No.445503

ぬこの魔法生活

pluetさん

気が付けばぬこでした。わけも分からず、憑依した主人公はとりあえず少女たちとだらだら過ごします。

基本原作準拠でいきたいと思いますが、ところどころとらはが混じるかもしれません。
また、この作品は俺TUEEEEといった描写は皆無になる予定です。基本ゆるゆる、ほのぼの路線でいきたいと思いますので苦手な方は戻るのキーを押すことを推奨します。

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2012-07-04 16:29:31 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:16193   閲覧ユーザー数:14915

 

 ◆ ぷろろーぐ ◆

 

 

 その日、朝から猫だった。

 手には肉球。鋭い爪。三角の耳。黒く柔らかな毛並みをしたしっぽ。

 どこからどう見ても猫。紛うこと無き猫である。

 

 

 

 

 …………おい。

 待て、ちょっと落ち着こう。こういう時はあれだ。素数を数えてkoolじゃないcoolになるのだ。2,3,5,7,11,13 …… 100万飛んで1。

 というかこれはいつまで続けたら落ち着くのだろうか? オチがつくと落ち着くの二つの意味で。

 あれ? 今 かなりうまい事言わなかった? 座布団2枚はかたいな。

 

 

 バカな事を考えて適度に落ち着きを取り戻せたので、ここいらで切り上げるとしよう。決して面倒になったわけじゃあない。

 まぁ、ともかく現状把握から始めよう。圧倒的に情報が不足しているからな。

 

 確か…昨日はいつも通りのつまらない講義で教授の話を右から左、左から右へとひらりひらりと聞き流して、すぐに下宿先のアパートに帰ったはず。

 ……別に帰り道で猫地蔵の頭を破壊して呪いをかけられたなんてことはなかったし、日課のネットサーフィンをしつつ、適当に飯をつくって、風呂に入って、すぐに寝た。うん、間違いない。まるでダメ人間の行動パターンな気がするが気にしてはいけない。

 

 別に転生トラックだとか、胡散臭い神(笑)が現れて「間違えて殺しちった☆ てへぺろ。お詫びに転生させてやろう、HA HA HA!」

 なんてこともなく、今は猫になっていると。

 

 ―――なるほど、わからん。

 いや、転トラとか神様転生とかされても解らんけどね。

 

 しかも、この転生(いや、むしろ憑依か?)の所為か知らんが名前が思い出せないという罠。

 これがかの有名な孔明の罠ですね、わかります。(違います)

 

 リアル『吾輩は猫である、名前はまだない』状態www。笑えねぇし、救いがない。

 加えていうなら、飼い猫ですらないらしい。現在 ダンボールという一国一城の主である。

 あれか、スネークごっこでもしろと? 猫なのにスネークとはこれ如何に。

 さらに兵糧も水の備蓄もなく、申し訳程度に敷いてある新聞紙にひもじさが加速する。篭城なんて出来やしない。

 

 

 はぁ……これからどうしろと?

 いや、確かに生まれ変わるなら猫になってNEETよろしくだらだら食っちゃ寝て暮らしたいとか、高校の時にクラスの卒業文集か何かに書いたことはあったけどさぁ。野良猫じゃあ無理だろ。

 ていうか、下手したら保健所へ送還&毒殺のコンボとか…… オワタ \(^o^)/

 

 

 野生とは 斯くも厳しい ものである 

 季語なし。意味なし。オチもなし。ないない尽くしであるよ。 

 

 

 もういいよ、寝る。

 不貞寝? そうだよ、悪いかよ!!

 いくら叫んでも口から漏れるのは、にゃーとか、みーとか普通の猫の鳴き声ばかり。

 ちくしょう、かわいいじゃねえか。自分の声だと思うと泣きたくなるが……

 もうやだ。叫んだら余計に疲れたし、俺は寝るぞ! お休み!

