No.446019

ゼロの使い魔 ~しんりゅう(神竜)になった男~ 第七話「広場、そして狼」

光闇雪さん

死神のうっかりミスによって死亡した主人公。
その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。

第七話、始まります。

2012-07-04 23:15:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10580   閲覧ユーザー数:10223

才人が目覚めてから今日で一週間が経った。

その間、事件らしい事件は起きてはいない。

あえて挙げるとするならば、あの餓鬼(がき)(ヴィリエ)が毎晩襲撃に来るぐらいだろうか・・・・・・。

最近は相手をせずに“ラリホー”の呪文で眠らし、部屋に戻していた。

しかし、それでもヴィリエは襲撃を繰り返すため、昨日は最初の時のように“マホカンタ”の呪文を唱えて、眠りについた。

そして、夜明けとともに起きてみたら案の定のびていたが、このままだと懲りないなと思った俺は、懲らしめる目的で餓鬼を咥えると、“レムオル”の呪文を唱え姿を消してから、男子寮のてっぺんに向かった。

てっぺんで餓鬼を下ろしてから、“ドラゴラム”の呪文を唱え人間形態になる。

次に餓鬼の服を全て脱がして、その日のために持っていた縄で縛り塔に吊るした。

 

「・・・・・・これで懲りてくれるだろう・・・・・・」

 

そう呟いた俺は“ドラゴラム”と“レムオル”の呪文を解除して、寝床に戻る。

途中、昨日渡し忘れた小壜(こびん)を咥えて、モンモンの部屋に向かった。

最近、俺は人間形態でのセーブ力を高める訓練をするために、ちょくちょく外出している。

モンモンには無条件で許可を得ているが、俺の誠意として外出した際は秘薬の材料になるものを取ってきているのだ。

 

「さて朝早く起きたし訓練でもするか・・・・・・。〔ルーラ〕」

 

窓の枠に落とさない工夫をしてから小壜を置くと、俺は“ルーラ”の呪文を唱え訓練場所に向かった。

 

「到着っと(きゃぁあああああっ!?)ん?」

 

訓練場所(自然にできた森の広場)に到着するや否や、人の叫び声が聞こえた。

視線を向けると、尻餅をつき怯えている少女と怯えながらも少女を庇うようにナイフを構えている少年がいた。

 

「なぜ子どもが二人・・・・・・」

 

この森は獰猛な獣が多い地帯だ。

 

だから近隣の村はここを立ち入り禁止にしているはずだが・・・・・・?

 

「うわ~ん! 私たち、食べられちゃうよ~!!」

「な、泣くなリリム! ぼ、僕が守ってやるからな!」

「やっぱりこの森に入るなんてダメだったんだよ~!! お父さん達の言い付けを守らなかったから罰があたったんだよ~!!」

「そ、そんなこと言うなよ。お母さんの病気を治す薬草があるって、お父さんが言ってたんだから。それはこの森しかないって・・・・・・、だから仕方がないじゃないか~!」

「うわ~ん! お父さ~ん!!」

 

う~む・・・・・・。親たちの言い付けを無視して、立入り禁止の森へと入ったわけか・・・・・・。

さてこれは困ったぞ。

俺は二人が言うようなことはしないから、このまま立ち去るフリをしても良いんだが・・・・・・、そこは問屋が卸さないんだよなぁ。

俺が立ち去ったとしても、他の獣にこの二人はやられてしまう可能性がある。

さて、どうしよう?

 

「・・・・・・よし。これしかないか・・・・・・」

 

俺はそう呟くと、二人とは反対の方向の森へと向かう。

そして、二人には見えない場所で“ドラゴラム”の呪文を唱え人間形態になると、急いで二人の所に戻った。

 

「ち・・・・・・っ! 早速のおでましか・・・・・・!」

 

二人の背後に巨大オオカミが現れたのに気付く。

しかし、二人は呆けているらしく、背後の巨大オオカミに気付いていない様子だった。

俺がここで特訓を開始してから一週間経つが、あんなオオカミは一度もあったことがない。

なぜここに?という疑問が浮かんだが、そんなこと考えている場合ではない。

俺は“ピオラ”と“バイキルト”の呪文を唱え、剣を抜くとオオカミに猛スピードで“魔獣斬り”を放った。

 

