No.438693

超次元ゲイムネプテューヌ 3dis Creators_014

『召喚美少女ネプ子』
主演・脚本・演出:ネプ子
ゲスト出演:キセイジョウ・レイ、以前ネプ子が召喚したことになっている何か、かいじゅう

レイ「こんなところ……こんなところみんなぐちゃぐちゃになっちゃえー!!」

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2012-06-17 23:14:40 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:729   閲覧ユーザー数:701

 

 

 

 

 

 

 

第1章 ゲイム・スタート

 

 

 

 

 

C014:焼け焦げキノコ

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・バーチャフォレスト・禁制領域タマルバー最深部・<イベント>

 

    PHZ(パープルハートジーン)、自分の身体についたZH(ジーンハート)のものであるはずのアーマーを見やる。

 

コンパ「ねぷねぷ、ごつごつですぅ」

アイエフ「アンタ……なんかパワーアップしてない!?」

 

    コンパ、アイエフを余所にPHZ、目の前で握り拳を作ってみながら。

 

PHZ「……体は重い……でも不思議……いつもの苦しい感覚がない」

 

    PHZ、クランカの踏みつけるような飛び降り蹴りを察知しいなし、身体をひるがえす。

    その時、ネプギアが捕らえられたゼリー状スライヌを背後にとる。

    クランカ、そのまま前転して受け身を取る。

    両者ともに相手を見据える。

 

クランカ「そうきたでしゅか」

 

    コンパ、アイエフ、PHZと一緒にクランカを囲むように位置を取る。

 

クランカ「それはともかく、ずいぶん強欲な王子でしゅね」

アイエフ「悪いわね。一個ツブされたんで機嫌悪いのよ」

 

    アイエフ、PHZに向かってあごで指図する。

    PHZ、アイエフの言わんとしていることが伝わり、静かにうなずく。

    コンパ、専用の巨大な注射器砲をどこからともなく等倍拡大させ、クランカに向け構える。

    右手の包帯も今はほとんど気にしていない。

 

クランカ「けどこのままじゃもう一個ツブれることに──」

実況「プレイヤー! シンボルアタックに成功!」

クランカ「!?」

 

    クランカが実況音声に気付きすぐさま振りかえると、PHZとネプギアを閉じ込めているゼリー状スライヌが姿を消していることがわかる。

    そして今まで見せなかったこみ上げるような怒りの表情。

 

クランカ「ちょっち油断がすぎたでしゅね……!」

 

 

 

 

───START GATCHINKO WARS───

 

 

 

 

 

 

○タマルバー最深部・ガチンコ用ルーチンフィールド・<ガチンコウォーズ>

 

    PHZとネプギア込みのゼリー状スライヌ、『スライヌアメーバ・ギガント』がイベントを行っていたフィールドからここへ転送される。

 

  プレイヤーチーム/前衛:PHZ

  相手チーム/スライヌアメーバ・ギガント

 

実況「さあパープルハート・ジーンのデビュー戦です!」

アナウンス「Ready...Set...Fight!」

実況「まずは作戦タイムだ!」

 

 

   PHZ→たたかう

 

 

    実況が作戦タイムを告げると、PHZのアーマーに敷かれている数々のラインが明滅しだし、呼び出し音が鳴りだす。

    PHZ、この状態に戸惑い、アーマーを手で探るように触ってみる。

 

実況「おっと? パープルハート・ジーンのアーマーから着信音が鳴っている!」

 

    PHZ、手探りの果てに腹部の小さな紋陣をタッチする。

    するとその紋陣から空中へコンソールが投影される。

    コンソールにはフォンギアのメインメニューが表示されており、一番下のインフォメーションバーにある「次に、フレンドを召喚してみましょう。画面一番上中央で光を点滅させている、召喚のアイコンをタッチしてみましょう」と共に、示された召喚アイコンの周囲の光が点滅している。

 

 

──召喚について説明します。

  パーティーで1台以上フォンギアを持っている場合、ガチンコ、ランウェイのバトル中、事前に登録しておいた『フレンド』を召喚することができます。

  なおフォンギア一台につき、使用できるのはガチンコの場合1ターンに一度、ランウェイの場合はバトル中三回だけ使えます。

  またガチンコの際は、各フレンドとも一回のバトル中、召喚できる回数に制限がありますが、

  召喚のコマンドを使った後もポイント消費なく自分のターンを続けることができます。

  ランウェイの時は召喚している間無敵状態になります。

  パーティーが持つフォンギアが増えると、その分だけ召喚のチャンスが増えるので、遠慮せずにどんどん活用しましょう。

 

 

   PHZ→フレンド召喚

 

 

    PHZ、コンソールの召喚アイコンをタッチし次に進む。

    その後も黙々と項目を進め、効果説明、イメージ付きで表示されている『ドコデモダケ』を選択。

    するとコンソールがカード程のサイズになり、PHZの右手に収まる。

 

PHZ「……これでいいのね」

 

    PHZ、ポーズをつけながらカード状のコンソールをかざす。

 

PHZ「力を貸して!」

 

    カード状のコンソールから光が飛び出し、低空で遊泳した後PHZの目の前に降り立つ。

    光が解き放たれると、キノコに顔と手足の生えた生き物達が、キーボード、トランペット、バイオリン、クラリネット、フルートと各々楽器を持って現れた。

 

PHZ「頼んだわよ」

 

    PHZがかけた号令の直後、ドコデモダケが演奏を始める。

    キーボードのはじけるように軽やかなピアノを指揮に、フルートが豊かさを、クラリネットが温かさを、バイオリンが優しさを、トランペットが力強さをそこに加えていく。

    10秒とたたずに演奏を終えたが、折り重なった五重奏の響きはその早さを忘れさせるほどの余韻を生み出していた。

 

実況「……素晴らしい演奏でした。相手チーム、演奏に聴き惚れてこのターンは動けない!」

PHZ「意外と強力ね……」

実況「さあパープルハート・ジーン、かなり有利な状況になった!」

 

    ドコデモダケがフィールドに駐在している中、スライヌアメーバ・ギガントへと向かっていく。

 

 

        『ソニック・ウインド』

 

    そして木刀を元に変化した『デュエルセイバー』を見得を切るように後ろへと構える。

    アーマーのラインの光が激しくなると共に剣が青く鮮やかに光り出す。

    大気が荒れ、轟音と共に剣先にまとわりつく。

    地震さえ起きそうな勢いで。

 

PHZ「はああああああああああっ!!」

 

    振り子運動で一気に振り上げ、ネプギアに当たらないようにスライヌアメーバ・ギガントに攻撃を与える。

 

PHZ「ッだあああっ!!」

 

    その瞬間、細く鋭くなった風が一気に吹き抜け、より一層激しい轟音が突き抜けるように去っていく。

    剣の振り子運動の軌跡が青い光となってはっきりと残っている。

    PHZが剣を振り下ろした直後、スライヌアメーバ・ギガントに先ほどの剣の軌跡に沿って光が突き抜けて走り去り、その体を反射的に反り返す。

    直後ステップで離れると、先ほどいた場所に攻撃のインパクトの瞬間のモーションのまま固まっている残像のような残留データがくっきりと映っている。

    反りかえったと思ったら、スライヌアメーバ・ギガントが倒れ込み、少し潰れるように地面を這う。

    同時に、剣の軌跡も残像も消え去った。

 

アナウンス「Perfect!」

実況「何と一撃でKO! パーフェクトだ!!」

 

 

 

○VICTORY!

