No.452006

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第十三話 いざ!温泉旅行へ!!(前編)

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2012-07-13 08:38:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:47460   閲覧ユーザー数:42260

 本日、世間はゴールデンウィークと呼ばれる連休中。初日は家でノンビリと過ごし今日は二日目。今俺は

 

 「~~♪~~♪」

 

 「嬉しそうだな?ディアーチェ」

 

 「っっ!?ば、馬鹿者!!そこまで浮かれておらんわ!!//」

 

 「いや、メッチャ笑顔だったぞお前」

 

 「違うと言っておろうが!!」

 

 「そこまで否定せんでも…」

 

 「ふ、ふん!お前が変な事を言うからだ」

 

 プイッとそっぽを向くディアーチェ。

 

 「ゴメンゴメン。折角の旅行なんだし機嫌直してくれ」

 

 「むっ…そ、そうだな。折角ふ、ふふ『二人きり』で旅行なのだ。楽しまないと勿体無いな//」

 

 何で『二人きり』の部分を強調したのかは分からないが、ディアーチェの言う通り二人で旅行中なのである。

 

 「うん。あ、ディアーチェ。あれが俺達の乗るバスみたいだぞ」

 

 「ならば行くぞ」

 

 そういって俺の手を引っ張りバス乗り場へ向かう俺とディアーチェ。

 何故この様な状況になったかというと、事の発端は二日前、ゴールデンウィークの前日に遡る………。

 

 

 

 ~~回想シーン~~

 

 今日は学校帰りにディアーチェと買い物に行く事になった。ゴールデンウィーク前に色々買い足しておきたいから一緒に買い物に来いとお願い(むしろ命令)されたので荷物持ちとして着いて来た。

 

 「ディアーチェ、これで全部か?」

 

 「そうだな。これで全部だ」

 

 両手で荷物を持ち、スーパーを後にする俺とディアーチェ。結構買い込んだな。後で王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)に収納するか。

 

 「そういえばユウキ。先程、こんな物をもらったぞ?」

 

 「どれどれ……福引券?」

 

 ディアーチェが見せてくれたのは福引券だった。どうやら買い物の金額が1000円毎に1枚貰えるみたいで俺達が買った物の合計金額は4207円。ディアーチェの手には4枚の福引券がある。

 

 「福引の場所はここから近いな。ディアーチェ、折角だしやってくか?」

 

 「そうだな」

 

 俺達は家に帰る前に福引場へ向かった………。

 

 

 

 「お~、結構人いるな~」

 

 福引場に着いた俺達。俺は福引の列に並ぶ人を見てそう言った。

 

 「十二~三人程か?しかも皆そこそこに買い物をしておるな?」

 

 並んでいるのは俺達と同じかそれ以上の量をビニール袋に詰め込んでいる人ばかり。

 

 「俺達と同じで買い足しにきたのか福引券目当てで沢山買い込んだかのどっちかだろうなあ」

 

 前者はともかく後者の場合、それだけ福引の景品が魅力的なのかな?

 ほとんどの人は7~8回程やっているし、多い人だと10回を超えている。

 しかし皆一向に当たりが出ない様で残念賞のティッシュばかり貰っている。

 

 「あの福引、本当に当たりが入っておるのか?」

 

 順番待ちしている俺の隣でディアーチェが福引に疑問を持ち始めた。

 

 「そこはイカサマをしていないと信じるしかないだろ?」

 

 「それはそうだがな…」

 

 そんな事を言ってる間に列はどんどん消化されて行き、俺達の番になった。

 

 「お、長谷川んトコの坊主じゃねえか?」

 

 「あれ?雅さんが福引仕切ってんの?店は?」

 

 福引場のとこにいたスタッフさんは俺の顔見知りだった。

 

 俺が雅さんと呼んだおじさんは海鳴商店街の魚屋さんの主人で仕入れている魚はいつも質のいい物ばかりだ。俺も魚を買う時はほとんどお世話になっている。

 

 「店はカミさんに任せてらあ。坊主こそ、可愛い女の子連れて買い物デートか?」

 

