No.443242

3dis Log Video_お試し版「正しい手のつなぎ方」

お試し版ログビデオ、主にわけもなくユニギア。
その他、名前を伏せてメーカーキャラカメオ出演。
特徴が割とはっきり出ているので、分かる人はは分かるかも。

2012-06-29 13:11:12 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:667   閲覧ユーザー数:645

 

 

 

 

 

 

 

3dis Log Video_お試し版

 

 

 

 

 

「正しい手のつなぎ方」

 

 

 

 

 

 

○ルウィー・東北東エリア・ビアンコネルシャイン村・本村ヤシ浜付近・昼

 

    ルウィーの中でも有数の温暖観光スポット。

    と言う割にはあまり人を見かけない。

    村のシンボルである太陽を表したオブジェに、頭より少し小さめのジェントル系ハットを斜めに被ったユニが寄りかかっている。

    袖のないワイシャツに白ドット黒ネクタイ、腰のベルト部分から肩にかけてVの字に大きく開かれた薄手の上着、ショートショートパンツにニーハイブーツとオトナっぽく格好は付いているものの、気合を入れ過ぎたのか、どことなく様になっていない。

 

ユニ「ふぅ……」

 

    ため息をついた後しゃがみこみ、両手で顔を覆い隠す。

 

ユニ「見られてるのよねぇコレも……文字通りゲイムギョウ界中の人から」

ネプギアの声「ユニちゃーん!」

ユニ「なっ!?」

 

    ユニ、遠くからのネプギアの声に神経をとがらせる。

    すぐに立ち上がると、ネプギアがユニの元へ走ってくる。

    シャープなルックスのユニとは対照的に、白いキャミソールの上に薄ピンクに薄手の五分そでベスト、そして全体的に上に釣られているような赤いバラを思わせるようなフリルのスカートに茶のアンクルベルトとヒールつきサンダルと全体的にソフトな印象。

    ユニ、咎めるかのような表情。

 

ユニ「あんまり大声出さないでよ。何事かと思われるじゃない」

ネプギア「……ごめん。すごく久しぶりのデートだから、つい……」

 

    肩を落としてため息をつく。

 

ユニ「はぁ……」

ネプギア「むぅ……どうしてそんなため息付くの? 今日になって突然メールで遅い! って呼び出すまで音沙汰なしだったのに」

 

    流し目気味にネプギアを見る。

 

ユニ「遅いから遅いってメールやったのよ」

ネプギア「でもでも……今日のデートはゲイムギョウ界全体のためでもあるし、わたし達ももう”ライブプレーヤー”政策しなきゃだし……(ごにょごにょ」

 

    ネプギア、俯きがちに指先を遊ばせながら、声から自信を消していく。

    ユニ、前かがみで腰に両手をあてながら。

 

ユニ「あのねぇ、何でアタシ達のデート撮ってそれを政策に使うのよ!? まさか、アンタが遅刻した理由って”あれ”!?」

 

    ネプギアの後ろで浮いている、カメラを下げたトンボ型のメカを指さす。

    ネプギア、面喰い半歩後ずさる。

 

ネプギア「あ、あれだけじゃないよぉ……」

ユニ「テスト投稿すんなら普通にネコ鍋とかでいいじゃない!」

ネプギア「あ、あの、あのね? 視聴率とってチャンネル全体の印象よくしたいって言ったら、お姉ちゃんがね、ユニちゃんとのデート映像投稿したらいいって……」

 

    片手で頭を抱えて大きくため息をつくユニ。

 

ユニ「なんでアンタはネプ姉の言葉ならなんでも鵜呑みにしちゃうわけ……」

ネプギア「わたし、そういうの分かんなくて……」

ユニ「……もういい」

 

    ばつが悪そうにささっと話を切り上げ、ネプギアを通り過ぎ、オブジェ正面を向かって右に進むユニ。

 

ネプギア「あ……待ってよぉっ」

 

    若干の戸惑いを見せつつユニの後を追いかけるネプギア。

 

 

 

○同・青物市場通り

 

    普段のルウィーからはあまり想像できないような、南国感覚あふれる市場。

    売人が声をかけてくる中、きょろきょろと視線を変えながら進むユニの後を、やや不安げなネプギアがついてくる形で歩いている。

    その距離は手2つ分。

    トンボメカはそんな二人の様子を映している。

 

