No.474423

乱世を歩む武人~第三十一話(後)~

RINさん

ここを仕上げるのにすごく時間がかかりました・・・

2012-08-23 22:34:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4654   閲覧ユーザー数:3926

~一刀side~

 

「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

桂枝の一撃を片手で受け止めた霞が情け容赦のない突きによる一撃を桂枝の腹に見舞う。

 

桂枝

「っ!」

 

高い金属を鳴らしながら1メートルほど飛ばされ二歩、三歩と後ずさる。

 

桂枝

「・・・無理か」

 

そのまま膝をついてしまいついに桂枝は倒れてしまった。

 

「・・・秋蘭、判定。」

 

夏候淵

「あ・・・ああ。一本!勝者、霞!」

 

秋蘭による試合終了の合図によりどこか緊迫していた空気がようやく緩み始めた。

 

一刀

「おい、桂枝。大丈夫・・・「桂枝!」」

 

俺が声をかけようとするほぼ同時に桂花が倒れた桂枝の元へと走り寄る。等の桂枝はうつ伏せに倒れたままだ。

 

桂花

「ちょっと桂枝!大丈夫なの!?大丈夫なら返事をしなさい!」

 

ゆさゆさと体を揺らすが反応が無い。完全に気絶しているみたいだ。

 

「寝かせてやりぃ。ウチの全力をまともにくらったんや。まだしばらくは起きへんよ。」

 

その様子をみながら霞がゆっくりと近づいてきた。

 

一刀

「霞、お疲れさん。」

 

桂花

「霞!最後の一撃は何よ!あの時点で勝敗は決まっていたでしょう!?あんなに思いっきりやることないじゃないっ!」

 

桂枝を仰向けにひっくり返しその頭を抱きかかえながら桂花は霞を非難した。

 

そう、桂花の言うとおり、あの時点で武器を弾くなりなんなりすればほぼ確実に詰みだったのだ。なのに霞はあえてとどめの一撃を放ちにいったのだ。それも全力で。

 

「武人がとどめを刺すのに全力を出さないのは失礼やろ。それにな・・・

 

ーーーーーーああしないと負けていたのはウチやったわ。」

 

一刀

「負けていた?あそこから?」

 

「せや、よう見てみぃ。桂枝の武器になんか違和感あらへんか?」

 

そういわれて改めて地面に落ちている桂枝の武器を確認する。するとそこには先程やられたときにはくっついていた「双剣」が横たわっていた。

 

一刀

「分かれてる・・・?勝手に分離したのか?」

 

「ちゃうわ。ウチが一撃を入れるそのほんの数瞬前に抑えてなかった左手使って剣を分離したんや。ウチがあのまま止まってたらそのまま喉元にコレつきつけられてたわ。」

 

渾身の一撃を止められていたというのにもう反撃手をとっていたっていうのかこいつ・・・!

 

「最後の最後まで勝ちを諦めない姿勢、それまでの見事な連撃に最後のあの技・・・久々に熱くさせてもらったで。桂枝」

 

そういって気絶している桂枝の頭をなでる霞。その表情は敗者を称える以外の何かがあった。

 

一刀

「さて・・・それにしてもどうしようか。こいつしばらく起きれないんだろう?」

 

流石にいつまでもここで寝かせておくわけにもいかない。しかし人一人持って行くとなると結構重いしおれ一人だと引きずってしまう。

 

桂花

「そうね・・・流琉と季衣に頼んで部屋まで運んでもらおうかしら。」

 

「その必要はあらへん よっと!」

 

そういって仰向けになっている桂枝を軽々と持ち上げる霞。いわゆる「お姫様抱っこ」状態だ。

 

桂花

「ちょっと霞?」

 

「このまま桂枝の部屋まで運べばええんやろ?ならウチがこのまま運んでいくわ。ほな後片付けよろしゅうな。一刀」

 

桂花

「ちょ・・・ちょっと待ちなさいよ霞!」

 

そういって二人で桂枝を持ったまま屋敷へと戻っていってしまった。

 

一刀

「あとかたづけって言われてもな・・・」

 

「あの二人は人並み外れた怪力ってわけじゃないですからねー。戦闘場に被害は少ないので片付けは簡単ですよ。」

 

一刀

「うぉっ!」

 

