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IS -インフィニット・ストラトス- ~恋夢交響曲~ 第三十六話

キキョウさん

恋夢交響曲・第三十六話

2012-09-10 02:45:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1132   閲覧ユーザー数:1108

一夏は眼の前で起こったことが信じられなかった。さっきまで笑い合っていた友人が、突如現れたISによって撃墜された、その現実を信じる事が出来なかった。

 

「奏羅さん!!」

 

セシリアの悲鳴とも取れる叫びが響き渡る。

 

(なんで・・・俺たち、みんな揃って帰ってきてたはずじゃないか・・・なのに・・・)

 

一夏は眼前に現れた敵へと目を向ける。そして、奏羅を撃墜したISの姿に驚愕した。

 

「嘘だろ・・・」

 

「あれって・・・」

 

「黒い・・・福音・・・」

 

その場にいた誰もが目を疑う。なぜなら、そこには色や形がところどころ違えど先程一夏と箒が倒したIS『銀の福音』、その第二形態が佇んでいるのだから。

 

『全機、今から私の指示に従え!』

 

オープン・チャネルから織斑千冬の声が響く。奏羅が撃墜される様は、海岸からでも容易に確認することができた。そして、撃墜したのが『銀の福音』に似た機体ということも。

 

『所属不明機を敵機と断定! 仮名称を『黒の福音』としこれより戦闘を行う! 凰は福音の操縦者をこちらへ! オルコットとデュノアで天加瀬を回収! 織 斑と篠ノ之で『黒の福音』に近接戦闘をしながらの撹乱、その援護をボーデヴィッヒで行え! その後準備ができ次第教師陣で戦闘を行う!』

 

千冬の声に全員が我に返ると、指示の通り動き始めた。

 

「箒!」

 

「わかってる!」

 

一夏と箒はそれぞれ刀を抜き、突如現れたISに向かって斬りかかる。黒い福音はそれを回避すると、翼によるエネルギー弾での攻撃を始める。

 

「今のうちにっ!」

 

「目標、ロック。砲撃を開始する!」

 

一夏と箒が射線上からすぐさま退避すると同時に、鈴が戦線離脱、ラウラがブリッツによる砲撃を始める。

黒い福音はそれを回避しながら『銀の鐘』を使い、エネルギー弾による弾幕を張って一夏と箒を近づけさせなかった。

 

「くそっ・・・、うまく回避と攻撃を組み合わせてやがるっ! 隙がねぇ・・・」

 

「セシリア、シャル! 奏羅は!?」

 

ラウラが黒い福音を狙い撃ちながら奏羅の安否を気遣う。

 

「見つけましたわ・・・。絶対防御によって息はあるみたいですが、意識が・・・」

 

「全部のフレームを待機状態にしてシールド替わりに使ったからこの程度で済んでるけど、それでもこのままじゃ・・・。すぐに手当てしないと!」

 

「なら急いで海岸へ運んでくれ! 福音はこっちで――」

 

引きつける、箒がそう言おうとした瞬間、攻撃を回避するだけだった黒い福音は奏羅を抱えた二人へと進路を変えた。

 

「なっ・・・!」

 

「セシリア、シャル!」

 

黒い福音が射撃体勢へと移行する前に、シャルが射線上へと躍り出て、ガーデンカーテンを呼び出す。先の戦闘で物理シールドを一枚やられているが、それでも今は人命救助のための時間稼ぎにはなる。

 

「セシリア、早く!」

 

「わかってますわ!」

 

シャルに怒鳴るように急かされ、セシリアがストライクガンナーのブーストを使おうとしたその時だった。

 

「そ、そんな・・・」

 

セシリアの目の前には黒い福音の姿があった。先ほどの射撃体勢はフェイク。移行すると見せかけたのちの瞬時加速により、セシリアの行く手を阻んでいたのだ。

そして目の前で『銀の鐘』が発動、翼に光が収束する。加速する体制に入っていたセシリアに回避は不可能。

 

(避けられない――)

 

せめてこの人だけは。そう思いセシリアは奏羅の体を抱きしめ、自分の体で覆う。

 

(奏羅さん、あなたの命だけは私が守ってみせます・・・)

 

