No.465696

異世界で生きる

神山夏彦さん

何かと不幸な人生をイケメンハーレムの友人のせいで送ってきた主人公、漣海人。しかも最後はその友人によって殺され、それを哀れんだ神達は力を与えて異世界へと飛ばしてくれた!!とにかく作者の好きなものを入れて書く小説です。技とか物とかそういう何でも出てくるような物やチートが苦手な方はご注意を。

2012-08-05 22:28:42 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:12223   閲覧ユーザー数:10997

 

十五話

 

 

あれから少し経ち、俺は無事に屋敷に戻っている。ロイドにはアルマの怪我について言及し、幾らか金が安くなり、いくつかアルマの欲しい物を用意させた。というのも、アルマはあの時腕の骨が折れてたんだよね。商品を傷つけるような~とか言ってたくせに、解析するとここ一週間の間の怪我ということがわかったんだ。それを言ったらロイドも知らなかったらしく、部下の勝手な行動ということがわかった。嘘もついていないというのは魔法で判別したので問題ない。その部下は文字通りクビにするらしい。

 

 

「向こうでも説明したが、君達には主にこの屋敷の管理を仕事としてもらう。掃除・洗濯・食事の準備といろいろあるが、まぁやるべきことはわかっているだろう。元執事や元メイドもいるみたいだし、分からない者は聞いてくれればいい。週休二日、ローテーションで組んでもらって、給与は小遣い程度で少ないが出そう。部屋も余っているから二階西区画を使ってくれ。それと原則として毎日風呂に入ることを義務づける。俺の奴隷は他の頭のおかしい貴族と違ってビシッとしててほしいからな。以上、質問は?」

 

 

「「「「……」」」」

 

 

屋敷のリビングで奴隷を集め、一気に説明する。するとみんな口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。未だ眠っているアルマを腕に抱いたまま説明しているからなんとも締まらないけど、これはあれか?一気に説明しすぎて聞き取れなかったか?

 

 

ちなみにみんな首にアサシンマークの彫られた首輪をつけている。成長や体格の変化によって伸縮するので苦しくないという優れものだ。

 

 

「どうした?聞き取れなかったか?」

 

 

「い、いえ!その、失礼ですがあまりにも我々に対して好条件すぎると思いまして……普通奴隷にはここまでの待遇はいたしません。ましてや週休ありで給与までとは、一般的にはありえないことなので……」

 

 

一歩前へ出て頭を下げながら言う代表の元執事オーク。なるほど、そういう事か。まぁ、この世界での一般ではありえないことだしな。元執事なら奴隷を主人が使っている所も何度も見たことがあるのだろう。信じられないという顔をしている。他の者も似たような顔だ。

 

 

「世間一般がどうであれ、うちではこうさせてもらう。正直ボロ布着せて汚れたままの奴隷を引き連れて偉そうするのは性に合わん。あと、あまりにも品がない。風呂に入ってもらうのもその一環で、常に清潔でいてもらう。清掃を頼むのにお前達が汚ければ意味がないし、俺が不愉快だ。あと給与と休暇はお前達のモチベーションを少しでも上げて、仕事への熱意に変えてほしいという俺からの気持ちだ」

 

 

「……わかりました。今回の主が心優しい方でよかった。それは我らの総意でもあります。しかし、我らは部屋と道具を支給されるわけですが、奴隷が財産を所持してもいいということですかな?」

 

 

相も変わらず顔をゆがめて聞いてくる元執事オーク。確かにこの世界じゃおかしいことなんだろうけど、正直しつこい。腹が減ったし、なによりこいつらまだ風呂に入ってないから臭いんだ。

 

 

アルマは抱きしめたときに癒しの副作用である程度改善しているけど、こいつらはまだだからな。かなり上から目線な良い方になるけど、今回だけは我慢してほしい。

 

 

「はぁ……ならこう言おうか?どうせならそこらの従者なんぞよりも良い奴らを選びたいと思ってお前らを買ったんだ。そして能力のある者には相応の報酬が必要だと思ってこれらの褒美をつけている。いわば俺の気分だ。奴隷に過度な褒美を与える不思議はあれど、不満はあるまい?」

 

 

「それは、そうですが……」

 

 

