No.461940

魔法幽霊ソウルフル田中 ~魔法少年? 初めから死んでます。~ この小説の主人公は田中ですよ(切実)な23話

すみません! 21話を手違いで2回投稿してしまいました!
(今気づいた、そして削除の仕方分からないOTL)

今回はようやくフェイトと邂逅、若干強いなのは、そして主人公空気。

2012-07-29 20:10:23 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1023   閲覧ユーザー数:987

ジュエルシード発動地点から、少しだけ離れた場所。

 

「さてと……、今回の実験は見てるだけだったな」

 

「『計画』の最終確認デス。余計な手出しはしてはいけないのデス」

 

「けどやることないから、暇じゃねぇ」

 

「まあ都市伝説もいるみたいだしぃ、下手に動いたら私消されちゃうしぃ」

 

「それに俺は9年間も待ってるんだ……! 今更待たされても苦じゃあねぇ」

 

「焦らず着実に進めましょう。多少原作と相違点がありますが、『まるで問題ない』ですから」

 

「喋ってたら早速きましたねえー、あの幽霊くんー」

 

闇は待つ。

魔法少女も、幽霊も、都市伝説も、全てを嘲笑いながら。

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、あのカオスな月村邸から飛んで逃げた俺は、真っ直ぐ森の中を突き抜ける。

行き先は、そう遠くない距離にあるジュエルシードである。

 

ジュエルシードを見に行くというのも、単なる逃げる口実ではなく割と真面目にイレギュラーが発生しないか監視するためだ。

 

俺は今回、なのはちゃんとフェイトちゃんが戦うことに関しては観戦を決め込むつもりである、理由は興味が半分、そして彼女たちの戦い方を参考にしてみたら俺も少しはまともに戦えるんじゃないかというのがもう半分の理由。

 

……オ○キュームがでた時は肝が縮みあがったけどさ。

 

「っと、いけない。一応戦う準備をしないと」

 

俺は飛びながら、両手に人魂を作り出す。

森の木にぶつけないように直線飛行をやめて、辺りを警戒しながらくねくねと飛ぶ。

 

 

 

花子さんのおかげで、イレギュラーの正体は悪霊ということは分かっている。

恐らく、一番初めの暴走体も『元は悪霊』で、だから俺に触れることができたのだろう。

 

 

まあ、問題なのはそこじゃなくて相手が『ジュエルシードの力を借りる前の悪霊』なら俺でもどうにかできるという点。

 

 

『お前じゃ弱すぎるだろ』と思った人達、怒らないから手を挙げなさい。

地平線まで人魂でぶっ飛ばしてあげます。

 

要するに、倒さなくてもいいから遠ざけるということ。

これならカンタンだ。

 

「あったあった。石ころみたいに転がってるから目立つなぁ……」

 

地面にキラリと光るジュエルシードを発見。

無造作にポンと置いてあった、普通の宝石だったらネコババしちゃうかもしれない。

 

 

「ミイラ取りがミイラになるわけにはいかないけどな。さて、何か変な奴はいないか……」

 

 

俺はジュエルシードの周りをキョロキョロ見渡したり、上空から見下ろしたりして悪霊らしき奴がいないか警戒する。

 

 

ガサガサッ。

 

 

「!」

 

聞こえた! ジュエルシードのそばの草むらに、何かが近づく音が!

俺は直ちにジュエルシードの真上まで移動し、人魂を構える。

 

 

「来るならこい……! なのはちゃん達の邪魔はさせんぞ!」

 

草むらを睨みつけ決意を固める。

 

何秒か間をおいて、ついに音の主が姿を現した!

 

 

 

 

 

ガサガサ

 

「ニャア」

 

「………………」

 

猫ちゃんでした。

可愛らしい子猫が、俺の方を向いて一鳴きしている。

どうやら俺が見えているらしい、ワンちゃんといいティーといい海鳴の生物はやたら幽霊が見える気がする。

 

 

多分この子、ジュエルシードの発動者だ。

 

俺はあれだけ気合いを入れてたもんだから、悪霊じゃなくて安心するどころか恥ずかしくなってきた……。

とりあえず人魂をボシュウゥゥ……と消火する。

 

「いやまあ、良いことなんだけどさ。原作通りでよかったけど、なんだ、ただの猫か……」

 

「ナーォ」

 