 

        パーフェクトボーナス:EXP+30%

 

PHZ「太陽に祈り、眠れ……」

 

 

 

 

 

 

 

───GATCHINKO WARS END───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・バーチャフォレスト・禁制領域タマルバー最深部・昼過ぎ・<イベント>

 

アイエフ「でえええいやあああああっ!!」

 

    アイエフ、クランカに遠慮なくカタールを向け突っ込む。

    クランカも臨戦態勢に移っている。

    アイエフが右手を大きく振り上げる。

 

アイエフ「かれーーーらーーーいすっ!!」

 

    と、いいつつパーを出す。

    一方のクランカ、チョキ。

    再び手を振りながらじゃんけんをする。

    ご存じだろうか、このカレーライスという2000年代の小学生の間で盛んに行われたじゃんけんのルール。

 

クランカ「ちょーからちょーからぐーから! ぐーからぐーからちょーから! ちょーからちょーからぱーから!」

 

    コンパ、おずおずとした目線でアイエフを見守る。

    三回ともクランカが勝っている。

 

クランカ「ぱーからぱーからぱーから!!」

 

    両者、あいこ。

    その瞬間、思い切りつばを吐きだすような勢いで。

 

クランカ「水!!」

アイエフ「みッ……くぁ~~~~~!!」

 

    先にクランカが水! と言い切ったのでクランカの勝ち。

    アイエフ、悔しそうに頭を抱える。

 

クランカ「何度やっても同じでしゅ」

アイエフ「くっそ~~~、これもマジェコンの恩恵ね……!」

クランカ「それが分かっててまだやるんでしゅか? もう後がないでしゅよ?」

アイエフ「あきらめてたまるもんですか!」

 

    アイエフ、ワンステップ後ろへ下がり、祈るようにして手を組む。

    組んだ手に額を乗せ、悶々とした表情とともに思考回路を巡らせる。

    意志を決め、クランカを見据える。

 

アイエフ「かれーーーらーーーい──」

 

    手を出そうとした瞬間、音と共に何もない空間から緑色の輪郭線が浮かび上がる。

 

アイエフ「す……」

 

    消え入る声と共に、そちらの方を向くアイエフ、クランカ。

    手はアイエフがチョキでクランカがグー。

    アイエフはまたじゃんけんの手で負けている。

 

コンパ「はわ……?」

 

    そしてコンパのこれ。

    輪郭線がシルエット、顔のパーツ、服飾とだんだん細部へとわたって描かれ、全て描き終えた瞬間に色がついて実体化した。

    PHZ、弱ったネプギアを抱きかかえて戻ってくる。

    アイエフ、目を丸くして。

 

アイエフ「もう終わったの……?」

 

    PHZ、不思議そうにアイエフを見て小首をかしげる。

 

クランカ「……ん?」

 

    クランカ、PHZ達の奥にいる何かに目が行く。

    何かはPHZを通り過ぎて歩いてくる。

    先ほどのキノコの音楽隊、ドコデモダケである。

    クランカ、あからさまに引くような奇声を上げる。

 

クランカ「ひィッ!?」

アイエフ「……なにこいつら?」

 

    ドコデモダケ、全員返事をするように右手を上げる。

    PHZ、ネプギアを後ろに下ろし、アーマーを指し示す。

 

PHZ「これで召喚したら、助けてくれたの」

コンパ「わぁぁ~♪ 可愛いですぅ~♪」

アイエフ「かわいいんだ……」

 

    コンパ、とてとてとドコデモダケに近づく。

    目線を合わせるようにしゃがみ、トランペット奏者の手を取る。

    他のメンバーもトランペット奏者に注目がいき、トランペット奏者は顔を赤らめもう片方の手でキノコの傘の下のあたま? をかく。

 

コンパ「お名前、なんていうですか?」

 

 

クランカ「い、いいぃぃぃっ!?」

 

    クランカ、明らかに動揺しているそぶり。

    PHZ、アイエフ、互いに目を合わせ、もう一度クランカを見る。

 

クランカ「な、なななんでしゅか!?」

 

    PHZ、ドコデモダケに指示を出す。

 

PHZ「ドコデモダケ、全体、そこにいる人に向けて前進」

 

    PHZの指示でドコデモダケが行進し始める。

    どことなく気味悪さを感じさせる速さで行進する。

 

クランカ「いぃぃぃ!! いぃいいぃぃいいぃぃぃぃぃっっ!!!」

 

    クランカ、これを全力で拒絶。

    奇声を発しながら、これまでの恐怖感が嘘のように、今度はこっちが恐怖におののき、慌てふためいている。

 

クランカ「きぇーー!! きぇーーー!!? きのこーーーー!!?」

 

    そんなクランカを見つめ、呆然とする3人。

 

コンパ「教祖さん……キノコが苦手なんですね……」

アイエフ「あの様子じゃ、ルウィーは侵略されそうにないわね」

クランカの声「きえええええええええええっっ!!」

 

 

    クランカの腰周りから周期的な呼び出し音がなりだす。

 

クランカ「きえええええっ!! きえ……っ!?」

 

    奇声を止めるとその呼び出し音が耳に入り、静止する。

    直後、逃げ出すように木陰に隠れるクランカ。

 

アイエフ「こ、こんどはなに!?」

 

    次の瞬間、PHZ達の足元に紋章が光を放ち、現れる。

 

PHZ「二人とも! 私のうしろに!」

 

    3人とクランカの間に大量のヒョーザンが紋陣から出現し、行進していたドコデモダケが吹っ飛ばされ光に戻る。

    光はPHZのアーマーに戻っていった。

    コンパとアイエフの盾になるよう、剣を構えるPHZ。

 

 

 

○同・最深部への通路

 

    ぎこちないエンジン音を立て、その車体を揺らしながら最深部へと向かっていくバン。

 

 

 

○同・最深部

 

    車体の鼻先を入口に突き出すようにして停車するバン。

 

リンダの声「先輩!! 今のうちに!!」

クランカ「助かったでしゅ!」

 

    クランカ、急いでリンダの乗るバンへと向かう。

    乗り込む前に3人を見据えて言う。

 

クランカ「王子パリスは富を選んだ」

アイエフ「は?」

 

    疑問に顔をしかめるアイエフを余所に続ける。

    その間にも、ヒョーザンがじりじりと迫っている。

 

クランカ「愛は捨て、こうして今勝利への可能性ものがした。残っているのはあれだけでしゅ」

 

    クランカ、最深部のそのまた奥の木々と茂みの方を指さす。

    そしてすぐにバンに飛び乗る。

 

リンダの声「あばよバカども!!」

 

