No.448449

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 41

soranoさん

第41話

2012-07-07 21:58:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:986   閲覧ユーザー数:930

早速新たに起こった強盗事件の調査を開始したエステル達だったが民家等はすでに軍による事情聴取があったのでできなかったので、すで軍が調査をし終えている武器屋やオーブメント工房を周った。その際、ナイアル達と再会して聞いた空賊達が現れた場所の近くには市長邸やマーケットがあるにも関わらず民家に押し入ったことを聞き、首を傾げたが気を取り直し調査を続行するために一端工房を出た。

 

~ボース南街区~

 

「おい、お前たち!」

兵を率いる士官がエステル達を見つけ呼び止めた。

「ん、どうしたの?」

「一言、忠告しようと思ってな。いくら市長の代理とはいえ、お前たちはあくまで民間人だ。我々が調査している最中にウロウロしないでもらおうか。」

「あ、あんですって~!?」

「忠告というよりも、警告ですね。」

士官の物言いにエステルはムッとし、ヨシュアは呆れた表情をした。

「分をわきまえろと言っている。そんなに調べたいのだったら、我々が引き上げた後にするんだな。あまりワガママが過ぎると、また牢屋に招待させてもらうぞ?」

そんなエステル達を見て鼻をならした士官はエステル達を脅した。

「むっ……」

士官の物言いにエステルは士官を睨んだ。

「気にしないの、エステル。どうせ何もできやしないわ。」

「フッ、虎の威を借る狐とはよくぞ言ったものだね。」

「な、なにぃ!?」

シェラザードの冷ややかな物言いとオリビエのからかいの言葉に士官は顔を真っ赤にした。

 

「ほう………余達を牢屋に招待か……面白い冗談を言うな……」

「キャハッ♪逆にそっちが牢屋行きになるんじゃない♪」

「リ、リフィアお姉様!エヴリーヌお姉様も何も知らない方に挑発をするのはちょっと……」

さらに士官の脅しにリフィアは不敵に笑い、エヴリーヌは話を合わせるように士官をからかった。一方リフィア達の態度に冷や汗をかいたプリネはリフィア達を諌めた。

「なんだと?何を寝ぼけたことを言ってる。我らがお前達を捕えて牢屋行きだと?ハッ!民間人の分際で大口を叩いてくれる!どうやら公務執行妨害で逮捕されたいようだな……?」

士官が兵士達にエステル達を拘束する命令をしようとした時、

「……何をやっているのかね」

士官たちの後ろから黒服の軍人がやって来た。

 

「こ、これは大佐どの!?」

黒服の軍人を見た士官は焦って敬礼した。

「栄えある王国軍の軍人が善良な一般市民を脅す上、無実の罪を着せて拘束しようなどとは……。まったく、恥を知りたまえ。」

「で、ですがこいつらはただの民間人ではありません。ギルドの遊撃士どもです!」

黒服の軍人に注意された士官は慌てて言い訳を言った。

「ほう、そうだったのか……。だったら尚更だろう。軍とギルドは協力関係にある。対立を煽ってどうするのだ?」

しかし黒服の軍人は士官の言ったことを気にせず、さらに注意をした。

「し、しかし自分は将軍閣下の意を汲みまして……」

「………付け加えて言うなら彼らを拘束してしまったら君達は良くて牢屋行き、悪くて処刑になるぞ?」

「なっ!?それはどういう意味ですか!!」

黒服の軍人の言葉に士官は焦って聞いた。また、士官につき従っている部下の兵士達も黒服の軍人の言葉にうろたえた。

「私は君達のためにも言っている。……モルガン将軍にも困ったものだ。ここは私が引き受けよう。君は部下を連れて撤収したまえ。」

「し、しかし……」

黒服の軍人の言葉に士官は納得がいかない様子を見せた。

「早朝から始めているのだ。もう充分に調査しただろう。将軍閣下には後で私が執り成しておく。それでも文句があるのかな?」

「りょ、了解しました……撤収!ハーケン門に戻るぞ!」

黒服の軍人の言葉に士官は戸惑ったが部下を連れてその場を去った。

 

「さて、と……遊撃士の諸君。軍の人間が失礼をしたね。謝罪をさせてもらうよ。」

士官達を見送った黒服の軍人はエステル達に向き直り謝罪をした。

「これは、どうもご丁寧に。ま、こちらも挑発的だったし、お互い様としておきましょう。」

黒服の軍人の言葉にシェラザードは意外そうな表情をした後、気にしていないことを言った。

「そう言ってくれると助かるよ。………先程も言ったように軍とギルドは協力関係にある。互いに欠けている部分を補い合うべき存在だと思うのだ。今回の、一連の事件に関しても君たちの働きには期待している。」

「フフ、失望させないようせいぜい頑張らさせてもらうわ。」

黒服の軍人の言葉にシェラザードは微笑みながら答えた。

(な、なんか……すごくマトモそうな人ね)

(うん……誰なんだろう?)