お決まりの死亡フラグを一応たててみるが、なんか残念さが拭えない。

 

こう、格好良く俺が活躍する姿を見せたかった……。

 

 

「あ、そうだ。テケテケさんに連絡しないと」

 

 

そういえばそうだった、悪霊も現れないし、原作通りなら俺達幽霊の出番は無い。

テケテケさんには悪いけどラップ音で出番がなくなったことを伝えねば。

 

 

「しかし……慌ててすずかちゃん家を飛び出して来たからテケテケさんがどこにいるか……」

 

 

ああしまった、せめてテケテケさんに特定の位置にいてくれるように頼むべきだったぜ。

ラップ音は以前言った通り、どこでも音は伝えれるけどそこに相手がいるのかは分からないからなぁ。

 

 

 

「? ニャオ」

 

ポン、ピカーッ! ムクムクムクムク……。

 

「あ」

 

 

気付いたら、猫ちゃんがジュエルシードにお手してた、みるみるうちに巨大化していく。

 

別に原作通りだからいいけど、いいんだけど……。

 

 

 

 

じいーっ。

 

「ちょ、猫ちゃん?」

 

「ニャアアアオ」

 

 

 

その、ね。

俺と猫ちゃんの大きさの比がちょうど『ト○とジ○リー』にピッタリかなー……と……。

 

 

「ニャッ!」シュッ

 

「どうあがいても死亡フラグ回収かよプげらッ!?」

 

 

嗚呼、そういえば『幽霊が認識できれば普通にダメージを与えれる』って花子さんいってたなぁ……。

ぷにぷにの肉球が痛気持ちいいぜ。

 

 

 

 

 

 

 

「……何がしたいんですかね彼」

 

「肉球が気持ちいいのは同意するんじゃけど」

 

「あんなサイズの猫パンチまともに喰らっちゃってるしぃ」

 

「10メートルは吹っ飛んでるデス」

 

「だけど笑顔なのが気味悪りぃな……」

 

「むしろ自分から当たりにいってるフシがあるよおー」

 

「まあ……、世の中にはいろんな奴がいるということで。とりあえず観察を続けるか」

 

 

 

 

 

 

所変わって、月村邸。

そこには、突然のオ○キューム出現に驚いて思わず包丁を構えてしまったテケテケと、刃物を見て危険だと判断した人の事を言えない恭也の無益な争いが始まっていた。

 

部屋中に包丁が突き刺さり、斬撃のあとが床や壁のあちこちに刻まれている。

 

「いいねぇ恭也くん! 強い男の子はわたしだぁいすきだよ!」

 

「っぐう! お、重いッ! なんて力だ!?」

 

ガキンガキンガキンガキン! と刃物が激しくぶつかり合う音が響き渡る。

テケテケの包丁二刀流を恭也は刀で捌いているのだ。

 

一見、刀と包丁ではリーチが違いすぎて不利に見える。

だが実際は恭也が圧倒的な手数に押されていた。

そう、いくらリーチが違っていたとしても『懐に入ってしまえば意味がない』。

 

更に言えば、彼女は『テケテケ』つまり『普段から両腕を使って高速で移動する』のだ、腕力なら常人の数倍はある。

 

「「「「ニャア~!?」」」」

 

「ほら猫ちゃん! 早く逃げてー!」

 

 

「何故こんなことに……」

 

ファリンとノエルがバトルに巻き込まないように部屋の猫達を外へ避難させる。

 

ちなみに、テケテケは初めこそオ○キュームを狙っていたのだが、恭也の実力を見るや否や戦闘狂の血が騒ぎ大☆暴☆走してしまっていた。

正体がばれないようトコトコと合体したまま戦ってるあたり本気では無いようだが。

 

 

ヒョイッ

 

 

「ニャアッ!? ニャー……! ニャニャニャオォッ!」(しまった!? おのれフェレットめぇ……! せいぜい少しだけ生き長らえたことを喜ぶがいい!)

 

「キュ~……」

 

「大丈夫ユーノくん?」

 

ユーノを追いかけ回していた白猫もあえなく避難、やっと助かったユーノはグッタリ気味である。しかし、休んでいる暇は無かった。

 

 

「「ッ!」」

 

(ユーノ君!)

 

(うん、ジュエルシードだ! それもかなり近い!)

