No.460195

外史テイルズオブエクシリア 闇の魂を持つ者の旅路の記録 第20話

BLACKさん

この作品は別の人の影響で作った作品であり、作者(BLACK)のオリジナルキャラ「秋山総司郎」を第3主人公として、テイルズオブエクシリアの世界に来たらで書かれました。

秋山総司郎が今まで出てきた作品一覧(作品検索)。

http://www.tinami.com/search/list?keyword= %E7%A7%8B%E5%B1%B1%E7%B7%8F%E5%8F%B8%E9%83%8E&genrekey=1

続きを表示

2012-07-27 06:33:33 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1006   閲覧ユーザー数:988

第20話  語られる事実

 

 

 

 

 

秋山を襲おうとした空中戦艦の砲撃は周りを破壊していき、ジュード、アルヴィン、エリーゼ組、ミラ、ローエン、レイア組とはぐれてしまった。

そしてドロッセルのみ一人ではぐれてしまうという結果となった。

 

「う……う……」

 

ドロッセルは目を覚ますと、そこは洞窟だった。

 

「ここは……」

「よ」

 

ドロッセルの後ろには秋山がいた。

 

「秋山……さん?」

「本物だよ。死んでねえよ」

「……よかった……」

 

ドロッセルはほっと一息つく。

 

「でも、ここ寒いですね」

「それはそうだ。ここはファイザバードより北でカン・バルクに近い。

寒いのは当たり前だ」

「……エリーは? 他のみんなは?」

「この近くにいたのはお前だけだ」

「私だけって……秋山さんは……」

「俺はたまたまこちらの方に逃げてきて、お前を見つけた。それだけだ……」

「…………」

 

ドロッセルはどうも納得できなかった。

 

「あの、秋山さん」

「なんだ?」

「ジュードさんの真似になりますけど、それ、嘘ですよね?」

「なんでそう思った?」

「あの時の秋山さんの行動です。

あの時の秋山さんなら逃げる必要なんてないと思ったの。

それと、カン・バルクを脱出する時に、私に言った『忘れろ』って言う前の言葉……です」

「……ふ」

 

秋山は思わず笑った。

 

「忘れろと言ったんだけどな……」

「秋山さん……?」

 

自分も記憶消去されるのではとふと思ったドロッセル。

 

「もういい加減言うべきか。俺にしては随分人に黙っていたな」

「……? どういうこと?」

「俺は基本的に自分のことに関しては隠し事はせず人にばらすタイプなんだがな、今回はしなかった。

……が、限界でもあるな。お前にだけは俺のことと俺が隠していることの一部を教えよう」

 

秋山はドロッセルに自分が何者なのかを教えた。

自分がこの世界や空からやって来た兵士達とは全く別の世界からやって来た特殊な人間であること。

この世界が正史ではなく外史というまったく別の世界であることを……。

 

「…………」

 

ドロッセルはとても信じられないという顔をしている。

 

「信じられないだろうな。まあ誰だって最初はそうさ。

というより、その反応は普通だろうな」

「……でも本当なの? その世界だとお兄様が死ぬなんて……」

「本当だ。だから俺はクレインが矢で撃たれそうに時間停止をし、一時的に矢で撃たれても死なない体にし、矢も無害なものに変えた。

まあクレインが死ななかった後にお前がジュードやミラについて行く……と言うのは俺の予想外だった」

「そうだったのね……」

「まあしかし、こうやって俺のことを話せる相手がいるとやはり俺も楽だわ」

「……みんなには言わないの?」

「まだ言う時じゃないと思う。俺の言ったことは受け入れるだろうけど、それだと正史とは違って、この世界における根本的な問題の解決にもならない。

だからまだ言うべきじゃないんだ……」

「……それで秋山さんはどうするの?」

「全部が全部正史と同じにする気はないが大本の流れは同じにする。

だがこの後起こるジュードやミラの悲劇は阻止しようと思う。けれど阻止したところでその後どうなるかは俺にも分からない。

その時のフォローはお前がしてくれ」

「それってどういうことなの?」

 

秋山はドロッセルに今後自分が何をしようかを告げた。

 