ネプギア「あの……ユニちゃん」

ユニ「ん?」

 

    不意にネプギアの声が洩れ、振り向かずに返事をするユニ。

    ネプギア、俯きがち。

 

ネプギア「どこ……いく?」

 

    ユニ、少々の間を開けて答える。

 

ユニ「……適当にぶらぶらするでいいじゃない」

ネプギア「……」

 

    ココナッツジュースを主に売るテントを離れてすぐに。

 

???「おかえりなさいませ! お嬢様方!」

 

    耳元で聞こえた、聞いただけでスマイルであることが分かるような声。

    おもわず声の方向へ顔が向いてしまうネプギア。

    トンボメカもそこで止まる。

    そこに立つのは、三角フラスコ状の帽子を被ったメイド服の少女。

 

???「本日も摩訶不思議な時間を、お楽しみください!」

 

    少女、ネプギアが目を向けたことに気付き、フラスコ状の帽子をとり、ネプギアに帽子の中を見るように促す。

 

ネプギア「……?」

 

    中に何もないことを確認した後、ひるがえし、ゆっくり揺らすように帽子を回す。

    それに釣られて顔を回すネプギア。

 

 

 

 

 

 

 

 

    回す手を止めて、ぽんと帽子の先を軽く叩く。

 

ネプギア「ひゃっ!?」

 

    その瞬間、帽子の中から何かが落ちてくる。

 

ネプギア「わぁっ!?」

 

    落ちたものに目を取られるネプギア。

    少女、さらに帽子をひるがえす。

    帽子の中からハトが飛び出て飛び去っていく。

 

ネプギア「おぉっ!!」

 

    ハトが飛び去った方向を向くネプギア。

    その視野内に、遠くの方まで行ったユニが映り込む。

    すぐにユニに焦点を合わせる。

 

ネプギア「あ、あれ? あれぇ!? ゆ、ユニちゃ~ん!」

???「いってらっしゃいませ! お嬢様」

ネプギア「あ、す、すいません! ちょ、待ってよぉ!」

 

    少女に軽く頭を下げつつ、トンボメカと共にユニを追いかけていく。

    少女、去っていくネプギアの背中に手を振る。

 

 

 

○同・民家集合地帯

 

    青物市場の通りの裏側、落書きだらけの壁とそれを水の出る機械を背負って清掃している男を一瞬横目に、ヴェネツィアのような光景を遇に見ながら、先ほどのルートを戻るように歩くユニ。

    ネプギアがユニのそばまで走って追いついてくる。

 

ネプギア「お~い! ユニちゃ~ん!」

 

    傍で止まって一度深呼吸をするネプギアを余所に、ユニはネプギアを見ずに進んでいく。

 

ネプギア「あ……」

 

    顔をあげてそれを見る。

    姿勢を戻し、頭を俯かせ、先ほどよりも少し表情を暗くしながら後を歩いていく。

    トンボメカ、心配そうにネプギアをカメラで見つめる。

 

 

 

○同・噴水広場・<回想>

 

    まだ噴水前にある飲食店のテラスに人が溢れていたころ。

    ネプギア、元気よくユニの手を引いて噴水の前まで連れていく。

    きちんと手をつないでいる。

    噴水の底を指さし。

 

ネプギア「見て見て! 底のところに貝殻がいっぱい!」

ユニ「わかったからそんなにはしゃがないの」

 

    ユニの表情もまんざらではない。

 

 

 

○同・噴水広場・<現在>

 

    テラスが好き勝手に荒れているまま閉店しているあの時の飲食店。

    にぎわいは消え、近くで聞こえる水の波と、遠くから聞こえる海の波の音だけが聞こえる。

    特に何にも目に留めずに歩くユニの後を、ネプギアとトンボメカは先ほどよりも距離を置いてついていく。

    二人の距離は丁度噴水の塔の幅。

    噴水の塔が二人の間に壁を作っているよう。

 

ネプギア「このお店……もうやってないんだね……」

 

    ネプギアの言葉も無視して先へ進むユニ。

    ネプギア、再び俯いて後をつける。

 

 

 

○同・輸送ボート発着場付近・<回想>

 