「が、がぁあああああっ!?」

 

攻撃が直撃すると、オオカミは叫び声をあげドスンと倒れこんだ。

俺は剣をおさめると二人の方を向いた。

二人は何が起きたのか分からず目を白黒させている。

 

やれやれ・・・・・・。

 

〔ラリホーマ〕

「「あ・・・・・・」」

「・・・・・・ふぅ。・・・・・・あ」

 

“ラリホーマ”の呪文で二人を眠らし支えて、一息つく。

その時、“オクルーラ”で二人を村へ帰せば良かった事に気付いた。

 

それが最も安全かつ最も簡単だったよ・・・・・・。

 

「はぁ・・・・・・、まぁいい。さて、この二人を届けるか・・・・・・」

 

俺は気を取り直すと、二人を抱えて傍に落ちていた籠を背負い、“ルーラ”の呪文を唱えて二人の村に向かった。

そして、村の近くに到着した時、村の中が騒がしかった。

どうやらこの二人を心配して捜しまわっているらしい。

 

二人は内緒で森に入っていったみたいだな・・・・・・。

それは仕方がないが、本当に無茶をする子ども達だ。

 

俺は呆れつつも村に入ると、一人の男性が気付いて近寄ってきた。

 

「エリム! リリム!」

「あなたがこの二人の親かい?」

「はいっ! 朝起きたら、二人の姿が見えないので捜していたんですが・・・・・・、二人はどこに?」

「・・・・・・立入禁止の森の中だ」

「え!?」

 

俺は二人を父親に手渡しながらそう告げる。

父親はその言葉に驚愕の表情で抱える二人を見つめた。

周りの村人もざわざわとして驚いている様子である。

 

「・・・・・・二人は母親を助けようとしたみたいだ」

「え?」

「これを見てくれ」

「こ、これは!」

 

背負っていた籠をおろし薬草類を見せると、父親はその中身に驚いた表情をする。

 

「無茶をしやがって・・・・・・」

 

そう呟いた父親は、眠っている二人の頭を優しく撫でながら俺の方を向き直して、こう告げてきた。

 

「どなたか知りませんが、二人を助けていただきありがとうございました」

「いや、礼はいい。それよりも奥さんが良くなることを祈っているよ」

「はい」

 

俺はそう言うと、挨拶もそこそこに村を出た。

そして、村が見えなくなった場所まで来ると、“ルーラ”の呪文を唱えて訓練場所に戻った。

 

*****

 

「ふぅ・・・・・・」

 

訓練を終えた俺は一息つくと、昼休憩の時に食べたオオカミの骨に腰を下ろした。

こいつは朝、子ども達を守るために殺したオオカミだ。

 

あの時は仕方がなかったが、やはり無益な殺生はいただけないな。

 

だが、今回の特訓で、大分力をセーブできるようになってきた。

これならば獣を気絶させるだけに留めることもできるだろう。

 

「ん?」

『『『『ぐるるるるるる!!』』』』

「あらら。こいつの仲間か・・・・・・」

 

その時、四匹(よにん)のオオカミが前方から現れた。

俺は仲間の報復に来たと思い立ち上がる。

そして、慌てることなく剣を構えた。

しかし、オオカミ達の会話で、事情が違うことを悟った。

 

「おいおい。こんなヒョロッとした人間にやられたのか、カムは?」

「がははは。こんなヒョロっとした人間にか? 相当、バカなやつだな!」

「そうだな。カムが全然返ってこないから誰かに殺されたと思っていたが、こんなヒョロっとした人間に殺されていたろは思わなかったわ♪」

「な~に。カムは群れの中で一番弱かったんだ。あの人間がまぐれで勝ってもおかしくはない。そうだろう?」

「「「違いない! がはははは」」」

「やれやれ・・・・・・」

 

その会話に呆れた俺は、そう呟いて剣をおさめる。そして、“ドラゴラム”を解除し、神竜に戻った。

人間のままでも良かったが、こいつらにはそれ相応の罰を与えねばならないと思ったからだ。

 

「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」

 

四匹は俺が突然竜となったためか、唖然と俺を見上げてくる。

俺は身体を最大にして、四匹を睨みつけた。

 

「「「「ひっ!?」」」」

小童(こわっぱ)ども、どこへ行く・・・・・・・・・・・・」

((((ビクッ!))))