 「デ、デデ…デートだと!?………っっ!!//////」(ボンッ)

 

 「いや、デートじゃなくてただの買い物です。なあ、ディアー……どうしたんだディアーチェ?大丈夫か?」

 

 隣にいるディアーチェを見ると、ディアーチェは顔を真っ赤にして固まっていた。

 

 「ディアーチェ~」

 

 ゆさゆさ

 

 軽く揺すってみる。

 

 「……ハッ!?なな、何だユウキ!?どどど、どうしたのだ!?///」

 

 「何か固まってたみたいだからさ。考え事か?それに顔赤いしどうしたんだ?」

 

 「す、すまぬ…何でもない。心配かけたな(デートだと思われたという事は、我がユウキとその…こ、こここ恋人同士に見えたという事だな。恋人…ユウキが恋人……)///」

 

 再起動したディアーチェ。まだ顔が赤いけどホントに大丈夫か?

 

 「ほうほう、坊主の方はともかくそっちの嬢ちゃんは…」

 

 雅さんが俺とディアーチェを交互に見て何やらニヤニヤしているが何だろう?

 

 「…ん?よく見ればそっちの嬢ちゃんもウチに魚を買いにくる常連さんじゃねえか?何だ、坊主の知り合いだったのか」

 

 「へ?ディアーチェ、雅さんトコの常連だったのか?」

 

 「む?そんな筈は無いぞ。我が買い物をするのは大抵スーパーだからな。こやつの店になど行った事も無い」

 

 ディアーチェ…年上の人に『こやつ』はどうかと思うぞ。

 

 「おいおい、何行ってんだ嬢ちゃん。確かにアンタが……ん?」

 

 ディアーチェを見て喋っていた雅さんが何かに気付いた。何だ?

 

 「……いや、少し違うか。常連の嬢ちゃんとは髪の色が違うし…いやでも髪は染める事が出来るし…」

 

 髪の色が違ってディアーチェと間違える……って

 

 「あ~…雅さん。多分その常連さんと、このディアーチェは別人だよ」

 

 「そうなのか?」

 

 「うん」

 

 多分雅さんが言っているのは、はやてちゃんの事だろう。俺は二人の違いについて説明しておいた。

 

 「そう言われたら納得出来るな。嬢ちゃん、悪かったな。どうやら俺が勘違いしてたみたいで」

 

 「我は気にしておらんから貴様も気にするな」

 

 だから年上にその言葉遣いはいかんだろうに。

 

 「ハハハ、そうかいありがとよ…っと長話はいけねえな。福引しにきたんだろ?」

 

 「うむ」

 

 ディアーチェが頷き、持っている福引券を渡す。

 

 「……4回だな。さあ、回してくれ」

 

 「ディアーチェ、やりなよ」

 

 「いいのか?買い物の金を出したのはユウキだぞ?」

 

 「いいよ。俺こういうのは、あまりいい結果出せないし…。だからディアーチェに任せるよ」

 

 「そうか?…分かった。ならば我がやろう」

 

 ガラガラの前に立つディアーチェ。回す前に景品の確認をしてるみたいで俺も視線をそちらに移す。

 景品は…

 

 特賞(金色) 〇〇旅館一泊二日無料宿泊券

 一等(銀色) 45インチ液晶TV

 二等(黄色) 松〇牛5kg

 三等(赤色) 海鳴商店街専用金券(一万円分)

 四等(青色) 海鳴商店街専用金券(五千円分)

 五等(緑色) 海鳴商店街専用金券(千円分)

 外れ(白色) ポケットティッシュ

 

 という事らしい。

 

 「二等辺りが出たらレヴィ、メッチャ喜びそうだな」

 

 「我としては三等で充分だがな」

 

 景品を確認したディアーチェはガラガラを回し始めた。

 

 ガラガラガラ…………コトン

 

 一つ目の玉は白。外れだな。

 

 「残念だな嬢ちゃん」

 

 「あまり期待はしておらんから別に気にはせん」

 

 「そう言わないでくれよ嬢ちゃん。あと3回で景品ゲットできるかもしれねーんだからよ」

 

 ガラガラガラ…………コトン

 

 ガラガラガラ…………コトン

 

 二つ目、三つ目も白で残りは後1回。

 

 ガラガラガラ…………コトン

 

 ラストは色のついた玉が出てきた。金色かあ……………金色?