「そんな……」

「……だからだ」

「けど、それだとミラが……」

「その時のフォローを頼むと言っているんだ」

「……秋山さんもミラみたいに使命があるんですね」

「いや、これは使命じゃない。俺の自分勝手さ。

俺が自分勝手な人間だってのは前に言っただろ」

「…………」

「さてと、そろそろ行くか。この洞窟の先はカン・バルクにあるザイラの森の教会に続く道がある」

 

秋山は立ち上がり、ドロッセルも立ち上がる。

 

「ドロッセル、少し悪いが皆と合流するまではお前の特訓も兼ねる。

いざとなった時は助けるが、基本的に俺の助力は無しだと思ってくれ」

「…わかったわ」

 

洞窟にいる魔物は秋山のたまにの助力もあって、ドロッセル一人で進んでいった。

そして出口へとたどり着く。

 

「この先?」

「そうだ」

 

二人は洞窟の出口の先に出る。

そこは雪景色に覆われているが、少し前には教会が見えた。

 

「あの教会ね」

「ああ、とりあえず洞窟にいるよりはいいだろ。行くぞ」

 

洞窟を抜け、森を進む。

二人は教会へとたどり着いた。

教会のさらに先にはカン・バルクの城が見えた。

 

「本当にカン・バルクの近くなんだ」

「秋山!」

「ドロッセル!」

 

後ろにはジュード達六人がいた。

 

「エリー!」

 

ドロッセルがエリーゼに抱きつく。

 

「よかった~」

「ところでそいつは?」

 

秋山が見知らぬ女性を見て、尋ねる。

 

「そう言えばまだ私も聞いていなかったな。私も初めて見る者だが……」

 

ミラもその女性を知らなかった。

 

「え?」

 

ジュードはてっきり知ってるものかと思ってとそんな声を出す。

 

「私はあなたの姉です」

「姉……? 私に姉などいないぞ」

「どういうこと、ミュゼ?」

 

ジュードはその女性、ミュゼの名を口にする。

 

「私も話をするのは初めてです。けれど、私たちは同時にこの世に生を受けた精霊であることは事実」

「ミュゼって精霊なの?」

 

ミラは感じてみる。

 

「確かに……精霊であることは間違いない」

「うふふ。そんなに警戒しないで。姉と偽ってあなたを騙す意味など精霊にはないでしょう。

だって、あなたはマクスウェルなのだから」

(確かに姉という意味では嘘は言っていない。だが、騙している部分は存在する)

 

秋山は知っていながら、黙る。

 

「……確かになんの得にもならないもんね」

「では、なぜ、ジュードの前に現れた?」

「うふふ、あなたの彼を思う強い感情が私を彼の元に召喚させたのよ」

「そんなこと……あるのでしょうか?」

「どうだろうか……確かに私も、夢で声を聞いたりはするが……」

 

すると教会の中からウィンガルが出てきた。

 

「ウィンガルさん!?」

「話はあとにしてもらおう」

 

するとカン・バルクの方から鐘が鳴り響く。

 

「情報どおりか……」

 

それからすぐにスピーカーのようなもので声が聞こえてくる。

 

『私はジランド。まずは、君たちの街に強引に進駐した非礼を詫びよう。だが、我々の目的は支配などではない!

これは大国間による最終戦争を回避するための、非常処置だ。諸君の生活と安全はアルクノアが責任をもって保障しよう!

我々と諸君の願いは、ひとつのはずだ! リーゼ・マクシアに永遠の平和を!!』

 

声が止んだ。

 

「ふざけた男だ。ジランド……。黒匣(ジン)などを使って人や精霊に害をなしながら!」

「……もう、あの者たちを討つしか道はないのではないかしら?」

「うむ」

「…………」

「でも、どうするんですか?」

「あいつら、めっちゃつよかったでしょ~?

