No.450428

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第二十七話 突撃ぃいいいい!

2012-07-10 16:10:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6667   閲覧ユーザー数:6206

 第二十七話 突撃ぃいいいい!

 

 

 「…く、しまった!」

 

 度重なる収集活動で疲れが体の反応を遅れさせ、私自身に隙が生じた。

 巨大亜ムカデを思わせる原生生物の触手に体の自由を拘束され、そのムカデに捕食されかけた時だった。

 

 「チェインデカッター!」

 

 ズッパアアアアンッ!

 

 私を縛り付けていた触手が黄色い塊に力尽くで両断された。

 それからズドンという音を立てて砂煙を舞い上がらせながらムカデの触手を両断した正体が分かった。

 それはまるで虎か獅子を思わせる機械人形。後になってヴィータの言っていた機械人形だということが分かった。

 その機械人形は両腕に掴んでいた武器を両肩に収めると今度は腰の部分に当たる所から骨のような鉄の棒を左右から引き出す。

 

 「一本でもスパナ。二本でもスパナ」

 

 と、言いながら腹の部分からももう一本の鉄の骨がはき出される。

 そして、はき出され宙を舞っている鉄の骨を両手に持った同じ骨で挟むように魔力で連結する。

 

「三つ合わせて…」

 

 合わせて?

 

 「突撃ぃいいいい!」

 

 三つ合わせて何だというのだ!?

 と、私が内心で驚いている間にも目の前の機械人形は大ムカデに突貫していく。そして、

 

 「オラ、オラ、オラ、オラァアアアアアア!」

 

 ドガッガガガガガガガガがガッ。

 

 先程連結した鉄の骨を滅茶苦茶に振り回して大ムカデを殴打していく。

 鉄の骨と骨の間には私のレバンティンの連結刃のように伸縮する細工が施されていて、機械人形がムカデの横を通り過ぎた後には…。

 

 「縛っていいのは縛られる覚悟がある奴だけだ!」

 

 鉄の骨(正確には骨同志を連結している鉄線)でがんじがらめに縛られてボールのように丸まったムカデだった。

 機械人形が言っていたことも気になるが、私は冷静さを取り戻し今やるべきことを考えた。

 

 …とりあえず、目の前の大ムカデから蒐集でもしておくか?

 

 

 

 「ちょっとっ、タカシ君!何、闇の書の騎士の手伝いをしているのっ!」

 

 「…あ」

 

 「『…あ』じゃなああああい!」

 

 俺はフェイトから地面に降ろされると同時にシグナムという女性に不意打ちを仕掛けるつもりだったのだが、その彼女がムカデの触手に縛られたので急遽、攻撃目標を彼女からムカデに切り替えた。

 そして、三つのレンチを取り出し、連結させて伸縮自在のヌンチャク。ブンブンスパナでムカデ殴りまくって捕獲したら、シグナムさんがムカデから魔力を強奪した。

 ちなみに。

 「三つ合わせて」と俺が言ったら、

 (ブンブンスパナ―!)と、アリシアが合いの手を入れてくれたのでそのままムカデに向かって突撃することにした。

 

 この世界に来る前にアースラ内部で軽く彼女達のことを聞いた説明してもらった。

 闇の書の騎士。と呼ばれる彼女達は、

 1.「世界中の皆。オラたちに魔力を分けてくれ」

 2.「世界を滅ぼすために」

 3.管理局「させるかぁああああああ!」

 というジュエルシード事件以上の大物捕りらしい。

 

 そんな彼女達を助けたばかりか手伝ってしまった俺。

 どうしよう俺捕まっちゃう?

 空で待機しているフェイトも俺の右肩の上に現れたモニターから響く声を聴いて慌ててムカデに向けて放とうとしていた魔力弾を消す。

 フェイトも俺と同じようにムカデを攻撃しようとしていたみたいだ。

 

 「つ、次から本気出す!」

 

 (明日から本気出す!)

 

 アリシア。それは出さないって言っているようなものだぞ。

 と、馬鹿な反応をしたらエイミィさんが怒りながら指示を出す。

 

 「それより、彼女を早く取り押さえて!フェイトちゃんも!」

 

 「了解ですっ」

 

 「は、はいっ」

 

 俺と一緒に注意されたフェイトは真面目にシグナムの方に向かってバルディッシュを、俺はチェインデカッターを装備し直してシグナムに向ける。

 

 「じ、時空管理局です。大人しく掴まってください」

 

 「…蒐集を手伝ったのにか?」

 

 「はうっ。…それは、その~。じ、事故です!」

 

 「そ、そうなんです。事故です事故!」

 

 言い訳にするには苦しすぎるか。フェイトの弁護もあるが何とも弱すぎる言い訳だ。

 だが、これで二対一。

 彼女には悪いがこちらが有利だ。えーと、念話って対象に念じるように話しかけるんだっけ?

 

 (…フェイト。聞こえるか?)

 

 (っ。なに?)

 

 初めての念話だが上手くいった。あ、一応念のためシグナムにも聞こえていないか確認も取る。

 

 (ヴィータは実はB太で男だった)

 

 (え!?そうなの!)

