No.434728

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第23話

ME-GAさん

遅くなりまして23話です。ビクトリィー8/30とか泣いていいですか

2012-06-09 16:33:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1117   閲覧ユーザー数:1081

ギルバから情報を受けた後、イストワールからも連絡が入り、自分達が向かっている炭坑跡地が恐らく目的のダンジョンであるだろうと推測し、一行は向かっていた。

 

流石は炭坑というか、洞窟内はしっかり整備されており、年月を開けた中でもこうして保たれているというのはよほどの手入れがなされていたのであろう事が伺えた。

しかし、そこも最早、モンスターの巣窟となり果てていた。

見渡せばあちらこちらにモンスターが我が物顔で闊歩しており、ギャアギャアとモンスターらしい声を上げて騒ぎまくっていた。

 

 

モンスターを倒しながら洞窟を進む中で後方の防御を担当していたテラにネプテューヌが歩み寄る。

「ん? どした?」

不思議に思ったか、テラはそうネプテューヌに問い掛ける。

しかし、ネプテューヌはエヘヘと笑ってテラの腕に絡みつくように抱きついた。

テラはハアと溜息を吐き、危ないと思い、武器をしまい込んだ。

「ねえ、テラさんはさ……」

「うん」

「私が女神様だって分かったとき、どうだった?」

おおよそ予想できない質問にテラは驚く。

彼女も、彼女でなにか思うことがあったのだろうと感じ、テラはきゅっと口をつぐんだ。

「そう、だな……。正直、吃驚じゃ言い表せないような感じはあったよ。ただの旅の連れだと思っていた娘が、実は女神様だったなんて、ってな」

テラは少し微笑みながらそう告げた。

「そっ、かぁ……」

「でもな、」

ネプテューヌは少し残念そうな声を上げた後、テラはふと口を開いた。

「お前自身が自分の正体を知ったとき、それでもお前の本質が変わらなかったのは凄く嬉しかった。だから、俺はお前が女神様だろうが何だろうがどうこう言うつもりはないよ」

そう言ってテラはネプテューヌの頭を撫でる。

ネプテューヌは一瞬にして顔を紅潮させてテラに腕を握る力を強めた。

そんな彼女の変化に気付かないまま、テラは変わりなく淡々と歩み続ける。

「……うん、そうだよね」

ネプテューヌは小声で呟いた。

しかし、その声はテラには届かない。

ネプテューヌは少し残念そうな表情を見せた後、グイとテラの腕を少し強く引いて前方を歩くコンパとアイエフの後を追った――。

 

 *

 

洞窟内の開けた場所に出る。

そのドーム状の空間はあちこち尖ったような岩がむき出しであり、どう見ても人が作ったような空間ではなかった。

まるで鋭い爪で抉られたような岩肌。

そして、その中心に鎮座する白く禍々しき巨大な体躯を持つドラゴン。

グルル……と小さなうなり声を上げて一行を睨むドラゴンにテラは戦慄を覚える。

 

 

 

 

 

――が、それとは裏腹にドラゴンは軽快な声を上げた。

「渡さない、この剣は渡さないぞぉっ!」

少年のように軽い声でドラゴンはあざ笑うようにそう笑った。

が、その声が高すぎるために小物臭がプンプンしていると言えなくもない。

そんなドラゴンに冷ややかな視線を送る4人に気付いたか?マークを頭上に浮かべながら小首を傾げた。

「どうした? この剣が欲しいためにここに来たんじゃないのか?」

「いや、欲しいには欲しいんだけど……」

アイエフはやりにくそうに言葉を濁した。

弱そう、とはいくら相手がモンスターであっても言いにくい事柄であり、言葉を選ぶ余裕が欲しかったのかもしれなかった。

 

 

が、このパーティには礼儀なんてモノを持ち合わせていない者が二人ほど存在しているため――

「なんか弱そう」

「小物臭がするです」

と、ネプテューヌとコンパの言葉にモンスターはビキリと青筋が音を立てて浮かび上がり、というか必至というか当然というか何にしてもモンスターは怒り狂うように口から炎をはき出している。

