No.450051

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 63

soranoさん

第63話

2012-07-09 22:12:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:984   閲覧ユーザー数:923

エステル達がマーシア孤児院に着くと、孤児院は見るにも無残に崩れて焼け落ちて、周囲のハーブ畑は無茶苦茶に荒らされていた。

 

~マーシア孤児院~

 

「これは……」

「ひ、ひどい……」

「完全に焼け落ちてるね……」

焼け落ちた孤児院を見て、エステル達は悲痛な表情をした。

「あれ、あんたたち……?」

「ひょっとして君たち遊撃士協会から来たのかい?」

そこに焼け跡の処理をしていたマノリア村の村民らしき男性達がエステル達に気付いて話しかけた。

「う、うん……」

「皆さんはマノリアの方ですね?」

「ああ……。瓦礫の片付けをしているんだ。昨日の夜中に火事が起きて慌てて消火に来たんだけど……。まあ、ご覧の通り、ほぼ建物は焼け落ちちまった。」

男性の一人が無念そうな表情で答えた。

「そ、それで……。院長先生と子供たちは!?」

「それが……何人かの子供たちが火傷を負って煙をすってしまったようで、無事だったのは院長先生と僅かな子供達で何人か重体で宿の一室で寝かしているんだ……」

「そ、そんな……!」

「………どのぐらい酷いのでしょうか……?」

男性の説明にエステルは悲壮な表情をし、ヨシュアは辛そうな表情で尋ねた。

「正直言ってわからない……マノリアは小さい村だからね……それに加えて冒険者用に売っている火傷した時用の薬がちょうど切れていてね……ありったけの傷薬で火傷は抑えたがあくまで傷薬だからね……村にはどの教会もないから、専門的な薬はないし処置の仕方もわからないんだ。……ただ、希望はあると思うよ。」

「一体それはなんなのでしょう?」

男性の言葉が気になり、ヨシュアは聞き返した。

 

「先ほど『白の木蓮亭』のマスターが傷や病気等を治してくれるところ――癒しの専門であるルーアンのイーリュン教会に連絡したら、運良く癒しの魔術ができる信徒の中でも高度な術を使う方がいらっしゃって、急いでこっちに向かって来てくれているらしいんだ。」

「イーリュンの……それはよかった。」

(………ふむ。こちらの世界のイーリュン教の信徒で高度な治癒魔術をできる者等ティア殿しか思い当たらないのだがな……?まさかルーアンに来ているのか?)

男性の答えにヨシュアは安堵の溜息をはき、リフィアは首を傾げた。

「俺たちはもう少し後片付けをするつもりだけど。あんたらはどうするつもりだい?」

「あ、さっそく宿屋に行ってあの子たちのお見舞いと傷の手当てに……」

「悪いけど、それは後回し。」

「ふえっ!?」

ヨシュアの言葉にエステルは驚いて声を出した。

「この現場、ざっと見ただけでも妙なことが多すぎる。そして、そういう手がかりは時間が経つと失われてしまうんだ。……君の気持ちもわかるけど今は現場検証の方を優先しよう。子供たちのことが心配なのはわかるけど、専門の人がこっちに向かっているんだ。素人な僕達はあまり手を出さない方がいい。下手に手を出して状態を悪くする訳にはいかないしね。」

「………………………………わかった……。あたしたち、遊撃士だもんね。何があったのか突き止めないと。リフィア達もいいかな?」

「ああ……」

「はい、わかりました。」

「…………」

そしてエステル達は孤児院の敷地内を調べ廻った。孤児院を調べ廻ってわかった事は何者かによって放火されたという結論であった。

 

「……魔力の痕跡があるのは気になりますが、この痕跡で感じられる魔力では原因の一つではないでしょうね。炎の魔術を使ったなら炎属性の魔力が漂っているはずです。……ハーブ畑や食料が入った樽が荒らされていた事といい、恐らく全て人の手によって起こされた事でしょうね……」

「ああ、それにこの辺りは特に油の匂いが強い。恐らく可燃性の高い油をこの辺りに撒いて火をつけたんだろうな。」

「……だね。」

「そ、そんな……」

プリネ達の結論を聞いたエステルは信じられない表情をした。

「プリネの言う通り、これは完全に何者かの仕業だと思うよ。」

「それ……本当ですか……?」

ヨシュアもリフィア達の結論に頷いた時、いつの間にかクロ―ゼがいた。

「あ、クローゼさん!?」

「来ていたのか……」

「どうして……。誰が……こんなことを……。かけがえのない思い出が一杯につまったこの場所を……。どうして……こんな……酷いことができるんですか……!?」

「クローゼさん……」

「「「「………………………………」」」」

取り乱して叫んでいるクロ―ゼにエステル達はかける言葉はなく、辛そうな表情で見た。

「………………………………。ごめんなさい……。……取り乱してしまって……。私……わたし…………」

「取り乱すのも無理ないよ。知り合ったばかりのあたしだってちょっとキツいから……。……信じられないよね。こんな事をする人がいるなんて。」

エステルはクロ―ゼの両手を握ってクロ―ゼに同意した。

「エステルさん……」

「子供たちが怪我を負ったのは残念だったけど……イーリュンの人がこっちに向かっているからきっと大丈夫だよ。だから安心していいからね?」

「………………………………。……ありがとう。少しだけ落ち着きました。朝の授業を受けていたらいきなり学園長がやって来て……。孤児院で火事が起きたらしいって教えてくれて……。ここに来るまで……生きた心地がしませんでした。」

ようやく落ち着いたクロ―ゼは授業中であるにも関わらず火事跡の孤児院に来た経緯を話した。

「そっか……」

「院長先生と子供たちはマノリアの宿屋にいるそうだよ。調査も終わったし、僕たちも一緒にお見舞いに付き合わせてくれるかな?」

「あ、はい……。そうして頂けると嬉しいです。」

「それじゃあ、さっそくマノリアに行くとしましょ。」

そしてエステル達はマノリア村の宿屋であり、酒場でもある『白の木蓮亭』に向かった………

 

 

 


 
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