    リンダのブイサインが3人を覗く。

    バンはそのままバックして去っていく。

    同時に、迫っていたヒョーザンが埋もれるように消えていき、紋章も消え去った。

 

クランカの声「ちょっ!? リンダ! 後ろ! 後ろ!!」

 

    悲鳴を上げているような、慌ててハンドルを切る音。

    木々をなぎ倒しているのか、バサバサという音を同時に立てながら。

 

リンダの声「どわあああああああっ!!?」

 

    結局事故を回避できたのか、その後は何事もなくエンジン音が離れていく。

    何もなくなったはずの広場、PHZの視界には氷の塊がまだ残っている。

    少しずつ力を入れて起き上がるネプギア。

 

ネプギア「うっ……く……」

コンパ「ぎあちゃん! だいじょうぶですか!?」

 

    コンパ、倒れそうに起き上がるネプギアを慌てて支える。

    ネプギア、まだ声に力が戻っていない。

 

ネプギア「はい……ちょっと……力、抜かれちゃったみたいです……けど」

 

    アイエフ、何かに気付き、PHZを見る。

 

アイエフ「そう言えばネプ子、アンタその姿で身体大丈夫なの!?」

PHZ「ええ。どうもこのアーマーのおかげで、そういうのはなくなってるみたい。ちょっと力が抑えられてるけどね……ん?」

ネプギア「え……?」

アイエフ「ん……?」

コンパ「へ……?」

 

    4人、その氷の塊を見て気付く。

 

PHZ、ネプギア、コンパ、アイエフ「……あ」

 

    氷の塊は、先ほどからずっと倒れていたモコ。

    また凍らされている。

    しかも今度は全身、少し地面を這っている。

 

PHZ、ネプギア、コンパ、アイエフの声「またモコが凍ってる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    4人、全身氷漬けのモコの元へ。

    各々戸惑いを隠せない様子。

 

アイエフ「……どうしよう。そういえばさっき、あの状態からどうやってここまで……」

PHZ、ネプギア、コンパ「さぁ……」

ネプギア「……とりあえず、氷を溶かすのは、教会に帰ってからにして、今は急いで教会まで運びましょう?」

コンパ「ですね」

 

    アイエフ、携帯を取り出して開いた瞬間から番号を打ち込む。

 

アイエフ「そうときまれば、ギルドにポータルの団体部屋用意してもらいましょ」

 

    コンパ、ネプギアのNギアで、台車を取り出し、ネプギアにNギアを持ってもらって左手でばらまく様にして台車を具現化させる。

    PHZ、モコを持ち上げるため氷に指をかける。

 

PHZ「ふんっ……!!」

 

    アイエフの手が止まる。

    PHZ、力を入れても持ち上がらない。

 

PHZ「ふんっ!! ふんっ……!!」

 

    2,3度試すが、やはり持ちあがらない。

 

PHZ「ふぅ……」

 

    立ちあがって、手の甲で額の汗を拭きとる。

 

アイエフ「なに?」

PHZ「どうにも地面にひっついてて、この姿でも持ち上がらないの」

アイエフ「じゃあ、アーマー取ってみる? 力を抑えつけられてるって言ってたでしょ?」

PHZ「そうね。やってみるわ」

アイエフ「戻り方分かる?」

 

    PHZ、腹部の紋陣をタッチしコンソールをよび出し、着信にタッチ。

 

アイエフ「あ~そうやるんだ……」

ネプギア「そうなるんだ……」

 

    続けて画面中央に大きく表示される着信解除のアイコンをタッチ。

    その直後、アーマーが開き腹部から順番に外れていき、腹部のパーツはジーンギアに戻り、アーマーのパーツがそこに収納されていく。

    ジーンギアがPH(パープルハート)の手元に戻る。

 

PH(パープルハート)「うッ!? っぅぅぅっ!!」

 

    アーマーを外した瞬間、胸を押さえて苦しみ出すPHに、コンパが駆け寄る。

    ネプギアは駆け寄ろうとするとコンパが支えたので止め、アイエフは困ったように声を上げる。

 

コンパ「ふぁ! ねぷねぷ~!」

アイエフ「あらあらあらあら……」

 

 

 

○同・タマルバー最深部・夕方

 

    空が夕焼けに染まり、朱色になっている。その空の下、凍りついたモコを下敷きに四人が座り込んでいる。

 

ネプギア「……もっと他に方法ないのかなぁ……?」

 

    モコの右腕辺りにぺたんと座り込んでいるネプギア。

 

コンパ「おしりが冷たいですぅ……」

 

    モコの下半身辺りに体育ずわりで座っているコンパ。

 

アイエフ「我慢なさい。人肌しか使えるもんないんだから」

 

    モコの左上半身に足を投げて座っているアイエフ。

 

PHZ「でもコンパイラ(女の子)にとってこの状況は色々と問題があると思うの……」

 

    結局アーマーを付けることにしたPHZはモコの後頭部に、曲げて立てた両ひざに両ひじをつき、あごには頬づえを立てて座っている。

 

アイエフ「まぁ……人に見られたくはないわね、この光景。なんかモコいじめてるみたいで」

PHZ「それに……私だけ座れる容積が小さい……この姿だと余計に」

アイエフ「それこそ我慢なさいよ。接地面積多い方が絶対効果あるでしょ」

PHZ「……あいちゃんそれかなりグサッとくるんだけど」

アイエフ「本当のことじゃない。しかも今のあんた、鎧が邪魔で隣座れないもの。この、肩のがしーんって出っ張っちゃってるとこのせいで」

 

PHZ「……まぁ、とりあえずいーすんに連絡入れておきましょ」

 

    取り出したNギアをフリック、LRボタン同時押しで通信をつなぐ。

 

 

 

○Nギアの画面

 

    通信をつないだにはつないだが、そこにイストワールの姿はない。

    ただただ斜めに立てかけられた木が木肌を主張している光景。

 

PHZの声「……ん?」

アイエフの声「いない?」

ネプギアの声「なんでしょうここ、ムシ籠?」

コンパの声「ふえ? な、なにが映ってるですか?」

アイエフの声「ちょ、ちょっとコンパ押さないで……」

 

    画面右端から金メッキで塗られたような色をした何かが姿を現してくる。

    見えるのは、ロボットの腕のようなもの。

 

ネプギアの声「うわ!? なんか来ましたよ!? え、ロボット!?」

アイエフの声「なんでムシ籠にロボットがいるのよ!?」

ネプギアの声「あれ……なんか……」

アイエフの声「なに?」

 

    2足歩行で歩く金メッキロボット、右腕には銃を持っている。

 

コンパの声「銃持ってるです!」

 

    金メッキロボット、画面に顔をのぞかせる。

    その様子は、画面の向こうの4人に興味を示してるよう。

 

ネプギア、コンパ、アイエフの声「わああっ……!」

 

    しばらく見つめた後、ふいとどこかへ行ってしまい、斜めになっている木を目指す。

 

アイエフの声「行っちゃった……」

ネプギアの声「なんか……わたし、なんとなく見覚えあるような……」

コンパの声「知ってるですか?」

 