「なんだとっ! この俺様に向かって小物!?」

「その言い分も凄い雑魚っぽいよ?」

そんなネプテューヌの言葉に我慢の限界が来たか、ドラゴンは咆吼を上げて突っ込んでくる。

「また面倒くさそうなことを……」

「言葉が通じるんなら話し合いでなんとかできたかもしれないのに……」

「ほら、どうせ『はい』か『いいえ』を選んでも戦闘になったりするじゃん?」

まあ、龍という点では間違っていないのだが、それにしたって色々と間違っている気がしないでもなかった。

 

しかし、そんなことを今更悔いている暇もなく、ドラゴンの突進を横に跳んで避けて斬撃なり弾丸鳴りを撃ち込んでいく。

 

 

そんな最早、集団リンチと呼べなくもないような戦闘が数分続き、その後にモンスターは涙声で白旗を揚げていた。

「ま、負けた! 許してくれ!」

本当にこんな隅々な台詞まで雑魚だな、とテラは感心し始めた。

「さーて! じゃあ約束通り英雄の武器を渡して貰おうじゃまいか!」

いつ何処で約束したのかは謎であったが、まあ武器を渡して貰えるのならまあ良いかという感じでテラもアイエフも突っ込まなかったし、こんなドラゴンに同情するような余地もなかったので何も言わなかった。

ちなみにネプテューヌの言動についてもそこはスルーだ。

モンスターはズシンズシンと足音を立てながら近くの壁をたたき壊し、奥に刺さっていた剣を抜き取り、ネプテューヌに手渡した。

「これが……英雄の武器?」

「そうだ。これが英雄ツリーベルが使っていたとされる三元戦剣だ」

「へぇ……。なんか普通の剣です」

コンパは残念そうに声を上げた。

確かに、英雄の武器と聞けばなんとなく凄そうな感じがするが別にこれと言って不思議な感じがするわけでもなく、見た目通り普通の剣である。

「……確かに、何か少し残念な気がするな」

「そうね……。もう少しいいモノだと思ってたけど」

「俺に文句を言うな! 俺は手に入れただけなんだからそんな細かなことまでは知らないぞ!」

どうでもいいが、ドラゴンとこんなに馴染むように会話できていることに誰も違和感を抱いていないことが不思議である。

「ま、どうであれ、これで目的のひとつは達したワケか」

「そだねー。この調子で他の武器も集めちゃおうか!」

と、ネプテューヌは意気込み洞窟を立ち去ろうとする。

そんな彼女をテラは少し微笑むように見据えている。

 

 

 

テラは言いしれぬ思いを心に抱きながらそれを追うコンパ、アイエフと共に彼女、ネプテューヌの元へと向かった――。

 

 

 

 

 

 

 †

 

少年はチラと脇にある書物に目を移した。

表紙には何と書いてあるか、それは分からない。

しかし、少年はそんなことは気にした様子もなく、いや、きっと彼らには理解できているのだろう。

少年は難しい顔で書物の中の情報に眉をしかめつつ、片手に握るペンをノートに走らせている。

時折、顎に手を当て「うぅん……」と難しい声で唸るも一時置いて「ああ」と思い出したように声を上げて再びペンは踊る。

 

恐らく勉に努めているのだろう。

ほぅ……と一息ついて右肩を揉み、背もたれに深く掛け、宙を睨んだ。

 

 

 

