No.482838

東照権現と独眼竜は未来へ行く 第四話

鉄の字さん

投稿です!

2012-09-11 23:39:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3168   閲覧ユーザー数:3011

チャイムが鳴る寸前に顔を赤くした箒だけが帰って来た事に不思議に思った二人だがチャイムが鳴って遅刻した一夏に黒い悲劇が襲った。

 

 

その後も授業が分からないやら、参考書を電話帳と間違えて捨てるやらと千冬による打撃の嵐は絶えなかった。

 

 

「ぬおぉぉぉ………頭が陥没するぅぅ………」

 

 

「おいおい男が情けねぇぜ?」

 

 

「いやいや一回くらってみろよ!脳細胞二万個は破壊されるぞ!」

 

 

「安心しろ一夏。ワシと独眼竜は前に何回もくらった事があるぞ。」

 

 

「自慢する事か家康?」

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 

「へ?」

 

 

「ん?」

 

 

「An?」

 

 

三人が声をした方へ向くと腰まで伸びた金髪に青いカチューシャを付け白人特有の透き通ったブルーの瞳の女子がいた。

 

 

「まあ!なんですのその返事?私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるんではないかしら?」

 

 

「「「……………」」」

 

 

わざとらしく声をあげた女子に対して一夏はポカンとして政宗は溜息を吐き家康は困ったように後頭部を掻いていた。

 

 

今の世の中、『女=偉い』の構図になっているのでこういう女子もいないわけではない。

 

 

そんな三人を代表して家康が女子に話しかけた。

 

 

「ああ、中途半端な返事で申し訳ない。それにしてもお主の名は何と言うんだ?」

 

 

「わ、私を知らない!?このイギリス代表候補のセシリア・オルコットを!?」

 

 

「おー、オルコットと言うのか。ワシは先程紹介したが徳川家康だ。よろしくな。」

 

 

「あら、こちらこそよろしく………じゃなくて!この私を知らないのですか!?」

 

 

「ワシは世間には少し疎くてなぁ~。それよりもその代表候補って何だ?」

 

 

「あ、それも俺も気になった。」

 

 

ドドド!

 

 

またもやクラスの全員がずっこけ政宗もまた溜息を吐いた。

 

 

「お前ら、単語の意味でそれぐらい分かれよ………簡単に言ったら国家代表IS操縦者の候補生として選出されるeliteなんだろ?」

 

 

「そう!エリートなのですわ!」

 

 

ビシッと政宗を指すオルコットに政宗のこめかみに青筋が浮き出るが何とか耐えた。

 

 

「エリート中のエリートの私と同じクラスになる事だけでも奇跡………幸運なのよ。その現実を理解していただける?」

 

 

「「「そうか、それはラッキー(lucky)(幸福)だ。」」」

 

 

「………馬鹿にしていますの?」

 

 

じゃあ何と答えろと?

と心の中で思った一同。

 

 

「ま、私は優秀ですから、貴方達のような人間にも優しくしてあげますわよ?」

 

 

「Ha!そんな優しさ初めて知ったぜ。んなもん、こっちからお断りだ。」

 

 

「何か言いましたか!?」

 

 

「Ah?」

 

 

政宗の言葉に噛み付くセシリアだったが政宗に睨みつけられ「う………」という感じで怯んだ。

だがそれでもめげずに声を出す。

 

 

「ISの事で分からないことがあれば、まあ、泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。なんせ私は入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから。」

 

 

唯一という部分だけを強調して言うセシリア。

政宗のこめかみも限界に差し掛かった所で一夏が手を上げた。

 

 

「なあ、入試ってあれか?ISを動かして戦うってやつ?」

 

 

「それ以外に入試などありませんわ。」

 

 

「あれ?俺も倒したぞ、教官。」

 

 

「は………?」

 

 

「あ、ワシもだ。」

 

 

「俺もだな。」

 

 

一夏に続いて家康と政宗も手を上げる。

 

 

「なっ………!私だけだと聞きましたが………?」

 

 

「女子だけ………っていうオチじゃないのか?」

 

 

「そ、そんなこと…………」

 

 

キーンコンカーンコーン。

 

 

割って入るように授業開始のチャイムがなった。

 

 

「っ!?また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

 

セシリアが去ると同時に千冬と山田先生が入ってくる。

 

 

「この時間では実践で使用する各種の装備の特性について説明するが、その前に再来週に行われるクラス対抗戦の代表者を決めないといけない。」

 

 

クラス代表者とはそのままの意味でクラスの代表者の事である。

生徒会の開く会議や委員会への出席などなど、言わばクラス長のようなものである。

ザワザワと騒ぐ教室を千冬はパンパンと手を叩いて制した。

 

 

「因みに一年間、変更はないからよく考えて選ぶように。」

 

 

千冬の言葉に数人の女子が手を挙げる。

 

 

「はいっ!織斑君を推薦します!」

 

 

「あ、私もです!」

 

 

「お、俺!?」

 

 

「私は伊達君がいいです!」

 

 

「私も!」

 

 

「What!?」

 

 

「私は徳川君でぇーす。」

 

 

「はい!私もです!」

 

 

「ん?ワシか?」

 

 

三人にそれぞれ同じ数の票が集まる。

 

 

「今は同じ位だが他にいないのか?」

 

 

(こ、このままだと俺がクラス代表になってしまう!)