    金メッキロボット、木を登り始める。

    4人のクスクス笑いが聞こえ始める。

 

アイエフの声「木のぼりしてるっっっ……ロボットがっっっ……!」

ネプギアの声「ムシの本能が木のぼりをさせているんでしょうかっっっ……」

アイエフの声「ムシじゃないでしょこれっっっどう考えてもっっっ」

 

    画面が揺れ始め、急に浮き上がるようにその場を離れ、申し訳なさそうなイストワールの顔が映る。

 

イストワール「すみませんみなさんお待たせして……」

ネプギアの声「どうしたんですか?」

イストワール「”ビートロイド(ゼータ)”の観察のためにNギアをしばらく放置していたんです」

PHZの声「ねぇ、いーすんビートロイドって何? あれ? さっきまで映ってたロボット? なにあれ?」

イストワール「元々は甲虫です」

アイエフの声「ムシなんだ!? え? ムシなんだ!?」

イストワール「はい。それで、そちらはどうしたんですか?」

PHZの声「あぁ、クエストが終わったのだけれど、ちょっと困ったことになってしまって……」

イストワール「困ったこと?」

PHZの声「私達の不注意で、モコがモンスターの攻撃を受けて凍ってしまったの」

イストワール「そうですか……わかりました。すぐに救護班と、炎を操れる”情報使い(ハッカー)”を派遣させます。それまで、応急処置を続けてください」

 

    通信が切れ、画面が黒く閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・バーチャフォレスト・禁制領域タマルバー・夕方

 

PHZ「……だそうよ」

コンパ「よかったですぅ……」

 

    コンパ、深く息を吐いて胸をなでおろす。

    直後、氷が割れたような音が聞こえる。

 

アイエフ「ん? なんかパキっていった?」

 

    4人が耳を澄ましていると、明らかに氷が割れている音がする。

 

コンパ「いってるです……」

 

    そして、次の瞬間。

 

ネプギア「きゃあっ!?」

 

    ネプギアが飛び跳ね、その場を離れて地面に尻もちをつく。

 

PHZ「ネプギア!?」

 

    姿勢を解いて慌てて振り向くPHZ。

 

アイエフ「いったぁッ!?」

 

    肩の出っ張りの部分がアイエフの腕に遠慮なく当たる。

 

PHZ「ん? あいちゃん?」

アイエフ「いっだぁ~~~~……肩のそれのこと考えなさいよ!! ひゃあっ!?」

 

    アイエフも飛び跳ねて地面に尻もち。

    慌てて敷いたモコから離れる残り2人。

    コンパ、おずおずとモコを見つめる。

 

コンパ「ど、どうしたんですかぁ……?」

 

    次の瞬間、びくんと反射的にモコの両腕が動く。

 

コンパ「ひゃあっ!?」

 

    しばらく見つめているとまた動く。

    今度は少しだが下半身も。

 

アイエフ「うわ……うわぁ……」

 

    4人共、若干引いている。

    そうしている間もモコの体はびくびく動く。

    次の瞬間、下半身と地面をつないでいる氷が勢いよく割れる。

    大きく揺れるモコ。

 

アイエフ「も、もも……モコ?」

 

 

 

モコ「……ふ……ふ……ふぇ……びぃえっくしょいっ!!!」

 

 

    威勢のいいくしゃみと共に、遊覧船のような揺れ方をするモコ。

    すぐさま、寝転がって横向けになろうとするが、しびれているようにぎこちなく、上手くいかない。

 

モコ「さ……さぶいっっ……さぶいっっ……!!」

ネプギア「モコちゃん!?」

コンパ「だ、だいじょうぶですかぁ!?」

 

    モコ、あちこち痙攣している。

 

モコ「う、うぇ……びえくっしょい!!」

 

    再び大きなくしゃみ。

    鼻水が垂れてきた。

 

モコ「あれ……こんぱちゃん? みんな? どしたの?」

PHZ「だいじょうぶ?」

モコ「う……? ねぷちゃん……? うい。だい、じょうぶ……」

コンパ「よかったですぅ~~~~~!」

 

    コンパ、モコの身体に額を付ける。

    冷たくて、すぐさま離れる。

 

コンパ「つべたい……」

 

 

 

○プラネテューヌ・ギルド前

 

    寝転がったモコを乗せた台車を転がすネプギア。

    後ろにはネプテューヌ、アイエフ、コンパがついてくる。

 

 

 

○プラネテューヌ・教会・主廊部~祭壇

 

    並べられている座席の合間の主廊をモコを乗せた台車が通り過ぎる。

    奥の祭壇にはイストワールが待っている。

 

イストワール「お疲れ様ですみなさん。何があったか詳しく聞かせてくださ──」

 

    ネプテューヌ、イストワールの言葉も待たない勢いで。

 

ネプテューヌ「あのねあのね! 黒幕! 黒幕!」

イストワール「黒幕?」

 

    イストワール、ネプテューヌの発言にいつものことながら少々困った表情。

 

ネプギア「この間のやつを含めて、最近のチーティング犯罪を、裏で糸引いてた人と遭遇したんです。やっぱり、マジェコンヌを名乗ってました」

イストワール「……やはり復活の兆しがあったのですね」

ネプテューヌ「教祖って言ってたよ、そのクランカって人」

アイエフ「あと、下っ端も一緒でした」

イストワール「そうですか……調査報告ありがとうございました。それと……」

 

    イストワール、モコの目線辺りまで降りてくる。

 

イストワール「モコさんには、ひどくご迷惑をおかけしてしまいましたね」

 

    モコ、だいぶしびれや寒さが引いた様子でイストワールの方を向いて首をかしげる。

    その手には、ジーンギアが握られている。

 

モコ「めーわく?」

イストワール「なにか、いやな思いをさせてしまったということです」

モコ「ぜんぜん……そんなこと……」

 

    ネプギア、話の途中だが、イストワールに尋ねる。

 

ネプギア「あの、いーすんさん。暖炉と薪を使いたいので、裏の倉庫へモコちゃんを運びますね」

イストワール「わかりました」

 

    台車をUターンさせて祭壇から離れていく。

 

モコ「お……」

 

    モコ、その途中でアイエフの戸惑っている表情を目にする。

 

イストワール「アイエフさん?」

アイエフ「え、あ、はい!」

 

    アイエフ、上の空から戻ってくる。

 

イストワール「どうかされましたか?」

アイエフ「いえ! なんでもありません!」

 

    やけにこわばっている。

    イストワール、それ以上は触れず話題を変える。

 

イストワール「それはそうと、クエストの方はどうでした?」

ネプテューヌ「あーあれ? 結局、貯蔵庫の中身、なんもなかった。『富を求め人を捨てし者、裁きが下る』とかなんとかで、なんかわたしたちがいかにも金の亡者~って感じの絵がはっつけてあっただけ」

イストワール「マジェコンヌなりの戒めなのでしょうね……とにかく、みなさんお疲れ様でした。今日はゆっくりとお休みください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・海沿い大陸末端・夕方

 