 

 

背中に走る『嫌な予感』よりによってこのタイミングでのジュエルシード発動である。

お互いに念話をして、確認をする。

 

本来なら一刻も早く現場へ駆けつけなければならないのだが、しかしここで一つの問題が発生した。

 

 

 

(ど、どうしようユーノくん。さすがにこの状況をほったらかしにはできないよ……)

 

 

 

 

「アハハハハ……! 正直いって止め時が見つからないんだけど、わたしも楽しくなってきちゃったしちょっとあそぼーか!!!」

 

「何を言ってるんだ御手洗さん!? 正気に戻ったなら戦わなくとも、ぐあっ!」

 

 

 

 

というか現在進行形で発生している、無益かつ無駄に激しいバトルである。

 

 

(た……確かに、ていうかなのはのお兄さんも凄いよね……魔導師じゃないのにあの強さ)

 

(私は御手洗さんに驚いてる。霊媒師ってお化け倒すのにあんな身体能力いるんだ……)

 

 

※いりません。

 

 

「恭也! 御手洗さん、どうしてこんな酷いことを!?」

 

「忍、危ないから下がるんだ……!」

 

 

包丁による苛烈な斬撃にたまらず後ろへ後退する恭也、忍が駆け寄ろうとするも恭也自身がそれを止めた。

一方、テケテケは「ふっふっふっ……!」と悪い笑みを浮かべている。

この場に花子さんがいたなら「またなんか余計なことを思いついた」とあきれるであろう。

 

 

 

「どうしてかって? それはだね……、恭也くんの実力を計っているんだよ! この霊媒師である私が、恭也くんが本当になのはちゃんを幽霊から守り抜けるのかを調べているのさ!!!」

 

「な、なんだってーーー!!?」

 

 

もうオ〇キュームとか暴走体とか、すっぽり頭から抜け落ちていたテケテケであった。

恭也の全力が見たいがための大嘘をでっち上げている、しかも恭也も真に受けているし。

 

「そ、そういうことだったの……!?」

 

「さて恭也くん、君『も』まだ全力を出してないみたいだけど本当にそれで守れるのかな?」

 

「ッ! ……忍、『神速』を使うから本当に離れるんだ。御手洗さん、俺の正真正銘の『全力』を見せます……!」

 

 

 

(なんだろうユーノくん、私今お兄ちゃんがすっごくチョロく見えるの)

 

(全力で同意するよ。ていうかアレで二人とも全力出してないんじゃもっと凄いことに!?)

 

ユーノが焦るが、もう遅い。

二人の間に凄まじい闘気が立ち上ってゆく。

 

一方は完全なる人外、一方は完全に人間の限界を超えて、両者が激突した。

 

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

「『正宗』でお相手するよ! アハハハハ!!!」

 

 

 

「「巻き込まれるこっちの身にもなってください!!!」」

 

 

ファリンとノエル、魂の叫びである。

なにがヤバいって、斬撃がまるで某弾幕シューティングの如く飛び交ってるから月村邸が割とマジで倒壊するレベル。

 

(どどど、どうしようコレ絶対僕達じゃ止めれないよ!? ジュエルシードだって発動してるのにー!)

 

恭也とテケテケの姿は見えず、ただ激しい斬撃がぶつかり合う音しかしない。

最早完全に別次元の戦いだった、某週刊誌辺りに掲載されてそうな。

 

 

(とりあえずすずかちゃんとアリサちゃんを安全な場所に!?)

 

 

バッ、となのはは真っ先に戦闘とは無縁である友人たちの身の安全を心配して。

 

 

「きゃあっ!?」

 

「危ないっ! 安心してアリサちゃん、何が飛んで来ようともアリサちゃんには指一本触れさせないから」

 

「すずか……///」

 

 

 

「…………」

 

とてつもないスルー感をじっくり味わう。

飛んできた斬撃からアリサを守るために、すずかがアリサを押し倒している。

頬を染めるアリサ、あそこだけ白いユリの花が咲き誇る世界が出来上がっていた。

 

 

 

「恭也! がんばって!」

 

「悠長に応援してる場合じゃないですよ! 早く逃げましょう!!!」

 

「猫ちゃんの避難全員完了しましたー!」

 

「そんなっ……! 神速についてこれるだと!?」

 

「足腰には自信があるんだよねー!」

 

「……(『ソニード』トイウウゴキカタガアッテダナ……)」

 

 

辺りをぐるりと見渡して、なのはは思った。

 

 

 

あれ? 私が今いなくなっても誰も気づかない?

