No.433571

天狼星

HPから引っぱってきました。微妙に流血あります。TINAMIはグロ自粛とのことで、もし問題がありましたら遠慮なく通報してください。

2012-06-06 22:16:02 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:648   閲覧ユーザー数:644

何十番煎じになるかも分からない、ハンターがモンスターを拾っちゃうお話のプロローグです。ジンオウガ飼えたら良いな~と思ったので、ジンさんをじんわんおさせてみました。危ないので良い子は真似しないでください。

3rdベースのお話です。

※ 流血表現・残酷な描写があります

幼き頃より、祖母に言い聞かされてきた神話がある。

長い冬に閉ざされる雪も深い山奥の村に、古くから伝わるとある伝説だった。

 

この森には大きな狼が棲んでいて、時折道に迷った人を導くのだという。彼はこの村の神様であり、他のどの狼よりも大きく、そして心優しいと言われていた。

この村で育った他の子供たちと同じように、彼も幼い頃、寝る前にこの神話を象った絵本を祖母か母親に読んで貰っていた。誰が挿し絵を描いていたのかなんて今となってはもう分からないが、彼はそこに描かれている狼が大好きだった。

クライマックスも近い、旅人が道に迷い寒さに凍え死にそうになっているところへ、その神様が助けに姿を現すところだ。

 

2ページわたって描かれていたのは、ほのかに青白く光る毛並みを持つ、大きな狼だった。

その毛は氷の彫刻のようにきらきらと光り、金色の瞳は穏やかに彼を見つめている。

今思い出しても、あれは美しい挿し絵だったと彼は思う。

 

子供の頃の想像力は今よりも豊かで、彼は脳裏にその闇夜に青白く浮かび上がる俺だけのカッコイイ狼さんを想像しては、いつか会えないかと森を歩き回ったりしたものだ。危ないからやめなさいと言われても、友人数人と夜の森を歩き回ったりして迷子になりかけて、大目玉をくらったこともあったっけ。

結局、ついに会えずじまいだったが。

 

 

 

「御免!」

 

それに最後の一太刀を入れたときに、不意に彼はこの記憶を呼び覚ましたのだった。

 

 

 

冬の澄み切った夜空を何気なく見上げると、ひときわ大きな星が目に付くことがある。それは時として旅人を目的の方向へと導き、時に災厄を知らせるものとして、人々の標となっていた。

なんてことはない、祖母から聞かされてきたこの神話もあの星のことだったのだ。

 

 

 

彼があのとき見た光は、それを彷彿させるような美しく、強烈で、そして儚いものだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

今は昔、人々がまだ自然と調和して生きていた時代。

秘湯が秘湯として存在していた頃、山奥にひっそりと佇んでいた村があった。

 

その村の名はユクモ村。綿々と連なる山脈の中心に抱かれ湯治と林業を生業に、その自然の恩恵を余すことなく享受し、共生していた村だった。

 

しかし、その村は今ある脅威に脅かされている。

世界各地に点在する街や村がそうであるように、この村もまた大型モンスターの脅威に晒されていたのだった。ユクモ村周辺は生物にとって住みやすい環境であるため、従来よりアオアシラやドスジャギィといった中型のモンスターが生息していたが、それらはこの村を訪れる狩人によって撃退されていた。彼らは対モンスターに優れた存在であり、彼らの存在だけがユクモ村にとっては頼りだった。

 

村を悩ませているのは、そのハンター達ですらあたわない化け物の出現である。現にそれはこの村周辺に出現するモンスターの規模を考えると、化け物としか言いようがなかった。

ハンターですら敵わない化け物が出現したと知られるや、村は一気に寂れてしまった。村の主要産業であり、命綱でもあった観光客が寄りつかなくなってしまったのである。

 

村の経済状況が危機に陥ろうとしたその時、今や訪れる人も少なくなったその村に一人の旅人がふらりと立ち寄っていった。彼の傍らに控えるは、一匹のアイルー。彼はハンターだった。

 

彼は村人から事情を聞くと、すぐにオトモと共に渓流へと駆けだした。

 

 

 

次の日の朝、ギルドの職員と共に帰ってきた彼は歓声に包まれる。

彼と共に村に来た、大きな荷台に乗せられたそれは村人を苛ませ、傷つけていたものそのものだったからである。旅人は、僅か一日にして村人の悩みを解決してしてしまった。

 

雄々しく光輝く二本の黄金の角、獲物をたやすく引き裂く恐畏の爪、もう命は通っていないのに美しささえ感じられる白毛と蒼い鱗のコントラスト。巨大な狼のような、美しく強い、畏怖の存在。

 

ジンオウガ。

 

これこそこの村を長きに渡って苦しめた化け物であった。

肉食の大型竜で気性も荒く、縄張りを荒らすものには容赦ない。村人の生活範囲である山奥の渓流地帯を縄張りとされたために、彼らは戦々恐々としなければならなかったのである。さいわいにして死者は出ていなかったが、怪我人が幾人か出た上に、村の重要な家畜である丸鳥、ガーグァにも被害が出ていた。

 

通常の生活に戻れる喜びに、村は沸き返った。誰もがハンターの手を取り、彼と抱き合い涙を流して喜びを分かちあった。

ただ単に湯を求めにきた彼は照れたように笑いながら、純朴な笑顔を見せた。本当に安堵した風であった。

 

 

本当なら、英雄と讃えられた彼の話はここでめでたしめでたし、となるはずだった。

しかし、話はそこで終わらなかったのである……。

 


 
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