    波音が風に乗って流れ、海は夕日を映している。

    アイエフ、そんな広がる海を見つめ立っている。

    足元を見渡し、手ごろな石を見つけるとそれを拾い、海を切るように投げる。

    投げられた石は真横に激しく回転し、石が海に触れる度に海を突き離し、そのまま6回海を飛び跳ね、軌道上に海の波紋を描いていく。

    投げた後のアイエフ、晴々とした朱色とは対照的に、表情を曇らせている。

 

モコの声「あーいちゃん!」

 

    ふいにモコの声が聞こえてきて、そちらを向く。

 

アイエフ「モコ……」

 

    ぴょこぴょことアイエフに向かって歩いていくモコ。

 

モコ「どしたの?」

 

    アイエフ、すぐにモコを視線からはずし、また海を見つめる。

 

アイエフ「別に……そっちこそどうしたのよ?」

モコ「んー……なんか、あいちゃんが気になった」

アイエフ「……そう」

 

    足元の石を拾い上げ、また海へと投げ込む。

    今度は1回しか跳ねなかった。

    それを見つめるモコ。

 

アイエフ「なんで急に……私を庇ってくれたの……?」

 

    モコ、首をかしげる。

 

モコ「かばう?」

アイエフ「守ってくれたじゃない」

 

    モコ、反対方向に首をかしげ、人差し指を唇に当て考える。

 

モコ「んー……」

 

    結論が出て、首と手が元の位置に戻る。

 

モコ「わかんない」

アイエフ「そう……」

 

    再び石を投げるアイエフ。

    オーバースローなので鈍い音を立てて石は海に沈んでいった。

    モコもやってみたくなり、手ごろな石を探し出す。

 

モコ「むー……いー……あっ」

 

    手ごろな石を見つけて拾うと、振り子の原理を応用した軽い投げ方をしようとする。

 

モコ「ふいっ」

 

    投げようとするが石を離そうとするリリースの瞬間、動きが止まる。

    右手が震えて、石を落とす。

    その震えた手を左手で抱えるようにして触れ、胸に当てる。

    アイエフ、その変化を見て。

 

アイエフ「どうしたの……?」

 

    モコ、アイエフの方を見て。

 

モコ「……ううん。気のせいみたい」

アイエフ「……そう」

 

    モコ、夕焼けに染まった海を見る。

 

モコ「……あいちゃんは、いまなにを見てるの?」

アイエフ「へ? 夕日だけど?」

モコ「そうかな……?」

アイエフ「な、なによ。どういう意味?」

モコ「わかんない」

 

    モコ、また石を拾いオーバースローで海に投げる。

    放物線を描いて石は回転しながら海へと落ちる。

    アイエフもそれを見て再び石をオーバースローで投げる。

    同時に、ぽつりぽつりと話しだす。

 

アイエフ「私さ……ちょびっとだけ後悔しちゃった……モコをあそこへ置いてったこと」

モコ「こーかい?」

アイエフ「そ……アンタに、心底イライラしてたの。それで、あの時アンタを置いてった。だけどその時、なんていうか……なんとなくだけど、心に……何か引っかかって。それがなんなのかわかんなくて、ここにきて……そのー……何かを、探そう、かな? って、思って」

モコ「しりたいの……?」

 

    モコ、やけにしんみりした声で言う。

    アイエフはその声に違和感を感じ、モコを見て聞き返す。

 

アイエフ「え……?」

モコ「みつけたいの……?」

アイエフ「……うん」

 

    そして、モコは笑顔で返す。

 

モコ「……じゃ、わたしさがしてくる!」

アイエフ「えっ?」

 

    有無を言わさずその場から走り去っていくモコ。

 

モコ「あいちゃんがみてるもの、わたしもみたいの! ともだちだから! それに! わたしは何となくわかりそうなきがするー!」

アイエフ「ちょっとモコ!?」

モコ「ぼーけんだぁー!!」

 

    はしゃいでいるようにも見えるモコの背中。

    途中、派手に転げた。

 

アイエフ「あぁ……」

 

    しかしすぐに持ち直してまた走っていく。

    頭を抱え、ため息をつくアイエフ。

    しかし、ため息の色に憂いはなかった。

 

アイエフ「はぁ……絶対なんだか分かってないでしょあれ……」

 

    朱色の空を見上げる。

 

アイエフ「でも……なんだろ……すごくあったかい気持ち感じる……私のため、なんでしょうね……あんな風に……がむしゃらに走っ、て……」

 

    言葉を続けるごとに自分の中の引っかかりの変化を感じてくる。

 

アイエフ「誰かのために……がむしゃらに……走って……」

 

    表情から笑顔が引いていく。

 

アイエフ「私も……そんなことしてた……!」

 

    目を開くごとに、自分の中で消えていたはずのものが発見されていく。

 

アイエフ「けどなんで……そうだ……あの時……グリーンハート様にあって……ネプ子にツナマヨ頼まれて……帰ってきたら……ぶっ倒れてて……! それで……!」

 

    次の瞬間、遠い空を求めるような目で朱色の空を見つめる。

 

アイエフ「なんで……なんでこんな大事なこと……忘れてたんだろう……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○同・バーチャフォレスト・第1区間

 

    ZH(ジーンハート)、もんもんと悩みながらバーチャフォレストを歩きまわる。

    疲れたのか一息ついて。

 

ZH(ジーンハート)「……むぅ……やはりというか、まるで見当がつかない……というより、自分が何を探していたのかが分からなくなってくる……あいちゃんは何を探していたのだ……?」

 

    悩んでいると、がちゃんという機械の音が耳に入り、そちらを向く。

 

ZH「?」

 

    目を向けたZHの目の前に、中型のキャノン砲とホッピングが合体したようなモンスター。

    ZH、気さくな様子でモンスターに近づいていく。

 

ZH「どうしたんだ? そなた、どこから来た?」

 

    キャノン砲の部分からピンポン球を打ってくる。

 

ZH「あいたっ……! そなたもか、いたっ!」

 

    ピンポン球を2発撃ってきた所で、静まるように止まる。

    静かにモンスターに歩み寄るZH。

    手首の友達の輪を優しくモンスターに当てる。

    すると友達の輪から光が円盤をなし、回転し広がり、すぐに収束していく。

 

ZH「これをすると、気分が良いのか?」

 

    モンスター、質問に答えず、ZHに背を向けて帰っていく。

 

ZH「あ……また行ってしまった……それにしても、本当にどこにもないのだろうか……」

 

    ZH、また歩き出そうとする。

 

ZH「ッ……!」

 

    踏み出した途端、またしびれを感じる。

    そのまま動けず、なされるがままに膝を突く。

 

ZH「なぜだ……また、しびれが……」

 

    軽く胸を抑える。

    まぶたがとろんと重くなりつつある。

    アーマーが勝手に解け、ジーンギアがモコのそばに落下。

 

モコ「ていうか……わたし……どっちから……きた……」

 

    そのまま倒れ込み、まぶたを閉ざす。

 

 

 

○同・グリンヒルズ公園

 

    公園のベンチで隣り合って座るネプテューヌとネプギア。

    ネプテューヌ、上目で空を見上げながら。

 