 

(いこうユーノくん、ジュエルシードの所へ)

 

(うえええっ!? ちょ、なのは!? 流石にこのまま行くのはマズイって)

 

(いいの、今なら私どんな潜入ミッションでもこなせる気がするから。そしてなんかもうめんどくさくなってきたの)

 

(本音が出てる!? いや気付かれないって意味じゃないからね!? 確かにバレたらまずいけども!)

 

 

こうして、高町なのはは海鳴の平和を守るため月村邸を飛び出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が巨大猫ちゃんのサンドバックにされ続けて5分後、なのはちゃん達が到着した。

 

 

「でっ、でっかい猫ちゃん?」

 

「ンニャー」シュッシュッ

 

「おー、なのはちゃん来たブフッ、ベヘラッ」

 

 

いかん、これ以上猫パンチされると変な性癖に目覚めてしまいそう……。

ああでも何か病みつきになる肉球。

 

ハッ!? いかんいかん、俺はなのはちゃんの邪魔にならないように猫ちゃんから離れた。

 

 

「ニャー……」

(´・ω・`)

 

ごめんね猫ちゃん、そんな顔しないでめちゃくちゃ罪悪感が湧き上がってくるからあぁぁぁ!!!

 

 

「か、かわいい……」

 

「多分ジュエルシードが純粋に『大きくなりたい』って願いを叶えたんだろうけど……」

 

 

二人は今までの暴走体から余りにもかけ離れた猫ちゃんを見て呆然としている。

まあ、俺も何で猫ちゃんの時だけジュエルシードが暴走しないのかは気になるけどね。

 

 

「うーん、ここまで大きいとすずかちゃんも大変だよね……。食費とか」

 

「なんか問題点がズレてる気がするけど、封印しようか」

 

〈セットアップ〉

 

そう言ってレイジングハートを構えるなのはちゃん。

頃合い的にもそろそろのはず……。

 

今から彼女は、運命と言える出会いをする事になるだろう。

 

だからなのはちゃん、今回ばかりは君を助けてあげることはできない(迷惑しかかけてない気がするが)。

 

痛い思いをさせてしまうかもしれないが、許して欲しい。

まあ、君は俺を知らないままだろうからこんな謝罪も無意味なんだろうけど。

 

 

 

バシュバシュバシュッ!!!

 

来た、黄色い閃光が。

 

 

「ニャアアッ!?」

 

「「ッ!?」」

 

突如飛来した黄色い魔法弾が、猫ちゃんの体に直撃する。

もちろん、なのはちゃんの撃ったものではない。

 

衝撃に倒れた猫ちゃんを見て驚愕する、二人は今の魔法弾を撃った人物を見るために後ろを振り向いて。

 

 

 

「ロストロギア、ジュエルシード発見。封印します」

 

黒い魔法少女が、電柱の上ににいた。

 

 

 

 

 

「誰っ!?」

 

「あれは、魔力の光!? 僕と同じ、異世界の住民……!?」

 

「………………」

 

突然現れた少女、フェイトは暴走体の目の前にいる白い少女とその使い魔らしきフェレットを無言で観察していた。

少女と自分との距離はかなり離れてはいるが、自分と同い年ぐらいの少女から感じる魔力には覚えがある。

 

(この子……、こないだの魔力反応と同じ、多分現地の魔導師だ)

 

 

ジュエルシードの気配を感じて来てみれば、まさかいきなり遭遇するとは思わなかった。

 

「ニー……」

 

「あなたは誰、どうしてこんなことするの!?」

 

ふらつきながら体を起こす暴走体を見て、白い少女は困惑した様子でフェイトに呼びかける。

 

白い少女、なのはの問いかけにフェイトは答えない。自分がやろうとしていることは、危険なロストロギアを強奪する違法行為そのものだからだ、余計な情報は与えるべきではないと判断する。

 

ましてや、ここで少女と戦うのが自分の目的ではない。

フェイトはなのはを無視して、自身のインテリジェントデバイス『バルディッシュ』を暴走体に向けた。

 

 

「バルディッシュ、フォトンランサー」

 

〈フォトンランサー、フルオートファイア〉

 

バシュバシュバシュバシュン!!! と先ほどとは比べ物にならないほどの数の閃光が暴走体に殺到する。

このままいけば暴走体に直撃、確実に意識を刈り取れるであろうその攻撃は。

 

 

ガガガガガガガガ!!!

