で得た知識。

きみが泣くなら、俺が笑うよ。

小さな頭をぽんと叩いて、

「ただいま」

ニッと笑いかけた。

それだけで、ほら。

ぎゅっと抱きつき、嬉しそうに言ってくれる。

(だいすき。)

 

 

Posted on 2012/03/30

Keywords:きみが泣くなら、俺が笑うよ/(だいすき。)/安心ってなんだろう

[chapter:Ep.07]

 

 

「足痛い、おんぶ」

唐突に言い出して、『見て』と膝を捲る銀時。

そこにはあざとい、痣が一つ。

(ああ、そっか、知らないうちにこんなにも、)

懸命に愛情表現を覚えようとしてる。

そのいじらしい姿に免じて、今日は肩車をしよう。

「よし、来い」

痛みさえ奪おうかと思う程、しっかり支えてあげたいから。

 

 

Posted on 2012/03/30

Keywords:痛みさえ奪おうか/(ああ、そっか、知らないうちにこんなにも、)/あざとい、痣

[chapter:Ep.08]

 

 

行くぞ、と路地裏で手を引いても、銀時は黙って俯いたまま。

コンビニでおやつを買い与えてた他の親子へ嫉妬でもしたのか。

何かを考えていた顔が上がり、

「パパなんか大っ嫌いだ」

と呟いた銀時。

その声の大きさ以上に、俺はショックを受けた。

でも、と続く言葉。

「もう絶対言わない」

…嘘だから許して?

 

 

 

*エイプリルフールネタ。

 

Posted on 2012/04/01

Keywords:路地裏/おやつ/嫉妬

[chapter:Ep.09]

 

 

俺は料理が苦手だ。

味覚が銀時と違うし、作っても迷惑がるんじゃないかと思ってしまう。

「何食べたい?」

保育園の帰りにリクエストを聞いた。

いつもは店で済ますのだが。

「オレもお手伝いする!」

満面の笑みでスーパーへと手を引っぱる銀時。

それなら夕飯は甘いカレーにして、二人で一生懸命作ろうか。

 

 

Posted on 2012/04/01

[chapter:Ep.10]

 

 

デパートで買い物中、銀時が室内の遊具ひろばで遊びたいと言い出す。

「仲良く遊べよ」

と言い残して、俺はその場を後にした。

他人と関わる事を未だに少し恐れていた銀時が、自分から和の中へ入っていく。

その姿を感慨深く見ていたけれど…、親がなくても子供は成長することに、胸の奥がチクリと痛んだ。

 

 

暫くして広場に戻ると、銀時が他の子と喧嘩していた。

「オレのパパが一番かっこいいんだよ!」

とムキになる姿にいたたまれなくなる。

「銀時、帰るぞ」

苦笑して声をかけた俺へ、嬉しそうに走ってくる銀時。

抱きしめたら消えてしまいそうな、小さな体。

君が笑うと俺も嬉しいから、今ここで抱きしめたい。

 

 

 

Posted on 2012/04/02

Keywords:今ここで抱きしめたい/君が笑うと俺も嬉しいから/抱きしめたら消えてしまいそう

[chapter:Ep.11]

 

 

今日はボウフウウが来た。

ザァザァガタン、と大きな音はひどくなるばっかりで、一人でいると何だかこわい。

でも、パパも一人でご飯を作ってくれてる。

きっとこわいのをガマンしてるんだな。

台所にいるパパの所へ行って、足をギュッと抱きしめてみよう。

そしたら笑って、安心するって言ってくれるかな。

 

 

 

*時事ネタ。

 

Posted on 2012/04/03

[chapter:Ep.12]

 

 

保育園のお迎え時は、必ず先生に銀時の様子を聞く。

今日は他の子のお土産話に嫉妬してました、とのこと。

それならば。

週末は予定がないし、行楽日和と言う天気予報を信じて。

「一緒に遊園地に行くか」

しゃがんで目線を合わせると、ニッと嬉しそうに笑った。

週末の弁当は白米のおにぎりと、甘い玉子焼。

 