ネプテューヌ「大丈夫かなぁモコ……あいちゃんとこいくーって、また勢いよく飛び出してっちゃったけど」

 

    ネプギア、下の軽く重なった自分の両手を見つつ。

 

ネプギア「……大丈夫だと思う」

 

    ネプテューヌ、ネプギアの方を瞬きをしながら向く。

 

ネプギア「モコちゃんはただ……アイエフさんとも友達になりたい……それだけだと思うから」

 

    目を丸くしたが、すぐにネプギアを信頼するように表情を綻びさせる。

 

ネプテューヌ「……そっか」

 

    余韻のような間の後。

 

子供A「おいネプ子」

 

ネプテューヌ「カチーン!」

 

    ネプテューヌ、あからさまに見た目年下の子供二人にネプ子呼ばわりされカチンとくる。

    いい年した大人が小学生に名字呼び捨てされるような感覚を味わう。

 

子供B「なにたそがれてんの? ネプ子のくせに」

 

    ネプテューヌ、眉間にしわを寄せて子供の目線と同じくらいになるように座る。

    ネプギア、若干おろおろしている。

 

ネプテューヌ「あのねぇ。ネプ子”さん”でしょ? せめてさ、目上なんだから!」

子供A「そんなキャラじゃねーだろ」

ネプテューヌ「なにおぅ!」

 

    ネプテューヌが子供にガン飛ばしていると、コンパの声が聞こえてくる。

 

コンパの声「ねぷねぷーー!! ぎあちゃーーーん!!」

子供A「やべ! 他に人来た!」

子供B「逃げろ!」

 

    ネプテューヌ、かなりのスピードで逃げる子供達に向けて立ちあがって叫ぶ。

 

ネプテューヌ「こらーー!! ”さん”付けしろぉーーー!! 年上なんだぞぉーーーー!!」

ネプギア「お姉ちゃん落ち着いて。ほらコンパさん来たよ?」

 

    コンパ、2人の元まで走り終えると膝に手を当てて息を切らす。

 

コンパ「はぁ……はぁ……はぁ……あいちゃんから連絡で……バーチャフォレストに来てほしいです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○同・バーチャフォレスト第1区間

 

「コ……モコ! モコっ!!」

 

    声が聞こえ、まぶたがゆっくりと開かれる。

 

アイエフ「よかった……気がついた……」

モコ「あ……るぇ?」

 

    目の前には、安心で顔が少しゆるんだアイエフ。

    モコ、アイエフの膝の上を枕に介抱されている。

    心なしか、アイエフの声が震えている。

 

アイエフ「……もう、なんでこんな……!」

モコ「あい……ちゃん?」

アイエフ「アンタ……どこまで探しに行ってたの?」

モコ「うぇ……?」

アイエフ「何で倒れてんのよ……」

モコ「…………なんか……いろんなとこびりびりして……うごけ、ない……」

 

    モコの身体の上に置いてあるアイエフの手に拳が作られる。

 

アイエフ「ばか……今アンタ、コードが狂ってるのよそれ……!」

モコ「こーどが?」

アイエフ「放っておいたら”ダウン”するかもしれないのよ……何でこんなになるまで言わなかったの!」

モコ「いうものなの?」

アイエフ「当たり前じゃない! どこまで行ってたのよアンタ」

モコ「とりあえず、さっき来たここ探せばあるかなぁって……」

 

    アイエフ、消え行っている声で。

 

アイエフ「あるわけないじゃない。こんなとこに……」

 

モコ「え?」

 

    自分の感情を余すことなく吐露するように。

 

アイエフ「もう見つかったわよ……思い出した。私の中にあった!」

 

モコ「え? え?」

 

 

    そして、2,3口多めに言う。

 

アイエフ「私が! 今まで気づかず忘れてたの! 私が……あるのが当たり前だと思って、それが、胸の中から無くなってるのに気付かなくて……大事な事まで今まで思い出せなくなってたただそれだけなの!」

 

モコ「あいちゃん……」

 

アイエフ「私もう思い出したの、探し物見つかったの……だからもう……心配掛けさせんじゃないわよ……」

 

    背中からでも伝わってくる感情をまとったアイエフを見るモコの目は、どこまでも丸くなっていた。

    モコ、しびれている右手をのばして地面につける。

 

アイエフ「モコ!?」

 

    アイエフの膝の上から滑り落ちる。

 

モコ「むぐっ!」

 

    慌てるようにモコを支えるアイエフ。

    そのまま立ちあがろうとするモコを介助する。

    しびれに耐えながら立ち上がるモコ。

    アイエフの手をそっと離す。

    ぎこちなく一歩下がり。

 

モコ「ごめんなさい」

 

アイエフ「え……?」

 

モコ「わたし、あいちゃんまた泣かせちゃったから……」

 

アイエフ「別に泣いてなんか……あ、れ……?」

 

    アイエフ、自分の頬に伝う涙にようやく気付く。

    モコ、それを見つめる。

 

 

 

○同・バーチャフォレスト入口

 

    アイエフ、モコをおぶりながら入口から離れていく。

 

アイエフ「ごめん、モコ……置いてけぼりにしちゃったり、見捨てちゃったりして……あれは……酷すぎよね」

 

    モコ、アイエフに乗って揺られながら。

 

モコ「ううん。いま、あいちゃんのこと、ちょっとだけ、分かった気がする!」

 

    アイエフ、ふっと笑って笑顔ができる。

    モコも自然と笑顔になる。

 

ネプテューヌの声「おーい! あいちゃーーん!!」

 

    ネプテューヌの声に顔を向けるアイエフ。

 

アイエフ「あ……ネプ子ーー!!」

ネプテューヌの声「あーーいちゃーーーん!! モコーーーー!!」

 

    ネプテューヌの声のする方へ向かって、歩みを強める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・アイデン村・トキネの林~川通り草原

 

アイエフ「子供にもネプ子呼ばわりされてるんだ」

ネプテューヌ「しつけがなってなーいよもー!」

 

    ネプテューヌ達、他愛のない話で盛り上がっている。

    ぶー垂れるネプテューヌをアイエフが冷やかし、ネプギアとコンパは後ろで笑っている。

    モコもその中で笑顔になっている。

 

 

    しばらく歩くと、アイエフが変なにおいに気付く。

 

アイエフ「くん……くんくん……」

ネプテューヌ「どしたのあいちゃん?」

アイエフ「なんか臭くない?」

ネプテューヌ「んえ? くんくん……ほんとだ」

ネプギア「でもどこから……? くんくん」

 

    においを嗅ぎながら歩みを進めていく一同。

 

 

 

○同・モードハウス跡地(・・)

 

    においの元をたどっていくと、轟々と燃えあがっている何かを発見。

    その周囲にワレチューがちらほらと点在している。

 

ネプテューヌ「……え」

 

    ネプテューヌ、その光景に絶句。

    ワレチュー、愚痴を洩らす。

 