 

「レイジングハート! お願い!」

 

〈プロテクション〉

 

桃色の光に全て防がれてしまった。

 

「――――ッ!」

 

暴走体の上で飛ぶなのはを見て、息をのむフェイト。

殺傷設定でも、本気で撃ったつもりもなかったのだが、手ごたえで感じた。

 

(生半可な攻撃は通らない……!)

 

固い。あまりにも強固な防壁である。

相手も全力を出したら、恐らくこっちも全力を出さねば破ることは不可能であろう。

 

フェイトはこのままなのはを無視してジュエルシードを手に入れることは難しいと考え、自身の得意とする接近戦に持ち込むべくなのはの近くの木の上に近づいた。

 

 

「まってくれ! なんで君はジュエルシードを手に入れようとしてるんだ!?」

 

「ごめんなさい、言っても意味がないから。頂いていきます」

 

〈サイズフォーム〉

 

ユーノの問いかけも無視して、ガシャン、とバルディッシュを変形させる。

金色に輝く魔力の刃が、死神のカマを形作っていた。

 

「話を聞いて、って言いたいけどそんな雰囲気じゃなさそうかも……」

 

なのはもレイジングハートを構え戦闘態勢に入る。

 

――――ヒュン

フェイトは高速でなのはに接近、狙うは不注意になりがちな『足元』――――!

 

〈マスター、上へ!〉

 

「うん!」

 

ブンッ!

 

「!」

 

間一髪、相手のデバイスの注意でこの攻撃も躱された。

機動力は分からないが、速度もそれなりにある。

 

空中に留まるなのはを見据え、続けてフェイトはバルディッシュを後ろに構えた。

 

(あの子がどんな戦闘スタイルでも関係ない、畳み掛けて終わらせる! 一刻も早く母さんにジュエルシードを届けるために!)

 

〈アークセイバー〉

 

フェイトはバルディッシュを思いっきり振りぬいた、すると金色の魔力刃がブーメランのように高速回転しなのはの所へ向かってゆく。

 

「速い、けどっ!」

 

〈プロテクション〉

 

すかさずプロテクションを張って対抗するなのは。

しかし、金色の魔力刃がそれに触れた瞬間――――

 

(――――甘い)

 

 

ドオオン!!! と『爆発』した。

自身の前方にしかプロテクションを張っていなかったからダメージは必至である。

 

「な、なのはっ!?」

 

(まだ、終わらせない!)

 

叫ぶユーノをよそに、追い打ちをかけるべくフェイトは一瞬でなのはの上へと飛び上がった。

そのまま急降下してバルディッシュを思いっきりなのはの首筋に振り下ろす、それで終了。

 

いまだ爆発の煙が残る中へフェイトは飛び込んでゆく。

 

「これで――――――――終わり!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「――――甘いの」

 

ガキンッ! とバルディッシュの刃は『なのはの』プロテクションに防がれた。

先ほどのアークセイバーのダメージが残っているようだが、片手にある杖はしっかりとフェイトに向けられ、桜色の魔力光が輝きを増している。

 

〈ディバイン・バスター〉

 

「ッ!!?」

 

 

ドゴォン! と光の柱が上空に撃ち出された、バリアを張る余裕がなかったフェイトは直撃し撃ちあげられる。

非殺傷設定の筈なのに意識が持っていかれそうになるほどの重い砲撃だった。

しかもそれで終わりではない。

 

「く、ああっ!?」

 

「まだまだ! ディバインシュートッ!」

 

〈ディバインシュート〉

 

何発もの桜色の魔力弾がレイジングハートから発射される。

狙いは追い打ち、砲撃との連続で当たれば今度こそ意識が持っていかれるだろう。

 

「ぐっ、遅いッ!」

 

しかしフェイトも黙ってはいない、すぐさま持ち前の高速起動で瞬時に立て直し、迫りくる魔法弾を全て躱して見せた。

 

「そんな、今のを躱すなんて……!」

 

 

なのはが驚いてはいるが、むしろ驚愕しているのはフェイトの方である。

今の砲撃によるダメージは無視できるようなものではなかった。

 

(いや、砲撃だけじゃない……! 私が追い打ちを仕掛けたとき、私は死角をついたはず、それにまだアークセイバーの煙が残っていたのに。あの子はまるで『見えているかのように』反応した……!?)