「ならそのまま俺の気分が変わらないようにお前達には働いてもらう。まぁ、普通に働いていれば普通に暮らせるんだ。そこは保障しよう。溜めた金は自分を買い戻したいというのも、趣味に使うのも好きにしていい。結婚や恋愛もいいだろう。もっとも、それは一言言ってもらうようになるけどな。以上。しっかり働くように」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

普通に働けば自分を買い戻せる。この一言で奴隷たちの目の色が変わった。まぁ当たり前だ。買い戻せるだけの給与が働いていれば出るなど有り得ないし、休暇もある。住み込みで働いているようなものだからな。

 

 

その後、こいつらを風呂に入れた。使い方がわからないようなので、アルマを洗うついでに教えながら俺も入る。服を脱いだ時に後ろから息をのむ感じがしたが、とりあえず無視して呆然としているアルマを抱えて中に入った。そのあとの女性陣の視線が俺の下半身に集中してたのは無視する。うちの奴隷はそういう事には使わない。無理矢理は嫌いなんだ。多分、きっと、めいびぃ……だから息子よ、耐えてくれ。

 

 

「はふぅ……」

 

 

「ははっ、気持ちいいか?」

 

 

「うん。お風呂なんて、いつぶりかな?」

 

 

顔をとろけさせながら湯船に浸かるアルマ達。他の奴隷達も体を洗った後に入れさせた。俺がいるせいで遠慮していたから無理矢理入れたが……うーむ、何度か洗ったらみんなめちゃくちゃ肌が綺麗になったな。どんだけ汚れてたんだよ。

 

 

「まぁ、これからは毎日入ってもらうんだ。嫌って言ってもな……さて、俺は上がるよ。アルマはどうする?」

 

 

「あ……アルマも、上がる」

 

 

「そうか。なら、お前たちはゆっくりしてくれ。今日一日は特に仕事もいい。食事位は作ってもらうが、それ以外はくつろいで部屋にいるなりなんなりしてくれ」

 

 

ざばぁ、と湯を無駄にしながら立ち上がって外に出て、タオルで体を拭った後、アルマの髪をドライヤーで乾かしていく。この子の髪はかなりサラサラしててさわり心地がとても良い。顔立ちも良いし、将来必ず美人になるな。今は隈のせいで顔色が悪そうに見えるが、すぐに良くなるだろう……あれ?俺どこのお父さん?

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂場から出ていった新たな主と奴隷の少女を見送った奴隷一同は、緊張を吐き出すように大きく息を吐いた。奴隷という立場上、主と同じ生活環境など普通はありえない。しかも同じ湯船に浸かるなど、聞いたこともない。ここに女性しかいなかったとしたら夜伽ということも考えられたが、主は一日の疲れを癒すように言うだけでそそくさと去ってしまった。

 

 

見た目は青年で、まだ20も越えていないぐらいだろうか。鋭い目つき以外はいたって普通の、何の変哲もない青年。だが奴隷市場に来る以上、最初に見たときはあの恰好も相まって、どこぞの貴族の子供かと思ったほどだ。この屋敷に来て、家紋を見て、より一層その考えは増した。仕事内容も、貴族の道楽と思っていた。

 

 

しかし、その考えはこの浴場に入った途端に崩れ去った。違うのだ、圧倒的に。そこら辺の貴族と同じに考えていた自分たちが恥ずかしく思えてくるほどに、違った。

 

 

あの引き締まった肉体は、素人目でもわかる程人間という短命で脆い種族からは考えられない見事な筋肉とバランスを兼ね備えていた。あれほどの身体を作り上げるのにどれだけの鍛錬を積んだのか想像もつかない。そして体中に刻まれた傷跡の数々。剣や槍で何度も貫かれ、何本もの矢をその身に受けたとわかる。そのたびに無理矢理治したのだろう。それ特有の変な塞がり方をしているが、その完成された肉体と相まって一種の美しさや神々しさを感じられた。あの年で一体どれだけの修羅場を潜り抜けてきたのだろうか。一生を戦士として生きると言われるオークが息をのむほどとなれば、相当なものだ。

 

 

女性陣はそのまま視線を下にずらしていったわけだが、仕方のないことだろう。奴隷故にもしかすると自分に使われるかもしれないモノだからだ。しかし、あくまで確認だ。確認だったわけだが……あの身体を見た後に同様な感じの見事なモノとくれば、話は違う。強く、逞しく、美しく、財力もあり、性格もおそらく大丈夫。顔も合格ラインだろうか……などなど思考時間は一秒にも満たない。死が身近にあるこの世界において、そうそう旅にも出れない女性にとってはいい伴侶と出会うのも一苦労なのだ。それ故になめまわすように主を見た彼女達は仕方がないこと、のはずだ。

