No.466201

乱世を歩む武人~第二十六話~

RINさん

VS袁紹。

2012-08-06 22:16:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4056   閲覧ユーザー数:3469

劉備さんたちを送り届けしばらくの時も過ぎ、こちらの準備も十二分に整ったところで袁紹達との戦を本格的に行う計画を進めていた。

 

華琳

「……敵軍が集結している?」

 

夏候淵

「はい。どうも袁紹と袁術が、官渡に兵を集中させているようなのです」

 

徐州を山分けした袁紹、袁術がそのまま曹魏を攻めてくるという話がすでにあった。

 

土地柄を考えて北から袁紹、南から袁術の挟み撃ちを考えていたのだが・・・どうやら一方向から同時に攻めてくるみたいだ。

 

「兵力は単純に倍になりますけど、指揮系統が整っていないと、ただ人が増えるだけになりますねー」

 

桂花

「うまく連携が取れなかった場合、互いの足を引っ張り合って、むしろ味方の不利になる事の方が多いわ。袁紹、袁術の仲を考えると連携はほぼ無いと見ていいでしょう。」

 

桂枝

「兵士は同じ金ぴかなんですがね・・・まぁ二面作戦にならないというのならばありがたいですね。」

 

季衣

「んーと・・?」

 

どうやら季衣にはいまいち伝わってない様子。まぁ北郷あたりが教えるだろうと高をくくっていたが

 

季衣

「春蘭さまー、どういう意味ですかー?」

 

夏侯惇さんに聞き始めた。

 

夏侯惇

「うむ、二面作戦をしないから楽になったんだ。」

 

・・・おかしい。さっきその言葉を理解できていないから彼女はアナタに聞いたと判断したんだが・・・

 

華琳

「・・・どう楽になったの?」

 

主人がニヤニヤしながら夏侯惇さんに聞く。アレはいいおもちゃを見つけた顔だ。

 

夏侯惇

「それは・・・その・・・」

 

夏侯惇さんは急にあたふたし始めた。・・・そうか、わかってなかったのか。

 

桂花

「桂枝、教えてあげなさい。」

 

姉の命とあれば仕方ないがそのまま教えても面白く無い。

 

桂枝

「はいはい・・・では夏侯惇さん。」

 

夏侯惇

「わ、私か!?」

 

桂枝

「はい、「魏武の大剣」こと夏侯元譲さん。あなたならば四半刻もあれば200人の敵くらい余裕ですよね?」

 

夏侯惇

「当然だ!その程度に四半刻もかからん!」

 

桂枝

「はい、ですが・・・その200人が100人ずつ十里先に別れていたらどうですか?」

 

夏侯惇

「それは・・・流石に無理だ。」

 

桂枝

「ですよね、コレがまとまっているのだから倒すのは容易になる。更に二面作戦でないのならその200人を倒すのに夏候淵さんの援護が受けられます。」

 

夏侯惇

「おおっ!秋蘭の援護があればもはや1000人だろうと敵ではない!」

 

桂枝

「ええ、ですから二面作戦でないことで我軍が有利になるのですよ。・・・おおよそわかったか?季衣」

 

季衣

「うん!要するに、ボクだったら一つの敵を流琉と一緒にやっつけられるってことだよね!」

 

桂枝

「そのとおりだ。夏侯惇将軍、季衣への教授のご協力。ありがとうございました。」

 

夏侯惇

「へっ?あ、ああ。季衣のためなら当然のことだ。」

 

ウンウンと頷く夏侯惇さん。まぁコレでいいだろう。

 

華琳

「あら・・・やるじゃない桂枝。そうね・・・これならあの件、任せても問題無いわね。」

 

なにやらやらされることが決定したっぽい。

 

華琳

「さて・・・話をもどすわ。兵を集結させて戦えるというなら、こちらに負ける要素は何もないわ。ただ、警戒するべき点が一つ」

 

夏候淵

「・・・袁術の客将の孫策の一党かと」

 

そういえば袁術の所の客将だったな・・・私が苦手な人という点を覗いてもあの軍は間違いなく脅威。

 

おそらく主人が討ち取られる可能性があるとすればあそこによる奇襲で本隊まで来られた時くらいだろう。

 

華琳

「そういうことね。だから袁術の主力には春蘭、あなたに当たってもらうわ。第二陣の全権を任せるから、孫策が出て来たらあなたの判断で行動なさい。季衣、流琉は春蘭の補佐に回って」

 

夏侯惇

「はっ!」

 

流琉・季衣

「「はい!」」

 

華琳

「袁紹に相対する第一陣は霞が務めなさい。補佐は必要かしら?」

 

「補佐なんていらんわ、うちには優秀な副将がいるさかいに」

 

桂枝

「・・・だ、そうです。」

 

桂花

「あ、桂枝は今回はこちらの補佐に回ってもらうわ。」

 

