No.449432

二度目の転生はネギまの世界 第十五話

ナギとアリカのデートシーンの裏です。表はありませんが。

2012-07-08 22:25:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6205   閲覧ユーザー数:5897

第十五話「馬鹿と王女が消閑中」

 

 二日ほどかかったが、ようやく王城に帰ってこれた。そして(オレ)が持ち帰った情報と紅き翼(アラルブラ)の調べた情報を合わせたとき、おもしろいことが分かった。現在の執政官(ナンバー2)が『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』の手先、という情報だ。

 (オレ)にすれば、『上層部に内通者がいなければ戦争を長引かせることはできないとか考えないのか?』が正直な感想だ。

 

「ところでゼクト。馬鹿(ナギ)とアリカとリュビの姿が見えないが、どこにいる」

「ん? アリカ姫がナギを引き連れて町に行ったぞ。リュビは護衛としてついて行ったが」

 

 デートか。ったく――TPOを弁えんとは、ずいぶんと歪んだ性根だな。リュミスが付いて行ったのが救い、か?

 

「まあ、それはどうでもいいな。リュビがいる以上、そうそうアリカに傷が付くことはあるまい」

「信用、ですか。そういえばアラン、ひとつ聞いておきたいことがありました」

「何だ、アルビレオ・イマ」

 

 この男(アルビレオ)。軽いところはあるが、紅き翼(アラルブラ)においては頭脳派の一人だ。そして確か、他人の人生を知ることを好む性癖があったはずだ。さて、現状で知らなければならんことがあるか、(オレ)の過去を聞くか、どちらで来るのか。

 

「貴方は、リュビさんとどこまで行ったんでしょうか?」

「――ふ、貴様に期待した(オレ)が馬鹿だった、ということか」

 

 魔法世界編など覚えていないが、これはこんなキャラだっただろうか? いや、(オレ)の影響でこうなったなどと考えたくない。これは最初からこんなのだった。Q.E.D(証明終了)だ。

 

「だがまあ、否定したところで勝手に想像を膨らませるが馬鹿の基礎。教えておこう。あれと(オレ)は仮契約こそ結んだが、それ以上の関係はない」

「つまらないですね。ではその言葉に嘘がないか、アーティファクトへ登録してもよろしいでしょうか?」

 

 そう来るか。ここで否定すれば囃したて、肯定すれば我の名が知られる。ふむ、少々きつい二択ではあるが。

 ――現状維持、か。大戦後であれば別に正体が知られようと関係ない。なぜなら、この大戦に参加するために(オレ)はわざわざ魔法世界まで来たのだから。

 

「構わん。が、この戦いが終結してからにしろ。現状で(オレ)の真名が知られるのは痛手だ」

「今は教える気はないと?」

「何のための仮面とフードと偽名だと思っている? 個人特定を難しくするためであろうが」

 

 まあ、(オレ)の名が不用意に知られた場合、殲滅するだけで事足りる。あまり好まぬ事態ではあるが、最終手段としてはなかなかのものだ。

 

『ごめんなさい、今大丈夫かしら?』

『どうしたリュビ。(オレ)は大丈夫であるが……何か問題でもあったか?』

 

 念話の声色を低くする。念話では周囲の音が聞こえないため何が起きているのか判断することは…………何だ、今の爆音は? 城外――街の方だな。

 

『アラン、問題発生よ。「完全なる世界(コズモエンテレケイア)」の構成員がこちらに――アリカかナギか私かは不明だけれど――攻撃を仕掛けてきたわ。現在ナギが反撃中。アリカを連れて離脱した方がいいのかしら?』

『普通に考えろ。護衛対象を危険に巻き込むなど言語道断だ』

『その護衛対象が、ノリノリで攻め込もうとしているのだけれど……』

 

 溜息すら聞こえてきそうな、リュミスの呆れたような念話。(オレ)も想定外だが……そこまでつまらないのか、王女生活は。

 さすがにこのような状況は想定していなかったからな……人間生活の短いリュミスでは、このような状況下でどうすればいいのか分からず戸惑っているんだろうが。

 

『構わん。護衛に徹しろ。護衛対象が望むなら、その状況下で守り通せ』

『了解。ならしばらく「完全なる世界(コズモエンテレケイア)」と遊んでるわね』

 

 (オレ)らの仕事は護衛。護衛対象さえ無事ならそれでいい。ストレスをため込まれても厄介なだけだ。

 が、紅き翼(アラルブラ)の連中はそうではない。何やら心配そうな連中に振り返り、言葉を放つ。

 