    ヤシの木皮で編んだ果物かごをゴールに、黒人の子供達がはずみのいいパイナップルでサッカーをしている。

    それを通りがけに見て笑顔になる、天秤のような輸送器具でスイカを運ぶ男。

    他愛のない話をしながら歩く主婦達、そして親子。

    たった今輸送ボートを岸に止めた男、気さくな様子でネプギアとユニに声をかける。

 

ボート乗りの男「やあ女神様方。よかったらおひとついかがかな?」

 

    そう言って、実がスイカのように赤いメロンをハーフサイズでネプギアに渡す。

 

ユニ「あら」

ネプギア「いいんですか?」

ボート乗りの男「ああいいとも。二人で仲良く食べるんだよ」

ユニ「ッ……/////」

 

    ユニ、ボート乗りの男の言葉で赤面する。

 

ネプギア「ありがとうございます! ユニちゃん、あっちで一緒に食べよう?」

ユニ「あ……う、うん!」

 

    ぎこちないながらも、全力で首を縦に振る。

 

 

 

○同・輸送ボート発着場付近・<現在>

 

    果物かごは木皮が解け朽ち果てて、その後ろの壁には深紅の藻が大量に生えている。

    輸送ボートも真っ二つに割れており、そのまま放置され浮かんでいる。

    ネプギア、波音以外は静寂に押しつぶされている中、少し大げさに口を開く。

 

ネプギア「……なつかしいなぁ! ほら憶えてる? あのボートに乗ってた人からスイカみたいなメロンもらって、一緒に食べ……」

 

    ユニ、多少歩みをゆるめるも、ネプギアの言葉に耳を貸す様子を見せない。

    ネプギア(とトンボメカ)とユニとの距離が、割れた輸送ボートの長さ程に伸びる。

    トンボメカ、ネプギアの表情をカメラでとらえ、うかがう。

 

ネプギア「……」

 

    ネプギア、後の言葉が出せず、再び表情を暗くしユニについていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○同・ヤシ浜・シャイニーマークホテル前・<回想>

 

    ホテル前の二つのアトラクションにそれぞれホテルからオブジェまでの距離を超える行列ができ、にぎわっている。

    左にロケットホバー、右にダッシュホバーという乗り物。

    ダッシュホバーのベルトをつけた少年が、リニアブースト方式のジェットコースターの如く、地上から空中にかけて特設されたコース上を急加速しスタートする。

    ネプギア、ユニと共にロケットホバーの行列に並び、ダッシュホバーの勢いに目を輝かせる。

 

ネプギア「はあぁ……すごいなぁ……あんなに小さいのにあそこまで推進力が出るなんて……!!」

 

    ユニ、ロケットホバーを指さしながら。

 

ユニ「これ終わったらあっちも乗る?」

ネプギア「うん! 乗りたい!!」

 

    ネプギア、満面の笑みと、それを余すことなく出した声で答える。

 

ユニ「ふふっ……子供みたいねアンタ」

 

    ユニ、つい笑みがこぼれる。

    それにむくれたような表情になるネプギア。

 

ネプギア「むぅ……喜んでいいんだかわかんないよそれぇ」

ユニ「喜んでいいのかって……」

ネプギア「あ! ロケットそろそろ飛ぶよ!」

 

    はしゃぐようにロケットを指さすネプギア。

    ロケットホバーの方からカウントダウンの音声が聞こえてくる。

    行列の大衆と一緒にカウントダウンを始める二人。

 

「Three! Two! One!」

 

    ロケットホバーの装置をスタッフと一緒に背負った少年がためるように。

 

少年「宇宙~~~~~~ッ!!」

 

    そして掛け声と共に、ほぼ霧状にまでなった大量の水がホバーから噴射され、少年が飛ぶ。

 

少年「キタあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

    大量の水は行列を作るギャラリーにかかる。

    後ろの方にいる二人にもかかり、二人はそれを楽しむ。

 

ネプギアの声「ひゃあ~~……すごい勢い」

ユニの声「ここまで飛んできた……」

 

    少年、ホテルの鐘突き台にある輝く、この村のシンボルマークを優に超える高さに到達し、一緒に飛んだスタッフがパラシュートを開く。

 

 

 

○同・ヤシ浜・シャイニーマークホテル前・<現在>

 

