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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第十八話 祝福の風との再会(前編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-08-29 06:47:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:47562   閲覧ユーザー数:42177

 父さんが家に帰ってきてから多少の月日が流れ、もうすぐ5月が終わろうとしている今日この頃。

 ただ今、聖祥組と長谷川家は翠屋で昼食を食べています。

 ちなみに今日は土曜日。海小の俺達は学校が休みで聖祥組の六人は午前中で授業が終った。

 

 「そういえば来週の土曜日ははやてちゃんの誕生日だよね?」

 

 食事中、すずかが口を開く。

 

 「へ?ああ、そういえばそうやな~。自分の事やのにすっかり忘れとったわ~」

 

 あははと笑うはやて。

 

 「ならお祝いしないといけませんね」

 

 「シュテルの言う通りね。土曜日ははやての誕生日会をするわよ」

 

 誕生日を迎えるはやて以上に他のメンバーが盛り上がっている。

 誕生日プレゼントかあ…。何にすればいいかねえ。

 チラリとはやてを盗み見る。その先に見たものは…。

 

 

 

 「そっか。もうすぐ私の誕生日なんやね…」

 

 呟くような小さな声で言葉を発し悲しそうな瞳をしているはやての姿だった………。

 

 

 

 あの後誕生日会の場所やら皆の土曜日の予定やらを確認し、皆解散となった。

 アリサとすずかは車で帰り、はやてもアリサの車に乗って帰っていった。

 それで俺達長谷川家とフェイト、アリシアは徒歩で帰っている訳だが…。

 

 「なあフェイト、アリシア。はやての奴何かあったのか?」

 

 「「え?」」

 

 俺がふとした疑問を聞いてみたが二人は頭に?マークを浮かべていた。

 

 「アイツさっき自分の誕生日だっていうのになんか悲しそうな目をしてたから気になったんだよ」

 

 「そうなのか?我等と喋っている間の子鴉は普通に楽しそうな顔しかしておらんかったぞ?」

 

 「お前等が盛り上がってる時にほんの僅かだが確かに見たぞ」

 

 「「……………………」」

 

 俺がディアーチェと喋ってる間二人は顔を見合わせた後、表情が暗くなった。この様子だとはやての事について何か知ってるんだろう。

 

 「多分、はやてがそんな悲しそうな表情をしたっていうのはリインフォースの事を思い出したんだと思う」

 

 「リインフォース?」

 

 「ユウキ、以前この世界の私達やユーリと闘っているサーチャーを見た時に何度か映っていたでしょう。銀髪で赤い目をしていた者が」

 

 「……ああ、そういえば闇の書事件の時にも見たな」

 

 それからフェイトはリインフォースの事について説明してくれた。

 実際は原作知識があるから名前を聞いた時点ですぐに分かっていたがあえて知らないフリをしておいた。

 そしてフェイトの話によるとリインフォースははやてが10歳になった誕生日の夜に消滅し、その生涯を終えたそうだ。

 

 「はやてにとってはリインフォースも大切な家族だったんだ」

 

 「だから自分の誕生日が近付くとリインフォースの事を思い出してそんな表情を浮かべたんだと思うよ」

 

 フェイト、アリシアが説明してくれたおかげでこの世界のリインフォースの最期について知る事が出来た。

 それからフェイト、アリシアと別れ、更に買い物に行くために俺はシュテル達とも別れ一人でスーパーに向かうのだった………。

 

 

 

 「むう…牛肉が今日は意外に安くて質の良いのが多いな」

 

 今日は豚キムチでも作ろうと思っていたんだが、いざ牛肉の値段と質の良さを見ると夕食の献立を変えたくなってしまった。

 

 「…せっかくだし今日はすき焼きに変更するか」

 

 夕食のメニューをランクアップさせ、牛肉を5パックほど買い物カゴに入れる。

 そして野菜売場に着くと顔見知りの人物がいた。向こうもこちらに気付いたようで

 

 「勇紀君も晩ご飯の買い物かー」

 

 「ああ、さっきぶりだな。はやても買い物に来てたんだな。てっきりアリサの車で家まで送ってもらったのかと思ってた」

 