 

情けない声を出して、四匹が逃げようとしたため、殺気とともに重低音の声を出した。

小童どもはビクッとなり動きを止めると、恐る恐るこちらを見てきた。

その顔は先程までの笑みではなく、恐怖で歪んでいたが、俺は構わず口を開いた。

 

「お前らが仲間のために来たと思って、迎え撃とうしたというのに・・・・・・・。実際は仲間を嘲笑うためだけに来たようだな・・・・・・」

「「「「・・・・・・・・・・・・(ガタガタ)」」」」

「自然界、動物界での原則は弱肉強食、食物連鎖だ。仲間が弱かったから殺されたと思うのは大いに結構。だが、嘲笑うためだけにここまでやってきた・・・・・・、その腐った根性だけは許さん! ゆえにお前らの根性を叩き直してやるわ!!!!!!!!!!!!」

 

俺は殺気をただ漏れさせて、そう言い放つと“いなずま”を発動させた。

 

 ピシャ~ ゴロゴロ ピシャ~ ゴロゴロ

 

俺らを覆うぐらいの雷雲が出現して、稲妻が迸っていく。

その稲妻の一つが小童ども目掛けて襲いかかった。

 

もちろん当たっても気絶する程度の威力だが、小童どもにとっては恐怖であるのは間違いないだろう。

 

「お待ちください!!」

 

稲妻が小童どもに当たろうとした瞬間、森の中からそんな声がしたかと思うと、握りこぶしぐらいの岩が飛んできて、稲妻に当たった。

稲妻はその岩が砕けるとともに霧散する。

 

「・・・・・・・・・・・・」

「竜殿、お待ちください!」

 

俺が稲妻をいつでも放てる状態にしたまま森を見つめていると、その声とともに三匹(さんにん)のオオカミが飛び出してきて、俺と小童どもの間に降り立った。

その三匹は、小童どもよりも一回り身体が大きく毛並みも美しくて、尻尾も立派だ。

そして、最大の特徴として、身体に薔薇のような模様があるのに気付いた。これは小童どもにはない特徴である。

 

 

 

数秒間見つめ合っていると、三匹の中でも毛が一際白く輝いているオオカミが、一歩前に進み出て口を開いた。

 

「私は群れの(おさ)をしているイザナギと申します。こたびは孫たちが御無礼を働き申し訳ありません」

「・・・・・・いや、無礼を働いたわけではない・・・・・・。小童どもの性根が気にくわなかっただけだ(ギロッ)」

「「「「ひっ!?」」」」

 

俺は長老、イザナギのお詫びに対して“いなずま”を解除し、そう告げながら小童どもを睨む。

小童は情けない声を出して、後ろに控えている二匹(ふたり)の背中に隠れてしまう。

 

「・・・・・・それに我はお前らの仲間を殺したのだ。お詫びというのなら、こちらが言うべきものだ」

「いいえ、それには及びません。それは私たちにとって当たり前のこと。カムが死んだことは悲しいですが、竜殿を恨みはしませんよ」

 

イザナギは俺の言葉に対し、そう返事をする。

俺は『そうか・・・・・・』と呟くと、体を縮小して広場に降り立った。

 

「さて話を戻すとしよう。イザナギよ・・・・・・、お前は小童どものことを自分に免じて許してくれと言いたいのだな?」

「はい。孫たちはまだ若輩。今後は私どもがしっかり教育していくので、なにとぞお許しください」

「もとより小童どもを殺すつもりは毛頭ない。小童どものことはお前に預けるとするよ」

「はい」

 

イザナギは俺の言葉に頷くと、二匹の背中に隠れている小童どもの方を振り返り名を呼んだ。

 

「ファトュナ、アレヴ、ネヒル、ヘウェラン」

「「「「は、はい・・・・・・!」」」」

 

小童どもは返事すると、二匹の背中からでてきた。

その表情は、俺に殺されずに済んだことによる喜びと、イザナギが今から言うことによる不安が入り混じっていた。

 

「・・・・・・今までから今回までのお前達の勝手な行動の罰を受けてもらう。良いな」

「「「「はい・・・・・・」」」」

「・・・・・・では、竜殿」

「ああ」

 