 

 景品の一覧を確認する。

 

 『特賞(金色) 〇〇旅館一泊二日無料宿泊券』

 

 「「「「「……………………」」」」」

 

 ガラガラを回したディアーチェ。隣で見ていた俺。雅さんを含むスタッフが沈黙して数十秒。

 

 「……と、特賞だあーー!!〇〇旅館一泊二日無料宿泊券をプレゼント!!大当たりーーー!!!」

 

 沈黙を破り、カランカラーンとベルを鳴らしながら大声で叫ぶ雅さん。その言葉に沈黙していた俺達もハッ!として現実を受け止め始める。

 周囲からは『ワアッ!』と歓声が沸き

 

 「特賞出たらしいよ」

 

 「マジで!?」

 

 「あの子が当てたんだって」

 

 「いいなあ」

 

 色々な会話が聞こえてくる。

 

 「特賞…当てたのか…我が?」

 

 「あ…ああ。そうみたい…だな」

 

 未だに信じられず途切れ途切れになりながらも声を出す俺とディアーチェ。

 

 「おめでとう嬢ちゃん。これがその無料宿泊券だ。」

 

 そう言ってディアーチェに券を渡す雅さん。券を受け取るディアーチェ。

 それから少し休憩に入った雅さんと話をしてから俺達は家路に着いた………。

 

 

 

 「「「無料宿泊券?」」」

 

 家に帰るなり今日福引で当てた宿泊券について喋るディアーチェ。

 

 「〇〇旅館かあ。どんな所なの?」

 

 「パソコンで少し調べてみたけど結構人気あるみたいだな。料理も美味しく天然の温泉もあるらしいし」

 

 「温泉!?入りたい!!行こうよディアーチェ!!」

 

 「レヴィ、少し落ち着きなさい」

 

 「でもゴールデンウィークは特に予定も無いですし旅行というのも良いですね」

 

 テンションの高いレヴィをシュテルが注意し、ユーリも旅行については異論が無い様だ。ただ…

 

 「盛り上がってる所悪いがお前達は連れていかんぞ」

 

 ピシリッ!

 

 ディアーチェの発言に固まる三人。

 

 「正確には『連れて行けん』だな」

 

 「「「えええええええええっっっっっ!!!!?」」」

 

 大声で叫ぶ三人。シュテルやユーリも大声を上げるなんて珍しい。それだけ旅行を楽しみにしたんだな。

 

 「どういう事さディアーチェ!?自分だけで行くの!!?」

 

 ディアーチェに詰め寄るレヴィ。

 

 「この宿泊券だがな。男女1組のペアチケットなのだ。お前達が女である以上は連れて行けんのだ」

 

 そう、この無料宿泊券はペアチケットだったりする。おそらくは夫婦や恋人が行ける様にと思い、景品にしたんだろうな。特賞はディアーチェが当てた1枚だけらしいし、もし他の夫婦やカップルが当てていたらと思うと何だか申し訳無い事した様な感じだ。まあ、俺が当てた訳じゃ無いんだが…。

 

 「うう~、ペアチケットかあ。それなら仕方ないよね」

 

 残念そうなレヴィ。

 

 「じゃあ、そのチケットはどうするのです?」

 

 ユーリがディアーチェに質問する。確かにな。ディアーチェはこのチケットをどうするつもりなんだろうか?誰か誘える男の子でもいるのか?それとも他の人にあげるのかな?俺達の知り合いだとしたら士郎さんと桃子さんの高町夫婦ぐらいだよなあ。

 

 「そ、その事なんだがな…」

 

 ディアーチェが若干頬を染めた顔で俺の方を向き

 

 「ユウキよ。我とその…りょ、旅行に行かぬか?//」

 

 俺が誘われた。旅行?ディアーチェと二人でか?