 はやての方に近付き、二人並んで買い物を再開する。

 

 「勇紀君とこは晩ご飯何にするん?」

 

 「最初は豚キムチにしようかと思ったんだけど牛肉の質の良さに魅入られてしまってな。だからすき焼きに変更する事にした」

 

 はやてと話しながら近くにあった白ネギを手に取り、買い物カゴに放り込む。

 

 「すき焼きか~。じゃあそのパックは全部牛肉なん?」

 

 「ああ、安かったんでな。まあ家には沢山食ってくれる奴がいるから問題は無い」

 

 お互い会話をしながら必要な食材を見つけてはカゴの中に入れていく。

 はやての買い物カゴの中を覗いてみる。中にはキャベツ、小麦粉、卵、青ネギ、コンニャク、里芋が入っている。

 

 「…そのカゴの中身から察するにそっちはお好み焼きか?」

 

 「そうや。後は豚肉と魚介類見に行くぐらいやね」

 

 はやてに着いて来て再び肉売場に戻ってきた俺。特にここには用が無いのではやてが肉を選んでいるのを眺めている。

 買い物カゴを置き手に取った2つのパックを交互に見比べ『むむむ~』と唸っている。

 量か値段かで悩んでいるのだろうな。俺もしょっちゅう悩む事あるし。

 悩みになやんだ末、片方のパックを買い物カゴに入れ、もう片方のパックを元の場所に戻した。

 

 「何や、待っててくれたん?先に行ってくれてても良かったんやで?」

 

 「他に何かお買得の物を見落としてないか確認してたんだ」

 

 無難な答えで返しておく。

 それから二人でレジ前の列に並び会計を済ませてスーパーを後にした………。

 

 

 

 「スマンはやて」

 

 スーパーを出た直後、俺ははやてに謝った。

 

 「いきなり謝られる意味が分かれへんねんけど?」

 

 「実はお前の事についてフェイトとアリシアから聞いてな」

 

 「わたしの事?」

 

 疑問符を浮かべ首を傾げるはやてに俺はフェイトとアリシアから聞いた内容について話した。

 

 「…なんつーかお前の過去を勝手に覗いた様な気がしてな」

 

 「気にしてへんから別にええよ。勇紀君にやったら話してもええ内容やったし」

 

 そう言われて少しは気が楽になったが…。

 

 「まだ気にしとるって感じやなー」

 

 はやてには見事に見抜かれていた。

 

 「ホントに気にせんでええんやけど…わたしが何回言うても無駄やろうしなー」

 

 「すみません。こんな自分で」

 

 「うーん。でもどうしたらええんやろか?」

 

 「何か俺に出来る事は無いか?出来る範囲なら何でもやるぞ」

 

 「出来る事なあ…」

 

 しばらく『うーんうーん』と唸っていたはやてだが

 

 「!!」

 

 どうやら何か思いついた様だ。

 

 「それやったら一つお願いしてもええかな?」

 

 「おう」

 

 「わたしの誕生日プレゼントは勇紀君の手作りで何か欲しいなー」

 

 「手作り?料理でもしろと?」

 

 「別に料理でもええんやけど出来れば手元に残るような物がええかなー」

 

 手元に残る物ねえ…。服とかぬいぐるみとかそんな感じでいいのか?

 

 「あ、条件として他の皆と同じプレゼントにならんようにしてな?」

 

 「プレゼントが被らないように…か。なら皆から何買うか聞かないとな」

 

 「それも却下で。情報集めるのもアカンでー」

 

 「…はやてさん。それだとスゲー難易度高いんですけど」

 

 「乙女の秘密を勝手に知った罰や♪」

 

 こ、この子狸め…。さっきは『気にしてへん』とか言ってたくせに。

 

 「狸とちゃうわ!」

 

 …もうやだ。皆どうして心が読めるのか。

 それからしばらくしてはやてと別れた俺は家に着くまでの間、はやてに渡すプレゼントを何にしようかずっと考えていた………。

 

 

 