 

Posted on 2012/04/07

Keywords:遊園地/白米/嫉妬

[chapter:Ep.13]

 

 

盛大なくしゃみと共に、鼻水を垂らした銀時。

「うー…」

と呻きながら、拭くものを求めて俺のところへやってきた。

いつもポケットに入れておけと言ってるのに、ちゃんと持ち歩かないからだ。

「ほら、チーンしろ」

ぬるぬるの鼻水をティッシュで押さえ、子供の世話を焼く。

まるでつばめの親子みたいだな。

 

 

Posted on 2012/04/09

Keywords:つばめ/くしゃみ/ぬるぬる

[chapter:Ep.14]

 

 

「ねぇ、お布団出ちゃダメ…?」

赤い顔で訴えかける銀時に、ダメだと優しく諭す。

汗をかいてしっとりと湿った額に触れると、まだ熱があるようだった。

熱いのは分かるが、身体を冷やして悪化したら意味が無い。

「一緒に入ってやるから頑張ろうな」

冷えピタの上から、おやすみのキス。

早く治るといいな。

 

 

Posted on 2012/04/13

Title:文中に『しっとり』を入れて【心配】をイメージ

[chapter:Ep.15]

 

 

窓からのぼんやりとした明るさで目を覚ました。

開いたカーテンの奥に朝焼けが見える。

「パパ、朝だよ」

指でふにふにと頬を突付いてくる銀時。

「自分で起きたのか」

偉いな、と髪を撫でれば、嬉しそうに微笑んで。

「年長さんだからな」

そう言って、手を引いて起こそうとする。

年長の自覚か。

誇らしいな。

 

 

Posted on 2012/04/22

Keywords:朝焼け/指/誇らしい

[chapter:Ep.16]

 

 

GWは仕事も保育園も休みだ。

しかし雨が続き、てるてる坊主が寂しげに揺れる。

「お日さま、会いに来てくれないね」

ふかふかの布団とシーツの間から、小さな声。

「ひとりはやだ…」

するりと擦り寄る、たんぽぽの綿胞子みたいな銀時の髪。

そっと撫でて安心を。

「銀時は独りじゃねえだろ」

ずっと一緒だ。

 

 

Posted on 2012/05/03

Keyword:シーツ/たんぽぽ/ふかふか

[chapter:Ep.17]

 

 

パパがお仕事してる間に、新聞紙でカブトを折った。

「見て、すごい?」

大きいのはパパので、小さいのはオレの。

刀も二本あるんだ。

「おぅ、かっこいいな」

頑張って作ったら、笑って褒めてくれた。

「パパにもかぶせてあげる」

くいっと裾を握る時は、抱っこのお願い。

今日は子供の日だよ。

一緒に遊んで?

 

 

Posted on 2012/05/05

Title:文中に『握る』を入れて【構って】をイメージ

[chapter:Ep.18]

 

 

 

「ねぇ、お膝に座っていい?」

おやつにあげたドーナツを持って、銀時が問いかけてくる。

「煙草吸ってるから煙てえぞ」と、一応念を押した。

子供には害だから、傍で吸わないようにしているが。

銀時の願いに、勝るものはない。

ぽんと膝を叩き、小さな身体を乗せる。

銀時のお気に入りの場所、俺の特等席。

 

 

Posted on 2012/05/11

Keyword:お気に入りの場所/煙草/ドーナツ

[chapter:Ep.19]

 

 

夜の七時前。

いつものように、パパが保育園へお迎えに来た。

「おかえりっ!」

「……ただいま」

元気よく声をかけたけど、疲れてるのかな。

何となく困ったように笑うから、手を引き、今日描いた絵を見せに行った。

白い魚と、黒い大きなクジラが仲良く泳ぐ絵。

「これ、」

そうだよ。

俺たちか、って聞いて?