 

 「えっと、ディ「「「はあああああっっっっ!!!!?」」」…どうした三人共?」

 

 俺がディアーチェに聞き返そうとするとシュテル、レヴィ、ユーリの三人がまた大声を上げ、俺の言葉を遮った。

 

 「ななな、何を言ってるのですかディアーチェ!!?」

 

 「そ、そうだよ!どうしてユウなのさ!!?」

 

 「ほ、他の人を誘えばいいじゃないですか!!」

 

 何だかすごく動揺してる三人がディアーチェに聞いている。

 

 「ええい!!三人共、五月蠅いわ!!我が当てたチケットなのだ。誰を誘おうと我の勝手であろうが!!」

 

 反論するディアーチェ。確かに誰を誘おうがディアーチェの自由なんだが…

 

 「何で俺なんだディアーチェ?」

 

 俺を誘う理由が分からない。てっきり誰かにあげるのかと思っていたが。

 

 「お、お前にはこちらの世界に来てから世話になりっぱなしだしな。そ…その借りを少しでも返しておきたいだけだ//」

 

 「借りって…。そこまで気にしなくても俺としては家事を覚えて手伝ってくれてるだけで充分なんだが…」

 

 「駄目だ!お前が我等にしてくれた事を考えると家事だけでは釣り合わん!」

 

 「でもなあ…」

 

 「…ユウキはもしかして我と旅行するのが嫌なのか?」

 

 そう言って上目づかいで見てくる。ここでその反則技を使いますかこの子は…。

 

 「…はあ~。正直、退屈な旅行になっても知らんぞ?まあ、出来るだけそんな事にならない様にするつもりだが」

 

 「大丈夫だ!!我とて退屈させるつもりは無い!!」

 

 「じゃあ俺は行ってもいいぞ」

 

 その言葉を聞いて笑顔になるディアーチェ。

 

 「そ、そうか!良いのだな!?なら明日は旅行の準備をして明後日に行くぞ!良いな!?」

 

 「了解」

 

 俺の返事に対し、満足気に頷いたディアーチェはそのまま自室へと戻ろうとするが

 

 「待って下さい!!」

 

 シュテルに呼び止められた。

 

 「何だシュテル?我は用が出来たのだが」

 

 「そ、そもそも二人きりで旅行なんて危険すぎます!!犯罪に巻き込まれたらどうするのですか!?」

 

 「我とユウキならこの世界の犯罪者ぐらい簡単に倒せるぞ」

 

 「じゃ、じゃあアレだよ!二人だけだと迷子になるかもしれないし!!」

 

 「レヴィ、お前と我等を一緒にするな」

 

 「えと…えと…。そ、そう!保護者です!!子供だけだと絶対におかしいと思われます!!」

 

 「心配いらん。この旅館の女将が魚屋の主人の従兄妹らしくてな。我等が行く場合は事前に『子供だけで行く』と連絡してくれるそうだ」

 

 三人の意見に正面からバッサリと反論するディアーチェ。

 そして意見の出なくなった三人を置いてディアーチェは自室に戻って行く。

 

 「さて、俺も晩ご飯の準備するか」

 

 俺も腰を上げ、キッチンに向かうのだった………。

 

 

 

 ~~回想終了~~

 

 そういう訳で俺達は今、電車を降り目的地である〇〇旅館行きのバスに乗っている。他にも何人か客が乗っているが全て男女のペア。おそらくカップルか夫婦なのだろう。

 

 「カップルが多いな」

 

 「そうだな」

 

 「やっぱり例の情報のせいかな」

 

 「ど、どうだろうな?//」

 

 「ホントなのかなあ。『カップル又は夫婦で旅館に泊まると一生幸せに暮らせる』っていうのは」

 

 パソコンで〇〇旅館のホームページにそんな情報が載っていた。

 何でも旅館にある天然の温泉で一緒に浸かり、一夜を共にしたカップルもしくは夫婦が絶対に別れる事無く幸せに暮らせるのだとか。

 

 「俺には全く信憑性が無いんだがディアーチェはどう思う?」

 

 「ま、まあそういう謳い文句があるなら客受けが良いのではないか?」

 

 「やっぱそんなもんだろうな」

 

 これで幸せになれなかったら詐欺じゃないのか?