ワレチューA「打ち上げに巨大キノコ食べれるって聞いてはしゃいだっちゅけど、食えないじゃないっちゅかこれ」

ワレチューB「でもクランカ様はすごい形相で燃やせ燃やせ言うでちゅよ?」

ワレチューA「ただのキャンプファイヤーじゃないっちゅか」

ワレチューB「でも仮に食えたとしてもこんな毒々しいキノコ、食ったらどうにかなりそうっちゅ」

ワレチューA「なんでクランカ様はこんなキノコ燃やせって言ったでちゅかね?」

ワレチューB「知りたくもないっちゅ。めんどくさい……」

 

    ワレチュー達の会話を見ていた一同、目を点にして唖然。

 

ワレチューB「それじゃあそろそろお歌の時間ちゅー。今日は嫌なこと全部歌に流して忘れるっちゅー」

 

    ワレチュー達がばんざいし、ばんざいした手を揺らしながらちょっと下手な歌を始めた。

 

ワレチュー達「も~えろよもえろ~よ~♪ ほのおよも~え~ろ~♪ き~のこをまきあ~げ~♪ て~んまでこがせ~♪」

 

 

    現在進行形で燃えているのは、毒々しいキノコにしか見えないモコの店、『mode house』。

    見事に、炎に焦がれて焼け焦げキノコになっている。

 

アイエフ「見事にまる焦げ?」

ネプテューヌ「あー……傘の部分だけ狩られちゃってるねー」

コンパ「キャンプファイヤーしちゃってるです……」

モコ「きのこじゃないもんやじるしだもん……」

ネプギア「っていうかー……」

 

 

ネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフ、「お店壊れてるーーーーーーーーーーーーー!!!?」

 

モコ「うわはああああ~~~~~んっ!!!」

 

アイエフ「ああああっ……」

ネプテューヌ「あ、あ、あ、あう、な、泣かないでモコ~~!」

アイエフ「どーしよ、あそこモコの住処よね?」

コンパ「焼けキノコになっちゃったです……」

モコ「うえええ~~~~~んっ!!」

ネプテューヌ「いよいよこっちが迷惑かけちゃったかな……」

 

    ネプギア、あることを思いつく。

 

ネプギア「だったら、プラネテューヌの教会に来ない?」

モコ「ええぇぇ~~、う?」

 

    ネプギアの一言で途端に泣きやむモコ。

    一転して嬉しそうに。

 

モコ「きょーかいってあそこ?」

ネプギア「うん。わたしとお姉ちゃんが住んでるあそこ。どれくらい長く置いてあげられるかは分からないけど、モコちゃんが良ければ……どうかな?」

 

    目をキラキラさせる。

 

モコ「住んでいいの!?」

ネプギア「うん!」

 

    アイエフも負けじと提案。

 

アイエフ「あ、じゃーまずはとりあえず、”泉”にいれてあげましょ?」

コンパ「どうして泉を使うですか?」

アイエフ「下っ端にちょっかい出されたあたりから、コードが狂っちゃってるみたいで」

コンパ「うぇぇ!? 大変ですぅ!」

 

    飛び上がって慌てるコンパ。

 

ネプテューヌ「はいはーい! わたしが”リカバリ”するー!」

ネプギア「わたしも付き添います」

ネプテューヌ「え、いいよぉー! 一人で出来るもん!」

アイエフ「ネプギアも一緒にやったげて」

ネプテューヌ「あいちゃんまでー!」

 

    はしゃぐようにアイエフの背中で拳を突き上げるモコ。

 

モコ「りかばりー! ごほっ、げほっ!」

ネプテューヌ「わあああっ……」

 

    ネプテューヌ、咳をしたモコを見て気遣う。

 

ネプテューヌ「だいじょうぶ?」

 

    モコ、うなだれた後ネプテューヌと目を合わせる。

 

モコ「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○ギョウカイ墓場

 

    積み上がったゴミの山4つ、今でも物理エンジンに従い少しずつ崩れている。

    その山の一つに有線ケーブルがつながっている。

    有線ケーブルは、そこから少し離れた所で、クランカが並べる大量のマジェコンの一つにつなげられ、クランカがスイッチを入れていく。

    四角く敷き詰められたマジェコン達は、隣り合ったマジェコンにそれぞれ共鳴するように光っている。

    遠くから見ると、電光掲示板が動いているのようにも見える。

    クランカ、マジェコンを並べ終えると、リンダの乗っているバンに向かう。

 

クランカ「準備は整ったでしゅ」

リンダ「ういっす!」

 

    バンのうしろへ行き、立てられているマジェコンサーバーを起動させる。

    サーバーはリンダの目の前にあるタブレットとWi-fiネットワークで繋がっており、サーバーは有線でバンの向こうに並べられているマジェコンの一つと繋がっており、マジェコン同士は無線Wi-fiでつながっている。

    その様子が光と音で示され、やがて敷き詰められたすべてのマジェコンが同期した。

    緑色のランプが点灯し、それが四角く敷き詰めた全体で秩序だって点滅し出す。

    上空から俯瞰してみると、それが人が歩く様に見える。

    タブレットには「Transmit "NEPGEAR" Code...」と「Building "Hard Magic"...」が交互に表示されながら進行を示すバーが急速に伸びていく。

    リンダ、それをニヤけながら見つめる。

    進行を示すバーが100%に達した。

    上空からマジェコン達を俯瞰すると、電光掲示板のように「OK!」という文字が流れているように見える。

 

クランカ「さぁ! お目覚めくださいでしゅ!」

 

    クランカが迎え入れるような手振りをすると、マジェコンと有線ケーブルでつながったゴミの山が地面を揺らしながら変形しだす。

    ゴミの山のゴミはうねりうねって全体の形を変えていく。

 

リンダ「おおぉ……」

 

    時に蛇のように、時に蛙のように。

    変形と呼ぶには生々しい動きをしながら、高くそびえたつトビラのような形となる。

    その威圧感にあっけにとられるリンダ。

 

リンダ「……おぉ」

 

    錆びたような、何かが外れたような金属音が鳴り、トビラがゆっくりと開きだす。

    隙間から煙のような闇が洩れ出し、ギョウカイ墓場へと進出している。

    人が抜け出せるような隙間ができた所まで扉が開くと、闇の中から女性がノイズを発しながら歩いてくる。

    彼岸花を思わせる容姿の、闇に全てを売り払ったその者。

 

 

    マジック・ザ・ハード。

 

    リンダ、マジックの姿に目を見開くばかり。

 

リンダ「な……な……!!」

 

    マジック、二人の前に堂々と立つ。

    リンダ、バンから飛び降り、クランカと共にひざまずく。

 

クランカ「お(しゅく)いに上がるのが遅れて、面目次第もございましぇぬ、マジック・ザ・ハードしゃま」

 

    マジック、二人を見下ろし。

 

マジック「それはお互い様だ。我らもお前を復活させるのに随分と後れを取った。申し訳ない、教祖クランカ」

クランカ「もったいなきお言葉でしゅ」

マジック「表を上げよ、お前達」

 

    マジックの言葉で立ち上がるクランカとリンダ。

 