しかし、攻撃をすべて受ける覚悟を決めたセシリアだったが、黒い福音の射撃は飛んで来ることはなかった。なぜなら――

 

「大丈夫、セシリアちゃん!」

 

目の前には黒い福音の代わりに、ブリリアント・アイリスを纏った旭の姿があった。

 

「旭さん・・・なんで・・・?」

 

「武器はないけど、体当たりくらいならできるからね。それよりも――」

 

旭は黒い福音の方をみる。体勢を立て直した福音から、機械音声での言葉が聞こえた。

 

『敵対ISの中に『ヴェルダンディ』を確認。これより『ヴェルダンディ』の撃墜を優先する。『ファーレン・システム』起動、『イヴィル・サーヴァント』を生成』

 

その瞬間、黒い福音の翼が黒く染まる。そして、その翼が福音から分離・独立し、変形。ひとつの形をなした。

 

「なんだよ・・・あれ・・・」

 

一夏がつぶやく。その形はまるで物語に出てくるような悪魔。それが五体も現れたのだから。

誰もが目の前の異形に驚愕し、恐怖する。しかし、その中でただ一人だけ、戦意を失っていない者がいた。

 

「みんな、しっかりして。今みんなが戦わないで、誰が戦うの?」

 

その声は、戦うことに一切触れたことのない、塚乃旭の声。

 

「私は戦う力はない。だけど、諦めてないよ」

 

「旭さん・・・」

 

旭は怯えたようなセシリアに笑いかける。

 

「奏君、守るんだよね?」

 

「あ・・・」

 

セシリアの腕の中には、傷ついた奏羅の姿。それを見て、みんなが自分を奮い立たせた。

 

「そうだ、まだみんな揃って千冬姉にしかられてねぇ。帰ってちゃんと叱られないとな」

 

一夏の言葉にみんなが頷く。

 

「いこう、みんな!」

 

そんな六人の様子を見て旭が微笑む。

 

(みんないい友だちだね、奏君。みんな奏君のために戦ってくれる・・・)

 

旭も幼馴染のために、みんなのために、自分のできることをする決意をした。それはたったひとつだけしかない、自分にできること――

 

「お願い、ブリリアント・アイリス。私の歌をみんなの力に――」

 

旭の願いに応えるように、ブリリアント・アイリスから七色の輝きが発せられる。

そして、ブリリアント・アイリスのハイパーセンサーに『唯一使用の特殊能力(ワンオフ・アビリティ)』の文字が浮かび上がった。

 

「アイリス、私の歌(おもい)をみんなに届けて――」

 

黒い福音がサーヴァントを引き連れて最優先撃墜対象である旭へと襲いかかる。皆が旭を守ろうと前へと出るが、サーヴァントに立ち塞がられ、黒の福音に突破されてしまう。

 

「旭、逃げろ!」

 

一夏が叫ぶが、旭は黒の福音をまっすぐに見据えたまま動かなかった。そして、そんな旭に対し、黒の福音は容赦なくエネルギーの雨を降らせる。しかし――

 

「旭が・・・消えた?」

 

エネルギーのシャワーが旭に襲いかかった瞬間、旭の姿はすでにその場所には居なかった。確かにセンサー系のたぐいはその瞬間までそこに旭がいると示していた。だが――

 

「さあ、ショータイムだよ」

 

突然、さっきまで旭がいた場所と逆の方向から声が響き、全員が一斉にそちらを振り向く。そこには、七色の光を纏い不敵に笑う旭の姿があった。

 

「みんなの現在(いま)をその未来(さき)へ――『栄光歌劇曲(グローリー・オペラ)』!」

 

旭の言葉と共にブリリアント・アイリスから七色の光の粒が発せられ、一夏たちのISがそれに囲まれる。

 

「なんですの、これ・・・?」

 

「七色の・・・雪・・・?」

 

「見て、あたしたちのISの性能が上がってる!」

 

「これが・・・旭の、ブリリアント・アイリスの力・・・?」

 

セシリア、ラウラ、鈴、シャルがそれぞれ驚愕の声を上げる。

 

――『零落白夜』発動。

 

――『絢爛舞踏』発動。

 

「なっ・・・?」

 

「ワンオフ・アビリティが勝手に・・・?」

 