「おい、アルビレオにゼクト。悪いニュースだ。聞きたいか?」

「聞かないとさらに悪くなりそうなので、聞くことにしたいですね」

「そうじゃの、情報はほしいからの」

「では一度しか言わんからよく聞け。馬鹿(ナギ)王女(アリカ)消閑(デート)中に『完全なる世界(コズモエンテレケイア)』に襲われたぞ。現在迎撃ついでに攻め込むつもりだそうだ」

 

 最後の一言に、ゼクトは『あの馬鹿弟子は……』と唸り、アルビレオはうすら笑いを凍結させ、今さっき来たばかりであるが故|(オレ)の話を聞けなかった詠春は、二人の顔を見て『また何かあったのかよ』と言わんばかりに顔をしかめた。

 

 

 

リュミスSide

 

 魔法が敵を吹き飛ばす。

 これだけならいいんだけど、その前に『あんちょこを見ながら』と付くことだけが問題ね。詠唱遅くなるし、片手ふさがるし。

 

「んと……『雷の暴風』!」

 

 それ以上に……広範囲攻撃を街中で使うのは、さらにどうかと思うわよ。大抵は余波だけだから魔法障壁で止められるけど……万一直撃したら、障壁程度じゃ止まらないわよ、この威力だと。

 ああもう、思ってるそばから余波で店が倒壊したわ。これに市街戦なんてやらせない方がいいかもしれないわね。

 

「行くのだ、ナギよ!」

 

 アリカも煽らないでよ……ナギの腕の中にいられると、私が守れないのに。

 ああ、もう。仕方ないわね。頻繁にブレスにさらされ、獲物を障壁ごと噛砕き、なお欠けることなど滅多に無い自慢の牙を研ぎ澄ました龍牙長剣(トゥースソード)及び、私の本来の重量で着地しても、一度足りと罅一つ入ったことのない鱗を削りだし組み上げた龍鱗金鎧(ドラゴンメイル)を召喚し、武装する。共に私の一部を加工したものだから気や魔力の通りがいいし、強度は並大抵のアーティファクトとは比べ物にならない。

 さあ、私が露払いをするから、アリカに傷一つ付けるような真似をしたら後で百倍返しものよ、ナギ。

 

「死にたくないなら――――どきなさい!!」

 

 咆哮。それに気を上乗せし、衝撃波として叩きつける。これは、アランに聞いて以降使用している、ブレスの変化系。

 そもそも龍の吐息は息だけでなく、そこに気を乗せて属性変換することで、火の吐息(ファイアブレス)雷の吐息(サンダーブレス)風の吐息(ウィンドブレス)氷の吐息(アイスブレス)といった各種属性の吐息(エレメンタルブレス)に変化するもの、らしいわ。私もアランに出会って初めて知ったわ。

 吹き飛ばされた完全なる世界(コズモエンテレケイア)の構成員は、体勢を整えながら魔法の射手を足止めに射ってくるけれど、私には無意味。顔に中るものは籠手で弾き、体に中るものは鎧に任せる。ついでに後ろの二人に流れそうなものは、長剣で防いでおくわ。

 

「ナギ、追い打ちは少し待ちなさい」

「なんでだよっ!」

 

 馬鹿ね、やっぱり。仕方ないわね、少し講釈してあげるわ。

 

「今すぐに追えば、叩き潰して終わりね。でも、少し逃げさせて追えば、本拠地を叩けるわ」

「わあったよ。姫さんもそれでいいか?」

「うむ、少しでも多く潰せるほうにしよう。彼らは少しやりすぎた」

 

 会話の最中も目を離していないことに気づいていないのか、完全なる世界(コズモエンテレケイア)の構成員は既に逃げ始めている。それで逃げられるとは思わないことね。

 

「さて、追いかけましょうか。逃げ切れると勘違いした哀れな狐を、ね」

 

 

 

 その後すぐ、私たちは完全なる世界(コズモエンテレケイア)の拠点の一つに辿り着いたけど、既に撤退した後なのか偶然出払っていたのか、人員は逃げ帰った者だけだった。けれど、おもしろいものを私たちは発見した。それは、執政官が完全なる世界(コズモエンテレケイア)の協力者であることを確定させることになった、一通の手紙。

 マクギル元老院議員との相談によって、明日には法務官を呼ぶらしいわ。国内の勢力を一掃する気だと思うけど、うまくいくといいわね。

 


 
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