No.446422

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~赤き狂戦士~

時空管理局特務殲滅部隊---通称「インフェルノ」。そこには管理局員、次元犯罪者の両方が「赤き狂戦士」と恐れる青年が所属していた。そんなある日彼は、インフェルノの部隊長の命を受け新しく設立された部隊「機動六課」に異動する事になり、狂喜的な笑みを浮かべ素直に異動を受諾する・・・彼の笑みは何を意味するのか?

2012-07-05 13:54:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1458   閲覧ユーザー数:1412

 

第三章 過去との邂逅

第二十五話「月夜の語らい」

 

 

 

地球任務から帰投後、六課隊舍からヴァンはインフェルノ本部にすぐさま連絡入れる。

アレース教団と遭遇した事をカリスに伝える為にだ。

 

〈そうかですか・・・・彼等が動き出しましたかぁ〉

 

「奴らの動きを掴ンでなかったのかァ?」

 

以前からカリスはアレース教団の動きを探っていた事をヴァンは知っていた為、

何故今回の事になる前に事前に情報をよこさなかった事に、腹を立てている。

 

 

〈ええ。しかし、最近の彼らはほとんど活動をしていませんでした・・・・・それに四代目教祖・・・・・・この青年は本当にそう貴方に言ったのですか?〉

 

前の戦闘でルーチェに記録された、カインの記録映像に目をやりながらカリスがヴァンに尋ねる。

 

 

「ああァ、真意はどうかわからンがァ、俺様に確かに自分がアレース四代目教祖と名乗りやがったァ」

 

〈ふむ・・・・・〉

 

考え込むカリス。

カインは確かに自分が四代目教祖だと名乗った。

だが、それが真実かどうかは別だ。

わざと自分が教祖だと嘘を付き、カインに注意が行くように仕向けた可能性もある。

インフェルノの監視の目が彼に集中し、その間に黒幕が自分達の目的の為行動する・・・・・・

今回のカインが残した言葉はカリスを悩ませるに十分な物だった。

 

 

「だが、奴は俺様の正体を知っていたァ。あれは教団のトップしか知りえない情報だァ」

 

〈ならやはり、彼が現教団のトップか?・・・しかし、何故今になって貴方の力を試した

のでしょうねぇ?〉

 

 

アレース教団が創設されたのは今から25年前・・・・・その時の中で、歴代党首は教団の存在を様々な世界に広げる為に行動してきた。

その行動あってか、創設されてから四年ほどで信仰者数1500人を取り込んだ。

だがその長い時の間で、どの党首もヴァンと接触をしたことはない。

 

 

「俺の闘争本能を甦らせるとか言っていたがァ、正直意味がわからン。ハーナを攫いにきたってンならわかるがァ、奴はそうしなかったァ」

 

〈貴方を暴走させ、ユグドラシルの封印を強制的に破壊する?馬鹿な事を・・・・

貴方を完全に殺す事なんて誰一人できやしないというのに〉

 

「だとしたら、奴の目的はなンだァ?」

 

カインの行動の真意を探れば探るほど、深みにはまっていく。

 

〈現時点では、純粋に貴方と戦いたかった・・・・としか思いつきませんねぇ。・・・・ユグドラシルの封印が落ちる一方でまた悩みの種が増えてしまった・・・・やれやれ〉

「あげゃ!知将でもお手上げみてェーだなァ?」

 

〈茶化さないでください。とにかく、教団については今後も調査を続けます。

何かわかったら貴方にもお教えしますよ。〉

 

「ああァ。じゃあなァ」

 

通信を切る。そしてベッドに倒れ込む。

ヴァンの疲労はピークに達していた。

あのカインとの戦闘後、詳しい事情を説明するためにはやて達にある程度の説明をした。

当然嘘の事しか話していない。

カインの事は、一切正体の不明な人物だと話し、アレース教団については何一つ話してはいない。

 

「・・・・眠れねェ」

 

目を閉じるが全く眠れない。

 

疲れているはずなのに何故自分は眠れないのか自問自答し、硬直する。

だが、それでも答えはでず、逆に怒りがたまっていく。

 

 

「・・・・・外にでも出るかァ・・・・」

 

 

 

軽く外を歩けば、眠気も来ると考え、彼は外に行く為に、自室にある冷蔵庫からボトルに入った酒を手に持ち、ベランダに出て、おもむろに飛び降りる。

三階----10メーターも高さがあるが、そんな事は彼には関係ない。

ドスッ という鈍い音と共に、地面に着地し、何事もなかったかのように、歩き出し、

ボトルの栓をを口で抜き取り、酒を喉に流す。

「ちぃ・・・・」

 

いつもならこんな飲み方をしていれば、必ず自分の右中指にはめられている、ルーチェから飲み方を指摘されるが、今は何一つ声がかからない。

 

普段なら煩く感じる彼だが、今はこの静けさは逆に腹立たしく感じてしまう。

 

「・・・・・・ヴァン」

 

ふと、声をかけられ声が聞こえた方をみる。

 