白式、紅椿のワンオフ・アビリティが二人の意図とは別に自動的に発動する。『零落白夜』はこれまでにない輝きを帯び、『絢爛舞踏』はその場にいるすべての ISにエネルギーを与える。それにより、すべてのISが最高の状態で戦闘態勢へと入れる状態になった。それはまるで、現在をまだ見ぬ未来へと届けたかのように。

 

「キアアアアアアアアアアアッ!!」

 

再び黒の福音が旭に襲いかかるが、またしても旭はまるでさっきまでそこにいたかのように場所を一瞬で移動する。

そしてそれと同時にミラージュ・ヴェールにより、華やかなドレスを身にまとい、空へと決戦の舞台を映し出す。その様は、まさしく歌姫が用意した歌劇(オペラ)の舞台。

そして、旭は正体不明の敵を前にいつもステージの上に立っているように微笑んだ。

 

「――それじゃあいくよみんな、アンコール・ナンバー『STARLIGHT ORBITAL』!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは――」

 

俺は、ずっと前に何回か訪れたことがある向日葵の花畑の真ん中に立っていた。

 

「またここか・・・。一体ここってどこなんだよ・・・?」

 

「ここは、約束の地。いずれ収束する物語の終わりの果て」

 

後ろから誰かに話しかけられる。でも、この声を俺は知っていた。ずっと聞きたかった、アイツの――

 

「やっと会えたね、奏羅」

 

「まさか、未来(みく)――」

 

俺は目の前の光景が信じられなかった。ずっと前に死んだと思っていた、もう会えることがないと思っていた、俺の大切な人が立っていたのだから。

 

「お前、なんで――待て、お前と一緒に俺がここにいるってことは、俺は死んだのか・・・? つまり、ここはあの世・・・?」

 

「ふふっ。大丈夫、奏羅は生きてるよ」

 

「そ、そうか。俺はまだ死んでないのか・・・。な、なら、それは、つまり、お、お前は生きてるのか!?」

 

俺は必死になって未来に尋ねる。そうだ、俺は死んでないんだからもしかしたらこいつだって――

 

「半分、はね」

 

「半・・・分・・・?」

 

「プラチナが暴走したあの時、『ニーヴェルン・システム』によって私の体は粒子化され、精神はプラチナのコアと一体化したの。つまり――」

 

「未来が、プラチナだってのか・・・?」

 

俺は言っていることが信じられなかった。だって、現にこいつは目の前にいる。こんな元気な姿で――

 

「ねえ、奏羅。奏羅はなんで操縦者になったの?」

 

「えっ・・・?」

 

唐突に未来が俺に質問する。

 

「奏羅は開発者になりたいんでしょ? なら、なんでISを操縦してるの?」

 

「それは、操縦することで得たデータを――」

 

「違う。それは本当の想いじゃないでしょ」

 

「・・・・・・」

 

「本当のことを言って、奏羅」

 

「お、俺は・・・」

 

俺が、ISを操縦するほんとうの理由――

 

「俺は、お前の代わりに、夢を叶えてやりたかった。お前がいなくなって、俺がISを使えるって聞いたとき、思ったんだ。『いなくなった未来の代わりに、俺が未来の夢をかなえてやろう』って。だから、俺はずっとISを操縦してた」

 

それを聞いて、未来が悲しそうにうつむく。

 

「ごめん、色々と背負わせちゃって・・・。私のせいだね・・・」

 

「な、何言って――」

 

「だって、そうでしょ? 今もISを操縦したことで奏羅が傷ついてる。奏羅の今の夢だって、私が勝手に決めたんだよ?」

 

「そ、それは・・・」

 

「だから私を気にせずに生きていいんだよ、奏羅。いなくなった私なんかに振り回されなくていいから」

 

昔、一緒にいた頃は見たこと無いくらい悲しそうな未来。全部、自分のせいだと背負い込んで――

 

「俺さ、お前に感謝してるんだ」

 

もう、我慢できなかった。小さい頃から一緒にいてずっと言えなかったことを伝えようと思った。

 

「感謝・・・?」

 

「ああ。俺、ちっさい頃妙に冷めててさ、夢なんて歳相応の事考えたこともなかったんだ。そんな時、未来が現れて俺に夢を語ってくれた。子供ながらに衝撃だったよ、『この娘は俺がどう頑張ってもかなわないくらいすごい』って」

