No.447537

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 10

soranoさん

第10話

2012-07-06 22:03:30 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1931   閲覧ユーザー数:1805

~国境~

「ハァハァ……」

「イリーナ、エリィ!こっちよ!」

「はい、お母様!エリィ、急いで!」

「う、うん、お姉様!」

そこには一つの家族が何者かに追いかけられているように走っていた。

その家族は理由があって家族離れ離れに暮らしていたが、年に一度だけ家族そろって食事をしていたのだ。いつものように、決まったレストランで食事をしていたのだが突如何者かにそこが襲撃されたのだ。襲撃の時、運良く家族全員逃げれたのだが襲撃者達は逃亡者に気付き、執拗に追いかけてきたのだ。

 

「それにしてなぜこんなことが……」

金の髪と瞳を持つ少女イリーナと姉とは逆に銀の髪と瞳を持つ少女エリィの母は息を切らせながら呟いた。

「もしかしたら、最近大陸中で流行っている幼児誘拐事件のグループの仕業かもしれないな……」

2人の父は最近の出来事を思い出し、妻の疑問に答えた。

「そんな………!」

妻は娘達の手を握り、震えた。

「もうひと頑張りしよう。あそこにある関所はメンフィル領の関所だ。噂ではメンフィル領では例の事件は起こってないそうだから、メンフィル領に亡命すれば大丈夫だろう。」

「ええ、そうね……」

 

その家族が逃げようとした場所は百日戦役でメンフィル帝国領となった場所であった。なぜ、メンフィル領だけ事件が起こらなかったのは、問題になっている犯罪グループが自分達の教祖になってもらうためにペテレーネを勧誘しようとして活動目的を話し

断られ、強硬手段としてその場でペテレーネを攫おうとしたが同席していたリウイ達によって討取られ、その犯罪グループの活動をプリネやリフィアにとって危険と判断したリウイによってメンフィル領と大使館があるロレントを徹底的に警戒させ、誘拐が起きても

本国から呼び寄せた夜の活動を主としている闇夜の眷属によって全て未遂に抑えられたのだ。

 

安堵をついている家族の所に突如どこからともなく飛んできたナイフが地面に刺さった。

「「ひっ……!!」」

突如刺さったナイフにイリーナとエリィは悲鳴を上げた。

「クッ……もう、追いついてきてしまったか!」

父は悔しげに嘆き、懐から護身用の銃を出した。

「イリーナ!エリィを連れてあそこにある関所に逃げなさい!」

「で、でもお父様とお母様は!?」

イリーナは母の言葉に驚き、2人に詰め寄った。

「お父さん達はここで2人を攫おうとしている悪者と戦うよ。」

「嫌よ!2人ともいっしょに逃げよう!?」

エリィは半泣きの顔で2人に懇願した。

「大丈夫よ。少ししたら追いつくわ。だから、2人はあそこにある関所の兵士に助けを呼んでお母さん達を助けて。」

「で、でも……」

「イリーナ、お前は賢い子だからわかるだろ……このまま逃げても絶対に捕まってしまうことに……だったら、誰かが助けを呼ぶ必要があるんだ。」

「お願い、2人とも聞きわけて……」

夫妻は娘達の手を握り諭した。

「………わかりました。でも、2人とも絶対に無茶をしないでね……」

「ありがとう、イリーナ。」

そして夫妻は2人の娘の体を抱きしめた。

「「2人ともまた、会いましょう!」」

「絶対にだよ!エリィ、早く!」

「う、うん!お父様、お母様、どうかエイドス様の加護を……」

そしてイリーナはエリィを連れて関所に向かって走った。

 

「……君には辛い思いをさせたね。」

「いいえ、最後にあなたといっしょだからいいのですよ。」

夫の言葉に妻は微笑み、夫と同じように懐から銃を出し襲撃者の迎撃をしようとした。

そしてついに襲撃者達が追いつき、姿を現した。

「……子供達がいないだと?陽動のつもりか、余計な真似を……」

「ふん、ならばこいつらを殺して子供達を奪うまでだ。」

「そんなことは絶対させない!」

「例えこの命果てようとも、絶対にあの子達には手出しをさせないわ!」

そして夫妻達は銃を使って襲撃者達と戦闘を始めた。

 

 

~関所~

「ハァハァ……ついた……エリィ、大丈夫?」

「う、うんお姉様。」

2人はようやくついた関所を見て安堵をつき、イリーナはエリィを連れて関所にいる兵士に話しかけた。

「「お願いします!お父様達を助けて下さい!!!」」

「な、なんだお前達は……?」

関所を守っているメンフィル兵士達は深夜に現れた子供達とその勢いに押され戸惑った。

「今、お父様達が戦っているんです!」

「このままじゃ、2人は死んじゃうよ!兵士さん、お願い助けて!」

「ま、待て!順を追って話してくれ!」

「……何かあったのですか?」

そこに騒ぎを聞きつけた、幼いながらも関所の兵士達の慰問に来たプリネ皇女が姿を現した。

「プ、プリネ様!」

「お休みの所、申し訳ありません!」

兵士達はプリネの姿を見ると姿勢を正した。

 