その視線に何が映るかは分かりかねるが、しかし、それは決して善行なモノとは思えなんだ。

そんな彼の視界に端にはドタバタと慌ただしい音を立てながら一人の少女が走り向かってくる。

そんな彼女を軽く睨みながらテラはガタンと椅子を音を立てて引き、少女の頭を思いきり叩いた。

「いっ――たぁーっ!」

少女は涙目でそう叫んだ。

しかし、当の少年は変わらずの無表情で淡々と告げた。

「騒ぐな。第一、今は勉強の時間だろが。真面目にしろ」

しかし、少女は叩かれた頭部をさすりながら相変わらずの涙声で答えた。

「だってー、暇だもん! 遊ぼうよー!!」

「遊ばねぇ! だから今は勉強の時間なんだっつーの!」

少年はだいぶ手慣れた様子で少女の言葉を一括で遮る。

少女はしかし怯まない。

しつこいように少年の足に絡みぐちゃぐちゃと続ける。

「暇―! 暇―! 暇――!!」

「だぁー! 知らん! ひっつくな!」

少年は少女の絡みを脱し、今の衝撃で乱れた衣服を整えて再び着席した。

別段、彼たちにとってこれといったスケジュールとやらは決まっていないのだが彼らが定めたスケジュールでは現在が学習の時であった。

しかし、少女は飽き症なためか時が始まりたった二十分ほどで既に根を上げていた。

が、まあこれも周知の事実か少年は大して気にもせず少女の頭を撫でながら傍らの椅子を指して彼女専用のノートを差し出す。

「ほれ、あと四十分は時間だぞ。頑張れ」

「ぶー……」

と、少々ブーたれつつ仕方なく少女は机へと向かった――。

 

 

こんな何気ない日常の風景も、

 

 

彼が“忘れた”大切な思い出のひとつなのだ――。

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

「なんで――」

少年は頬を伝う自身の血液も気にしない――、

 

いや、もう気にもしていられないか、目の前の少女に問い掛ける。

 

「お前まで行ってしまうのかよ……?」

 

悲しそうに、寂しそうに、縋るように――。

しかし、少女は何も答えない。

 

いや、聞いていないのか。

聞こえていないのか。

 

 

少女は虚ろな瞳で少年を一瞥し、ふと口を開いた。

 

「――私達の存在する理由が何なのか、貴方は知らないから、そう言えるのよ」

 

少女は聞こえていたか、そう口を開いた。

感情のこもらぬ声で。

 

「理由なんて――俺達が在りたいから、じゃ駄目なのかよ……?」

「――駄目よ。私達は存在しないといけないから存在しているのよ。そして、私達の運命は戦うことにある。それは曲げられない――」

「知らねえよ! 運命なんて……!」

 

少女は変わらずの視線でそう告げた。

そう、何も、変わらない瞳で――。

 

少女の前に黒き霧が現れる。

少女は躊躇いなくその中へと足を踏み入れようとする。

しかし、少年は少女の手を掴む。

これ以上行かせまいと――、

 

「離して。遊んでいるヒマはない」

「ッ!」

 

少女は華奢な身体にそぐわない力で少年を払いのけた。

少年の身体は芝の上へと投げ出されぎゅぅと少年は土を握った。

 

「貴方が貴方の本当の存在意義が分かったとき、私の言い分も理解できるはずよ……」

 

そして、少女は靄の中へ姿を消していく――。

少年は悲しそうにそれを見つめていた。

 

「解るわけない……。存在意義なんて……!」

 

一筋、少年の頬に涙が伝う。

それは悲しみを映した、寂しげな色をした涙であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の存在意義はみんなと居ることだ! 俺の意味はみんなを守ることだ!

そうじゃない理由なんて要らない! 俺は望まない――!!!!」

 

 

 

少年はそう叫んだ。

それは意志を宿した、決心とも呼べるべき叫び。

 

 

 

しかし、絶望の淵に立つ彼は、やがて――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらは、俺の、―――――弱さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「消してやる、全て――」

 

 

 

 

 

 

 

「俺の弱さは、要らない!!!!」

 

 

少年は、全てを断ち切るように右手を、握られる大剣で宙を薙いだ。

 

 

その瞳は、闇を映し、そして彼が大切だと豪語した全てを消すために――。

 

 

 

彼は大剣を強く握った。

 

 

 †

 

 

 


 
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