No.474355

探究心に対する道しるべの話。

岡保佐優さん

魔女の娘さんは登場しませんが、一応同シリーズです。男の子と星の語らいです。

2012-08-23 20:30:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:391   閲覧ユーザー数:390

 

「この別れ道をどちらに進むと、家につくのかな」

 

男の子が夜空に座る星たちに尋ねました。

 

星はいとも簡単そうに答えます。

「どちらでも同じさ

 ただ早くつくか遅くつくか、色んなものを少しだけ見るか沢山見るか、

 違うのはそうした事だよ」

 

「そんなら僕は色んなもんが見たいね

 人間せっかちじゃ良くないさ」

 

「そうとも、そうとも

 人生長かろうが短かろうが、醍醐味というものはそうは変わりはしないからね

 ねえ、しかしねえ君

 多くを見るのはそれだけ、心や身体が傷む事にだってなりかねないよ

 君はそれでも、いずれきっと家へ帰らなくてはならないよ」

星は男の子に忠告しました。

星は、そんな人を沢山見てきたのだよ、世界というものを見知るうちに、

或いは絶望したり或いは享楽に溺れたそんな人を沢山見てきたのだよ、

と念を押します。

しかし男の子の方は少しも臆病になりません。

 

「ええ、星たち

 見たものがどうであれ、僕ならきっと家に帰るさ

 それに僕はもうすぐ成人なんだから、立派にやれるとも」

 

 

そういう訳で男の子は星が教えてくれた、色々なものを見て回れる、

つまり遠回りする方の道を進みましたが、とうとう家に帰る事はなかったそうです。

 

一部始終を見ていた星は、残念な風にして相変わらず夜空に座っておりました。

「多くを得るか少しで満足するかなんて、

 差し当たってどちらでも構わないのだよ

 大切なのは無事でいる事さ

 しかしねえ君、君の尊いいのちが何かを学ぶために絶えたのなら、

 それは何より悲劇で、また立派だったのだろうね」

「そうとも、君は立派だったのだよ」

 

 

星たちが口々に話し合っていると、

すうっと新しい星がひとつ生まれました。

 

 

 

 


 
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