No.448245

化物になっちまったようです act3

転生したのは良いけど……どうも原作とは程遠い世界のようで困るby4番と呼ばれている転生者

2012-07-07 18:04:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1078   閲覧ユーザー数:1047

『これより、実戦による試験を開始する』

 

魔力が安定してきてから数日後。

戦闘スペースにて、俺は人造生命仲間の1人と向き合いながら、スピーカーから流れるベルトルトの声を聞いていた。

 

ていうかおかしいよこの部屋。

所々へこんだり焼き焦げたような跡があったりするんだけど。

後、妙に黒ずんでる部分も……嫌な予感が。まさか血の跡……だったり?

 

おいおい、やたらバイオレンスな空間だな……長居したくねえ……。

 

愚痴ってもしょうがない、目の前の相手を見据える。

 

確か、8番だったかな?

灰色がかったツンツン頭に、将来はホストにでもなりそうな感じの顔。小学生位からイケメンの片鱗を見せるってどうなのよ。

その目は、俺と同じ銀色。

俺達人造生命は、皆目が銀色の様だ。

 

『準備は良いかね?』

 

再び、スピーカーから流れるベルトルトの声。

 

(OK、です)

 

俺は念話で答え、8番は頷く事で肯定する。

 

 

 

『それでは……開始!』

 

 

 

「ッ!」

 

いきなり相手は赤い光を纏いながら突っ込んでくる。容赦無いねほんと!っつか速っ!

 

何とか横に転がって回避、右手に灰色の炎を生み出す。

 

「ジャッ!」

 

勢いをつけてそれを相手へと投げつける、が。

 

ゴッ!

 

8番の周りに赤い光と共に風が吹き荒れ、それを相殺した。

魔力変換素質・疾風、か……!

なるほどね、さっきのダッシュが速かったのは自分への追い風を生み出してたからか!

 

ゴオッ!

 

風が赤い光と圧力を伴い、俺めがけて吹き荒れる!

 

ひゅー、危ない危ない。

唯一嬉しい事は、相手の魔力光のお陰で、風の位置が解る事。じゃなきゃ避けられないからね。

 

さってと。

反撃だ!

 

足の下で軽く魔力を爆発させる。

それにより反動を得た俺の体は、一気に加速、8番に肉薄する!

 

「リャアッ!」

 

右手に灰色の炎を纏わせ、一気にぶん殴る!

見事に吹っ飛ばすことは成功……だけど、とっさに腕交差させてガードしやがった。

 

『ふむ、初めてにしてはよく動けるではないか』

 

博士さんによる評価。人造生命だからか、やっぱり身体能力も高めみたいだな。んじゃなきゃ最初の一撃喰らっちゃってるって普通。

 

ゴバッ!

 

……なんか竜巻とか生まれてんですけど。

 

ちょ、これは……!

 

「ガ、アアッ!」

 

やっぱ避けられない!

っつかいてええぇぇ!身体のあちこちに傷が!

 

「ジャ、アアアッ!!」

 

足下で魔力を爆発させ、強引に竜巻を突破。

今度は両手に炎を発生させ、それを同時に至近距離で叩きつける!

 

流石に、今度は入っただろ……!

 

 

 

 

『そこまで』

 

 

 

 

た、助かった……ここまでか。

 

思わず地面にへたり込む。つ、疲れた……。

 

『御苦労だったな。後で医務室に足を運んでくれたまえ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!ガッ!」

 

(痛い!痛いですってば!)

 

「おっと、すまない。だがもう少し我慢してくれ」

 

医務室にて、俺はベルトルトに治療して貰っていた。

 

畜生、前世だってそんなに喧嘩してなかったからな……痛みにゃ慣れてない。涙出そうだ。

 

「どうだ?初めての実戦の感想は」

 

(とにかく疲れましたよ……しばらく動きたくないです)

 

「はは、そうか。……後で、夕食にするとしよう」

 

(美味いのを期待してます)

 

そんな、何気ない会話をしていると。

 

 

 

ズシン!!

 

 

 

研究所全体が揺れた。

 

「「ッ!?」」

 

(地震ですか!?)

 

「いや違う!モニターに……!?」

 

俺と博士が映し出されたモニターに見たもの。

 

 

 

それは、1人の少年が辺り一面に黒い雷をほとばしらせ、無差別に破壊し回っている場面だった。

 

 

 

 

「10番……!?く、何故だ……!?与えた能力に耐えられず、暴走を……!?」

 

(今はそんな事は後回しだ!とにかくあいつを抑えないと!)

 

「っ、そうだな!」

 

すぐさまスピーカーをONに切り替え、研究所全体に指令を出す。

 

 

「2番、5番、7番、9番!すぐさま10番の迎撃に当たれ!6番、怪我の残る8番の護衛を頼む!まだ彼は自室に居るはずだ!」

 

 

放送を終えてから、ベルトルトは俺を見た。

 

「よし、我々は安全な場所へ避難せねばな……」

 

(大丈夫なんですか?あいつ等だけで……)

 

「1番と3番はいない中、これが最善だ。10番はスペックでは確かに優れている方ではある……が、4人がかりならば問題あるまい!まずは怪我の残る君自身の心配をするのだな!行くぞ!」

 

博士に導かれ、早足で移動する。

うあー、体中いてえ……思う様にスピードも出ない。

 

それでも必死に移動していると。

 

 

 

ボンッ!