「ええーっ!なんでやねん!桂枝はうちの副将やで!?」

 

華琳

「季衣と流流を展開しちゃうからどうしても本陣の守りが薄くなっちゃうのよ。だからそれなりに使える子がほしいわけ。」

 

桂花

「私と秋蘭が兵を指揮するから桂枝は私達のまもりに専念して欲しいの、できるわね?」

 

桂枝

「・・・どうします?霞さん。」

 

「ハァーしゃあないわ、じゃあ・・・そのかわりに凪たち三人借りるで、一刀、ええか?」

 

一刀

「そりゃ、あの三人がいいって言うならいいけどさ・・・いいのか?華琳」

 

華琳

「構わないわ。なら一刀は秋蘭とともに本陣に詰めなさい。」

 

一刀

「了解。」

 

本陣確定か。まぁ軍師も増えたしかかる火の粉を払うくらいはしないとダメか。

 

桂花

「・・・そうだ。霞たちにはこちらの秘密兵器の講義を受けてもらうわよ。真桜が一緒だから、ちょうど良いわ」

 

・・・そういえば庭でなんかでかいもの作ってたな。城内で使うものなのかと聞いたら顔を青くして慌てて崩してたかけどあれがそうだったのかな?

 

「なんや?どんな兵器なん?」

 

桂花

「それは秘密よ。まだ教えるわけにはいかないもの。」

 

華琳

「楽しみにしてなさい。その秘密兵器の運用と護衛を第一陣に任せるわ。敵部隊には第二陣の春蘭たちが当たりなさい」

 

「ええーっ!そりゃないで華琳!桂枝も先陣も取られるんかい!」

 

夏侯惇

「はっ!・・・ふふっ、すまんな霞。華琳さまの命令ではどうしようもない」

 

「うわ~・・・完っ全に貧乏くじ引いたわ」

 

すっかり意気消沈してしまった・・・

 

桂枝

「まぁまぁ霞さん。顔良、文醜ともにあまり強いとは聞いていませんし、霞さんの求める戦いはどっちにしろありませんって。」

 

「うう・・・でもなー・・・ウチも戦いたいなー・・・」

 

拗ねる霞さん。しかたない・・・奥の手を使おう。

 

桂枝

「・・・はぁ、分かりました。戦が終わったら自分で良ければ全力で戦いますよ。それではダメですか?」

 

「え!?ホンマ!?惇ちゃんの時より本気じゃないとダメやで!?」

 

桂枝

「あれで全力だったんですよ・・・アレ以上ではない代わりに今度新しく覚えた武器を霞さん相手に初めて使います。それでどうでしょうか?」

 

そろそろ「無形」を実践でどの程度使えるのかを試さなくてはいけなったのでちょうどいいといえばちょうどいい。本当は楽進さんあたりに頼む予定だったがしかたない。

 

「新しい武器!うわー楽しみやなー。よっしゃわかった。今回はそれと戦後の宴会で飲む酒とつまみ我慢したる。」

 

 

桂枝

「・・・了解しました。」

 

コレでやる気になってくれるなら安いものかな。

 

 

華琳

「ふふっ、頼んだわよ霞。他の皆も戦の準備を整えなさい。相手はどうしようもない馬鹿だけれど、数だけは多い漢の名門袁一族よ。油断して勝てる相手でもないわ。これより我らは、大陸の全てを手に入れる!皆、その初めの一歩を勝利で飾りなさい。いいわね!」

 

 

魏一同

「「「はっ!」」」

 

 

 

 

さて・・・さっさと終わらせて仕込みの準備に入りたいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

袁紹

「おーっほっほっほっほ! おーっほっほっほ!」

 

桂枝

「・・・何?あのへんなの?」

 

何やら甲高い声で笑う変な女性がいる。その隣に二人の武人がいるが・・・ここからじゃよくわからない。何故なら・・・

 

桂花

「・・・信じられないかもしれないけどあの櫓の上にいる高笑いしている馬鹿が袁紹よ。」

 

そう、なにやら異様に高い櫓の上にいるからだ。

 

官渡にたどりついた私達がみたものは大量の兵士と巨大な櫓の列、そして高笑いする袁紹だった。

 

桂枝

「・・・まさか大将が落ちたら死ぬ気配がする場所にいるわけないでしょうって普通思うじゃん?」

 

桂花

「否定しないわ・・・でも覚えておきなさい。アレが袁紹よ。」

 

なるほど。軍議ででてくる問題が兵数に関するものばかりで将軍や袁紹については何も論じないわけだ。

 

桂枝

「しっかしあの櫓がちょっと厄介かな?燃やせないように対策されてるみたいだし。」

 

なにげに木が湿らせてあり燃え辛くなっている様子。しかも車輪がついており移動が可能になっている。・・・妙に凝ってるな。

 

桂花

「大丈夫よ、そのための秘密兵器ですもの。真桜たちにも準備をさせているし問題はないわ。」

 

