No.445984

ゼロの使い魔 ~しんりゅう(神竜)になった男~ 第三話「ルイズ、そして才人」

光闇雪さん

死神のうっかりミスによって死亡した主人公。
その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。

第三話、始まります。

2012-07-04 22:57:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:14145   閲覧ユーザー数:13632

≪お前か・・・・・・≫

 

俺を呼び出したのは、どうやらモンモランシー(通称:モンモン)らしい。

ということは、鬣に引っ付いているカエルのお嬢ちゃんはロビンか・・・・・・。

どうりで見たことがあるカエルだと思ったよ。

おっとそんなことを考えている場合じゃないな。

今はモンモンのことだ。

 

≪・・・・・・して、我を呼びだしたのは・・・・・・、いかなる用件だ?≫

 

俺はモンモンを見つめ用件を訊ねる。

 

知っているのはなんだからな。

 

「わ、私の使い魔となってもらうためよ!」

「ぶぉおおおおおっ!!!!!!!」

「「「「「!!」」」」」

 

モンモンがそう叫んだ瞬間、雄叫びをあげる。

 

簡単に了解するのは癪だし、ちょっとした余興で全員を怯ませるのもいいだろう。

おっとロビンもいたな。

 

「おい、お嬢ちゃん。そこのモンモンとやらが我々を使い魔として召喚したみたいだが、どうする?」

「(モンモン?)う、う~ん。竜さんは使い魔になるの?」

「うむ、なってみるのも面白い。お嬢ちゃんはどうする?」

「私、竜さんみたいに何もできないけど、使い魔になりたい!!」

「そうか・・・・・・」

 

俺はロビンが使い魔になりたいというのを聞いて、耳を塞いでいるモンモンに顔を近づくと、口調を変え返事をした。

 

≪用件を承った。我、汝を主人と認めん≫

 

モンモンは少し呆気に取られていたが、コルベール(通称:コルさん)が近づき口を開いた。

 

「・・・・・・ミス・モンモランシ。この竜はどうやら、あなたを主人だと認めたようです。それに召喚したのはこの竜だけではないようですね」

「え?」

「竜の頭上を御覧なさい」

 

コルさんが指差す方向をモンモンが見る。

するとロビンが鬣にしがみ付いているのを見つけたのか、物凄く目をキラキラさせた。

 

どうやらロビンを気にいったようだ。

 

「・・・・・・ミス・モンモランシ。早く契約を」

「あ、はい!」

 

モンモンはコルさんの言葉に我に返ると、“コントラクト・サーヴァント”のスペルを紡いでいく。

 

「我が名はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。五つの力を司るペンタゴン。この者たちに祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

モンモンが俺とロビンに口づけを交わした。

すると身体が燃えるように熱くなる。

 

「大丈夫だったかい、お嬢ちゃん?」

「う、うん。ちょっと痛かったけど、大丈夫だったよ」

「そうか」

 

小説では、才人が物凄く痛がっていたので、それよりも小さいロビンが心配になったが、どうやら大丈夫そうなため安心する。

ちなみに俺は図体が大きいので、痛みはほぼなかった。

 

「お嬢ちゃん、主の肩に乗れるかい?」

「う、うん」

 

ロビンはそう言うと、モンモンの肩に飛び移る。

モンモンは少し驚いたが、ロビンの可愛らしさに再度見惚れたみたいだ。

 

「ミス・モンモランシ。無事に終わりましたね」

「あ、はい!」

 

モンモンはそう言うと、生徒たちの中へと戻って行く。

皆は『す、すげぇ!』とか『凄い竜を呼びだすなんて大したもんだよ』とかなど、モンモンに感嘆の声をあげていた。

 

おっと俺がここにいると召喚の邪魔だな。

 

そう思った俺は、人だかりの頭上を通り過ぎて、風韻竜(シルフィード)がいる木の辺りに向かった。

そして身体を変化させ木の頭上で休む体勢になる。

 

「・・・・・・では次―――」

 

それを見て、呆気に取られていたコルさんだったが、気を取り直し召喚の儀を再開させた。

その召喚の儀を見つめていたら、ふと下からの視線に気付く。

視線を向けるとシルフィードがこちらを見つめていた。

 

「・・・・・・お嬢ちゃん。何か用かい?」

「あ、あなた様は何者なのね!?」

「(様・・・・・・?)さっき言ったはずだが? 俺の名は神竜。ぜひ、お見知りおきを」

 

俺がそう言うと、シルフィードはさらに驚いてしまう。

 

俺、何か驚かれるようなこと言ったか?

 

「あ、あなた様は・・・・・・、ちょ、長老たちが言っていた。我々、韻竜の神様なのね?」

「ん? 言ってる意味が分からんが、たぶん違うぞ。俺はそんな大層な竜ではないよ」

「そ、そうなの?」

「ああ。だから、そんなに怯えないで欲しいね。同じ使い魔同士、仲良くやろうや」

「う、うん。分かったのね」

 

シルフィードは納得してない表情をしながらも頷くと、広場の真ん中の方に視線を戻した。

 

さて才人はいつ出てくるかな?

 

そう思いながら、俺も召喚の儀をやっている方に視線を向けた。

それから数人が召喚の儀を行って、それぞれの使い魔を召喚していった。

そして最後にコルさんに呼ばれたのは、ルイズだった。

 

いよいよ、才人の登場か・・・・・・。

 

*****

 

「あんた誰?」

 

何十回か失敗して、やっと才人を召喚したルイズ。

 

それにしてもあの爆発は凄いなぁ。

喰らってないから分からないが、あの威力はイオまたはイオラぐらいあるかな・・・・・・?

下手すりゃ、イオナズンぐらいにもなるんじゃないか・・・・・・?