 家に着きすぐさま夕食の準備をする。家に父さんはいなかった。今日は商店街の人と飲みに行くとか。俺としては父さんが家に戻ってきて以来、少量とはいえ毎日酒を飲んでいるので身体を壊さないか心配なのだが。まあ父さん自身が『大丈夫』と言ってるのだから当面はその言葉を信用するしかない。

 野菜を切り始めるとレヴィに今日の献立を聞かれたのですき焼きを作るといった瞬間レヴィは瞳をキラキラ輝かせて5分毎に『もう出来た?』と聞いてくる。隣で準備を手伝ってくれているディアーチェはその度に『リビングで大人しく待っておれ!!』と言う。それでもしつこくキッチンに来て聞いてくるのでレヴィの頭に拳骨をお見舞いしていた。相変わらず痛そうな拳骨だ。

 レヴィがリビングで大人しく待ち始めてから10分程経ってようやくすき焼きの準備が出来た。

 

 「お肉♪お肉♪」

 

 さっきからテンションが上がりっ放しのレヴィ。その目は肉だけをロックオンしている。

 

 「レヴィ。肉だけじゃなくて野菜も食べないと駄目ですよ」

 

 「分かってるよシュテるん」

 

 そう返事をしているがコイツ絶対に肉しか食わないだろうな。またディアーチェの拳骨が飛ぶだろう。

 …そろそろ食べられるな。

 

 「じゃあ食べるか」

 

 皆で手を合わせ『いただきます』と言った直後に

 

 「お肉~~!!」

 

 肉に箸を伸ばすレヴィ。ただ、最初に肉を取るぐらいは問題ないのだが一気に鍋の中にある肉の半分をレヴィが奪い野菜を無視した事で案の定ディアーチェの拳骨を喰らっていた。食事はバランス良く取らないとね。

 

 「ところでユウキよ」

 

 突然ディアーチェが話し掛けてきた。そのすぐ側には頭を手で押さえ涙目になっているレヴィがいる。とりあえずレヴィを無視してディアーチェの方を向く。

 

 「お前、野菜を切りながらも何か別の事を考えていただろう?」

 

 「…何でそう思うんだ?」

 

 「いつもより野菜を切る速度が落ちていたからな」

 

 そうだったのか…。自分では気付かなかったが。

 

 「で、何を考えていたのだ?」

 

 「はやての誕生日プレゼントについて考えてたんだ」

 

 スーパーではやてと会ってから別れるまでの会話の内容を皆に話す。

 全て話し終えた後、四人の顔を見ると

 

 「「「「……………………」」」」

 

 何故か険しい顔つきになっていた。

 

 「えっと…どうかしたのか?」

 

 「「「「別に…(ユウキ(ユウ)の手作りプレゼントなんて羨ましい!!)」」」」

 

 「そ、そうですか…」

 

 何故か不機嫌そうな四人の放つプレッシャーに気圧される。

 

 「それで何を作るのか決めたのですか?」

 

 鋭い目をしたユーリが質問し、他の三人もこちらを見てくる…というより睨まれている。

 怖すぎる。

 

 「一応な。ただ…」

 

 「「「「ただ?」」」」

 

 「普通に作ってたら間に合うか分からない。だからはやての誕生日までは学校を休んでプレゼント作りに専念しようと思う」

 

 そう言いながら小皿に取った白菜を口に運ぶ。…うん、味が染み込んでていい感じだ。

 俺が白菜の味に満足していると

 

 「「「「(学校を休んでまで手の込んだプレゼントを作るつもりですか!?(なの!?)(なのか!?))」」」」

 

 更に視線が鋭くなった様な気がしてならないんだが…。

 

 「と、とりあえずそういう事なんで学校には上手く言っといてくれないか?」

 

 冷や汗を掻きながら四人にお願いするが…

 

 「「「「……………………」」」」

 

 ただ無言でこっちを睨むように見てくる四人。何でコイツらはそんなに不機嫌そうなんだ?

 しばらく沈黙がリビングを支配する中…

 

 「…分かりました。学校には私から連絡しておきます」

 

 シュテルが口を開く。

 

 「本当か!?すまんシュテル。助かるよ」

 

 「ですが、条件があります」

 

 条件?一体何だろうか?