 

 

 あぁ、願わくば次に目が覚めたらこの夢が覚めていますように……

 そんな事を思いながら、目蓋を閉じる。やはり何だかんだで疲れていた所為か、それとも精神安定のためなのか。そのまま、気を失うように眠る。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――意識が落ちるその時に、どこかで女の子の声が聞こえた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がその子と出会ったのは、本当に偶然。特別なことなんて一つもない。

 それでも、私たちが出会ったのは、やっぱりどこか特別で、必然だったんじゃないかなって思う。

 

 

 

 私の家族はお父さんとお母さん、お兄ちゃんとお姉ちゃん、そして私の5人家族で自他共に認める仲良し家族です。お父さんとお母さんはいつまでも新婚さん気分でべったりだし、お兄ちゃんとお姉ちゃんはとても仲良しで、そんなみんなの中心に私がいて、私もみんなが大好き。

 

 でも、お父さんが入院してからは、お母さんも、お兄ちゃんも、お姉ちゃんもみんな忙しくなってしまった。お母さんはお店と病院を往復することになり、お兄ちゃんやお姉ちゃんは剣の修行に加えてお店の手伝いを毎日のようにこなしていた。

 

 そんな中、自然と私は一人でいることになっちゃったけど、私は迷惑をかけないように“いい子”でいることにした。

 本当はわがままも、聞いて欲しいことも、甘えたいこともいっぱいあった。でも、いい子でいればみんなが褒めてくれた。

 

 ひとりでお留守番できたね、えらいねって。

 

 それがうれしかったから、わがままを言うことをやめた。

 ニコニコ笑って、みんなに大丈夫だって、さみしくないよって伝えたの。

 

 でも、やっぱり誰もいないお家にひとりでいるとふさぎ込んじゃうから、別にお友達がいるわけじゃないのに公園で遊ぶことにした。

 公園ならほかにも私ぐらいの子たちがいるから、この寂しさだってまぎれるかもしれないって思ったから。

 

 でも、みんなもうお友達と遊んでいて、なんだかすごく悲しくなっちゃって。

 なんだか遊ぶ気にもならなくて、ひとりベンチに座ってほかの子たちが遊んでいるのを見て過ごしていた。

 

 中には一緒にあそぼって言ってくれる子もいたけど、私なんかが入っちゃうと楽しくなくなるんじゃないかって思って、断っちゃった。

 そんな私を見て、誘ってくれる子は日に日に少なくなっていった。

 

 

 そんな日が続いたある日。公園のベンチに座っていると、どこからか本当に小さな鳴き声が聞こえた。

 私はすることもなかったし、その声がどこからするのか探すことにした。どこか悲しそうな、その声を。

 

 途中でその声は止まっちゃったけど、声の主は割とすぐに見つかった。

 小さなダンボールの中に敷かれた新聞紙の上にちょこんと、小さなふわふわとした黒い塊が丸まっていた。

 

 「ねこさんだぁ……」

 

 笑みをこぼしながら、思わずつぶやいてしまった。

 途中で聞こえなくなったのは、寝ちゃったからなんだねとか

 漫画でよく見るけど初めてダンボールの中にいる捨て猫を見たなぁとか

 そのときは割りとどうでもいいことを思っていたけれど……まだ小さなその子がひとりで寝ている姿になんだか既視感を覚えた。

 

 

 ―――そっか、この子は私と同じ……一人ぼっちなんだ。

 

 

 

 不意にそう思った。

 

 

 

 そうしたら、いても立ってもいられずにそのダンボールを抱えて、その子を起こさないようにゆっくりと家に帰っていた。

 

 

 このときの私は、お母さんが喫茶店をやってるだとか、私が決めた“いい子”でいるなんてことはすっかり頭の中から抜け落ちていて。

 とにかくこの子と一緒にいてあげようということしか考えていなかった。

 

 

 今振り返ってみると、やっぱり私は寂しかったんだと思う。

 でも、この頃の私に聞いたら、意地を張って「違うもんっ」って言うかもしれないけどね。

 そんな寂しさから来た行動だったとしても、このときこの子を連れて帰ったことは正解だったと思う。

 

 

 

 

 

 なぜなら

 このとき、私は初めてのお友達ができて

 ここから私とこの子の物語が始まったのだから。

 

 

 

 

 

 
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