いつのまにか風が横にいた。

 

一刀

「いつきたんだ?」

 

「ここにって意味でしたらついさっきですよー。桂枝さんが心配でしで急いできたのですが霞ちゃんがお持ち帰りしちゃいましたからねー。そこで一人寂しそうなお兄さんに声をかけてみたのですよ。」

 

一刀

「一人さびしくってな・・・」

 

それに急いできたといってもきっとゆっくり歩いてきたんだろうな・・・風はそういう娘だ。

 

一刀

「まぁ確かに後片付けに関しては簡単そうだよな。しかたない。さっさと終わらせて俺も桂枝の様子を・・・」

 

「残念ですがお兄さん・・・さっさとは終わらないと思うのですよ。」

 

一刀

「おい、さっきと言ってることが矛盾いているぞ風。」

 

「さっきまでは簡単だったんですけどねー。今はもう・・・「こいっ!凪!」手遅れなのです。」

 

「行きますよ春蘭さま!はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

凄まじい爆音とともに発せられる氣の塊。いつの間にか後ろでは豪快な戦いが繰り広げられていた。

 

一刀

「ちょ!なんであいつら戦ってんだよ!」

 

「武人の血が騒いだってさっき春蘭ちゃんが言ってましたね。それに凪ちゃんが呼応したのでしょう。」

 

一刀

「あー・・・そっか。たしかにあいつらの戦いすごかったもんなぁ」

 

今の戦いを豪快というのならばあの二人の戦いはまさに戦場の舞。

 

霞がその神速で嵐のような連撃を浴びせそれに桂枝が並外れた観察力とその技術で対応する。

 

先に舞から外れたほうがお互いの暴風に飲まれて負けるまさにある種「美しさ」まで感じる勝負だった。

 

武人じゃない俺も実際すごく熱くなったし武人がみたら血が騒がずにはいられない一戦だったのだろう。

 

一刀

「気持ちは理解できるけど・・・片付け本当に俺がやるの?」

 

既に春蘭と凪のぶつかり合いで景色は一変していた。これは園庭を呼ぶところから始めないといけないだろう・・・

 

「ふふふっ。頼まれた以上しかたありませんね。頑張ってくださいお兄さん。」

 

一刀

「コレを頼まれたわけじゃないんだと思うんだけどなぁ・・・」

 

 

 

俺はこれから先にかかる手間と時間を考え頭を抱えるのであった・・・

 

 

~一刀side out~

 

 

 

 

桂枝

「・・・むっ」

 

ふと目が覚めた。目の前には自室の天井がある。どうやら気絶したところを誰かに運んでもらったようだ。

 

体の状況を確認する。ところどころが痛いが問題なく動く。まだ突かれた場所はかなり痛むがソレは仕方ないで済む範囲だ。

 

「お、起きたんか。おはよう桂枝」

 

丁度霞さんが部屋に入ってきた。体を起こし体を伸ばして体の硬さを取る。

 

桂枝

「・・・負けました。流石ですね。霞さん」

 

「ああ、ウチの勝ちやな。楽しかったで、桂枝」

 

そういって二人で笑いあった。この雰囲気が心地いい。

 

「堪能させてもらったで桂枝。あれがお前の武器なんやな。」

 

桂枝

「はい、あれが自分の専用武器「無形」です。」

 

普段は双刃剣の中心を持ち中距離で闘いつつも刃の裏側につけた取っ手をもつことによって遠距離戦を、分離させることによっての双剣による近距離戦をこなすことのできる対武将用の武器。

 

相手が例え徒手だとしても双刃剣の取っ手部分を横に持つことで手甲代わりにもできる。投げることは出来ないが打撃戦なら十二分に対応が可能だ。強いて言うなら弓ほどの長距離に対応してないことが欠点だろう。

 

刃を円状にそらせておいたので初手のように投げることも可能だがあくまでもあれは不意打ち用。はじかれるとどうにもならなくなるので普通はまず使わない。

 

「どこから攻撃がくるか、分離するのかそのままくるのか何をしてくるのかソレ全部に対応せんと一瞬で攻撃に飲まれてまう。まさにお前の計算高さと武器ならなんでもつかえるっちゅうのを組み合わせたええ武器やったで。」

 