    輝いていたシンボルマークは汚れやサビでその輝きを失っている。

    ユニ、追いかけてくるネプギアに一切振り向かずにホテルへと向かう。

    ネプギア、おずおずと。

 

ネプギア「ユニちゃん……ホテルになにかあるの?」

 

    ユニ、そっけなく。

 

ユニ「ホテルでちょっと休んで帰る」

 

    ネプギア、ユニの言葉に耳を疑い、足を止める。

 

ネプギア「……え?」

 

    すぐさまユニに向かって走る。

 

 

 

○同・ホテル入口

 

    水のカーテンが覆っているような入口の前、ユニのすぐ後ろまで追いつくネプギア。

 

ネプギア「もう帰るの!? まだ始まって全然経ってないよ!?」

 

    カーテンの向こう側へ進もうとするユニ。

 

ネプギア「ユニちゃん!!」

 

    ネプギア、とっさにユニの手首をつかむ。

 

ユニ「……なによ?」

ネプギア「わたし……なにをしちゃったのかな……?」

 

    声を震わせ、ユニの肌を探るようにつかみなおす。

 

ユニ「……」

 

    ユニ、そのままの体勢で黙る。

    ただ、軽く拳を作り、掴まれた腕を震わせながら。

 

ネプギア「……」

 

    ネプギア、目を伏せてユニの手首から自分の手をそっと離す。

    その瞬間、ユニの拳がゆるみ、腕の震えが止まる。

    そのままネプギア、先ほどまでユニの手首をつかんでいた右手を庇うように左手を重ねる。

 

ネプギア「そっか……わたし……また独りよがりに……ユニちゃんを……」

 

    ユニ、後ろを振り向く気配だけ見せる。

    少しずつ、少しずつ後ずさるネプギア。

 

ネプギア「ごめんね……変なことしちゃって……あんなことで遅れちゃって……」

 

    ユニ、ネプギアの言葉に落ち着きが崩れていく。

 

ネプギア「ごめんね……ごめんね……」

 

    既にその声は消え行っている。

 

ネプギア「ッ……!」

ユニ「ネ……ッ!!」

 

    次の瞬間、意を決したように振りかえり、右手を伸ばそうとするユニ。

    ネプギアも同時に振りかえっている。

 

 

 

    ユニの右手は、ネプギアをつかもうと、伸ばしきる前に、その手をすり抜けるように、ネプギアの触れた空気だけをつかんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    そのまま、ネプギアは重心を前に置き、つまずく様に歩きだす。

    ユニ、そんなネプギアを見つめる。

    伸ばそうとした手を戻し、自分の目の前でまた、空気を握りしめる。

    両手で胸を抑え、自らの心拍を確かめる。

    目を伏せ深呼吸をし、両手の力を強くする。

    その間にもネプギアは彷徨うように遠くなっていく。

    トンボメカがふよふよとネプギアを追いかけていく。

 

 

 

○同・ビアンコネル観光案内所

 

    ネプギア、重い足取りで建てられている橋を踏みしめる。

    手持無沙汰で何かを求めるように揺れる両手。

    一歩足を前に出す度に上下に揺れる頭。

    そのまま案内所が立てられている橋の末端にまで行きつく。

 

老婆の役員の声「明日にはホテル前で水騒ぎ祭りをやるよ。よかったら来ておくれ」

???の声「ありがと。考えておくわ」

 

    案内所で会話があった後、三国時代を思わせるきらびやかな朱色のドレス風ファッションの女性が出てくる。

    女性、意気なく歩みを進めるネプギアを見かける。

 

???「?」

 

    ネプギア、そのまま案内所を通り過ぎる。

 

???「え……ちょ、ちょっと君!」

 

    ネプギアからの返事はない。

 

???「前! 前見て!!」

ネプギア「……え? え!? や!? にゃああああっ!!?」

 

    ネプギアが気付いた頃には橋の末端から足を踏み外し、そのまま海に落下。

    女性に向けて海水のしぶきが襲いかかる。

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

ユニ「!」

 

    ユニ、ネプギアの悲鳴に俯けていた顔をあげ、案内所へ走りだす。

 

ユニ「ネプギア!?」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    女性、海に沈んでいるネプギアの様子をかがんで心配そうにうかがう。