 

 「すまないが捕まるわけにはいかない。こちらにも事情があるのでな」

 

 シグナムに反応なし。

 シグナムには聞こえていないようだ。

 逆にフェイトは慌てているのが目に見えてわかる。

 

 (すまん。嘘だ。ここからは本当。悪いんだけどシグナムを地上に落として一瞬でもいいから動きを封じてくれ。そしたら俺が一撃で仕留める)

 

 「事情を…聞かせてもらうことも?」

 

 「ああ」

 

 俺の質問にも動じないで淡々と答えるシグナム。

 

 (やってはみるけど。自信はあるの?)

 

 (戦闘不能にならなくても力ずくで抑え込む。そうしたら今度はフェイトが最大出力で俺ごとシグナムを撃てばいい)

 

 (…わかった)

 

 「そうですか。それなら力尽くで捕まえさせてもらいます。二人掛かりで申し訳ないですが、あなたを止めます」

 

 「ふっ。いいさ。我等がやっていることは犯罪なのだからな…」

 

 シグナムは自嘲めいた表情を見せると俺達二人に向かって闘気を放つ。

 

 「嘱託魔導師フェイト・テスタロッサ」

 

 「民間協力者ガンレオン」

 

 「「行きます!」」

 

 俺とフェイトが同時にシグナムに突撃を開始する。そして、シグナムもそれに応じるかのように俺達に向かって剣を振るう。

 

 「さあ、来い!テスタロッサ!ガンレオン!この烈火の将とレヴァンティンはそう簡単に捕らせるほど甘くは無い事を教えてやる!」

 

 シグナムのその声に呼応するかのようにシグナムの持つレヴァンティンの刀身から炎が噴き出した。

 

 

 

 それから数合。

 シグナムはガンレオンが飛べないことを把握したが自分よりも高い所からはフェイトの砲撃。下からはガンレオンの伸縮自在のヌンチャク。ブンブンスパナの射程圏内に入ることから、二人の中間の空を飛ぶことにした。が、

 フェイトのいる上空に行こうとすればフェイトは地面に急降下してガンレオンの傍に行きシグナムを地面に近づけようと誘う。かといって地面にいるガンレオンに集中すれば上空から降り注ぐフェイトの砲撃に対処しきれずにじわじわと追いつめられていた。

 

 (くっ。シャマル。ヴィータ。ザフィーラ。聞こえるか?私だ。済まないが至急援護に来てくれ!)

 

 シグナムは二人の相手をしながら他の騎士達に援護を申し出たが、

 

 (悪いシグナム!こっちもやべえんだ!今はいきなり現れた仮面の男と一緒に白い奴と銀色の奴を相手にしていて手がいっぱ…うおうっ、あ、あっぶねー!)

 

 (くっ、済まないシグナム。目の前にいる使い魔を振り払うにはもう少し時間がいる。もう少しだけ耐えてくれ!)

 

 (シグナム、ごめんなさい、あと数分だけ待って!今、石田先生のお話を切り抜けるから…)

 

 だが、シグナム以外の騎士達も今、自分のことで手が回らなくなっていた。そして、二人を相手にし、かつ、仲間に念話をして援護を要請するという集中力を散漫させることをした結果。

 

 「…捕まえたっ、お願い!」

 

 「任せろ!ライアット・ジャレンチッ、セット」

 

 (オーケーだよっ。やっちゃえ、お兄ちゃんっ)

 

 フェイトはシグナムの一瞬の隙をついて彼女をバインドで拘束する。

 ガンレオンはそれ見るなり自分より大きなレンチを右腕に展開すると、自分の体を軸にしてライアット・ジャレンチを振り回しながらシグナムに強襲を仕掛ける。

 その強襲を仕掛ける際に発生した砂埃がその威力を物語っていた。

 そして、シグナムはそれを見て本能的に覚った。これはマズイ。と、

 だが、シグナムはバインドを解く前にライアット・ジャレンチが何かにぶつかる轟音をその耳で感知すると思わず目をつむった。

 

 ドッガアアアアアアアンッ!

 

 その衝撃で巻き起こった砂煙のなかで、今から襲い掛かってくるだろう激痛を迎えるべく目をつむったままだがいつまで経っても激痛は襲ってこない。

 代わりに、すぐ目の前から寒気を感じさせる魔力を感じた。

 シグナムは意を決して目を開けるとそこには。あの時、自分達を逃がした黒い鎧。

 アサキム・ドーウィンが操るシュロウガが両手で持った魔王剣ディスキャリバーでガンレオンのジャレンチを受け止めている姿があった。

 

 「…言ったはずだよ。烈火の将。()君達(・・)()()君達(・・)目的(・・)を達成してほしいと」

 

 「貴様は…」

 

 シグナムは突然現れたアサキムに驚きを隠せないでいたが、それは他の二人。いや、三人も同様だった。

 

 「あ、アサキム?!」

 

 (な、なんでこの世界にいるの?!)

 

 「っ」

 

 高志とアリシアはアサキムの出現に驚き、フェイトはアサキム襲われた時の恐怖を思い出したのか若干震えている。

 

 「…烈火の将。ここは僕も手伝おう。それじゃあ、昨日の続きといこうか『傷だらけの獅子』」

 

 黒の放浪者は『傷だらけの獅子』に向かってその剣を振るい上げた。

 

 


 
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