No.454170

語られし者たちとIS 世界樹大戦 第1話 少年と女性の出会い

視点は一夏で
まだ原作の本編には入っていません
時間的には一夏が中学生の時の話です

2012-07-16 17:22:34 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2071   閲覧ユーザー数:1950

 

 

俺の名前は織斑一夏、どこにでもいるような中学二年の男子だ

 

いや、ちょっと違う所もある

 

まず両親は物心つく前に俺と姉を捨てていなくなってしまった。そして唯一の家族で姉である千冬姉は仕事に行っている。つまりこの家にいるのは俺だけだ

 

そして今、自分の夕食を作っている。ただ、一人分だけしか作らない

 

千冬姉の分は用意していない。ほとんど家に帰ってくることがないからだ

 

一人でする食事ほど寂しいものはない。ほとんど毎日こんな感じだ

 

そんな寂しい食卓になったきっかけは約2年前、千冬姉が参加していたISの世界大会の決勝戦に見学をしようと思った時、俺は謎の組織に誘拐された

 

幸い無傷だったが、千冬姉は俺を助けるために決勝戦を捨てた

 

ISが女性にしか使えないということもあってこの世界は女尊男卑となっている。そのうえ、織斑千冬の弟としてしか俺を見ていない人も多かった

 

そのため、お前がいなければ千冬が優勝できた。誘拐されたお前が悪い、ということを周りからかなり非難された時期もあった。

 

すぐに理解のある友達のおかげで収まったが、たまにまだそういうことを言う人もいるので俺はいつも悔しく思っている

 

誘拐されなければよかったと

 

それは千冬姉に対して謝罪の気持ちがあると同時に自分は被害者なのにそんな仕打ちをすることに対して嫌悪をしていたこともあった

 

また、俺の捜索にドイツが積極的だったため、その礼として千冬姉は一年間ドイツに恩を返すため、ドイツ軍で働いていた

 

その仕事が終えた後、何も言わずに現役のIS操縦者を引退し、どこかで別の仕事をしているらしい。たまにふらりと帰ってくるがすぐに仕事に出かけてしまう

 

詳しいことは何も教えてくれない

 

たまに考えてしまう

 

(千冬姉にとって俺って何なんだろう……)

 

一人寂しく食事をしていた。いつもの日常だ

 

作り甲斐なんてないつまらない料理だ

 

食事も終わり、片づけも済ませる。そのまま寝ようと思った時、

 

(何だ、この痛み……焼き付くような……一体……何だ!?)

 

自分の体に何処か異常がないか見てみると、右肩に何か果実のような模様が浮かび上がった

 

何が起こったのか、勿論考えようと思った

 

しかしそんなことよりももっと驚くべき光景を目にした

 

目の前に青く長い髪、際どい衣装、うなじにある謎の触覚、そんな長身の女性が俺の目の前に現れた

 

突如現れた彼女は優しい声で質問をした

 

「ふふふ、あなたが今回の私のパートナーかしら?」

 

 

……一体誰だ? いや、それよりもこの人は何を言っているんだ?

 

……後、服装の関係で目のやり場に困る……とりあえず反応しておかないと

 

「えっと……」

 

「……なるほどね、その様子だと何が何だかわからないみたいね。いいわ、順番に説明するわ」

 

俺が何か言う前に話し始めた。まあ、助かるけど

 

「私の名前はジュディス。そうね……あなた、世界樹の戦いの物語は知っている?」

 

「え? 確か……世界樹の恵みをめぐって様々な国同士が戦い合うって話でしたよね……それがどうしたんですか?」

 

「あなたはその戦いに巻き込まれたのよ。私の相方としてね」

 

……え? どういうことだ!? だってあれは……

 

「物語だけの話……と思っていたのでしょう? でもこれが現実」

 

そう言って彼女は俺の頬をつねってきた。……痛い

 

もう一つ、俺の右肩に描かれた果実の模様がそれを証明している。物語でも体のどこかに果実の模様が付く。そんな描写があったはずだ

 

でも、分からないことがある

 

「ちなみにどうしてあなたが選ばれたかは分からないわ」

 

……この人、予知能力とかあるのか?