霞さんの言うとおり、本来ならば対応を間違えさせ体制を崩した相手に一撃をあたえるのがこの武器の強みなのだ。

 

まぁ私の耐久力が上がっていない以上今回のように一発くらったら終わりだし相変わらず彼女達くらいの実力者になると膠着しすぎるとこっちの氣が持たない。

 

更に今回のように相手が見てから反応できるほどの速度を持っているとこちらの手がかなり限られてくるなど弱点もいくつかあるがまぁそれは私の限界だということだろう。

 

「これからはずっとあれ使うん?」

 

桂枝

「いえ、あれはあくまで切り札ですね。バレてからも使えるとはいえやはり本来ならば初見で確実に有利になれるものが多い武器です。普段はいつもどおり兵士用の剣を使いますよ。」

 

となると鎧も通常通りのものであるべきだろう。李典に依頼して内側に収納できるかつ鎧の形をそのままにして貰う必要があるな・・・それに鎧をつけたままでのとりまわしも完璧にしなければいけない・・・課題が多いな、まだまだ。

 

「そっか・・・あれつかう桂枝もかっこええと思うんやけどな。」

 

桂枝

「はい?」

 

「いや、なんでもあらへん。」

 

桂枝

「そうですか?ならいいんですが・・・」

 

聞こえていたが聞き流しておくことにしよう。どう反応したらいいかわからないし。

 

桂枝

「さて・・・そういえば負けたら一つ頼みを聞く約束でしたよね。何かありますか?」

 

正直な話わざわざこんな条件を付けなくとも大抵のことは頼んでもらえばやる。

 

なので普段頼まないようなことでも頼む気なのだろうかとちょっと気になっていたのだ。ちなみにこちらが勝った時の条件は適当につけた。

 

「そうやったそうやった。あのな・・・ウチ、桂枝と飲みたいんや。」

 

・・・なんだ。いつもどおりか。

 

桂枝

「分かりました。酒はいつもの店のもので大丈夫ですか?」

 

「ああいや、いつもどおりなんやけどいつも通りやなくて・・・」

 

桂枝

「・・・?」

 

「ほら、ウチと桂枝ってそれなりに付き合い長いやん?でも二人っきりで飲んだ数って5回もないやん。」

 

桂枝

「・・・おお、そういえばそうですね。」

 

あっちだとどこからか嗅ぎつけてきた呂布さんが、こっちだと仕事が忙しくて霞さんと二人だけで飲んだというのは確かに全然なかった。

 

「やろ?だからウチ、桂枝とゆっくり飲み明かしたいねん。できれば最高の料理と酒を用意した状態でな。・・・ええか?」

 

そう言って上目遣いで聞いてきた。

 

桂枝

「確認ですが・・・料理というのは私が準備「もちろん桂枝が作った最高の料理って意味やで。」・・・わかりました。時間を作って必ず実行しましょう。」

 

「ホンマに!?」

 

桂枝

「はい、霞さんのためならば喜んでやらせて頂きますよ。」

 

さて、最高の料理と酒・・・か。とにかくやってみるしかないな。霞さんの好みは知っているし大丈夫だろう。

 

「そっか、ウチのためなら、か・・・」

 

そういってフルフルと震える霞さん。そして・・・

 

 

 

「ああもうっ!ホンマにええ男やな桂枝はっ!」

 

 

 

おもいっきり抱きつかれた

 

 

 

桂枝

「むぎゅっ」

 

 

 

寝台に腰掛けて座っていた私のちょうど顔のところに胸があたって息ができなくなる。それじゃなくてもすごく顔が熱い

 

「強くて、賢くて、優しくて・・・ホンマにウチの理想そのまんまな男やで桂枝は!」

 

しかしそんな様子に気づかずに霞さんは更に拘束を強めてきた。

 

そろそろ意識がやばい・・・そんなことを思っていたら・・・

 

 

 

 

桂花

「桂枝、そろそろ起きた・・・って霞!アンタ何やってるのよ!」

 

 

 

 

 

姉が部屋に入ってきて強引に引き離した。

 

 

 

 

 

桂花

「前もいったでしょう!桂枝にその脂肪の塊を押し付けるのは許さないって!」

 

姉が間に入り霞さんを威嚇する。しかしこちらは火が出てるんじゃないかと思うくらい熱い顔と息を整えるのに精一杯だ。

 

