No.485081

魔法世界に降り立つ聖剣の主

駿亮さん

本編早くやる為にトントン拍子で話進めて行きます

2012-09-17 08:48:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2335   閲覧ユーザー数:2260

 

5:衝撃の展開って実際に遭遇すると洒落にならない

 

 

 

 

その日、俺はベルカ王国の東部国境線に出向いていた。

理由は前と同じ、リモネシアの侵攻部隊の撃退だ。

 

また性懲りも無くやって来てくれちゃってるが、まぁ敵さんは未だに俺というあり得ない長距離移動能力を持った奴の存在を知らない。

ならば未だに舐めてかかって来てもおかしくはないか。

 

俺は荒野にて一人腕を組み、押し寄せて来る敵の進路上に仁王立ちしていた。

まだこちらからは動かない。連中はギリギリ境界線を越えていないのだから。

 

それを越えて来た瞬間俺に防衛戦の名の下に大義名分が成立する。

その時始めてこの身に戦闘の許可が降りるのだ。

 

しかし、俺の後ろには味方などいない。人っ子一人見当たらない。

当然だ、そんなものは初めから連れて来ていないのだから。

 

この程度の相手に余計な人員を裂くことも無い。この身一つで抑え切れる自身も確信もあるが故に俺の顔には焦燥も恐怖も無い。

 

敵は既にこちらを視認しているだろう。

それで尚減速しないのは俺が所詮一人の兵卒に見えているからに他ならない。

 

されど雑兵共よ、侮るなかれ。

お前達が対峙するは人にあらず。国と主君と民の為にその身を一つの剣として昇華させた研ぎ澄まされし殺意の刃。

 

一振りで地を裂き、雲を割る一人の“剣”が腰に掛けてあった無骨な剣を右手で逆さに握る。

その刃が解き放たれる事は無い。この程度の相手に抜く価値も無い。

 

これは自惚れでも慢心でもない事実。この身を駆け巡り、光の粒子となって体内で迸る超絶的なエネルギーの奔流が一切余すことも漏れることも無く骨の芯から髪の先まで行き渡る。

 

外部からはその様を伺う事は出来ないだろう。視認出来る程の魔力すら漏らしていないのだから。

 

膨大な魔力とそれを完璧に制御する事の出来る者にしかなし得ない芸当だ。

この時点で敵を先制攻撃から瓦解させるだけの準備が整った。後は時を待つのみ。

 

少しずつ近づいて来る地響きに耳を傾け、敵の一団が境界線をわ国境を越えて領内に侵入し、最後尾まで完全に踏み込んだ瞬間、俺は剣を振るった。

 

それは目で捉えるにはあまりにも早過ぎる一振りだった。

音すら遅れてやってくる程の高速剣は不可視の衝撃となって前方に飛来する。

 

恐らく敵方は何が起きたのか理解する間も無かったことだろう。

突然雷の轟く様な一瞬の轟音の後に地面が爆ぜた瞬間を認識し切れていた者などいる筈がない。

 

その証拠に目の前では衝撃波によって打ち上げられた人間が次々と降り注いでいた。

 

 

シオン「HA HA HA HA !!人がゴミの様だ!ψ(`∇´)ψ」

 

何となくその場のノリでボケをかましてみるが、ツッコミ入れてくれる人もいないからちょっともの悲しい雰囲気が残った。

うわ~何か一気にテンション下がったわ~。真面目に仕事しよ。

 

 

そして俺は地面を思い切り蹴って前に踏み込む。

たかがそれだけの動作だと言うのに、俺が蹴った地面は大きく抉れ、走り去った後起こったソニックブームで空気が悲鳴を上げた。

 

ただ駆け出すだけでこの被害。これは俺の魔力変換能力を利用した肉体変化術式によるモノだ。

 

俺の魔力変換の属性は光。だが、これがまた単なる光とはニュアンスが違う。

俺が生み出すのは“タキオン粒子”なのだ。

 

タキオン粒子とは常に光の速さで動き続ける物体を指し、それはどれだけ減速させても絶対に光速を下回る事の無い最速の物体である。

 