 

 「私の誕生日にプレゼントを下さい。勿論ユウキの手作りで」

 

 「そんな事でいいのか?俺は別に構わないが」

 

 「ホントですか!?約束ですよ!?」

 

 「あ、ああ…」

 

 俺と約束を交わしたシュテルは笑顔になり、鍋の中にある最後の豆腐を小皿に取り食べ始める。

 …その豆腐、俺が食べたかったのに。

 まあいいか。まだ豆腐はあるんだ。

 俺は腰を上げキッチンに追加の豆腐を取りに行こうとすると

 

 ガシッ!

 

 いつの間にか後ろに回り込んでいたディアーチェに肩を掴まれた。

 

 「…なあユウキよ」

 

 怖っ!!

 何か凄く声にドスが聞いてるんですけど!?

 

 「な、何だディアーチェ?」

 

 「我にも当然誕生日プレゼントはくれるよな?勿論ユウキの手作りでだが」

 

 どうやらディアーチェもプレゼントをご所望のようだ。

 

 「た、誕生日がきたらな…」

 

 俺がそう言うと満足そうに頷いたディアーチェは肩から手を離してくれる。

 解放されたので今度こそ豆腐を取りに行こうと歩き始めようとした瞬間に

 

 ガシッ!!×2

 

 『またか!?』と思い振り返るとレヴィとユーリが俺の肩を掴んでいた。

 というか、ディアーチェもだが何故君達は音も立てずに近寄ってこれるんだ?

 あれか!?『気配遮断』のスキルでも使ってるのか!?

 俺がそんな事を考えていると

 

 「「ユウ(ユウキ)、僕(私)にも手作りの誕生日プレゼントくれるよね?(くれますよね?)」」

 

 もう睨んではいないものの光のない瞳で微笑まれては俺の答える選択肢は一つしかないじゃねえか。

 

 「ちゃんとやるから豆腐を取りにいかせてくれ」

 

 二人もすぐに俺の肩を解放してくれた。瞳にも光が戻っているので安心だろう。

 しかしここで疑問が一つ…

 

 「お前等の誕生日っていつなんだ?」

 

 「「「「…………あ」」」」

 

 その言葉に反応する四人。

 どうやら自分達の誕生日がいつなのか分からない様だった………。

 

 

 

 食事を終え、自分の部屋に戻ってきた俺。四人は今もリビングで『自分の誕生日はいつにするか』と言って考え込んでいたんだが

 

 「普通に考えたら自分達が生まれた日か自分のオリジナルと同じ日だろうに…」

 

 といってもユーリはいつ生まれたのか知らないし、レヴィに関してもフェイトの誕生日を知らない事にはなあ…。

 まあそれらの問題は四人に任せて俺ははやての誕生日プレゼントを作る事にしますかねえ。

 

 「で、何を作るの?ユウくん」

 

 ダイダロスが俺に聞いてくる。

 …何故だろうか?いつも身に着けて話している筈なのに会話したのは久しぶりのような…。

 

 「???ユウくんどうかした?」

 

 「いや、何でもないよダイダロス。それよりはやての誕生日プレゼント作らないとな」

 

 早速作ろうとする。

 俺は部屋の隅に置いてあるダンボール箱の中身を取り出す。

 

 「それって…デバイスのパーツだよね?まさかはやてちゃんに送るプレゼントって……」

 

 「ああ、デバイスだ。それもただのデバイスじゃなくてアイツをビックリさせてやりたいから…」

 

 そこで一呼吸置き

 

 「『闇の書』…いや、『夜天の書』をプレゼントしてやろうと思ってな」

 

 ダイダロスにそう告げ、ニヤリと不敵に笑うのだった………。

 

 

 

 ~~一週間後~~

 

 俺は今、はやての誕生日会が行われる場所に向かっている。

 といっても場所は翠屋だが。

 今日ははやての誕生日会の為に店を早めに閉め、今は貸切り状態になっているらしい。

 誕生日会は夕方6時から始めるとアリサからメールが来ていたのだが

 

