No.467111

空の蒼 ソラの紅

影月さん

本格的に何かを書きたいと思ったので、手掛けてみました。
良ければ読んでいって下さい。

2012-08-08 14:34:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:192   閲覧ユーザー数:192

 

人は生まれたときより孤独を知る

故に生まれたときにまず泣くのだ───

 

 

 

 

 

目を開けるとそこは青空の中だった。

いや、目を開けてるのかさえ怪しいと思えるほど脳裏に響く青、上下の感覚すらはっきりと分からない───どちらかといえば海にでもいるかのような───そこに漂っていた。それすらもハッキリとは分からないが。

 

ああ、これはあの夢だ───

 

靄がかかったような思考で現在(イマ)の状況について考えた。

だってここはとても静かで、それこそ自分の吐息すら聞こえないほどに。

現実(ソト)と隔絶された、自分独りしかいない、いっさいの柵のない空間(ユメ)。

 

いっそ醒めないでこのまま───

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・。」

紅い光が目蓋に突き刺さる。

気がつけば日も暮れかけ、ゆっくりと空が暗くなっていく。

ポケットにある携帯電話で時間を確認し、校舎の屋上で寝転がっていた身体を起こす。

「ちょっと寝すぎたか・・・。」

すでに生徒の声も疎らにしか聞こえない。

「んー帰るか。」

そう呟いて俺こと御月 司(みつき つかさ)は立ち上がり、屋上の扉へ向かった。

 

 

 

ここは某県千埴(センジキ)市。

春には杏の花を見に人が来たり、温泉街があるためにそれなりに観光名所があるが、広い田園や、大きな川、そして周囲を山に囲まれている非常に静かで小さな市である。

そんな田舎市のとある町にある矢代高校。そこの2年として通っている。

といっても、こうして寝ているのを見て分かるとおり、授業をさぼって遊びに行ったり寝ていたり挙句学業よりバイトを優先したりするので級友には不真面目な奴として知られているが。

 

「ちょっと腹減ったし、コンビニでも寄ってくか・・・。」

教室の荷物を取りに階段を下りていく。

屋上から自分の教室までは3年の教室の前を通り過ぎて、1,2年用の校舎まで向かわないといけない。

もっと近ければ寝やすいんだが、と校舎の構成に対して愚痴を考えながら3年1組の教室の前を通り過ぎようとして───

 

「あなた、ちょっといいかしら?」

 

と、声をかけられた。

 

「は?」

3年に知り合いなどいないので、つい変な声が出てしまった。

 

「こっちよ。教室の中。」

 

そう言われてそちらに目を向けて、

 

 

 

 

 

 

そのまま動けなくなった

 

 

 

 

 

それは夕陽に照らされてより紅く染まった、紅く紅く紅く、血のように紅い───

 

そこが教室であったことすら分からないほどに───

 

“アカ”に染まった空間に───

 

 

 

 

 

 

 

彼女は、存在していた

 

 

 

 

 

 

これが、彼女──月夜見 紅(つくよみ こう)───との出会いだった。


 
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