 

未来は黙ったまま俺の話を聞いている。俺も、もうこの話をやめようとは思わなかった。

 

「俺も自分の夢とか考えたけど、全然思いつかない。お先真っ暗さ。でもそんなとき光が差したんだ。お前が、くれた夢で」

 

「奏羅・・・」

 

「だから、俺は後悔なんてしてない。お前に振り回されてよかったって思ってる。お前に振り回されたおかげで、IS学園に入って最高の友達もできたしな。だから、これからも俺を振り回してくれ」

 

俺の言葉を黙って聞いていた未来の顔に涙が溢れていく。しかし泣くわけではなく、涙を目尻に溜めながら未来は昔と同じ笑顔で笑った。

 

「ふふっ、馬鹿だね。ほんとに馬鹿だよ・・・」

 

「ああ、よく言われるよ」

 

「旭ちゃんとかリリィちゃん? それともIS学園の友達?」

 

「どっちも、だよ」

 

「じゃあ、こんなコトしてる場合じゃないね」

 

未来が俺の手を取る。

 

「いこう、奏羅の、私の、みんなの未来(ゆめ)を守るために」

 

「ああ、そうだな」

 

その瞬間、世界に歌が響き、眩いほどの七色の輝きが降り注ぐ。

 

「旭ちゃんだね・・・」

 

「早く来いって急かしてるな」

 

「ふふっ、そうみたいだね」

 

「なあ、最後にひとつ聞いてもいいか?」

 

「いいよ」

 

「これって、現実なのか? それとも俺が見てる夢?」

 

俺の言葉に未来が微笑む。

 

「それはね、奏羅が決めることだよ」

 

その瞬間、世界が七色の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・無駄に厄介ねこいつら・・・」

 

鈴が面倒くさそうに声を荒げる。さきほどからイヴィル・サーヴァントを倒し続けているのだが、黒い福音から次々と生成されている。

 

「しかし、一度に出現する個体数には限りがあるようだ。なんとか隙をつければ・・・」

 

近づいてきたサーヴァント一匹を、ラウラが後ろへブーストをかけながら『ブリッツ』により撃破する。しかし、また次のサーヴァントが横から攻撃を仕掛けてくるので、黒い福音へと近づくことができない。

 

「まずいね・・・このままじゃ、ジワジワと追いつめられてく・・・」

 

「セシリア、奏羅は?」

 

「大丈夫ですわ。しかし、送り届ける事はできない限り安全の保証はありません!」

 

セシリアはスターダスト・シューターにより一匹を撃破。その後、迫ってきたもう一匹の体当たりを回避し、その頭を打ち抜いた。

 

「もう、これじゃあキリが――」

 

「セシリア! 後ろ!」

 

セシリアはシャルの声で反射的に回避体勢に入るが、黒い何かに左足を掴まれてしまう。

 

「なっ・・・!?」

 

セシリアの脚をつかんだのは黒い福音の翼。形状変化したそれは、まるで腕のようにセシリアの脚に絡みついている。

 

「くっ・・・何とかして抜けないと――」

 

もがくセシリアだったが、黒い福音が残りの翼が形を変え、ひとつの巨大な剣に変化した。

 

「そん・・・な・・・」

 

振り下ろされるそれはもう避けることはできない――

 

「セシリアっ!」

 

一夏が零落白夜で受け止めようとするが間にあう距離ではない。

 

(せめて、奏羅さんだけでも・・・)

 

セシリアは抱えていた奏羅を安全な方向へと放り投げた。

 

「奏羅さん、どうかご無事で」

 

奏羅の無事を祈るようにセシリアは目を閉じた。

 

「セシリアぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セシリア、人を軽々しく放り投げるんじゃないよ、まったく・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ・・・?」

 

セシリアは自分にかけられた言葉にはっとして目を開ける。彼女の目の前には――

 

「奏・・・羅・・・さん・・・?」

 

「誰だと思ったんだ?」

 

黒い福音の剣をソニック・ブレイズで受け止めている奏羅の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんとか、間に合ったみたいだな)

 