あ、でも秋山君のあの壁と剣なら大丈夫だよね?」

「悪い。あれ、そんなに連発できる技じゃないんだ。

あの時はかなりやばいと思ってやったけど、まさかまだ続くとは思わなかった。

あれを使うにはかなりの時間がかかる。つまり今は使えないんだ」

「やくたたず~!」

「そう言うなって……。

これでも俺、結構頑張ったんだぞ」

「……アルヴィン。もう知ってること、全部話してよ」

 

ジュードは アルヴィンを見て言うが、アルヴィンは黙ったまま立ち上がる。

 

「アルヴィン!!」

 

アルヴィンの元に一匹の鳥がやって来る。

 

「ガイアスはヤツらに抗うのだろう?」

 

ウィンガルは何も喋らないが、わずかに笑みを浮かべ、教会に入っていった。

 

「誘っていますね……。わざと私たちの前に現れるとは」

「僕たちを試してるの?」

「罠……とか?」

「……行こうぜ。ケリつけるんだろ?」

 

アルヴィンの雰囲気が、先ほどと全く違っていた。

 

「何か……あったの?」

「もう裏切らない……約束する」

「……信じろと言うのか?」

「ジランドは許せねぇ。頼む……俺にジランドを殺せてくれ。

次にもし裏切ったら、迷わずお前の剣を俺に突き立ててくれてもいい。

だから、俺も一緒に行かせてくれ」

 

アルヴィンのその言葉にはどこか重みがあった。

 

「……俺だけでもヤツを殺る」

「……いいだろう」

 

ミラは承諾した。

 

「悪ぃ……サンキュな」

 

ミラは教会の方を見る。

 

「ガイアスたちの思惑も確認せねばな」

「うん」

 

ジュード達は教会に入る。

 

 

教会にはガイアスと四象刃(フォーヴ)の四人がいた。

 

「来たか」

「……結局その男を信じるというのか。意外と甘いな。マクスウェル」

 

ウィンガルがアルヴィンを見て言った。

 

「ジャオさん、無事だったんですね」

「おっきいおじさん、よかった~」

「そこの秋山に助けられての」

「秋山、お前がか?」

「俺の方が生存率高いだろうと思ってな……。

まあ、結果としてはいいだろ」

「……それでガイアス、私たちをここへ導いた狙いはなんだ?」

「我らはヤツらと雌雄を決すべく、立つ。お前たちが勝手にヤツらに挑むというならそれはそれでいい」

「だがお前には話してもらうぞ。お前がひた隠しにしてきた断界殻(シェル)のことをな…」

「断界殻(シェル)……?」

 

皆が何のことか分からないという顔をする中、ミュゼは高みの見物という顔をする。

それを秋山は見逃してなかった。

 

「今から二千年前……このリーゼ・マクシアは私の施した精霊術、断界殻(シェル)によって閉ざされた世界として生まれた」

「この世界が……ミラにつくられた世界?」

「びっくりー! 神様見たい!」

「すべては精霊と人間を守るためだった」

「閉ざされた、といったな。それでは断界殻(シェル)の外にはまだ世界が広がっているというのか?」

「うむ。その世界をエレンピオスという」

 

アルヴィン以外(実は他にもいたが)の面々がエレンピオスと聞いてざわつく。

 

「だが、クルスニクの槍について私は大きな思い違いをしてしまった。

やつらはナハティガルに兵器と伝え、謀り、断界殻(シェル)を打ち消す装置をつくっていたのだ」

「打ち消すだと……? それに何の意味がある?」

「わからない……断界殻(シェル)を打ち消し、エレンピオスにマナを還元する算段でもしていたか……」

「ちがう……」

 

アルヴィンが否定した。

 

「アルクノアはただ……帰りたかっただけだ。生まれ故郷のエレンピオスにな。

この世界に閉じ込められた二十年余り……そのためだけに動いてきた。

断界殻(シェル)をぶち破る方法を見つけるか断界殻(シェル)を消すか……」

「断界殻(シェル)を消すためには生み出した者を排除しなければならない」

「……アルクノアがミラの命を狙ったのはそのためだったんだね」

 

ミラは頷いた。

 

「解せんな……ジランド、何を企んでいる?」

「え、どういうことですか?」

「アルクノアの目的とジランドの行動はそぐわないものです」

「エレンピオスから軍を呼び寄せる必要なんかない。

リーゼ・マクシア統一……? 俺たちは……そんなこと望んじゃいない」

「ジランドは断界殻(シェル)がある今の世界のあり方を、何かに利用しようとしているのかもしれない」

 

ウィンガルの言葉を聞いて、アルヴィンは何かを思い出したかのように語る。

 