黒服の軍人の態度にエステルは目を丸くしてヨシュアと小声で会話をしていた。

 

「大佐……そろそろ定刻ですが。」

軍人の後ろに控えていた女性士官が軍人に言った。

「おお、そうか。だが、その前にやることがある。……カノーネ君。」

「ハッ。」

軍人と女性士官――カノーネはリフィア達の正面に立ち、その場で跪き頭を下げて謝罪をした。

「……部下達の教育がなってなく申し訳ありません。リフィア殿下、プリネ姫、エヴリーヌ殿。」

「申し訳ありません。」

「……顔を上げて立って構わん。ここでは人目につきやすい。」

自分達の正体を言いあてられたリフィアは本来の皇族としての態度で言った。

「ハッ。」

リフィアに言われた軍人とカノーネは跪くのをやめて立った。

「お前達の名は。」

「名乗り出るのが遅くなり申し訳ありません。王国軍大佐、リシャールと申します。」

「同じく王国軍大尉、カノーネと申します。リシャール大佐の副官を務めております。」

(……この方が「情報部」の……)

(……………………………)

自分達の名を名乗ったリシャールをプリネはナイアルから聞いた情報を思い出し、エヴリーヌは何かの違和感を感じ、探るような視線でリシャール達を見た。

 

「リシャールにカノーネか。……ん?リシャールとやら、お前の顔はどこかで見たことがあるのだが余の気のせいか?」

「ハッ。以前の女王陛下とリウイ皇帝陛下との会談の際に若輩の身ながら女王陛下のお傍に控えさせていただきました。」

リフィアの質問にリシャールは敬意を持って答えた。

「………思い出したぞ。あの時、モルガンやカシウスと共にアリシア陛下の傍にいた者か。それで余達に何のようだ?余達も忙しい身でな、あまりお前達に構っておられんのだ。」

「ハッ。先ほどの部下達の不手際、またモルガン将軍の不手際を重ねて謝罪させてもらうために、どうか殿下達の大切なお時間を少しだけいただいてもよろしいでしょうか?」

「そのことか。よい、もうその件は余達の要求をあの老将軍が呑んだ時点で解決した。先ほどの件もあまり気にしておらぬ。関係のないお前達が謝る必要などない。」

リシャールの言葉にリフィアは気にしていないことを言った。

「いえ、リベールとメンフィルが同盟国同士として、末永く付き合って行くためにも謝罪はさせていただきたいのです。また貴国と密接な関係であり国教でもあるアーライナ教や、イーリュン教ともさらなる密接な関係を結ばせていただくためにも、殿下達のご不満をこの場で絶っておきたいのです。」

「………アーライナ教が我が祖国メンフィルと密接な関係であることはわかるのですが、なぜそこでイーリュン教も出てくるのでしょうか?イーリュン教はメンフィルを含めて、どの国に対しても公平な態度を取っていますが?」

リシャールの言葉に疑問を持ったプリネは尋ねた。

 

「独自で調べた我が軍の情報ではかの『癒しの聖女』殿がリウイ皇帝陛下のご息女であり、プリネ姫や現皇帝、シルヴァン陛下の姉君だという情報がありますので、勝手ながら推測をさせていただきました。」

「ほう。まさかティア殿と我らの関係まで調べていたとはな……なかなかやるではないか。」

リフィアはリシャール達が叔母であるティアとメンフィルの関係まで調べ上げていることに弱冠の驚きを隠せず、リシャール達を評価した。

「ハッ。お褒めの言葉をあずかり、光栄です。」

「ただこれだけは言っておく。ティア殿は確かに我がマーシルン家の者だが、あの方は一信者としてイーリュンの教えを全うしている。よって余達の機嫌を取っても無駄だぞ。」

「わかりました。殿下の大切なお言葉、心に留めさせておきます。」

「やれやれ……モルガンとは違った堅物だな……それよりそこのカノーネとやらも言っていたが時間があまりないのであろう?部下達を困らせないためにも行ってやれ。余達はもう気にしておらぬ。」

「ハッ!それでは失礼いたします!……おっと、言い忘れる所だった。遊撃士諸君、何かあったら連絡してくれたまえ。私でよかったら相談に乗ろう。」

「……失礼いたします。」

リフィア達とエステル達にリシャールとカノーネは軽く会釈した後、その場を去った………

 


 
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