目を覚ましてみれば、俺は空中でセシリアに放り投げられてたところだった。しかも、もう少しでセシリアが危ないところだったとか、タイミングがいいにもほどがある。

 

「はあっ!」

 

目の前のISの剣を弾くと、セシリアを掴んでいる腕のようなものを切り裂き、セシリアを抱きかかえてその場から離れる。

 

「焦ったぞ、目を覚ましたらピンチとか心臓に悪いよ」

 

「奏・・・羅・・・さん・・・」

 

セシリアの目からボロボロと涙が出てくる。

 

「よしよし、怖かったんだな。もう大丈夫だ」

 

「はい・・・」

 

軽くセシリアの頭を撫でてやると、どうやら落ち着いたようだ。

 

「奏君!」

 

「奏羅!」

 

みんなが俺のもとに集まってくる。

 

「悪い、みんな。心配かけた」

 

「まったく、少しはこっちの身にもなれよなぁ。俺たちがどれくらい心配したと思ってんだ」

 

一夏が口を尖らせて文句を言う。

 

「はは、まったくです・・・」

 

「で、セシリアはいつまでそうしてるのかな?」

 

シャルの少し怒ったような言葉に腕の中から「うっ」と声がする。そういえば、セシリアを抱えっぱなしだった。

 

「まぁまぁ、死にそうだったんだし、いいじゃないの」

 

「鈴、甘いぞ。戦場はいつも死と隣り合わせだ」

 

「ラウラ、サラリと現実味のある軍人トークするのやめてくれ・・・」

 

ラウラの指摘に箒がつっこむ。なんだか、いつもの学校で喋っている気分になってきた。

 

「奏君」

 

横からにゅっと出てきた旭がにっこりと微笑む。

 

「旭、まだ歌えるか?」

 

「もちろんだよ!」

 

「じゃあ、歌ってくれ。みんなが無事に帰れるように」

 

「――うん、わかった」

 

旭が頷くのを見て、俺は黒いISの方へと目を向ける。

 

「悪いな、俺の、俺達の未来(ゆめ)にお前は邪魔なんだ。だから――」

 

――操縦者、天加瀬奏羅からの承認を確認。セーフティ解除。

 

「お前を倒すよ。俺と、未来の二人で。俺たちの、始まりの力で」

 

 

 

 

 

 

 

 

―プラチナはさ、元々フレームを使う予定はなかったんだ。

 

―なんで?

 

―今の状態は元にあった武装をオミットしたものなんだ。二度と、あんなことが無いように。

 

―暴走、か。

 

―そう。だから、前のようなシステムを使った即時戦局対応へのアプローチじゃなく、今のフレームシステムを使ったアプローチにしたんだ。

 

―じゃあ、もう使わないのか? せっかくフレームとして使えるようにしてあるのに。

 

―わからない。でも、使うとしたら――

 

―使うとしたら?

 

―いや、やっぱりなんでもない。

 

目の前に広がった光景を見て、リリィは少し前に奏羅が言っていた言葉を思い出していた。

 

「・・・奏羅、使うんだね。プラチナの本来の姿を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ヴァルキュリア・フレーム!」

 

奏羅は、もう使うことがないと思っていたフレームの名をコールする。彼の呼びかけに応え、光の粒子が集まり形をなす。

 

『呼んでくれたんだね、私のこと』

 

粒子は形をなし、奏羅の大切な人、遥流華 未来(はるか みく)の姿へと変わった。

 

「ああ、俺に力を貸してくれ」

 

『うん!』

 

未来が奏羅の手を取ると、奏羅は光の珠に包まれた。

光のなかで、ヴァルキュリア・フレームがドッキングし、プラチナは元の姿を取り戻していく。

 

――操縦者の変更を確認しました。操縦者、天加瀬奏羅及び、操縦者、遥流華未来。

 

「俺の夢も、君の夢も、決して終わらせはしない――」

 

――遥流華未来の承認を確認。単一特殊能力(ワンオフ・アビリティ)発動。

 

『私たちの想いを重ねて・・・。『恋夢交響曲(ソウル・シンフォニア)』!』

 

ワンオフ・アビリティの発動と共に光の珠が割れ、そこから一機の白金のISが飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――プラチナ・ヴァルキュリア、“未来”を・・・切り開く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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