 

 

 

後ろの方で、壁が吹き飛んだ。

 

そちらに目を向けると、瓦礫の中に埋もれている男子女子それぞれ1名と。

 

 

「アアァアアァアアァ……!」

 

 

黒い雷を体中からバチバチ出してる少年……すなわち、10番だった。

 

……おいぃ?大丈夫じゃないですよこの状況。

 

「2番、7番……!」

 

あ、瓦礫の中から2人共起き上がった。

つーか他の2人どうしたんだ……まだ来てないとか?だとしたら急いでくれ、マジでピンチだ。

……最悪の可能性はあえて無視で。そういうのを考えている時に限ってろくでもない事になるし。

 

 

2番、7番が左右から同時攻撃を仕掛ける、が。

 

「アアァ、ガアアァ!」

 

黒い雷が辺り一面に放たれ、2人は吹き飛ばされる。

 

っつか、当然こっちにも来てる訳で。

 

「ガ、アアッ!?」

 

「4番っ!」

 

とっさにベルトルトを庇っちまった……うおお、痛い痛い痛い痛い!!

 

「ジャッ!」

 

とっさに灰色の炎弾を生成、撃ち込むが……あっさり弾かれました。だいぶ強くありませんかこいつ?

 

「アアァ、ギアアァ!」

 

第2段来たぁ!

でもギリギリで狙い逸れてセーフ!

 

でも解る、次正しい狙いで来たら間違い無く避けられない!

 

「く、もう少し、もう少しだ……!」

 

もう少しって、目的地までって事ですよね!?

 

 

「ガアアァアアァ!」

 

 

第3段。

10番にまた攻撃しようとした2番と7番を吹き飛ばしたそれは、今度は正確にこちらに向かってくる。

 

 

 

 

これは……詰んだか……?

 

 

 

 

……ふざけんな。

 

勝手に終わらされてたまるか。

 

まだ……。

まだ原作キャラすら見てないっつの。

 

まだ、死ねない。

まだ、死にたくねえっつの!

 

 

 

 

「アアアアアアアッ!!」

 

 

 

 

左手が光る。

それを、本能的に俺は振り抜いた。

 

 

キイイィィン!

 

 

甲高い音と共に、灰色の氷壁が目の前に生まれた。

それは黒雷に粉砕されてしまうが、その威力を弱める事に見事成功する。

 

……っておいぃ?

何で氷が?

魔力変換素質・氷結?炎熱だったよね俺?

 

博士を見る。

 

信じられないという表情半分、実現出来たと得意になる表情半分。

 

 

……あんたが原因かこん畜生。

 

 

「よし、着いたぞ……!」

 

とある部屋。

中には機械が置いてあるだけ。

 

(これは?)

 

「転送装置だ。まあ、残念な事に一方通行にしか使えんがな」

 

話しながら、ベルトルトは機械を急いで起動させる。

 

「……正確な座標を設定する時間は無いな……ええいままよ!」

 

おいぃ?

それどこに行くか解らないって事?

めっちゃ不安なんですけど!

 

「後10秒で転送だ!」

 

転送準備に入る。

 

後4秒というところでまた一際大きく建物が揺れ、部屋の扉が吹っ飛ぶ!

 

と。

 

 

 

ベルトルト博士が俺の隣から離れた。

 

そして、俺に笑顔で一言。

 

 

 

 

 

 

 

「すまんな」

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺の視界は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ウ」

 

気が付けば、俺は夕焼け空の下、公園の滑り台で寝ていた。

 

……あれ、一体どうなって……って、いてて、体中痛い……。

 

「ッ!?」

 

思い出した!

転送の時、あの博士が……!

 

周りを見回すが、やはり博士はいない。

てことは、つまり……。

 

クソ!

何が「すまんな」だよあの野郎!何で俺だけ転移させた!?

叶えたい夢が有ったんじゃねえのかよ!?

 

「アアアアアアアッ!!」

 

思いっきり「馬鹿野郎」って怒鳴りたかった。でも今の俺は、ただ吼える様な事しか出来ない。

 

 

 

……畜生。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば、俺はふらふらと歩き回っていた。

 

体中痛くてたまらないってのに。だけど、動いていないとどうにかなってしまいそうで。

 

ああ、腹も減ったな……あのバカ博士に夕飯作って貰うつもりだったのに……。

 

転生前、特に小学生の頃には泣き虫だった俺は、今は全然泣けなかった。ただ、一粒の涙がやっと頬を伝わるだけ。

 

 

 

……1つだけ、ぶらついて解った事がある。

 

 

 

ここは、地球だ。

それも、日本。

 

 

 

さっきの公園で、もしかしてとは思ってたが……居酒屋とかの看板を見つけて確信した。

 

だから何だって話だけど。

ここが日本のどこかは解らずじまいだし。

原作介入してみたいなんて思っても、こんな状況じゃな……。

 

 

 

 

かくんと。

膝が地に付いた。

ああ、もう限界、か。

腹も減ったし、怪我もしてる。

 

はは、いつもの俺なら間違い無く泣き声言ってたな……。もう言えないけど。

 

 

 

意識がどんどん薄れていく。……死んじまうのかな、俺。

 

完全に視界が黒に染まる直前。

俺は金色を見た気がした。

 


 
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