 

 

Posted on 2012/05/14

Title:文中に『魚』を入れて【聞いて】をイメージ

[chapter:Ep.20]

 

 

園庭へ遊びに行こうとした時、職員室から先生がむずかしい顔をして出てきた。

「どうしたの?」

いつも遊んでくれる、大好きな先生。

「大丈夫だよ。ありがとね」

そう苦笑いして、どこかへ行っちゃう。

(教えてくれないの……?)

どうすれば笑ってくれる?

大好きな人が悲しい顔してたら、オレも悲しいよ。

 

 

*仔銀と先生。

 

Posted on 2012/05/19

[chapter:Ep.21]

 

 

保育園から帰ると、パパはオレの通園バッグを開ける。

けれど、今日は見せたいものがあって、自分でそれを取り出した。

遊園地へ行った時の、思い出の絵。

「みて!オレのなまえ!」

土方って、漢字で書いたんだ。

「すげェな、銀時」

そう言って頭を撫でてくれる手が好き。

でもこの名前は、もっと好きだよ。

 

 

Posted on 2012/06/06

Title:文中に『思い出』を入れて【得意気】をイメージ

[chapter:Ep.22]

 

 

今日は仕事中から、体調が頗る悪い。

何とか銀時を保育園から連れ帰ったものの、正直、家事が出来る状態ではなかった。

『せめて銀時の飯だけでも用意しねぇと……』

そう思って、重い身体を叱咤し、ベッドから身を起こす。

 

すると。

「寝てていいよ」

オレ、お腹空くよりパパが辛い顔してる方がイヤだもん。

と言って、傍にいた銀時が、両手で俺をベッドへ押し倒した。

 

そのまま一緒に横になり、小さな手でトントンと俺の胸を叩く銀時。

「……いいのか?」

本音を言えば、休ませてもらえるのはありがたい。

だが、子供を放置して自分を優先させるのは、さすがに良心が痛む。

(子供に気ィ遣わせてどうすんだ……)

しかし、銀時はそんな事など、全く気にしない様子で。

「パパが大事だから、いいんだよ」

と言って、するりと身を寄せ、はにかんで笑った。

 

――子供を護るべき大人が、逆に子供から護られている。

普段の俺は、そんな事を甘んじて受けるような柄じゃない。

なのに、不思議と抵抗はなくて。

(情けねェ……)

けれど、銀時からすれば、唯一の家族である俺も護るべき対象なのだろう。

 

純粋な愛情を注いでくれる、小さな子供。

その幼気な優しさは、薬以上に身に沁みた。

(可愛いな)

柔らかい身体を抱き寄せ、感謝を込めて、額に口付けを落とす。

得意気な銀時の顔に目を細め、再び瞼を閉じた。

 

「ありがとな、銀時」

 

 

Posted on 2012/06/21

Title:文中に『せめて』を入れて【かわいい】をイメージ

[chapter:Ep.23]

 

 

休日に催された、保育園の納涼祭。

浴衣姿の子供たちが元気にはしゃいでいる。

「銀ちゃん、一緒に遊ぼうヨ」

同じ組の神楽が駆け寄り、銀時の手を引く。

「ほら、行ってこい」

そう言って背中を押すと、銀時は照れくさそうに頬を掻いた。

遠ざかる下駄の音。

初々しい二人を見守る父親ってのも、悪くねえな。

 

 

Posted on 2012/08/08

Title:音・休・父

[chapter:Ep.24]

 

 

頭を冷凍庫に突っ込もうとして、思い切りはたかれた。

「何やってんだ、風邪ひくぞ」

と言って、風呂上りで濡れたオレの髪を拭いてくれるパパ。

「…あちぃ」

不貞腐れた顔でそう呟くと、パパは溜息をついて、アイスを出してくれた。

一本を、半分こ。

本当はそれが目的だったって言ったら、パパは怒るかな。

 

 

Posted on 2012/08/19

Title:今日の書き出し/締めの一文 【 頭を冷凍庫に突っ込もうとして、思い切りはたかれた 】


 
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