 「完全に遅刻だな」

 

 「遅刻だね」

 

 ただ今の時間は8時30分過ぎ。

 なので翠屋に向かって全力疾走中(身体強化せず)である。

 

 「全く…あそこまで手こずるとは俺自身思わなかった」

 

 「一週間で出来たっていうのが正直奇跡だと思えるよね」

 

 走りながら会話をする俺とダイダロス。そこへ

 

 「すまないな勇紀。私のせいで…」

 

 第三者の声が聞こえる。声の出所は俺の手に持っている包装紙でラッピングされた箱の中。

 

 「いや、リンスのせいじゃないって。悪いのはお前をあそこまで改竄した歴代の主だから」

 

 「だが…」

 

 「もう気にすんなって。お前はもう完全に直したから暴走なんてしない。というか俺以外誰もプログラム自体を弄れないようにプロテクトも超強化してるから改竄がもう出来る事は無いだろうし」

 

 そんな会話をしていると見慣れた喫茶店が見えてきた。

 

 「おっ、まだやってるみたいだな。良かった良かった。じゃあリンス、はやてをビックリさせたいから少し黙っててくれよな」

 

 そして翠屋の入り口前で軽く深呼吸し、息を整えて

 

 「すまん。遅くなった」

 

 扉を開け店の中に入っていった………。

 

 

 

 ~~はやて視点~~

 

 今日はわたしの誕生日。皆がわたしの事を祝ってくれるという事で今翠屋で誕生日会が開かれている。

 まずは皆が来て早速プレゼントを渡してくれた。

 色んな物くれたけど特にすずかちゃんがくれたブックカバーは嬉しかったなあ。わたし、本読むの好きやし。

 そういえば勇紀君には手作りのプレゼントを頼んだんやけど何くれるんやろか?

 少し楽しみにしていたんやけど肝心の本人がおらへん。

 

 「なあシュテル。勇紀君はどないしたんや?」

 

 てっきり王様達と一緒に来るもんやと思っとったんやけど。

 

 「ユウキなら家でまだプレゼントを作ってましたよ。私達が家を出る時も『もう少しで出来るから先に行っててくれ』と言われましたし」

 

 まだ作ってるんか!?お願いしたんは一週間前やからプレゼント作るのに充分な時間があると思うんやけど。

 

 「それどころかユウが何作ってるか僕達も知らないんだよねー」

 

 「ユウキの奴、部屋に結界を張って我等も入れぬようにしておったからな」

 

 そこまで!?そこまでする事か!?確かに手作りで欲しい言うたけど頑張り過ぎやろ!?

 

 「あ、でも『はやてをビックリさせてやる』って部屋に籠もる前に言ってましたよ。しかも『ニヤリ』っていう擬音が似合う邪悪な笑みを浮かべて」

 

 何や!?何作ってるんや勇紀君は!?何か楽しみどころか怖くなってきたんやけど!?

 わたしがあんな条件出したから怒ってとんでもない物作ってんのか!?

 

 「はやてちゃんいいなあ。勇紀君の手作りプレゼントなんて」

 

 羨ましそうな目ですずかちゃんがこっち見ながら呟いてるけど今わたしは不安で一杯なんやですずかちゃん。

 

 「はやてちゃん、顔色が少し悪いですけど大丈夫ですか~?」

 

 そんな時に私の事を心配してくれる子がいる。

 

 「大丈夫やでリイン。心配してくれてありがとな」

 

 わたしの側にいる身長が30cm程の人形の様な子。名前はリインフォース(ツヴァイ)。初代リインフォースの破片を器にし、わたしのリンカーコアをコピーして生み出した八神家の末っ子にして初代リインフォースの意思を受け継ぐ子。

 そんなリインを見たわたしの家族以外の皆が固まっている。どうしたんやろか?