「なんやの桂花、ただ仲良くしとるだけやんか。」

 

桂花

「仲良くするのに抱きしめるなんて行動はいらないでしょ!ウチの弟が巨乳派になったらどうするつもり!?」

 

「ええやん。桂枝も男なんやしおっぱいの大きい娘が好きかて別に何の問題もないんやないの?」

 

桂花

「男の前に私の弟よっ!」

 

それから目の前で始まる騒動、ようやく息が落ち着いてきたところで気づいたもう一つの気配。

 

桂枝

「ふぅ・・・どうしたんだ?風」

 

私はいつの間にか接触するほど近くにいた風にむかって話しかけた。

 

「おや、気づいていないと思ったんですけどねー。」

 

桂枝

「悪いな、正直言うと気づいたのはついさっきなんだ。姉貴と一緒に来たのか?」

 

「はいー。まぁ先ほどの桂枝さんの様子から声を聞くまで桂花ちゃんにも気付いていなかったでしょうし別に気にしてませんよー。」

 

・・・本当にそうなのか?なにやら機嫌が悪そうに見えるんだけど。

 

「ところで桂枝さん。先程お顔が真っ赤でしたけど・・・桂枝さんは胸が大きいほうが好みですか?」

 

桂枝

「・・・大きくないとダメとかそういうのはないかな。」

 

確かに真っ赤になったことは認めよう。だが決して胸だけが理由であそこまで赤くなりはしない。

 

風はしばらくこちらをジーっと見上げてきた。ここで目をそらすとなにか失礼な気がしたのでまっすぐに見つめ返す。

 

「・・・本当ですか?」

 

桂枝

「ああ、本当に。」

 

「じゃあ・・・」

 

そういいつつ風は寝台の上に立ち上がり・・・

 

「えいっ」

 

桂枝

「っ!?」

 

 

真正面から顔を抱えるように抱きついてきた。

 

桂花・霞

「「あーっ!」」

 

姉貴達が叫んでいるが正直それどころではない。

 

先程言った。胸を押し付けられただけであんなに顔を赤くすることはないと。

 

これでもすこしは医術を学んだのだ。女性、男性問わずにさまざまな人間の体を見てきたし触れてきた。女性の診察をする度に顔を赤くする医者が役に立つはずがない。

 

この医術を学ぶ過程において人の気の流れを感じることができるようになった。そして触れるほどの距離にいれば相手の強い感情ならば少しは分かるようになっている。

 

そう、私が霞さん相手に顔を赤くしていた大部分の理由はそこにある。今抱きついている風、そして先ほどの霞さんから感じるその強烈な気は・・・

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー純粋な好意だ。

 

 

 

 

 

 

桂枝

「・・・離れてくれるか?その・・・なんだ、気恥ずかしい。」

 

親愛ともまた違う好意の氣これが恋愛感情と呼ばれるものなのかはわからないが私のことをすごくよく思ってくれているのは伝わってくる。

 

流石にそんなものを感じ取って平静でいつづけられるほど私も達観していない。

 

というか家族以外の人間からここまで純粋な好意を受け取ることに慣れていないのでどうすればいいか全くわからない。

 

「どれどれ・・・おぉ。なるほど。確かに胸だけじゃないようですねー。」

 

一度離れて私の顔が赤くなっているのを確認した風は心なし嬉しそうに笑った。

 

「風でも顔を赤くしとる・・・これは油断できひんなぁ。」

 

「ふふっ。どうやら霞ちゃんだけに独占させることはなさそうですねー。」

 

桂花

「桂枝っ!アンタをそんなふうに育てた覚えはないわよっ!」

 

桂枝

「ちょっと姉貴、話を聞いてほしいんだけど・・・」

 

桂花

「問答無用!正座しなさい!だいたいアンタはいつからそんな・・・」

 

そう言って始まる姉の説教。

 

説教をする姉と聞く私。その横で楽しそうに話を霞さんと風。

 

 

 

 

こうしてその日の夜は騒がしく過ぎていくのだった・・・

 

要するにウブだということです。どこかの種馬と違って彼は好かれることに慣れてないんです。

 

また書き溜めが0になったので数日空くと思いますがご了承ください。

 

ご意見・ご感想お待ちしております。


 
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