 

 

閑話休題。

 

 

極めつけは、背中に刻まれた漆黒の刺青……と思われるもの。というのも、誰もかれもがそれを直視できていないからだ。直接目に入れられないとでも言おうか、本能的に体が拒否してしまう。あれを直接見ることはダメだと本能が告げる。動物に近い獣人など、毛を逆立てて震えていたほどだ。だが、皆にそれぞれ視界に入ったわずかな物がどんなものだったかを問えばそれぞれが違った答えを返してきた。

 

 

悪魔、死霊、死神、死体、惨殺現場、戦場、ドラゴン、化け物……他にも確実に嫌悪感や畏怖を抱かせるものばかり挙げられる。おかしなもので、それらの答えが集まったあとみんながみんなその話題から逃げるように話を切り替えた。暖かい風呂に入っていたのに全員顔が青かったのだから、この判断は正しいだろう。

 

 

「結局主は何者なのか……」

 

 

「冒険者という筋が一番でしょう。あの身体からして、それ以外とはあまり考えられないですし」

 

 

「まぁ、そうだろうな」

 

 

脱衣所にて、置かれていた衣類の質に驚きながら意見を交わしていく。共に風呂に入り、幾らか信頼関係の築けた奴隷達。今後のことなどを真面目に話している男性陣に、先程のことできゃいきゃい盛り上がっている女性陣とまるっきり違うものの、今は主直々に言い渡された休み時間だ。奴隷身分の者として声のトーンもしっかりと抑えているし、着替えも早い。

 

 

「貴族の道楽に付き合わされて死ぬだけかと思っていましたが……もしかしたら、僕達は本当に良い主に出会えたのかもしれませんよ?」

 

 

「そうかもしれんし、そうでないかもしれん。労働条件は破格だが、それも主の気分次第だ。良い環境に胡坐をかくわけにはいかん。元とはいえ専門の執事、メイドの誇りにかけて職務はきっちりとこなすぞ」

 

 

「「「「はい!」」」」

 

 

この中で一番若い人間の男性執事ジョニー・マクライアの言葉に真剣に答えたオークの元執事長ゴンゾ・グロ・ダルシュニは全員を見渡して言う。彼としては差別対象であるオークの自分や様々な種族を買って当たり前のように職務を伝えた時点である程度の信用は置いていた。しかし、能力の高い者を集めたと言っていることから全員のことはしっかりと把握していることは明白だ。そしてこの中に元執事はおれど、執事長をやったのが自分しかいないのを見ると、同じ役職に就く可能性は高い。

 

 

ならば、奴隷達を守るのは自分の役目である。そして主を見極め、本当に善人であるかを確かめるのも自分の仕事だ。本音はどうであれ、真実がわかるまでは特に自分がしっかりしていないといけない。あの共に輸送され、檻に入れられていた少女のことも心配だ。実は少女趣味だった、などであれば目も当てられない。奴隷とはいえ綺麗どころの集まった裸の女性陣を前に反応しなかったのを見るに、正直不安でしょうがない。

 

 

「あの娘は大丈夫だろうか……」

 

 

などと心配しながらリビングに戻った先で、赤黒い綺麗なゴスロリを着た少女に頬ずりする主を見て、余計に不安の増した彼であった。唯一安心できるのは、少女自身も笑顔でくすぐったそうに受け入れていることだろうか。

執事長にロリコン疑惑をかけられる主人公!そして主の貞操を狙うメイド達!主人公は襲われてしまうのか!逆に襲ってしまうのか!はたまたロリコンに目覚めてしまうのか!こうご期待!

 

 

 

いきおいで『!』連発。

 

奴隷であってもファンタジーの女性ってそういう事もしっかりと考えてると思うんですよね。特にメイドとかだと。

 

 

あと、ようやく出てきましたハデス印の背中の刺青。神様パワー満載のために指定された闇の眷属以外は直視できません。眷属もひざまずきます。ちなみに主人公は未だこの刺青を見ていません。というか忘れかけてます。

 

 

これにてにじふぁん掲載分は終了。8/5現在でいきおいトリップの方はまだ載せていませんが、今後載せていくつもりです。よろしければそちらもどうぞ。

 

 
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