 

「予知能力何て無いわよ。あなたが分かりやすいだけ。まあ、それよりもあなたに聞きたいことがあるの。あなたのお願いって何? 物語のことを分かっているならこの質問の意味も分かるわよね?」

 

……何だろう? 特に思い当たらないような……いや、一つある……

 

「……力がほしいです。俺は……誰にも迷惑をかけないような……俺自身が認められるような」

 

「……わけありね。一応この世界について教えてくれた人がいたから少しは知っているわ。ISというものがどういうものか、女尊男卑の世界になってしまったことくらいは……だからあなた自身の話をして」

 

本当にこの人にはお見通しなのだろうか……

 

俺は話すことにした。千冬姉がISの世界大会に出た時、自分が決勝戦の日に誘拐されたこと。そのせいで千冬姉は決勝戦を放棄したこと

 

もしも自分が強ければと思う。彼女の栄光は間違いなかったと確信している

 

そしてもう一つ、自分のことについてだ

 

そんな姉がいるから自分を見てもらえない。たまにそう思ってしまうことがあるということ

 

その話を終えた時、ジュディスさんは笑顔だった

 

「そう……確かに偉大な人が身近にいるのはつらいわよね。なんとなくわかるわ。でも、そんなもしものことを考えてもしょうがないと思うわよ」

 

……確かにその通りだ。でも、俺は……力があってあの時に戻れたら

 

「仮に力をつけて過去に戻りたいと思ってはいけないわ。今のあなたを否定することになるのだから。今のその悔しいという気持ち、誰かに認められたいという気持ち、全部を失くすわよ」

 

ジュディスさんの言葉は何だか……重く感じた

 

そうだよな……

 

「……願いについては……考えてみます。ところでジュディスさんの願いは?」

 

「……秘密よ。いつか教えるかもしれないけどね」

 

そんなのありかよ……と思う

 

「それよりもあなた自身強くなりたいのよね? 一夏、あなた武道か何かやっていたようだし、もし武道に使っていた道具があるのならその道具を持ってきてくれないかしら?」

 

ジュディスさん、一体何を? 多分何かやっていたというのは体を見て判断されたんだと思う

 

それよりも俺は強くなりたいと思った。だからこそ彼女の言葉に従うことにした

 

自分の部屋に戻り、少し埃をかぶっていた剣道道具を取ってきた

 

居間に戻るとジュディスさんは小さな何かを持っていた。何かブローチみたいだけど……

 

それを俺の服に付けると周りの景色が変わった。周りを見渡すと一面草原……これは一体?

 

「今付けたブローチの力よ。今私たちは異世界に来たのよ。ここは元いたあなたの世界の一分がここでは約一時間になるわ。だからあまり時間を気にせず修業ができるわよ。さて……構えなさい。あなたの実力が知りたいから」

 

そのままジュディスさんは槍を構える。俺も竹刀を構えた

 

先手必勝と思いこちらから動く。だが、気が付いたら俺は倒れていた

 

「なるほどね……これは鍛える価値がありそうね。さて、続けるわよ」

 

その後、俺は何度も叩きのめされた。中学に入ってから剣道はやめていた

 

腕が鈍った……それはすごくよくわかる。でも、負けられない

 

そう思って俺は立ち向かうことにした

 

……一時間やって俺は30回くらい地面にたたきつけられた。それに汗だくになっている

 

一方ジュディスさんはまだまだ余裕そうで息一つ乱れていない……圧倒的すぎる……

 

「大体あなたの実力はわかったわ。今日はこれで終わり。また明日ね」

 

そう言って俺に付けたブローチをとると、元の世界に戻った

 

時計を確認すると、本当に一分しか経っていなかった

 

「とりあえず今日は休みなさい。新年早々疲れさせて悪かったけど」

 

……そういえば今日は一月三日だっけ? すっかり忘れていた……

 

とりあえず寝ることにしよう。疲れた、さっきの特訓だけが理由だけじゃない気がする

 

俺は、そのままベッドに直行しようとしたがその前に……

 

ジュディスさんの寝床を用意しないと……

 

「申し訳ないのですが……寝るところのことですが」

 

「敬語はやめてちょうだい、それと寝るところは大丈夫、あの空間で野宿するから」

 

いくらなんでも野宿は……

 

「それは……とりあえず今日は客間でお願いします」

 

すぐに俺は寝ることができるように準備をしておいた

 

「あらあら、手慣れているのね。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。あなたももう寝なさい。後敬語は……まあ、お願いね」

 

言われたとおり、すぐに部屋に戻ってベッドに入った

 

……とんでもないことが起こったな。明日もっと詳しく話を聞こう

 

そうぼんやり考えているといつの間にか眠っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキット

 

『料理上手』

 

朝、ジュディスさんがキッチンで作業をしていた

 

その様子を見ていた俺に気が付いたのか彼女は振り向く

 

「ねえ、一夏。あなた料理が上手なのね」

 

「え? どうしてですか?」

 

「台所を見ればわかるわ。どんなふうに使っているかくらいわね。そして上手な人の使い方だった」

 

「ということはジュディスさんも?」

 

「そうね、それなりにできるわよ。今度料理をしましょうか」

 

「はい、お願いします」

 

いつもの食卓より楽しくなった。そう感じることができた


 
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