「そうか、異界炉計画だ……」

「え……?」

「あ? なんだ、それ?」

「通称、精霊燃料計画」

「燃料……?」

「まだ俺が向こうにいたガキの頃、従兄が話していたのを覚えてる。

黒匣(ジン)の燃料である精霊を捕まえるって話があるってな」

「……つまり、ジランドの狙いは精霊の囲い込みってワケ?」

「だけど……それおかしいよ。精霊だけなら、あんなウソつく必要ない。ジランドは……。

霊力野(ゲート)をもつ僕たちも一緒にリーゼ・マクシアに閉じ込めるつもりだよ」

「リーゼ・マクシアの民を資源にするつもりか。……バカげたことを」

「バカげたことを考えてるから俺たちに喧嘩を売って来たんだろうな」

「多分ジランドは海上にあるアルクノアの本拠地に戻ってる。

エレンピオス軍も来てるんだ。船で近づくにも厳しいぜ」

「では、カン・バルクに停泊している連中の空駆ける船を奪うのはどうかと」

「あの人、さらっとすごいこと言ってない?」

「ですが、それしか手はないでしょうね」

「よし! 明日決行する」

 

ガイアス達は裏口から去ろうとすると……。

 

「まって! ガイアス! 一緒に戦ってくれるんでしょ」

 

ジュードが呼び止めた。

 

「僕たちの目的は同じでしょ。だから……」

「冗談ではない」

「勘違いしてんじゃねーよ!」

「マクスウェルが勝手に断界殻(シェル)をつくりだし、我らをこの世界に閉じ込めている事実……これも知った以上は捨て置けん。

お前たちとはまた争うことになるかもしれぬ」

「そんな人たちとは必要以上に馴れ合えないわ」

「お前たちは勝手にやるがいい。が、我らの邪魔はするな」

「すまんのぅ。だがこれは我らだけでやるつもりだ」

 

ガイアスたちは去っていった。

 

「もー! なにあれー!」

「ヤツらも手が足りないのだろう。情報を共有させたのが何よりの証拠だ」

「ああ言いつつも、今は私たちをアテにしているのでしょうね」

「今は、な……」

「…………」

 

ミュゼのわずかな表情の変化を見逃さない秋山。

 

(問題はこいつだな。まだこいつは動かないだろうが、動くときが問題だ)

 

秋山がドロッセルの方を見る。

 

(その時は頼む)

 

秋山は目配りだけで伝える。

ドロッセルは頷いた。

ドロッセルは秋山からすべてではないが、事前にある程度聞かされているので、秋山の考えていることは分かっているつもりであった。

 

 

一同が休むことにしたその日の夜であった。

女性陣が眠っている部屋に一人、侵入者がいた。

アルヴィンであった。

アルヴィンはミラに銃を向けるが……。

 

「そうなると、お前を殺さなければならない約束なんだが?」

 

ミラは起きていた。

 

「死んだやつがどうやるんだよ」

「昼間、連絡があったな。どのような連絡だった?」

「関係あるわけ?」

「ジランドに裏切られたショックかとも思ったが、あのタイミングでは妙だ」

 

アルヴィンは観念したかのようにベッドに隅に座る。

 

「母親が死んだんだとよ」

「人はいずれ死んでいくものだ」

「おたくらしい慰めだ。

あーあ、母親は死んで、ジランドに裏切られるしよ……。どうなってんだよ、俺の人生」

「今でもエレンピオスに帰りたいのか?」

「それ以外、何が残ってるんだよ!」

「だが、私は死なない」

「なんだ、それ」

 

ミラは起き上がる。

 

「アルヴィン、この世界で生きてはもらえないだろうか」

「…………!」

「私はもちろん、ジュードや他のみんなもいるのだ。悪くはないだろう」

「……俺の素性を知ってて、そんなこと言うヤツなんて初めてだわ。

バカじゃねえの」

 

アルヴィンは再びミラに銃を向ける。

しかしミラの表情は全然変わらなかった。

アルヴィンはミラを撃たず、そのまま部屋を去る。

 

「…………」

 

アルヴィンは男性陣の寝ている部屋に戻った。

 

「アルヴィン、どこか行ってたの?」

 