マジック「マジェコンの布教と信者の保護、御苦労であった。我からも労いの言葉を授ける」

クランカ「ありがたき幸せでしゅ」

マジック「時に、他の連中はどうした?」

クランカ「は。その件についてはマジックしゃまにご協力いただきたく存じましゅ」

マジック「ほう。申してみよ」

クランカ「マジックしゃまのうしろにそびえ立つ3本の柱。あちらには残り3人の英雄達が今も眠っておりましゅ。御三方のお目覚めのため、あなた様のログをお借りしたく存じましゅ」

マジック「なるほど。よかろう」

 

    マジック、クランカとリンダに背を向けマジェコンの方へ向かう。

 

クランカ「ケーブルのはみ出ているマジェコンに、あなたのその穢れなきお手を」

 

    クランカに言われた通り、ケーブルのつながったマジェコンに手を触れる。

    触れた瞬間、ケーブルのついたマジェコンが光り出し、その光はマジェコン全体に感染するように広がる。

    光は闇へと変わり、闇はそれぞれのゴミの山にまとわり、ゴミの山は先ほど同様、トビラへと変形し始める。

 

    そして、三つの扉がそびえたつ。

 

    三つの扉は同時に開き、闇を放ちながら目覚めの咆哮のような音を立てる。

 

    放たれている闇を裂いて、人からすれば巨大な影が歩いてくる。

 

    左からトリック・ザ・ハード、ブレイブ・ザ・ハード、ジャッジ・ザ・ハードがその姿を現す。

 

 

ジャッジ「があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!! 俺の憎しみが身体を突き破りそうだあああっ!!!」

 

    ジャッジはギョウカイ墓場全体がひび割れるかのような雄叫びをあげ。

 

ブレイブ「目覚め、眠りそして今また目覚めた……この輪廻は私に何を問いかけている? 何を訴えている!?」

 

    ブレイブは自らがまた目覚めた意味を考え始め。

 

トリック「ひさしぶりのシャバよのぅ。だが何かが足りぬ。幼女だ! 妾の生きがい、幼女がおらぬ!」

 

    トリックは相も変わらず幼女幼女とうっさい。

    マジック、振り向き、右手を突き上げて高らかに謳う。

 

 

マジック「今に見ていろ……貴様等も我等と同じ目にあわせてやる……女神どもおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・教会・蔵書室

 

イストワール「!!」

 

    薄暗い蔵書室の中、パジャマ姿のイストワール、なにかしらの胸騒ぎを感じる。

 

イストワール「……今……声が……恨みと呪いに満ちたような声が……」

 

    急いで後ろのドアを開き、廊下からの照明を入れる間もなく蔵書室を後にする。

 

 

 

○同・ネプ姉妹の部屋

 

    トビラの前、何か盛り上がっていて騒がしい。

    そっと開けてみる。

 

モコ「そしてわたしは彼に誘われるまま原稿の下書き作業に入ります! 彼は言いました『原稿用紙”の”下書きを書こう!』原稿用紙”に”じゃないのかい!?」

ネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフ「はははははははははっ!!」

モコ「あなたはわたしに原稿用紙の絵を書けと? そんなもん機械にやらせなさいよあなた。今は工業化社会とっくに過ぎて情報化社会ですよ? 人の手で一枚一枚トンボ線書いたり断ち切り線入れたり一番上にきれーに文字書いたりって、それ職人さんじゃないですかもう!」

ネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフ「あははははははははははっ!!」

 

    高く積み上げられた座布団の上にパジャマ姿のモコが正座して座り、なにやら芸のありそうに話をする。

    その周りを同じくパジャマ姿のネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフが座って固めている。

    イストワール、ドアを潜り抜け部屋に入り、モコ達の所へ近づく。

 

モコ「まぁ書きますよ!? 書きますけども上手くできませんよ!? なんでかって、そりゃあなた、このゲームタッチペンなんか使わないで十字キーとボタンで絵をかけってんだから! こちとらもうドット打ち状態ですよ!」

ネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフ「はははははははははっっ!」

 

イストワール「なにを盛り上がっているのですか?」

モコ「あ、いーすんちゃん!」

ネプテューヌ「いーすん! モコがね、ア・ラ・モード家に代々伝わるお話してくれてるんだけどね、笑っちゃって笑っちゃって」

コンパ「いーすんさんも聞くです!」

イストワール「あ、いえ、私は……」

 

    イストワール、両手で遠慮の意思を示すが。

 

アイエフ「イストワール様も、たまには思いっきり笑って色々発散しないと、身体によくないですよ?」

イストワール「そういう問題では……」

ネプギア「モコちゃんの話、本当に面白いですから!」

イストワール「いや、あの……」

ネプテューヌ「で、何の話だっけ?」

モコ「なんだっけ?」

 

    周囲のメンバーの猛プッシュに気圧される。

 

ネプギア「原稿用紙でドット打ちのところ……」

モコ「あーそうだそうだ! いや、ですからね! 線がぐにゅぐにゅにならないわけがないんですよ! ギザギザにならないわけがないんですよ! まぁそこは当然大目に見てくれるこのゲーム、どんなにぐにゃぐにゃだろうがギザギザだろうが立派な絵として認めてくれるわけです。だから頑張ってネコちゃんの絵を描いたわけですよ! かいたわけですよ! なのに! なのに! よし、もう一回書いてみよう! 今の絵なかったことにされました!」

 

ネプテューヌ、ネプギア、コンパ、アイエフ、イストワール「はははははははははははははははっっ!!」

 

モコ「ひどいよ!! ひど……」

 

    モコ、話と共に身体を静止させたかと思うと、座布団から突如そのまま倒れこんでくる。

 

ネプテューヌ「うわあっ!? モコ!?」

ネプギア「だいじょうぶ!?」

 

    それをネプテューヌとネプギアが受け止める。

    だらんと腕を垂らしているモコ。

 

モコ「う、うぇ?」

アイエフ「え? 治ったんじゃないの?」

コンパ「それが……ちょっと後遺症が残っちゃったです」

アイエフ「え!?」

 

    コンパの方を向くアイエフ。

 

ネプギア「モコちゃんのコード……すごく複雑で……コードの狂いが完全には治せなかったんです」

アイエフ「そんな……」

 

    イストワール、モコの顔を覗きこむ。

 

イストワール「モコさん……」

 

    モコ、床に手をついて身体を起こす。

    そしてイストワールやアイエフに向けて笑顔を作る。

 

モコ「でも、平気! だって、ともだちがいるもん!」

イストワール「……そうですね」

 

    微笑みを作るイストワール。

    ネプテューヌ、モコを支えて崩れた座布団の上へと誘導する。

 

ネプテューヌ「そう言うことだから! 噺のつづきつづき!」

 

    モコ、座布団へと向かいながら。

 

モコ「えーと、あ、そうだ。ゲーム画面の向こうにいる彼に何度ひどいといったことか!」

 

 

 

 

イストワール(ナレーション)「気がつけば……私も彼女が作る笑いの中にいました。伝えなければらないことを、すっかり忘れるくらい……私は笑いました。今は勇者のかけらも持っていない彼女ですが、人にとって大切なことを、この時に教えられた気がします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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