 

 「とにかく折角の旅行なのだ。そんな事は気にせずに楽しむぞ(しかしその情報が本当ならば我はユウキと…)////」

 

 「だな」

 

 「(ふふふ、シュテル、レヴィ、ユーリ悪いな。だがこれだけは!ユウキだけは、たとえお前達であっても譲る訳にはいかん!!)」

 

 何かディアーチェは気合が入ってる様だがそれだけ楽しみなんだろうな。なら楽しい思い出が作れる様に俺も頑張りますか。

 

 

 

 ……バスに乗って約20分。目的地である〇〇旅館に着いた俺達。

 

 「ディアーチェ、ちゃんと宿泊券持ってきてるよな?」

 

 「無論だ」

 

 俺が確認すると、ディアーチェは財布の中から折り畳んでいた宿泊券を取り出す。ここまで来ておきながら券を忘れたとか言われたら洒落にならんからな。

 

 「じゃあ、行くか」

 

 俺達は旅館の中に入って行く。

 

 「「「「「いらっしゃいませ。〇〇旅館へようこそー」」」」」

 

 旅館の従業員さん達が一礼して挨拶をし、俺達を出迎えてくれる。俺達はそのままロビーの受付に向かうがそこで受付の人に

 

 「えっと…君達だけかな?お父さんやお母さんは?」

 

 と、尋ねられた。確かに子供が二人だけで保護者らしき人はおらず、リュックサックを背負って旅館に入ってきたんだ。明らかにおかしいだろう。

 

 「保護者はいません。俺達だけです」

 

 とりあえず正直に答える。受付の人は返答と対応に困っている様だ。

 おかしいな?俺達が行く場合は雅さんから事前に連絡がきてる筈なんだが…。とりあえず連絡がきてないかを受付の人に聞き、確認を取ってもらう。それからしばらくすると一人の従業員さんがやってきて俺達に声を掛けてくる。

 

 「ゴメンナサイね。どうやら連絡が行き届いてなかったみたいで。私はこの旅館の女将なんだけど、もしかして君達が雅君から連絡のあった子達かしら?宿泊券持ってる?」

 

 俺達は頷きディアーチェが宿泊券を渡す。

 

 「…うん。確かに間違い無いわね。私はここの旅館の女将で山代妙子っていうの。『女将』でも『妙子さん』でも好きな様に呼んでね」

 

 そういって女将…妙子さんは微笑み、俺達に挨拶してくれる。俺達も自己紹介をした後に、今日泊まる部屋まで案内された。

 

 

 

 「ここが君達の部屋よ」

 

 扉を開け部屋の奥に案内される。中は全て和室で掛け軸があったり高価そうな壺があったりと普通に泊まると結構高そうな感じがする部屋だ。

 部屋に荷物を置き、妙子さんから旅館の事や旅館周辺の事を聞いて

 

 「…それじゃあ、夕食は6時頃に部屋に運びますのでごゆっくりおくつろぎください」

 

 妙子さんが部屋から出て行き、ディアーチェと二人きりになる。

 

 「さて…と、ディアーチェはどうするんだ?」

 

 「我は特に…。ユウキはどうするのだ?」

 

 「俺か?そうだなあ…。折角だし少し散歩してこようかと思うんだが」

 

 時計で時間を確認すると2時過ぎだった。

 

 「な、なら我も着いて行って構わぬか?一人で部屋にいても退屈だしな」

 

 「そうか。なら一緒に行くか」

 

 「う…うむ」

 

 俺達は部屋を出て旅館の外に出る。するとディアーチェが突然俺の腕に抱きついてきた。

 

 「ディアーチェ?」

 

 「レ、レヴィの言葉ではないが決して迷子にならんとは限らん。だ、だからこうしたら離れ離れにならぬであろう?///」

 