 

 「ね、ねえはやて。今その人形喋らなかった?」

 

 アリサちゃんがわたしに聞いてくるけど人形ってもしかしてリインの事かいな。

 

 「ぶう。お人形じゃないです。リインはリインなのです」

 

 「「「「「「「「「やっぱり喋った!?」」」」」」」」」

 

 皆驚いてるなあ。

 そういえばリインの事紹介してへんかった。

 

 「皆、この子はリインフォース(ツヴァイ)。わたしの新しい家族なんや。リイン、挨拶し」

 

 「はいですはやてちゃん。初めまして、リインフォース(ツヴァイ)です~。皆さん、よろしくお願いしますです~」

 

 ペコリと頭を下げ自己紹介するリイン。

 皆もそれに習って一人ずつ自己紹介していく。

 それから皆でワイワイ騒ぎながら時間は過ぎていく。

 それでも勇紀君はまだ来てない。テーブルの上にあった食べ物もほとんど無くなりそろそろお開きかなあと思った時に

 

 「すまん。遅くなった」

 

 彼が姿を現した。

 

 

 

 ~~はやて視点終了~~

 

 う~ん、どうしたもんか。

 『今頃来て何するんだ?』みたいな感じで皆に見られてるよ。

 テーブルの上にある料理はもうほとんど無いし確かに『今頃来てどうすんだ?』ってな雰囲気だな。

 沈黙が場を支配する中…

 

 「はやてちゃん、この人は誰です?」

 

 はやての傍に居るちっこいのが声を出す。

 …てゆうかよく見たらリインフォース(ツヴァイ)じゃねーか?何でもう居んの?

 リインフォース(ツヴァイ)が誕生するのは闇の書事件から2年程後の筈だからまだ半年は先の事なのに。

 ……考えるだけ無駄か。IFの世界だからって理由になりそうだし。

 

 「リイン、この人もわたしの友達で長谷川勇紀君って言うんや。自己紹介し」

 

 「はいです。初めまして、リインはリインフォース(ツヴァイ)っていうです。リインと呼んで下さいです」

 

 「あ、これはご丁寧にどうも。長谷川勇紀です。俺の事も勇紀って呼んで下さい」

 

 お互いに自己紹介をする。

 

 「遅かったなユウキ。プレゼントは出来たのか?」

 

 「ああ、完璧な物がな」

 

 ディアーチェの問いに俺は頷きながら答え、はやての方に近付く。

 

 「誕生日おめでとう」

 

 「ありがとう。……なあ勇紀君」

 

 「何だ?」

 

 「これ、爆発したりせえへんよな?」

 

 「しねえよ!!」

 

 いきなり何言ってんだコイツは!?

 

 「だってさっき『完璧な物が出来た』って言うてたから完璧な爆弾でも出来たんやろうなあと」

 

 「誕生日プレゼントに爆弾なんか送るか!!」

 

 暗殺者じゃあるまいし。

 

 「でもなあ…」

 

 「いいからさっさと開けてみ。そしたら分かるから」

 

 早く開けるよう促し、はやてがラッピングされた包装紙を破り箱を開け

 

 「う~ん、何が入ってるんや……ろ…………」

 

 箱の中から出てきた物を見て言葉を失うはやて。

 いや、はやてだけじゃない。アリサとすずか、リインを除いた魔法関係者は箱の中の物を見て驚いた表情を浮かべ声を出せずにいた。

 

 「何?どうしたのよ?」

 

 「それって本だよね?」

 

 「はやてちゃん?」

 

 どうやらアリサとすずかは箱の中の本を見て皆が固まっている理由を知らないみたいだ。

 リインは生まれたばかりらしいから知らないのも無理は無い。

 

 「な、なあ勇紀君…これって……」

 

 お?はやてが再起動したか。俺と箱の中にある本を交互に何度も見てる。

 

 「はやて、名前で呼んでやれ。中にいる奴(・・・・・)はお前に名前で呼ばれるのを待ってるんだ」

 

 俺は笑顔で答えてやる。

 それからはやてはまた本に視線を移し、少しの間黙っていたが

 

 「リイン…フォース……」

 

 はやてが中にいる奴の名前を呼んだ瞬間、箱の中にある本『夜天の書』が眩い光を放つ。

 光が収まりはやてが少しずつ目を開けていくと

 

 「我が主…」

 

 銀髪の女性がはやての前に姿を現した………。


 
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