なるほど・・・秘密兵器ってあれの対策機器だったのか。ということはすでに調査済みだったということか。

 

・・・まぁあんな馬鹿でかいもの大量に作ってたらそりゃわかるだろうが。

 

一刀

「あ、袁紹が前に出てきたぞ。」

 

華琳

「そうね・・・行ってくるから、何時でもせめられるように準備をしておきなさい。」

 

秋蘭

「はっ!」

 

さて・・・舌戦か。初めて見るしゆっくりと聞かせてもらおうかな。

 

袁紹

「既に勝ったも同然!華琳さん、高いところから失礼致しますわよ。おーっほっほっほっほ!」

 

・・・高いところにいると勝てるものなのだろうか。

 

華琳

「久しぶりね麗羽。随分毛並みが悪くなってるみたいだけど、もう年かしら?」

 

あれ?同じ私塾に行ってたと聞いているんだけど・・・気のせいだったかな。

 

袁紹

「誰が目尻に小じわの目立ってきたオボハンですってぇ!たかが宦官の孫風情がいい気になりすぎですわよ!」

 

いや、ここからじゃ小じわなんて見えないし。

 

華琳

「たかが宦官の孫の千ちょっとの手勢にこの間良いようにあしらわれていたのはどこのどなたかしら?」

 

千ちょっと?ああ・・・そういや劉備軍送ってる間に戦ったっていってたな。その時か。

 

袁紹

「グググ・・・いいですわ!ここであなたを叩き潰してこの櫓の上からクルクル髪を吊るしてあげますわ!もう二度と戻らないようにね!おーっほっほっほっほ!」

 

・・・まさか戦の最中ずっとあの上にいる気なのかあの人?倒れたらそのまま死ぬぞ?

 

華琳

「残念だけど、その前にアナタを打ち倒して河北四州と袁術の領地を丸ごと頂くことにするわ。だから・・・さっさと南皮を明け渡しなさい」

 

さて・・・そろそろ始まるかな?

 

袁紹

「本性を表しましたわね・・猪々子さん、斗詩さん!櫓を全面に!弓兵に一斉射撃をお命じなさいっ!」

 

櫓が動き出そうとする。敵の弓兵が弓をかまえ一斉射撃の準備に入る。

 

弓や部隊が矢を射かけてこようとしてきたその時・・・

 

華琳

「あら、残念。打ち方ならこちらのほうが・・・」

 

私が前を見ていて確認できたのは突如足元にかかる大きな影。そして

 

 

 

 

 

 

華琳

「ーーーーー少しはやかったみたいね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音とともに櫓に突き刺さる巨大な岩だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桂枝

「なるほど・・・投石機か。」

 

当然だが櫓は木でできている。そこに勢い良く岩石をぶつけたらどうなるか。

 

当然貫通するのである。その岩は密集地帯に放り込まれることで一発で3~4程度は壊すことができるのだ。

 

更に見た感じ発射→装填→照準までの空白時間があまりないようで面白いようにホイホイ飛んでいく。

 

桂枝

「さすがに秘密兵器というだけある。すごいなぁ李典と姉貴は」

 

桂花

「まぁあの子がいなければ完成しなかったことは事実よ。でもそれも私の発想あってこそなんだからね!」

 

桂枝

「はいはい、わかってるよ。」

 

 

そうこうまわりに30があったであろう櫓はすでになくなっていた。・・・あれ?袁紹が降りてる。いつの間に・・・

 

袁紹

「よくもやってくれましたわね・・・!この決着は正面からつけさせて頂きますわ!ぜーったいに泣かせてやるんだから覚えてらっしゃい!」

 

・・・そうか。もう策がないのか・・・なんだろう。兵数ではまだ負けているはずなのに負ける気がしなくなった。

 

華琳

「はいはい、自分が泣かないようにね。」

 

そう言ってこちらに帰ってくる主人。舌戦は終わったらしい。

 

桂花

「おかえりなさいませ。華琳さま。」

 

 

華琳

「桂花、真桜にはあとで褒美を与えてちょうだい。あの投石機は使えるわ。」

 

桂花

「御意」

 

そういって主人はすぅーっと大きく息を吸い込む

 

華琳

「皆、これが本番よ!向こうの数は圧倒的。けれど、向こうは連携も取れない、黄巾と同じ烏合の衆よ!」

 

戦場に響き渡る凛とした声色。

 

華琳

「血と涙に彩られたあの調練を思い出しなさい!あの団結、あの連携をもってすれば、この程度の相手に負ける理由などありはしない!それが大言壮語でないことは、この私が保証してあげましょう!」

 

掛け声に纏いし覇気は否応がなく味方すべての士気をあげる。

 

 

 

 

 

そしてーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏候淵

「総員!突撃!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏候淵さんの掛け声とともに曹魏と袁一族の戦いは幕を開けたのであった。

 

 

 


 
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