ジュードが声をかけてきた。

 

「起こしたか」

「ううん、あんまり眠れなくて」

「……昼間さ、何かあったの?」

 

ジュードもミラと同じことを聞いてきた。

 

「なんだよ、急に」

 

同じことを聞かれたせいか、少し不機嫌になるアルヴィン。

 

「……ちょっと心配になって。アルヴィン、エレンピオスに今でも帰りたい?」

「…………っ」

 

またミラと同じことを聞かれたアルヴィンは少しイラついた。

 

「俺の心配なんてしてないで、自分の心配でもしろって」

「…………?」

 

ジュードはまさかミラと同じ質問しているとは思っていないので、アルヴィンがイラついている理由が分からない。

 

「ミラを守ってやりたいんだろ?」

「ううん……ちょっと違うかな。僕、勝たせてあげたいんだ。

それがミラの力になるってことなんじゃないかな」

「ふーん。で、ずっと一緒にいたいってか」

 

ジュードは思わず起き上がる。

 

「なっ、アルヴィ……何、言ってんのさ」

「ぜんぶ終わったら、一緒にいられる理由もなくなっちまうぞ」

「だよね…………」

「そういうのは、早く伝えないと誰かに先を越される。

運命なんて信じちゃいけないし、頼るなんて、もっての他だ」

「アルヴィンは大人なんだね……僕にもそう思える時がくるかな」

「お前は……俺の言ったこと信じてくれるんだな」

「アルヴィン……?」

「俺はもう寝る」

 

アルヴィンが寝るのでジュードも寝ようとするが、やはり寝付けなかった。

 

「…………」

 

 

ジュードが部屋から出て、教会の聖堂に行くと……。

 

「あ」

 

同じように部屋を出たミラとばったり会った。

 

「眠れないのか、ジュード」

「うん」

「私もだ」

 

二人へ椅子に座る。

 

「君は昼にした話について私に何も問わないんだな」

「え、うん。ミラのやってることは正しいこと……そう、正義だと思うから」

「正義か……。正義とは、見る者によって定義を変える。難しいものだ」

 

そこに教会の扉が開き、誰かが入ってくる。

 

「では、お前の正義とはなんだ?」

 

入ってきたのはガイアスだった。

 

「ふ。馴れ合わないのではないのか?」

「答えろマクスウェル」

「自らの胸の内にだけ秘めた、意志の力だ」

 

ジュードはそう言われて自分の胸の内を感じようとする。

 

「ふっ、俺も同じだ。

強き者は自らその意志で、その責を果たさなければならない。

それ故、俺は弱き者を守り、導いてやらなければならない」

 

ミラは首を横に振る。

 

「ガイアス。人の弱さとは力そのものではなく、心の弱さだ。

心弱き者は必ず生まれる。だが、それ自体は悪ではないだろう」

「では、弱き者が強くなれる時まで支えること。それが俺たちの義務だと考えよう」

「俺たち?」

「俺たちだけではない。すべての強き者たちがすべての弱き者を支える。

これであれば人の系譜の中でも生き続けるであろう、マクスウェル?」

「誰とそんな話をしたんだ?」

「秋山だ。あの男はお前の代弁として俺にそう話した」

「ふふふ、あの男の言ってることは少しずれているが、あながち間違いではないな」

 

ミラは思わず笑った。

 

「あの男に言ったが、俺が力を手にしたのなら、人の歴史は変わる。

だが、ジランドのような力を己のためにしか使えぬ者が台頭すれば、人は同じ過ちを繰り返す」

「そうか……。だが、私が答えを出してやれるものではない。お前の正義はお前だけのもの。私など関係ない」

「ふふ……そのとおりだな」

「ガイアスってなんだかミラみたい」

「俺がマクスウェルだと?」

「ミラの言葉ってどれだけ無茶なことでも、それがウソじゃないって思えるんだ。

僕はガイアスの言葉も同じように感じる」

「お前はマクスウェルのようになりたいのか?」

「そんなのはムリだよ。けど……そうなれたらいいなって」

「そうか……」

 

ガイアスは教会から去っていった。

 

「僕たちも寝ようか」

「ああ。明日は決戦だ」

 

二人は再び部屋に戻り、寝ることにした。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択