全身に流した魔力をタキオン粒子に変換し、尚且つそれらを筋繊維や腱に関節、骨格、挙句血管や神経にまで浸透させて全身を半タキオン粒子化させるという荒業で亜光速の早さで動いているのだ。

 

まぁ普通の人間がやれば間違い無く身体が内側から壊れてスプラッタな死体になるだけだが、生憎とこの身体はそんな柔な構造しちゃいない。

 

だが、いつまでも光速移動は流石に出来ない。

精々15秒使って5秒間を置くってペースでギリギリって感じの高負荷な能力での為、魔力は消費しないが体力の損耗がこれが中々馬鹿に出来ない。

とは言え、大体の奴は試合開始一秒前に文字通り瞬殺出来るが。

 

 

シオン「この程度の相手なら丁寧に倒すことも無いか。」

 

敵さん方が混乱の境地にある中に一瞬で移動し、挨拶がてらに持ち直した剣を右から左に振るう。

 

その一撃で竜巻の様な突風が吹き荒れ、残りの部隊の3割程が命を刈り取られた。

 

直後に、いつの間にか懐に入っていた敵の姿を見た他の連中が一斉に此方に向き直る。

 

 

シオン「ほう、恐慌状態に陥らない所を見る限り前の連中よりは優秀らしいな。」

 

確かにたったの二撃で部隊の過半数を葬った化物ではあるが、数の利点を活かして囲み討ちにしようというのだろう。

 

 

シオン「まぁ確かに間違っちゃいない戦法ではあるが、この場に於いては悪手だな。」

 

杖を構えて魔術師達が同時にありったけの火力を俺に向かって注ぎ込んだ。

 

 

シオン「詠唱無しでこの威力、中々のもんじゃねぇの。だがそれでもまだ足りねぇよ!」

 

赤い魔力の壁が四方から迫るが、俺は咄嗟に身体に溜め込んでいた魔力の一部を放出して相殺する。

そして、無理な魔法の発射によって身体の自由が利かないであろう魔術師達に容赦無用の一撃必殺を叩き込む。

 

 

シオン「喰らいやがれ!ジェットマグナァァム!!」

 

思い切り突き出した青い光を帯びた左拳は巨大な爆発を引き起こし、俺の視界に入っていた敵を一人残らず粉々にする。

 

しかし我ながらエグい破壊力の一撃だ。これで消費魔力が意外と少ないんだからそうとう鬼畜な技である。

ジェットマグナムは内部から強化しつつ表目にも魔力を纏わせた拳を打ち込むという、俺が得意とする技の一つ。

 

まぁこれも修行をつけてくれた人の一人が使ってた技なんだけど、毎日この技を食らった後に更に背負い投げを入れられて、挙句空中で追い打ち掛けられるなんてことを繰り返す内に完全に体得していたのだ。

この会得じゃなくて体得ってのが重要な所である。

 

 

シオン「割りとガチに命がけでモノにした一撃を受けやがれぇぇ!」

 

それからも何発かジェットマグナムを打ちまくっていたら気付けば敵は全滅していた。

 

 

シオン「あらら、ちょっと大盤振る舞いし過ぎたかな?まぁ、良いか。何事も無く終わったわけだし。」

 

相変わらずの焦土と化した俺が暴れた後の大地に背を向けて、王都に向けて亜光速移動する。

 

 

 

 

 

 

 

程無くして王宮に到着し、俺はいつも通りに陛下へ報告を入れるべく謁見の間に脚を踏み入れる。

 

だが、今日はいつもと違う事があった。ここにいる時はいつもドッシリと玉座に腰掛けてる筈の陛下が此方に背を向けたまま棒立ちしていたのだ。

 

 

シオン「陛下?如何なされましたか?」

 

レオンハルト「………」

 

問いかけてみたが返事が無い。というより何故か今の陛下からは生気が感じられない。これではまるで……

そう思った矢先、陛下の体がぐらりと傾き、此方に向かって倒れて来た。

 

 