「……構いません。その子達が何か?」

「ハッ!父を助けろと言って場所や事情も判らずどうすればいいのか、判断がつかなかったのです。」

「判りました……お二人とも何があったのか話してくれませんか?」

兵士から事情を聞いたプリネは2人に近づき事情を聞いた。

「は、はい!実は……!」

同い年に見えるプリネを見て安堵したイリーナは事情を話した。

「……なるほど。事情を話してくれてありがとうございます。」

プリネは事情を聞き、イリーナにお礼を言った後真剣な顔をして兵士に命令した。

「……今すぐ、就寝している兵士の方々を起こしてこの子達の親の救出に向かって下さい。万が一の事を考えて私も行きます!」

「し、しかし救出だけなら我々だけで十分です!プリネ様に万が一の事があったら陛下やリフィア様に顔向けできません!」

「……こう見えても、お父様達から剣術や戦い方、魔術を習っています。だから護身ぐらいできます。それにもしお二人のご両親が怪我をしていたら、私を除いて治癒術ができる方はいらっしゃいますか?」

「「そ、それは……」」

プリネの言葉に兵士達は思わず口をつぐんだ。

「絶対に貴方達から離れたりしませんので、お願いします!」

「わかりました……そこまで言うのでしたら、絶対に我々から離れないで下さい。おい、休んでいるやつら全員叩き起こしてきてくれ!」

「ああ!」

そして一人の兵士が休んでいる兵士たちを起こしに関所の中へ走って行った。

 

「お二人は関所の中で休んでいて下さい。」

「そんな……!そんなことできません!」

「迷惑はかけませんので連れて行って下さい!」

「「お願いします!!」」

プリネは2人の安全を考え関所の中にいるように言ったが2人は強く否定した。

「……わかりました。では絶対に私達から離れないで下さいね。」

「「は、はい!ありがとうございます!」」

押し問答している時間がなかったプリネは仕方なく2人の同行を許した。

そしてプリネは兵士達と共に助けを求めた少女を連れて2人の親が戦っているであろう場所に向かった。

 

そしてプリネ達が関所を出て少しした後、ある場所に夫は事切れ妻も大量の血を流して息絶え絶えになって倒れていた。

「クソ……手間をとらせやがって……」

「どうする?この先はメンフィル領だぞ?」

「構うものか。関所にいる兵士なんて数えるぐらいだろう。行くぞ!」

「「了解した。」」

そして襲撃者達は関所に向かおうとしたが、

「出でよ魔槍!狂気の槍!!」

「プリネ様に続け!弓隊撃て!!」

「「「「「オオッッ!!!」」」」

プリネが放った暗黒魔術の槍と続くように兵士達が撃った矢が襲撃者達に命中した。

「「「グハッッ!!」」」

「全員、抜刀!!!」

「「「「「オオッッ!!!」」」」

「「「ギャぁぁぁ……!!!」」」

さらにメンフィル兵士達は剣を抜き襲撃者達の命を刈り取った。

「「お父様、お母様!!」」

一瞬で戦闘が終了し、イリーナとエリィは血を流して倒れている2人に近寄った。

(こちらの男性はもう……なら女性だけでも!!)

2人の状態を見て男性はすでに死んでいると確信したプリネは女性に近づき治癒魔術を使った。

「暗黒の癒しを……闇の息吹!!」

治癒術を発動したプリネだったがその表情は芳しくなかった。

(……ダメ……傷が深すぎるし血も流しすぎている……お母様がいなくても、せめてリフィアお姉様かエヴリーヌお姉様のどちらかがいれば……)

自分では女性を助けれないと悟ったプリネは悔しげに唇を噛んだ。

そして女性はうっすらと眼を開けた。

 

「イリー……ナ……エ……リィ……」

「「お母様!!」」

母親の目が覚めたことに気付いたイリーナとエリィは母に何度も呼びかけた。

「よ……かった……無事で……」

「気をしっかり持って下さい!今、目を閉じたら死んでしまいます!」

「あ……な……た……は……?」

薄れゆく意識の中、娘以外の声の持ち主を見て、呼びかけているのがイリーナと年が同じくらいの少女に気付き聞いた。

「メンフィル軍の者です!」

「メン……フィル軍……よ……かった……お願い……しま……す……私達はもう……無理です……だか……ら

この子達……の……こと……を……お願い……しま……す」

「わかりました……私の名はプリネ・マーシルン!闇夜の眷属を束ねる名においてお二人は責任を持って守ります!」

「マーシルン……!よかった………!」

母親はプリネがメンフィル王家の者だと知り、イリーナとエリィが王家に保護されたことに安心し涙を流し2人の名を呼んだ。

「イリーナ……エリィ……よく聞き……なさい……」

「お母様しっかり!」

「言うことなんでも聞くから死んじゃやだ!」

「ごめんね……お父さんと……お母さんは……先に……エイドス様の……所に……行くね……だから……

この人の……言う事を……よく聞きなさい……2人とも……幸せに……な……ってね……」

そして女性は事切れ目を閉じた。

「お父様、お母様……?嘘でしょう……ねえ……返事を……してよ……」

「うっ……ひっく……おとうさま、おかあさま……」

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっっ……!!!」」

雲ひとつなく月明かりとメンフィル兵士の持つ照明の許で2つの亡き骸によりそった少女達の泣き声が響いた……

 

 


 
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