「ハーナ?隊舍敷地内とはいえ、夜道を女が一人歩きするのは危なねェぞ」

 

そうは言うが、本当は全くそう思ってはいない。

ぶっちゃけ逆の事を思っていたりする。

華奢な容姿な彼女だが、リミッターでAA-まで落ちいるとはいえ、正真正銘オーバーSランク魔導師。

並みの人間が彼女に襲い掛かったとしても逆に帰り内にしてしまうはずだ。

 

「・・・・・何か失礼な事を考えてますね」

 

「まさか」

 

心の声を読んだのか、疑いの眼差しをヴァンへ向ける。

 

即答したものの、ハーナの疑いの眼差しは消えない。

 

「まぁいいです。少し私も一緒にさせてください」

「別にいいがァ、夜更かしはお肌に影響が出ちまうぜェ?」

「余計なお世話です。ほら、行きますよ、ヴァン」

「はぁ・・・・待てよ」

 

先に歩き出すハーナを追い掛ける。

 

ベッドで寝転んだ時より、遥につかれた気分でハーナの後を追った。

 

「・・・・教団は何故私を狙わなかったのでしょうか?」

 

唐突にそんな事を聞いてきた、ハーナに呆気をとられるが、直ぐに持ち直りその問いに応える。

 

「わかンねェよ。あのカリスでさえわかンねェーみてェだからなァ」

 

「兄が?」

 

意外だったらしく、珍しく表情を崩しハーナ。

妹である彼女は兄であるカリスの頭の回転の良さは誰よりも知っている。

 

それ故、ハーナはカリスの嫌っていたりする。

 

 

「だが奴らがコレから先に起きるだろう『祭』に関わるのは間違いないだろうなァ」

 

「それは私もわかっています。それが彼らの悲願なのですから・・・・・だからこそわからないんです。何故彼らは私に興味がないと言ったのか・・・・」

 

カリスに話した事をハーナにもヴァンは話してある。

カリスと同様にアレース教団が襲撃者だと知るとやはり何故?と声を漏らしてしまった。

 

それだけ彼らが起こった事は異例な事なのだ。

 

 

「反逆・・・・って訳じゃないのは確かだなァ。少なくも奴らは俺様を未だに崇拝している。

・・・俺様を戦いの神にして・・なァ」

 

戦いを司る神アレース----地球のギリシア神話にも登場する神。

彼等が崇めるアレースはまた違う存在で、こちらは次元世界のものとなっている。

その存在はギリシア神話に登場するものと若干違うとはいえ同一で、『破壊神』、『狂気の神』と、

恩恵をもたらす神というより荒ぶる神として畏怖されている。

 

「存在そのものは、今の貴方と似たようなもの・・・・ですが貴方は全く違う存在・・・・・」

 

「奴らがあくまで、ここ21年の俺様が信仰対象・・・・本来の俺様は逆に奴らにとってはアレースを

冒涜する存在だァ」

 

「・・・・これからどう動くつもりで?」

 

横を歩きながら、視線だけをヴァンに向ける。

 

 

「当然奴らを駆逐する。場合によっては「アレ」を使う」

 

「アレ・・ですか?ちゃんと管理をしてるんですか?」

 

ヴァンの発言に怪訝をあらわにする。

 

しかし、「アレ」をは今・・・・

 

「ファクトリーの連中がちゃンとメンテナンスはしてある。

オマケに大幅改修も施してるみてェーだァ。」

「そこまでやってるんですか?・・・全くもって我が家の財政が底無しなのが伺えてしまいます」

 

ヴァンが話した事がそんなに呆れる事だったの?自分ではそうは思ってはいないが、

実はそうなのかもしれない。

 

 

「お陰様で助かってるぜェ。スポンサーサマ」

 

 

残っていた酒を一気に飲み干して、来た道を再び歩きだす。

 

「帰るのですか?」

「ああァ。話してると眠くなっちまったァ・・・・眠るぜェ」

 

「・・・・・能天気」

 

「ンじゃなァ。ルーチェの修復と調律を頼むぜェ」

 

隊舍への道を歩き出す。一人取り残され、立ち尽くすハーナ。

地球ではありえない、2つの月を眺める。

「私も・・・・帰りましょか・・・・」

 

 

元々ヴァンと話す為に、わざわざ睡眠時間を削って、彼の散歩に付き合ったんだ。

これ以上ここにいる必要はない。

月を見るのやめ、隊舍へ戻る為、歩き出す。

 

「・・・・明日はルーチェの修復作業に集中しましょう」

 

未だ完全に昨日を停止している自分の大切な存在の事を考える。

だとしたら、明日はデバイスルームを貸し切りにしてもらう。

 

久々にルーチェと二人っきりになりたい。

 

「・・・・誰にもその邪魔はさせません」

 

不気味なオーラを放ちながら、その場を後にする。

 

 

 

・・・・だが、それ故ハーナは気付かなかった。

 

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

さっきまでの会話を物陰に隠れている人物に聞かれてしまっている事に・・・・・


 
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