No.470821

おや?五周目の一刀君の様子が……13

ふぉんさん

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2012-08-16 02:17:02 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:13147   閲覧ユーザー数:10683

張飛を捕らえた翌日から籠城戦が始まり、十数日がたった。今のところ、連合軍の昼夜問わずの猛攻を防げている。

しかし、いくら時間毎に相対する軍を決め敵に当たるとしても、総兵力の差故か、将や兵からは疲労が見てとれるようになった。

賈詡や張遼はたまに欠伸を噛み締める程度だが、呂布や陳宮は軍義中である今も眠たそうに目を擦り睡魔に抗っている。

因みに俺は至って普通だ。銀華が何故か元気なこともあり、副官である俺の負担が軽いのである。

 

「不味いことになったわ」

 

そんな何処か締まらない軍義の中、賈詡が苦い顔で話を切り出した。

曰く、兵糧不足とのこと。

反董卓連合以前から諸侯からの妨害を受け、戦前までに満足に溜める事が出来なかったのだ。

まだ今日明日で無くなる程ではないが、このままでは確実に兵糧が切れ、敗北は必死。

 

董卓軍の重鎮総出で思案するが名案は出ず、そうこうしているうちに敵襲を知らせる伝令がやって来た。

 

「向こうはこっちに考える時間も与えんつもりやなぁ」

 

愚痴をもらし、張遼は溜め息をつく。

結局何の成果も無く、軍義は終了した。

「賈詡」

 

「何よ」

 

視線を変えず。余裕の無い表情で返事をされる。

よほど追い詰められているようだな。

 

「董卓を救いたいか?」

 

「ッ!当たり前じゃない!でも、どうすればいいか私には……」

 

激昂し、怒りと悔しさを露にさせる。

その根元は相手である連合であり、この状況を打破する策が考え付けない自分自身だろう。

俯き再び思案に戻ろうとする賈詡に、救いの手をさしのべる。

 

「俺に考えがある」

 

ハッと顔をあげ、期待の籠る視線を俺に向ける。

 

「成功すれば、董卓はこの戦を必ず生き延びるだろうな」

 

「なっ!?そんな策あるわけ……」

 

「聞くか聞かないかは賈詡の勝手だが、このままだと連合に負け董卓は死ぬしか無いだろうなぁ」

 

自分でもわかるほど意地の悪い笑みを浮かべ煽る。

 

「……聞かせてちょうだい」

 

拳を震わせながらキッと俺を睨み答える。

食いついたな。

 

「おいおい。ただで教えるわけ無いだろう?かの名軍師賈文和様ですら思い浮かばなかった名案だぞ」

 

一瞬怒りに顔を朱に染めるが、煽られていると分かったのだろう。

自嘲気味に息を吐き口を開く。

 

「生憎だけど、うちの軍庫に大したものはないわよ」

 

正規の方法で兵糧を買えないのであれば、裏を頼る他無い。

大金を支払い、なけなしの兵糧を手に入れていたとの事。

しかし俺には全く関係ない。俺が望む対価は目の前にあるんだからなぁ。

 

「何、金なんていらん。賈詡が俺の女になればそれでいい 」

 

言ったと同時に頬に衝撃が走る。

 

「大した下種ね。聞かなかったことにして上げるから、さっさと自分の持ち場に戻りなさい」

 

もう言うことはないと背を向ける賈詡。

俺は叩かれた頬を撫でながら、小さく呟いた。

 

「さて、いつまで持つかねぇ」

 

計画は既に進んでいる。

賈詡が俺を頼ろうが頼るまいが董卓は救われるのだが……

ま、結果は見えてるな。

数日後。とうとう兵糧の底が見え、尚連合軍の熾烈な攻城は続き、もって後三日位かと自室で心算していると、突然扉が開かれた。

そこに立つのは、悔しそうに唇を噛み締め此方を睨む緑髪の少女。

俺はつり上がる口角を隠さず、少女を部屋の中へ招き入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳なのだ」

 

 

連合軍駐屯地劉備軍天幕。

敵軍に捕らわれた張飛がひょっこり帰ってきたため、劉備軍重鎮が集まり話を聞いていた。

曰く、董卓軍が行っていると言われる暴政は誤りであり、戦前の洛陽は平和そのものであったとのこと。董卓は権力争いに巻き込まれた被害者の一人であること。

その話を聞き劉備や関羽は驚き、軍師である諸葛亮と鳳統は目を伏せた。

 

「そんな……なら私たちは……」

 

顔を青ざめさせ嘆く劉備に、今まで黙っていた趙雲が口を開く。

 

「ふむ。桃香様の信念とは正反対の事をしていたわけですな」

 

「星!貴様ぁ!!」

 

趙雲の言に激昂する関羽。

やれやれと鼻白み続ける。

 

「自分で情報の真偽も確かめずにいるからこうなるのですよ。もっとも、我が軍師達はとっくに気付いていたでしょうが」

 

「なっ!」

 

関羽が目を向けると、軍師二人は潤んだ瞳を上げ言った。

 

「申し訳ありません桃香様!桃香様の理想は重々理解していましたが、まだ小さな私達の軍には名声が必要不可欠なんです……」

 

「桃香様の理想を叶える為にも、この事は二人で黙っておいたんでしゅ……」

 

下瞼に涙を溜めながらの謝罪に関羽もたじろぐが、尚も食ってかかろうと口を開いた所で劉備が待ったをかけた。

 

「待って愛紗ちゃん。二人は私達の事を思って黙っててくれてたんだから、攻めちゃだめだよ」

 

「ですが……」

 

「そもそも、星ちゃんの言う通り私がちゃんと自分で知ろうとしなかったのがいけないの。だから、ごめんなさい」

 

軍師二人に頭を下げる劉備を、回りが必死に止めにはいる。

 

「桃香様!主がその様に簡単に頭を下げては示しが……」

 

「ううん。これは必要な事だよ。星ちゃんもありがとう。私の過ちを叱ってくれて」

 

(何と。主のいない桃香様は何処か仕えるに物足りないと思っていたが……)

 

一刀のいない劉備を、趙雲は自分が厳しく当たり育てようと思っていた。

しかし、劉備の言葉に考えを改め始める。

 

「……いえ、私こそ過ぎた事を。いかなる処罰も受けましょう」

 

「処罰なんてしないよ。これで反省はおしまい。どんなに悲しんだって戦の前には戻れないんだから、今から私達ができることをやらないと」

 

真剣な顔つきで洛陽を見つめる劉備。

 

「私は、董卓さんを救いたい」

「ふふふ」

 

先の会議。

あの様な凛々しい桃香様は、前の記憶を辿っても滅多に無いだろう。

今の桃香様は前には無い強さがある。

時代を繰り返したという不可解な記憶が原因なのだろうか。

しかしこの記憶が桃香様にもあるとは限らない。

まぁ、この事については考えても埒が明かないので置いておこう。

 

「……主」

 

鈴々を負かしたという華雄隊副将北郷一刀。

その名を聞いたとき、不思議と納得がいった。

月達に課せられる汚名。それをどうにかしようとするが叶わず、ならばと自分が月達に味方をする。

やはり主は、私の知っている心優しき主のままなのですな。

加えて私や鈴々をも上回る個の武。

主よ、そんなに魅力的になられては参ってしまいますぞ。

 

「星ー!」

 

主を想い一人耽っていると、鈴々がこちらへ走って来た。

その瞳には何故か期待の意が読み取れる。

鈴々は私の前で立ち止まり、口を開いた。

 

「星はお兄ちゃんの事、覚えてるの?」

 

「なっ!鈴々、お主……」

 

予期せぬ不意打ちに驚くが、主と接触があったのなら不思議ではないか。

不安そうに私をみる鈴々へ、頷く。

すると、鈴々はほっとした様子で息を吐いた。

 