 

???「あぁ~……」

 

    砂浜から橋まで強く蹴りつけるような足音が聞こえてくる。

 

???「!?」

 

    その音で振り向く女性。

 

???「きゃっ……!?」

 

    直後、急速に走り抜ける人影を反射的によける。

    人影はそのまま海へとダイブ。

    またも女性に海水のしぶきがかかる。

    しばらくして、二人一緒に浮かび上がってくる。

 

ネプギア、ユニ「っぷあッ!!」

 

    ネプギア、ユニ、女性が見つめているのも気に留めず、泳いで水際まで戻る。

    途中、急激に浅瀬になる個所で、砂浜をひっかく様にしてつまずく。

    そのまま砂浜の上に寝転ぶ二人。

 

ネプギア、ユニ「はぁっ……!! はぁ……はぁ……」

 

    ネプギア、隣で寝転ぶユニを見て。

 

ネプギア「ユニちゃん……」

 

    ユニ、間髪いれずにネプギアの顔も見ないまま天に表情を向けて。

 

ユニ「ひきょう者……」

ネプギア「え……?」

 

    今度は大きく息を吸い込んで。

 

ユニ「ひきょう者!」

 

    ネプギア、ユニの言葉に硬直する。

 

ユニ「あんな風にアンタに帰られたら……どうにかしたくて……どうしようもなくなるじゃない!! うっかり海まで落ちちゃって……ひきょうよ!!」

ネプギア「……」

 

    女性が二人の顔を覗くように、落ち着いた物腰で声をかける。

 

???「君達、大丈夫?」

 

    ネプギア、女性に顔を向けて返事をする。

 

ネプギア「……はい……大丈夫です」

 

    女性、何かを取り出そうと背中にそれを求めようとする。

 

???「とりあえず、身体……あぁしまった……そういうの忘れてた……」

 

    女性が困っていると、突如桜の花びらが舞い散りだす。

 

???「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    桜の花びらを手のひらに乗せると、女性の隣に突然着物とチャイナ服を合わせた服に二―ソックスにブーツという妙な服の組み合わせをした少女が出現する。

 

???「なっ! 脅かさないで」

 

    少女、女性に向けてタオルを差し出す。

 

???「……タオルならここに」

???「ありがとう……だけど、それはあの子達にあげて」

 

    少女、黙ってうなずくと二人の元へ。

 

???「……はい」

 

    かがんでユニにタオルを渡す。

    身体を起こす二人。

 

ユニ「……ありがとう」

 

    ユニ、一瞬戸惑いつつも少女からタオルを受け取る。

 

???「……」

 

    タオルを渡した少女、桜吹雪を散らせながら消える。

    しばらくの間、桜が宙に舞っていた。

 

ユニ「……消えた」

 

    女性、少女を見送った後、二人に顔を向ける。

 

???「とりあえず、そのタオルあげるから。身体を拭いてきなさい? じゃあね」

 

    そのまま背を向け手を振ってその場を立ち去る。

    二人、女性の背中をただ見つめる。

 

ネプギア「……ホテルいこっか」

ユニ「……うん」

 

 

 

○同・シャイニーマークホテル内・ロビー

 

    関数精霊の明かりがなく、外からの日差しのみで薄暗く、小奇麗なロビー。

    スタッフはその中に2人しか見られない。

 

 

 

○同・3階の部屋・寝室

 

    よく手入れされていて、シンプル過ぎて少し物足りない部屋。

    シングルサイズベッドが二つ並び、それを斜めから見れる位置にネプギアとユニが隣り合い、電気も点けずに床に座っている。

    俯いて両足を投げ出して座るネプギアに、その左で俯きながら膝を抱えたままこわばって座るユニ。

    ネプギア、そのままつぶやくように。

 

ネプギア「ユニちゃん……ホントにごめんね……嫌だったよね……久しぶりのデートなのに……あんなの……」

 

    膝を抱えている右手をほどき、ネプギアの手に重ねる。

 

ネプギア「え……?」

 

    ユニの体温を感じ、ユニの方を向くネプギア。

 

ユニ「ばか……」

 

    それだけいうと、そのままネプギアに寄り掛かり、重ねていただけの手を、全部の指がからまるように握る。

 

ネプギア「ユニちゃん……?」

ユニ「ばか……」

 