 

「ルイズ、“サモン・サーヴァント”で平民を呼び出してどうするの?」

 

そんな事を考えていると、誰かがそう言うのが聞こえた。

 

平民ねぇ・・・・・・。原作でも思ったけど、この坊っちゃん、嬢ちゃん方は相当悪い影響を親から受けてるらしいなぁ。

まぁ、それは仕方がないから、俺がどうこうするつもりは毛頭ないけどね。

ん? ルイズが才人に近づいているぞ?

ああ、どうやら才人と使い魔の契約をするみたいだな。

 

「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」

 

ルイズはそう言うと、手に持った小さな杖を才人の目の前で振った。

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

うん、名前が長い。一度に覚えるなんてできっこないな、これは。

まぁ、覚える気はさらさらないが・・・・・・。

 

そんなどうでも良いことを考えていると、ルイズが才人に口づけをした。

才人は身動きできずに、横たわっている。

 

はは、確かファーストキスだっけか。

まぁ、可愛いお嬢ちゃんに奪われたんだから、これはこれで良いんじゃないか・・・・・・?

 

「終わりました」

 

ルイズは顔を真っ赤にしている。

照れてるらしい。

 

才人が喚き散らしているが、完全に無視するルイズ。

 

まぁ、ルイズは平民だと思っているのだから、仕方がないと言えば仕方がないな。

 

「“サモン・サーヴァント”は何回も失敗したが、“コントラクト・サーヴァント”はきちんとできたね」

 

おっ。コルさん、嬉しそうだねぇ。

まぁ、生徒の召喚と契約が上手くいったのだから、嬉しいに決まってるか。

問題は・・・・・・。

 

「相手がただの平民だから、“契約”できたんだよ」

「そいつが高位の幻獣だったら、“契約”なんかできないって」

 

こいつらだよなぁ・・・・・・。

 

「バカにしないで! 私だってたまには上手く行くわよ!」

「ほんとにたまによね。ゼロのルイズ」

 

で、俺の主は主で、ああだからなぁ。

 

「ミスタ・コルベール! “洪水”のモンモランシーが私を侮辱しました!」

「誰が“洪水”ですって! 私は“香水”のモンモランシーよ!」

「あんた小さい頃、洪水みたいなおねしょしてたって話じゃない。“洪水”の方がお似合いよ!」

「よくも言ってくれたわね! ゼロのルイズ! ゼロのくせに(ヒョイ)え?」

 

これ以上、ヒートアップさせるワケにはいかないため、モンモンのマントを口で摘まんで持ち上げる。

そして頭にヒョイっと乗せた。

モンモンは『きゃあっ!?』と言って頭の鬣にしがみ付く。

ちなみにロビンはモンモンと一緒に俺の頭の上だ。

 

≪これ以上、無様なマネはやめなさい≫

「う・・・・・・っ!?」

 

何か言おうとするモンモンを威圧感たっぷりな声で黙らせる。

才人は俺の姿を見て呆気にとられていたため、使い魔のルーンが刻まれているのには、気付いていないみたいだった。

 

「・・・・・・ふむ・・・・・・」

 

我に返ったコルさんは才人の左手の甲を確かめる。

そこには“ガンダールヴ”のルーンが刻まれていた。

 

「珍しいルーンだな」

「何なんだあんたら!」

 

才人が怒鳴るが、誰も相手にしない。

 

「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」

 

コルさんは踵を返すと、宙に浮いた。

才人はその状況にまたもや口をあんぐりと開けている。

 

まぁ、現代日本に住んでいた才人にとっては、ファンタジーの世界だもんな。

そのようになるのも頷ける。

 

「あ、あの・・・・・・」

≪ん?≫

「教室に・・・・・・」

≪ああ、そうだったな。しっかり掴まってなさい≫

「は、はい」

 

何故かモンモンが大人しい。

 

まぁ、さっきの俺の威圧で少し萎縮してしまったのだろう。

 

そう思うことにした俺はコルさんや他の生徒たちの後をついて行くのだった。

 

*****

 

あの後、復活したモンモンは俺たちに名前を与えてくれた。

カエルのお嬢ちゃんはロビン、俺はシェンだ。

それから俺は学園の隅で寛いでいた。

モンモンの部屋で寝ても良かったが、俺も一応男なので、こちらで休むことにしたワケだ。

 

「そう言えばドラゴラムを試してなかったな。ちょっくら、試してみるか。〔ドラゴラム〕」

 

ドラゴラムの呪文を唱えてみると、みるみる俺の身体が小さくなり終には人間の姿になった。

夜暗いから本当にテリーになっているのかは分からないが、人間であることは分かる。

 

「まぁ顔はいつか見る機会があるだろう。ん? 腰に何かが・・・・・・、おっ。これは剣じゃないか!」

 

腰に何かがあるのに気付いて調べると、何と剣が差してあった。

 

しかも“ドラゴンスレイヤー”だね、これは・・・・・・。

ん? 柄の部分に紙が巻きついてるぞ・・・・・・?

 

「これは死神からの手紙じゃないか」

 

俺は寮塔で明るい場所で死角になる場所まで来ると、手紙を読み始めた。

 

《お詫びとして、人間になった際に剣が現れるようにしました。剣はあなたが一番欲しいと思っている姿になっていると思います。是非、お使いください。なお、この手紙は十秒後に消滅します》

 

きっかり、十秒後に手紙は消滅した。

 

何、この演出・・・・・・? まぁいっか。

これでテリーの剣技の練習ができるしな。

有難くもらっておこう。

 

「さて今日は遅いし寝るとするか・・・・・・」

 

俺は神竜に戻って、学園にある樹木の上に向かう。

そして休む体勢をとり眠りについたのだった。


 
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