 

 

(Shit!やっと政務hellから抜け出したって言うのにclass代表なんかやってられるか!)

 

 

「お、織斑先生!」

 

 

「千冬!!」

 

 

「「俺は一夏(政宗)を推薦します(するぜ)!!」」

 

 

お互い指を指し合いながらクラス代表をなすりつけようとする二人。

 

 

「一夏、テメェ何人を売ってやがる!!」

 

 

「お前だって俺を推薦しただろ!?」

 

 

「Ha!俺は冷静に醜い争いにならないように身を引いたまでよ!」

 

 

「嘘つけ!クラス代表なんかやりたくないって見え見えなんだよ!」

 

 

「何で分かりやがった…………!?」

 

 

「顔で分かるわ!!」

 

 

「落ち着け馬鹿共。」

 

 

スパン!!

 

 

「「あぎゅ!?」」

 

 

胸ぐらを掴み合いながら言い合う汚い二人の頭に千冬の黒き凶器が振り下ろされた。

 

 

「で、他にいないのか?」

 

 

「待って欲しい!!」

 

 

シュ~と白煙を上げる出席簿を片手に持った千冬に割って入ってきたのはなんと家康だった。

 

 

「徳川か。伊達もそうだがここでは私の事は織斑先生と「千冬殿、ワシはワシを選んでくれた皆の為にこのクラス代表を務めたいんだ!」………人の話を聞け………」

 

 

(A~、そういやこいつ、そう言うcharacterだったな。)

 

 

話を遮られた事により千冬のこめかみに怒りマークが浮かんだが直ぐに引っ込め溜息を吐いた。

 

 

「徳川はこう言っているが二人はどうだ?」

 

 

「「どうぞどうぞ。」」

 

 

「どこの某倶楽部だお前らは………」

 

 

あっさり引き下がる二人にまた溜息を吐く千冬。

 

 

「ではクラス代表は徳川で………」

 

 

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 

バンッと机を叩いて立ち上がったのはさっきの女子、セシリアだった。

 

 

「男がクラス代表者になるなんて納得いきませんわ!!」

 

 

不満な表情で大声を張り上げるセシリア。

 

 

「第一、男がクラス代表なんてクラスの恥晒しもいいところです!ここは、私、セシリア・オルコットがクラス代表に立候補します!」

 

 

怒涛の剣幕で甲高い声で叫びまくるセシリアに政宗と一夏は耳に指を入れていた。

 

 

「大体、文化としても後進的な極東の島国で暮らさなくてはいけない事自体、私にとっては耐え難い苦痛で…………」

 

 

ドゴォォォォォォン!!!!

 

 

突如教室に響き渡る轟音。

皆、その発信源を探すと拳を振り下ろした政宗と半分に割れた机に辿り着いた。

 

 

「…………取り消せ。」

 

 

静かに、低く、小さく、言葉を発する政宗。

それは教室の温度を極寒にする程である。

 

 

「な、何を…………」

 

 

「取り消せって言ってんだ!!!」

 

 

「ひっ!?」

 

 

怒鳴る政宗に体を縮こませるセシリア。

状況は蛇に睨まれた蛙、いや、龍に睨まれた蛙と言った所だろう。

 

 

「こっちが大人しくしてればごちゃごちゃほざきやがって………」

 

 

「待て、独眼竜。」

 

 

早足で動けないセシリアに近づく政宗の前に家康が立ちはだかった。

 

 

「どけ家康!そいつはこの国を馬鹿にしたんだぞ!?」

 

 

「分かっている。気持ちは分からなくもない。」

 

 

家康達が居た世界、天下を取ろうと群雄割拠する戦国時代だが、その殆どは日本を愛している者達だ。

だからこそ、政宗にとってセシリアの発言はその者達全員を侮辱しているに等しい事である。

 

 

「だったらそこを………」

 

 

「だからこそ、絆を結ばなくてはならない。」

 

 

そこで家康は背にいるセシリアの方へ振り向く。

 

 

「セシリア殿、もしこの事が不服なら今一度ワシと戦ってみないか?」

 

 

「…………え?」

 

 

「お互い言葉では良い所など見つける事は難しいだろう。ならここは力比べで話し合おうではないか?」

 

 

「え、ええ、私の力を示すには良い機会ですわ!」

 

 

未だにあんまり状況が読めていないセシリアだったが返事すると家康は頷く。

 

 

「これでいいな、独眼竜?」

 

 

「Ha~、勝手にしな………」

 

 

「うむ!千冬殿!」

 

 

「だから私の事は織斑先生と呼べ。それでは勝負は一週間後の月曜日。放課後、第三アリーナで行う。徳川、オルコットはそれぞれ用意しておくように。それでは授業を始める。」

 

 

パンッと手を打って話を〆る千冬は授業を開始した。

 

 

 


 
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