 顔を赤くしてディアーチェが言う。

 

 「まあ、離れ離れになる程うろちょろするつもりは無いけど…」

 

 「それでもだ!万が一という事もあるだろうが!」

 

 そういって更にギュウッ!と俺の腕にしがみつくディアーチェ。

 

 「分かった!分かったから力を緩めてくれディアーチェ。マジ腕が痛いから!!」

 

 「ふ、ふん!!分かれば良いのだ馬鹿者!」

 

 力を緩めてくれるディアーチェ。だが指を絡ませてくる。そして

 

 「早く行くぞユウキ(わ、我は今ユウキと腕を組んでこ、ここ恋人繋ぎを……)////」

 

 顔を赤らめたまま歩き出すディアーチェ。

 

 「わっ!いきなり歩かないでくれ」

 

 若干バランスが崩れたが転ぶ事は無く、そのままディアーチェと腕を組んだまま俺達は散歩を開始した………。

 

 

 

 そのまま適当にブラブラと歩く俺達。途中で帰りに買う土産を見るために店に入ったり、甘味処でディアーチェと甘い物を食べたりした。そして一通り歩き回って旅館に戻る途中

 

 「ユウキよ、アレをやっていかんか?」

 

 ディアーチェがある方向を差す。その先には

 

 「プリクラ?」

 

 一台のプリクラ機が設置されていた。

 

 「折角の旅行なのだ。記念に撮りたいのだが…駄目か?」

 

 「いや、駄目なんて事はないぞ。地域限定のフレームとかありそうだし」

 

 俺とディアーチェはプリクラを撮るために二人でプリクラ機の前に立つ。カーテンに仕切られている中の空間は意外に狭く、子供の俺達でも少し強く密着しなければいけない程だ。おかげで組んでいる腕にまた力を込められちょっと痛かったりするが口には出さない。プリクラを撮るぐらいならすぐに終わるだろうしな。

 お金を入れてどのフレームにするかを決める。

 

 「これが地域限定フレームだな。ディアーチェ、これでいいか?」

 

 「……………………」

 

 ディアーチェに聞くが反応が無い。

 

 「ディアーチェ?お~い…」

 

 「……………………」

 

 やっぱり反応が無いな。

 そこで俺はすずかの時みたいに

 

 ぷにっ

 

 ほっぺをつつく事にした。

 

 「っっ!?ななな、何だ!!?」

 

 「考え事か?呼び掛けても返事が無いから」

 

 「す、すまぬ。その…少しな(うう~、狭い。ユ、ユウキとこんなに密着する事になるとは…だが、これはこれで)///」

 

 「何つーか…散歩の時から顔が赤いままだけど大丈夫か?」

 

 「だ…大丈夫だ。心配かけてすまぬ。は…早く撮るぞ//」

 

 そういって画面を見る。

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 パシャッ

 

 シールにプリントされたのを取り出し、ディアーチェに渡す。

 

 「はい、ディアーチェ。旅館に戻ったら俺にも分けてくれよな」

 

 「う…うむ。分かっておる(か、顔が…我とユウキの顔がこんなに近くに)///」

 

 何やらプリクラを眺めてはどんどん顔が赤くなっていくディアーチェ。本人は大丈夫と言ってはいるがやっぱり心配だ。部屋に戻ったらゆっくり休ませよう。

 

 

 

 旅館に戻ってきた俺達。中に入ると

 

 「……なあ、ディアーチェ。俺、疲れてんのかな?目の前にいる連中は幻なのかな?」

 

 「……奇遇だなユウキ。我にもお前と同じ幻が多分見えている。どうやらただの散歩で結構疲労が溜まったみたいだな」

 

 「…そっかー。なら部屋に戻ってゆっくり休むか」

 

 「…そうだな」

 

 俺達はロビーで受付をしている団体さんを見て立ち止まり、そんな会話をしてしまう。何故なら

 

 「ねえねえスズカー。手続きはまだ終わらないのー?」

 

 「しょうがないよレヴィちゃん。人数が人数だし」

 