    握られた手は、少しだけ強くなり、ネプギアの指がつられて少し伸びる。

    そのまま、自分の膝に顔をうずめる。

 

ユニ「ばか……」

 

    ネプギア、ユニを見ていて自然と緊張した顔が解ける。

    そのままユニに握られていた手を握り返す。

 

ネプギア「うん……わたしばかだよ……ばかなんだもん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ユニ、独白のように言葉を重ねる。

 

ユニ「アタシ達のデートよ? アタシ達の時間なのよ? アタシ達の記憶(ログ)なのよ? ”アタシ達の”……なのよ? アタシ達がいっぱい笑って、怒って、苦しんで……その全部を……なんで市民の娯楽にされなきゃいけないのよ……」

ネプギア「そう、思ってる……?」

ユニ「……」

ネプギア「違うよね……本当は」

ユニ「……」

 

    握った手と姿勢をほどいて、さらにネプギアに寄りかかり、握っていた右手をネプギアの頭に回し、自分の頭に触れさせる。

    左手で、ネプギアの左手の甲を握る。

    右手は、ネプギアの髪を撫でている。

 

ネプギア「今なら……なんとなく分かるよ……伝わってくるよ……」

 

    ネプギアも、床に置いていた右手を、ユニが自分を撫でてくれている手に重ねる。

 

ユニ「だいたい、またバージョンアップしたら、アタシ達のログなんて変わってるかもしれないじゃない……ゲイムギョウ界のシステムと、つじつま合わせるために」

 

    ネプギアの右手、ユニの右手を温めるように。

 

ネプギア「思い出に……自信がない……?」

ユニ「……」

 

    ユニ、左手同士で重ねた手を組みなおす。

 

ユニ「怖かったの……」

 

    ユニの言葉を黙って受け止めるネプギア。

 

ユニ「3disなんてのになった時、急にいろんなものが変わったように思えて……でも、当たり前のことだって受け止めてる自分が……抱えてる思い出に違和感を持っても……それだけで間違ってるって言えない自分が……それで……お姉ちゃんが先帰って、そのままこの村でデートになって……最後にアンタと話した日……いつの間にさ……いつの間に、アタシ達あんなに離れてたんだって……ずっと気付かなかった……」

 

    ユニ、ネプギアが噴水のそこに貝殻を見つけたこと、スイカのようなメロンを一緒に食べたこと、アトラクションで遊んだことを思い出していく。

 

ユニ「楽しかったけど……嬉しかったけど……帰り際にアンタが言った言葉が……今でも……」

 

 

 

        *      *      *

 

 

ネプギア「すごく楽しかったよ。ユニちゃんとの初めてのデート! でも、どうして急にデートしようなんて言ってくれたの?」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

ネプギア「……」

ユニ「アタシは……アタシは……ずっと前からアンタと一緒にいたのに……!」

ネプギア「……」

 

    ネプギア、震えるユニの右手を優しく撫でる。

 

 

 

 

ネプギア「ごめんね……ありがとうね……ユニちゃん……」

 

 

 

 

 

 

○同・シャイニーマークホテル入口前

 

    開放感あふれるヤシ浜を前に、歩いて出てくる二人。

    待っていたトンボメカがネプギア達の様子をうかがう。

 

ネプギア「今日は……本当にありがとう」

 

    ユニ、首をできるだけ後ろへ向ける。

 

ユニ「……なによそれ?」

ネプギア「次は……1ヶ月後辺りになっちゃうかもだけど次はちゃんと……ちゃんとデートするか……ら……?」

 

    ユニ、ネプギアの言葉も待たずにその手を両手でつかむ。

 

ユニ「そんなに待ってらんないわよ!」

 

    そのままネプギアを引いて走る。

 

ネプギア「え? あ、あの! ユニちゃん!?」

ユニ「せっかく海に落ちたんだし! もうちょっとここの海の味堪能させなさいよ!」

ネプギア「ユニちゃん……うん!!」

 

    ネプギア、ユニに寄り添い、肩をすり合わせる。

    広がる海を見つめながら、互いの温度を確かめあう。

 

 

 

 

    ユニが強引につかんだ手は組みなおされ、きちんと全部の指がからまるように、二人は手をつないだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択