No.475009

おや?五周目の一刀君の様子が……15

ふぉんさん

ご都合主義満載の展開。
時間の経過は許してくださいまし。
するすると要所イベントへ向かいたいので。

2012-08-25 04:03:16 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:10851   閲覧ユーザー数:8273

『一刀……楽しい……日々、だった、ね……』

 

『ああ……楽しかったよな……!酒飲んで怒られたり、釣りしたり……!でもさ、雪蓮!俺はもっともっとおまえと居たかった!もっと楽しく、笑いあっていたかった!』

『なのに……どうしてだよ!なんで……なんで死んじゃうんだよ!』

 

『人は、いつか死ぬもの……私、幸せだよ……楽しかったこと、思い浮かべて……死んで、いけるから』

『さよ、なら……かず、と……あなたにあえて───────』

 

『雪蓮っ!……雪蓮ーーーーーっ!』

「…………ぁ?」

 

霞のかかる視界。朦朧とした意識の中、頬を伝う感触を手の甲で拭う。

案の定、濡れていた。俺は泣いていたらしい。

何故かわからない。見ていた夢は忘れてしまった。

 

「ッ」

 

寝台から体を起こす。やはり痛みを伴ったが、意識を失う前とは比べるまでも無く軽い。

ここは何処だろうか。

 

「あ……」

 

扉が開かれ、視線を向けると呆然とした陳宮が立っていた。

近況を聞こうと口を開くが、ふるふると震える様子に噤む。

 

「か、一刀殿ーーっ!」

 

走り寄り、両手を広げ抱きついてきた。

体に走る痛みより、驚愕が勝る。

顔をぐしぐしと俺の胸に擦り付ける陳宮に、頭が追いつかない。

 

「ねねはもう……目を覚まさないかと……」

 

強く抱きしめてくる陳宮の頭を優しく撫でる。

とりあえず落ち着かせ、それから近況を聞くか。

現状は把握した。

ここは森に囲まれ、ひっそりと佇む村。洛陽から逃げるよう適当に馬を走らせ、行き着いたらしい。

瀕死の俺を見た村人が急ぎ手当てし、生き繋いだとの事。

それから、行く宛ての無い俺達に空家を貸してくれたらしい。

この乱世によく余所者を助ける余裕のある村があったものだ。

 

そして俺が一番驚いた事。

それは反董卓連合解散から、既に二月が経っていたことだった。

二月も村に厄介になり、その間陳宮が一人働き寝たきりの俺を養う。

文面にするとここまで情けない事はないだろう。

 

陳宮の命を救った分を引いても、大きな借りができてしまった。

 

「一刀殿!ねねは仕事にいってくるのです!」

 

未だ寝台に座る俺に、陳宮は農具を持ち戸を開ける。

基本自給自足のこの村で、陳宮は村人達の手伝いをして収穫の分け前をもらっていた。

俺も手伝うと言ったのだが、まだ怪我が治りきってないと陳宮が許さなかった。

 

「あぁ、行ってらっしゃい」

 

「はい!」

 

ぱぁ!と明るい笑顔を浮かべ陳宮が家を出た。

 

俺は立ち上がり、包帯が撒いてある脇腹を擦る。

痛みは少し、傷はほぼ塞がりかかっている。

限度を超えた運動をしなければ、傷が開く事も無いだろう。

壁にかけてあった剣を抜く。陳宮が手入れでもしてくれたんだろう、刃毀れなく刀身が光っていた。

 

その場で一振り、体が軋む。

やはり、二月も寝たきりなだけあって体が訛り切っている。

当面の目標は身体能力の取り戻しだな。

「なぁ」

 

「どうしたのですか?」

 

夜。夕食をとっている俺を、微笑みながら見つめる陳宮に尋ねる。

 

「その、お前は何でそんなに俺に……」

 

懐いているんだ?と言おうとしたが、止める。

遠回しにペット扱いしていると口にするのは失礼すぎるだろう。

そんな俺に陳宮は不思議そうに首を傾げる。

 

「何でと言われますと……ねねは一刀殿に命を救われた際、その背に主の器を見たのです……」

 

恥ずかしそうに頬を赤く染め言う陳宮に、呆気に取られる。

確かに気まぐれで助けたが、そんな打算は無かった。

 

「お前、呂布に仕えてなかったか?」

 

正式には董卓にだが。

 

「もちろん、ねねは恋殿の家臣なのです」

 

「……賢臣は二君に仕えずって言葉知ってるか?」

 

「うぐっ……ね、ねねは常識の範疇に納まりきらない人間なのです」

 

苦い顔から一転、えっへんとドヤ顔で胸を張る。

陳宮に助けられている点、それ以上追求するのは止めた。

食器を片付け寝台に入る。陳宮も俺と一緒に布団へ入った。

寝台は一つ、ここに来てから毎日一緒に寝ているとのこと。

まぁ相手は子供、性欲は沸かない。

 

ところでだ。二月も寝たきりの割には、予想以上に体は動き、肉付きも多少減ったぐらいだった。

この時代に点滴などあるはずも無く、何故か不思議に思い陳宮に聞いてみる。と、陳宮は顔を真っ赤にした。

 

「そ、それはねねが……一刀殿に……」

 

その、あの、と要領を得ない答えが返ってくる。

無言で暫く待っていると、意を決したように口を開いた。

 

「……毎日、食べさせてあげていたのですよ」

 

食べさせる。

この時代に流動食などあるはずも無く、すぐに分かった。

 

「まぁいい、寝る」

 

陳宮に背を向け、寝る。

火照る顔を見られたくないからだ。

全身を拭く、排泄等の世話は想像できた。

だが流石に、こんな小さな子供に咀嚼させ、口移しで食べさせられていた事を思うと、いくら俺でも恥ずかしすぎる。

 

「はい、おやすみなさいなのです」

 

陳宮が寄り添ったのだろう。背に温もりを感じる。

その温もりに、心地よさを感じながら意識を閉じた。

※意識を失っている人に食べ物を摂らせる事については、本当にこの方法(咀嚼&口移し)で出来るかは調べてなくて分からないです。多分出来ないんじゃないかな……

でもそうしないと二月も寝たきりだと衰弱死してもおかしくないし、復帰までかかる時間が長すぎると思い無理やりそうしました。

恋姫世界は現実と違うし、これも外史設定って事でお願いします。


 
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