 「でもでもー…」

 

 「気持ちは分かるよ。でもこの人数だから」

 

 「う~。…やっぱり僕だけでもユウ達を探してくるよ!」

 

 「少しは落ち着きなさいよレヴィ。アンタすぐうろちょろするから旅館の中でも絶対迷子になりそうなのよ!」

 

 「は…離してアリサ~!!」

 

 ジタバタしてるレヴィを抑えてるアリサちゃんの姿が見えるような気がする…。

 

 「全く…。レヴィはもう少し大人しく出来ないものですかね」

 

 「そうですね。自分の部屋に荷物を置いてからでもいいでしょうに」

 

 「にゃはは…。でもシュテルもユーリもさっきからそわそわしてるよ?」

 

 「二人共、早く長谷川君と王様を探しにいきたいんやろ?」

 

 「な…何を言ってるのですか!?なのは!!//」

 

 「はやてもです!私は早く泊まる部屋に行きたいだけであって…ユ、ユウキ達を早く探したいなんてこれっぽっちも思ってないです!!//」

 

 「でもバスが渋滞にかかった時は結構焦ってたじゃん。『こ、こんな渋滞に巻き込まれてる間にも二人の仲が…』とか言ってたのをこのアリシアさんは聞いたよ~」

 

 「あ、それ私も聞いた」

 

 「「アリシア!!フェイト!!」」

 

 「…君達、もう少し静かに出来ないのか?」

 

 「クロノ君、仕方ないよ。皆温泉が楽しみだから」

 

 「エイミィ。彼女らの会話を聞いて本気でそう思っているのか?」

 

 「まっさか~。そんな訳無いじゃん」

 

 「なあ、シャマル。アタシらもくる必要あったのか?」

 

 「あら、いいじゃないヴィータちゃん。折角皆揃っての休暇なんだし」

 

 「アタシは家でのんびり過ごしながらアイス食えてたら満足なんだがな~」

 

 「全く、お前らしいな」

 

 「そういうお前はどうなんだよシグナム?お前、温泉とか楽しみにしてただろ?」

 

 「ば、馬鹿を言うな!!温泉に興味はない。……が、主を危険に晒さぬ様にお守りするのが我等騎士の務めだからな。」

 

 「おまえ、まだそんな事言ってんのかよ…」

 

 何つーか…初対面の原作キャラも加えてすごい大人数の団体さんの幻が見える。

 

 「とにかく!!僕は先に……」

 

 ふとレヴィの幻がこっちを向いた時に俺達と視線が合う。

 

 「見つけたーーー!!!」

 

 大声を上げてこっちに走ってくるレヴィの幻。そして

 

 「ユーーーーウーーーーー!!!」

 

 正面から俺にダイブして抱きついてくるレヴィの幻。

 

 「ぐはっ!」

 

 そのまま受けきれずにロビーの床に倒れ込む俺とレヴィの幻…いや、上に乗っているレヴィから重さを感じる以上、信じたくは無いがここにいるレヴィは本物の様だ。て事はこっちを見ている周りの連中も本物か。

 

 「良かったー!今朝ぶりだねユウ!!」

 

 「いつつ…。レヴィ、とりあえず「レヴィ!!」…?」

 

 おれの隣にいたディアーチェがレヴィを引き剥がしレヴィの頭に拳骨をお見舞いする。

 

 ゴツンッ!

 

 「痛っ!!何するのディアーチェ!?」

 

 「馬鹿者が!!あんなに勢いつけて飛び掛かったらユウキが怪我をするだろうが!!」

 

 「大丈夫だよ!!アレでも加減してるもん!!」

 

 「どこがだ!!第一、子鴉達も含めて何故貴様等がここにおる!?」

 

 「皆で旅行だよ!!」

 

 何かギャーギャーと言い合ってる二人を置いて俺はシュテル達に話を聞く。

 

 「なあ…何で皆ここにいんの?」

 

 「それはですね…」

 

 そうしてシュテルは自分達がここにいる経緯を話し始めた………。


 
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