 

そのとおり、完全に意表を突いたと思ったからこそ砲撃をモロに喰らっているのだ。

 

もっとも、普段のフェイトならそれでもバリアを張ることが出来たはずなのだが、『ジュエルシードを早く母に届ける』と焦ってしまったがために注意が足らなかったことも大きな要因である。

 

 

 

 

 

「やった……! 『特訓』の成果がでてるよ!」

 

地上にいたユーノが歓声を上げた。

 

 

そう、『原作』と大きく離れたこの展開、実はユーノが早めに始めた特訓のおかげなのである。

 

前回の暴走体の件で都市伝説たちが敵か味方か本当に分からなくなってしまったものの、対策を練っておくのは悪いことではないとユーノはなのはに進言し、『対人用』の戦い方を練習させていたのだ。

 

その中でも特に力を入れたのが『不意打ち』『死角からの攻撃』である、理由は『おばけらしい戦い方への対策』。

 

なのはの天才的な空間把握能力と相まって、今やなのはは友人たちの些細なおどかしにも目つぶしで対応できる強い子になりました。

 

 

 

 

「私は高町なのは! お願いだから話を聞いて! それがだめなら名前だけでもっ!」

 

いまだに話し合いで解決しようとするなのは、しかしフェイトの顔にあるのは焦りである。

 

(ぐっ、どうしよう……。さっきの一撃が、まだ響いてる。)

 

そう、油断してうけた砲撃のダメージが深いのだ。

恐らく今からでも全力で戦えば、実力の差でフェイトは勝てると思ってはいるが、こちらもタダじゃ済まないだろう。

 

ジュエルシードは聞いたところによると21個あるらしい、ならばここで無理はせず逃げて回復し、別のジュエルシードに向けて備えた方が効率がいいのではないか、そんな考えが頭をよぎる。

 

(……だめ、そう簡単に逃がしてくれそうもない)

 

なのはも傷は負っているものの、フェイトほどではない。

スピードは自分が上だが、逃げる最中にあの砲撃に当たれば今度こそ終わりだ。

 

なにか、策は無いか。

フェイトは自分の使い魔であるアルフを置いてきたことを後悔しながら辺りを見渡して。

 

 

 

 

「ニ、ニャアァァ……」

 

思いついて、しまった。

自身が考えうる限りの、最悪の手段を。

 

 

(っ! 駄目だ、卑怯すぎる……で、でも)

 

 

慌てて考えを否定するが、母への思いがその判断を鈍らせてしまう。

もう一度、母に認められたいのではなかったのか、母の笑顔を、ぬくもりを取り戻したいのではないのか。

 

 

 

 

「…………」

 

〈デバイスフォーム〉

 

「? もしかして話してくれるの!?」

 

そして、フェイトは決断した。

バルディッシュを通常の形状に戻し、下に向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

『暴走体へと』

 

 

「サンダースマッシャーーーッ!!!」

 

〈サンダースマッシャー〉

 

ズドン! と強烈な閃光が動けない暴走体に向かっていく。

 

 

「あっ!? あぶないっ!!!」

 

〈マスター!?〉

 

『予想通り』、なのはは暴走体をかばうためにプロテクションも張らないまま閃光と暴走体の間に割り込んできた。

「ごめんね……」とフェイトは罪悪感に胸を痛めながら、逃げようとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャララララッ! と翡翠色のチェーンバインドにその身を捕えられるのと。

ズガン! と同じく翡翠色のバリアにサンダースマッシャーが止められる音を同時に聞いた。

 

 

「君は誰だとか、ジュエルシードは危険な物なんだとか、色々言いたいことはあったはずなんだけど」

 

「「えっ!?」」

 

フェイトも、そしてなのはさえも、声の主に驚いていた。

 

何故ならその声は、なのはにとっては聞き慣れたもので、フェイトにとっては気にもかけなかった声。

 

 

その声の主は唐草色の外套をまとった、『金髪碧眼の少年』だった。

 

 

 

 

 

「まず初めに言わせて貰うよ。『なのはを傷つけるな。体も、心も』」

 

「ユ、ユーノ、くん……? なの……?」

 

 

なのはの前に立つ、元の姿に戻ったユーノ。

魔法少年リリカルユーノ、始まりました。

 


 
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