「よかったのだ。お兄ちゃんが、星は覚えてるって言ってたから……」

 

鈴々は緩んだ表情を引き締める。

 

「星にお兄ちゃんから伝言があるのだ」

 

主からの伝言。

私は期待に胸を膨らませながら話に耳を傾けた。

──────────────

────────

────

鈴々が主から言付かった内容。それは月と詠の身柄についてであった。

鈴々は多少言葉足らずだったが、要所は確りと伝わる様に話してくれたので問題は無かった。

月達の事だが、私が話した桃香様の人となりを考え、劉備軍へ反董卓連合の真意を伝える。知らなかったのなら桃香様は必ず月達を助けるために行動するだろうし、既に知っていたとしても、それを把握しながら反董卓連合に参加したのであれば、何かしら考えがあると思ったらしい。

 

方法としては、捕らえた鈴々に情報を与え解放する。この際、情報を信じさせるために鈴々の記憶を蘇らせたとのこと。他からしてみれば利の無い解放に見え怪しまれるため、鈴々自身が会話を盗み聞き隙をみて脱出した事になっている。

 

それからの策は、前の記憶と全く相違の無いものだった。

 

月達を董卓御付きの侍女に見立て、保護する。

私はそれの手助けをすればよいとのこと。

この策を聞き、疑念を抱いた。

私には桃香様に仕え天下三分の計を成した記憶を持つ。

しかしこの記憶が今私のいる世界に通用するかは確信が持てなかった。

この世界には、もう一人の主である桃香様はいないかもしれない、戦を共にした戦友達も、全員が存在するかどうか分からない。

常にその様な不安を持つが故、月達の事を聞いたときも、前の記憶とは異なるのかもしれないと確信を持てず進言しなかったのだ。

主は未だ我らとの記憶は蘇っていないという。それなのに主は話で聞いただけの、しかも人となりという極めて不確かなものを考慮している。

確かに、桃香様は前の記憶と違わぬお人であったが、もちろん違う可能性だってあったのだ。

根拠の無い主の考えに頭を巡らせるがわかるはずもなく、気が晴れず恨み事ばかりが浮かんでくる。

 

せっかく再会できたというのに、なぜ何も告げずに行ってしまわれたのですか。主が月を助けると言うのであれば、不安を払拭してでも着いていったというのに……

そもそも、伝言の内容が事務的なものしかないのが頂けない。久し振りなのだから、愛の囁きの一つや二つ伝えるべきである。

 

「はぁ」

 

女心に疎いのは、今も昔も変わらないということか。

とにかく主に再び会うには、この戦を終わらせる必要がある。

 

「早く会いとうございますぞ、主」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それを着けろ」

 

北郷は私を部屋に入れると、寝台に何か放り投げそう言った。

寝台に寄り見てみると、手枷と黒く細長い布。

意図が分かり睨み付ける。

 

「この……変態!」

 

私の罵倒にも、北郷は卑しい笑みを変えない。

 

「董卓を救いたいんだろう?」

 

その一言に唸ることしかできない。

こいつが本当に月を救える方法を知っているのか確証は無い。

だが、他に方法がないのだ。

このままでは敗戦は確実。屈辱を耐え抜く覚悟でここに来たが、その覚悟が早々に揺らいでしまう。

 

私は震える腕で服に手をかけるが、北郷が待ったをかけ、先に拘束具を着けろと言う。

拘束具を着ければ勿論服を脱ぐことはできない。裸になるには切るか破くか……つまりそういうことだろう。

本当に変態ね、こいつ。

※自分の小説は本当にころころ視点が変わるなぁと自己嫌悪。

読んでる人が理解しにくそうで申し訳ないです。

 

次の話は詠ちゃんとの濡れ場になります。

正直蛇足というか話の流れ的にいらないものなのでお気に入りユーザー限定にしたいと思います。


 
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