イザナギは小童どもにそう告げて、俺の方を向いて頭を下げると小童どもと一緒に森へと入っていった。

俺はそれを見送ると、“ドラゴラム”の呪文を唱え人間形態になった。

それは骨の後始末をするためだ。

このまま放置していても大丈夫だが、これは俺の気分の問題だ。

 

「さて、どうするか・・・・・・」

 

俺はどう呟くと、後始末の方法を考えながら骨に近づいた。

 

「・・・・・・焼くと森も萌え、もとい燃える可能性があるから、ここは切り刻んで細かくするか・・・・・・」

 

そう結論付けた俺は“バキクロス”の呪文を唱える。

 

 バキバキ

 

複数のかまいたちが発生して、骨を砕いていく。

 

骨の量が多いせいか多少時間がかかるが、まぁ大丈夫だろう。

 

「ああ、そういえば・・・・・・」

 

全ての骨が砕けて砂状になった頃、モンモンがオオカミの骨を砕いた砂を欲しがっていたのを思い出した。 

 

「・・・・・・どの種類のオオカミでもかまわないのにと言ってたし、少しもらっておくか・・・・・・」

 

俺は小壜を取り出し骨を少量入れると、砂状の骨を広場にまいていく。

そして、全ての骨をまき終えた俺は、広場の中央にたち黙祷を捧げた。

 

「・・・・・・・・・・・・ん?」

 

しばらく黙祷を捧げていると、二つの気配を感じた。視線を向けると、二匹のオオカミが俺を見つめていた。

俺がジッと見つめていると、二匹が近づき『先程の竜さまですね』と訊ねてきた。

 

「そうだが・・・・・・? ああ。お前達はイザナギと一緒にいた。一体、どうしたんだ・・・・・・?」

「はい。竜さまにお話があります」

「そうか・・・・・・」

 

俺はそう呟くと、近くの岩に座って聞く態勢をとった。

 

「ありがとうございます。私は長老イザナギの娘、アマテラスと申します。そして」

「弟のツクヨミです」

 

そう二匹が自分の名を告げてきた時、俺の名を言い忘れていた事に気付く。

 

「・・・・・・そう言えば、俺の名を教えるのを忘れていたな。俺は神竜。シェンと呼んでくれ」

「「はい」」

「・・・・・・して、話とは・・・・・・?」

「父から竜さま・・・・・・、シェン様にお礼をするよう仰せつかり戻ってまいりました」

「礼・・・・・・?」

 

俺はアマテラスの言葉に首を傾げてしまう。

なぜならお礼をしてもらう理由に見覚えがないからだ。

 

「・・・・・・礼というのは、あの子達の事なのです」

「あの子達・・・・・・? ああ、あの小童どもの事か」

「はい。あの子達―――」

 

アマテラスは頷くと、小童のことなどを語りだした。

それによると、強い力を秘めながら生まれてきた小童どもは将来を嘱望(しょくぼう)されていたが、成長するにつれて己の力に溺れるようになり、力を見せびらかしたり、弱者の力を嘲笑うようになったりと問題行動が目立ち始めたらしい。

最近では、弱者に群れの掟を破るよう要求し、断われば集団で痛めつけて無理矢理従わせるようになったという。

 

「・・・・・・最初は比較的軽い掟破りでした。しかし、それが次第にエスカレートしていって、今回あの子達は群れ最大のタブーを犯させようとしたのです」

「そのタブーとは・・・・・・、“人間殺し”です。父の話よると、僕ら種族は人間の血を浴びると理性がなくなって、ただの殺戮するだけの猛獣になってしまうとのことです。僕らは見たことがないため分かりませんが、父がまだ子どもの頃に一度、そういうことが起きたそうです」

「なるほど。・・・・・・しかし、俺が殺した奴は人間の子供を襲おうとしていたんだが・・・・・・」

 

俺は朝の出来事を思い出して二匹に告げると、二匹は顔を伏せる。

 

「それはあの子達のせいでございます」

「カムはそれは優しい心の持ち主で、あの子達の格好の標的にされていたのです」

「・・・・・・なるほど・・・・・・」

 

二匹の言葉に俺はそう呟くと、腕を組みあの時の事を考える。

 