シオン「なっ!?陛下!」

 

咄嗟に身を受け止めるが、その瞬間、両手に何か生温かいモノが付着した。

それが何か、理解するや否や俺の思考は凍りついた。

 

 

シオン「血……」

 

真っ赤な血液が陛下の腹部から溢れ出しており、俺の両手にべっとりと血糊が伝っていた。

そしてよく見れば、出血口には見覚えのあるモノが突き刺さっていた。

 

 

シオン「アーク…ライナス…?」

 

それは自分の愛剣。無骨なシルエットのそれはまさしくアークライナスのようであったが、実物は今俺の足下に転がっている。

ならばこれは偽物、だが一体誰がこんな事を……

 

何が起きているのか、何とかして状況を整理するべく冷静になろうとしたが、それはーーー

 

 

オリヴィエ「イヤァァァァァ!!!」

 

背後から響いたオリヴィエの悲鳴で中断された。

 

 

オリヴィエ「お、お父様……あ、ああ………」

 

恐怖と絶望の余り立っていられなくなったオリヴィエは力無くその場にへたり込む。

だがそれを背後から支える者がいた。

 

 

ギルガメス「シオン・インサラウム!貴様陛下を!!この主君殺しが!!」

 

勇ましく吠えたギルガメスの口元が一瞬だけ吊り上ったのを俺は見逃さなかった。

 

漸く理解した。これは貴様の仕業だったのか…!

確かにこいつなら陛下を殺すこともアークライナスの偽物を作る事も容易い。

 

俺が思考を整理している間に衛兵や家臣達が続々と集結して来た。

それら全員がアークライナスの様な剣で貫かれた聖王の姿を見て絶句する。

そこへ扇動するようにギルガメスが声高らかに言い放った。

 

 

ギルガメス「陛下はあの裏切り者のシオン・インサラウムに殺された!皆の者、あの不忠者を捕らえろ!!」

 

その一言を機に衛兵や将官達が一斉に飛び掛ってくる。

マズイ、状況を説明しようにも全員目の前の事態に怒りで我を忘れている。これでは説得の余地は無い。

 

完全にしてやられた。先にあんな事を叫ばれた時点でこの流れは抑え用がない。

止むを得ず、俺は床に置いていたアークライナスを引っつかんで跳んだ。

 

一気に謁見の間の窓を突き破って外に出る。

そして瞬時に光速移動で王都から離脱した。

 

目にも止まらぬ速度で空を駆けながら、俺は悔しさの余り涙を流し、地が滲み出す程に唇を噛み締めた。

 

何故こんなことに、何故陛下が死なねばならなかった?!そして何故俺はそれを止められなかった!

忠義を貫くなどと嘯いておきながらこの体たらく。情けなくて仕方がない!

 

 

シオン「ちっくしょぉぉぉぉ!!!」

 

抑えられなくなった後悔が叫びとなって口から漏れる。

俺は行く当ても無く駆け抜けた。そうすることでこの悔しさを少しでも忘れたかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、突如としてそれは起こった。

 

聖王一族に古くから仕える騎士の一族、インサラウム家の現党首ことシオン・インサラウムの手によって聖王レオンハルトが暗殺された。

 

その目的は一切明かされてはいないが、聖王の実の娘であるオリヴィエや、バビロニア家の党首、ギルガメス・バビロニアを初めとした軍首脳部等多数の目撃情報によって確定事項とされ、シオンは聖王殺しの汚名と共に追われる身となる。

 

その後、オリヴィエが14代目聖して、ギルガメスがシオンの席であった軍部総括の地位に就き、ベルカは更なる変化を迎える。

 

混迷の渦に突き落とされたベルカの人々は知らない。

この事件を引き起こした張本人が、王宮の一室で今もほくそ笑んでいることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

急展開ですね。まぁ本当ならあと何話かはさむ予定だったんですけど、さっさと本編入った方が良いと思ったんでかなり省きました。

後ニ、三話でベルカ編は終わると思いますんで次回も出来れば読んでください。

 

 

 

 

 

 


 
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