あの時、奴は子どもを襲うとしていたが、本当は襲いたくなかったのかもしれないな・・・・・・。

 

「・・・・・・恥ずかしながら私たちがそれに気付いたのは、あの子達がこっそりと住処(すみか)から抜けだそうとした時の会話だったのです。その後、私たちは父に報告し、急いであの子達を追いかけたのです」

「そうか・・・・・・。それで今に至ると言うワケだな?」

「「はい」」

 

アマテラスの言葉に俺が腕を解きながら告げると、二匹は頷いて更に話を続けていく。

 

「・・・・・・シェンさまのお陰で、あの子達も気付いたことでしょう。自分たちがいかに狭いところで威張っていたのかを。自分たちの力をもってすれば敵わないものなどいないというのが、驕りであったのを」

「今後、あの子らが力に溺れることはないでしょう。これもシェンさまのお陰。だから、僕らは感謝の気持ちとしてお礼がしたいんです」

「うむ・・・・・・」

 

俺は二匹の言葉にそう呟くと、空を見上げてどうするか考えていく。

お礼がしたいという二匹に対して無下に断ることもできないからだ。

二匹に視線を戻すと、黙って俺の返事を待っている。

 

ふぅ・・・・・・、仕方がない。

 

「分かった。そういうことなら、お礼をしてもらおうか」

「ありがとうございます!」

「僕らができることならば、なんでも仰ってください」

「そうか・・・・・・」

 

俺はそう呟くと立ちあがって、二匹に近づく。

 

「お前たちには俺の手伝いをしてもらいたいのだが、いいかい?」

「「手伝い?」」

「ああ」

 

体に触れられるところまで近づいた俺は二匹にそう告げる。

そして、“指笛の音を聞いたら必ず駆けつけてほしいこと”、“指笛はどこにいても聞こえ、ジャンプをすれば一瞬で俺のところに行けること”、など・・・・・・、つまり“オオカミアタック”の使役狼になってほしいということを説明していった。

以前、“オオカミアタック”を試した時、狼との契約が必要な事が分かった。

だから今この二人を使役狼にできたらなと考えたのだ。

 

「これは強制ではない。できないと言うのなら、それもで構わないが・・・・・・、どうだ?」

「大丈夫です、シェンさま」

「僕も大丈夫です」

「そうか。・・・・・・では、契約をするぞ」

「「はい」」

 

俺が手を額に触れて、“オオカミアタック”の使役狼の契約の呪文を唱えると、二匹の身体が一瞬光に包まれた。

 

ふぅ・・・・・・。

 

「・・・・・・よし、契約完了だ。アマテラス、ツクヨミ。これからよろしく頼む」

「「はい!」」

 

二匹は力強い返事をすると、森の奥に帰っていった。

俺はそれを見送ると、“ドラゴラム”の呪文を解除し“ルーラ”を唱えて、学院に戻った。

 

*****

 

「・・・・・・でも、なぜ男子寮に縛られてたんでしょうね?」

≪さぁな。では主。夜も遅い、早く寝なさい≫

「ええ、そうします」

 

学園に帰って、小壜をモンモンに渡した時、ヴィリエが裸で男子寮に縛られていたことや、それが原因かどうかは分からないけれど風邪を引いたことを、面白そうに語ってくる。

俺はやりすぎたかなと思いつつ、モンモンがベットに入ったのを確認すると、寝床に戻った。

 

『話が違う!』

「ん?」

 

その後、かなり遅めの晩飯を食べていると、女子寮からそういう声が聞こえてきた。

視線を向けると、少年が宙に浮いているのが見えたが、直後に窓ごと吹っ飛ばされた。

 

「・・・・・・あの炎は、キュルケか・・・・・・?」

 

そう呟きながら観察していると、吹き飛ばされた少年とは違う少年がやってきた。

そして、その少年も火にあぶられて地面に落ちていった。

 

「おっ。今度は三人だぞ」

 

その三人もしばらくすると、案の定、炎によって地面に落下していった。

 

「やれやれ・・・・・・」

 

俺はそう呟くと、五人の少年を“ベホイミ”の呪文で、ある程度回復させる。

そして、それぞれの部屋に“オクルーラ”で飛ばし、全員入ったのを確認すると食事を再開したのだった。


 
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