No.421079

ISアスラン戦記 1話

タナトスさん

多額の借金と引き換えにIS学園に通うことになったアスラン。
はてさて一体彼にどの様な未来が待ち受けているのだろうか?

2012-05-10 21:05:01 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:8807   閲覧ユーザー数:8533

 

 

 

俺は取り敢えず自分に宛がわれた部屋でパソコンを弄りながら考える。

 

「力をファッションか何かと勘違いしているなこの世界は……」

 

俺はISの各国の操縦者達がファッション雑誌のモデルを飾るのをパソコンで見ながら溜息を吐いた。

 

「力を持ったその時から何時しか自分も破壊者となるものを……こいつ等は理解しているのか? 有事の際はこいつ等が真っ先に戦場へ行かなければならんと言うのに……」

 

俺は指揮官として見た場合、こんな兵力としては最高だろうが融通の利かない兵器に意味があるのかと言う事に対し疑問に思った。

 

しかし、一番の疑問は篠ノ之 束に尽きる。

 

「何がしたいんだ? 彼女は……」

 

唯、世界を悪戯に混乱させた挙句、自分は雲隠れ。

 

「利と害がのつりあいが取れてないぞ……」

 

もういい加減そんな事を考えていると時間になった。

 

「さて、入学式に行くか……」

 

俺はすっかり重たくなった腰を椅子から離すとIS学園へと向かうのだった。

 

 

 

恙無く入学式が終了し、1年1組の教室に俺が入ると皆の視線が俺を突き刺した。

 

正直、コレはキツイ。

 

(まるで珍獣扱いだ……)

 

俺はそんな事を考えながら自分の名札がある席に座る。

 

サ行の席だからまあ、真ん中ら付近だ。

 

俺の近くにもう一人の男でISが操縦出来る織斑 一夏がいた。

 

(彼か……織斑先生の弟で俺より先にISを動かした男と言うのは……)

 

俺がそんな事を考えていると山田 真耶先生が教室に入ってきた。

 

山田先生のたどたどしい挨拶も終わり自己紹介が順当に進んでいく。

 

しかし、織斑 一夏はボゥとしていたのか山田先生の呼びかけに気付き、名前を名乗った。

 

しかし、名前だけしか言わず暫くの沈黙の後、

 

「以上です!!」

 

には流石に俺も呆れた。

 

(他に言う事があるだろうに……)

 

その時、織斑先生が織斑 一夏を叩き倒し、自分の自己紹介を開始した。

 

黄色い悲鳴で揺れる教室。

 

そして、また自己紹介が再開される。

 

そして、俺の順番が巡ってきた。

 

女子の視線が一段と強烈に俺を突き刺した。

 

「皆さん初めまして。自分の名前はアスラン・ザラといいます。皆さんとは2年違いの18歳ですが、どうか気にせずフランクに話していただければ幸いです。趣味は機械工学とドライブで今もっている車はアルファアルファロメオのGTでカラーリングは赤です。好きな色は赤色で得意なスポーツはドイツ流西洋剣術が得意です。1年間、よろしくお願いします」

 

その自己紹介の後に一瞬の静寂。

 

そして、

 

『きゃああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~!! カッコいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!』

 

「ザラ様と呼ばせてください!!」

 

「きゃ~~~~~~~~~~~~~~マジクール」

 

「ナビシートは是非私が!!」

 

「お兄様と呼ばせて下さい!!」

 

「デートしてください是非!!」

 

「今、フリーですか!?」

 

「大人の色気がマジパネ~!!」

 

「ザラ様! マジ抱いて~!! 私の処女を奪って~!!」

 

「濡れた……」

 

「アスラン様……ハアハア……」

 

色々と突っ込みたい。

 

特に最後の方!!

 

君達の将来が凄く心配だ!!

 

 

 

 

何とか織斑先生の怒声で事態の収拾を見たが休み時間が地獄だった。

 

廊下側の窓際には他のクラスや2、3年生の姿があった。

 

聞き耳を立てると、

 

「マジかっこいい~!! しかも私達より年上だし」

 

「あの子もなんか年下で良いわね……」

 

「織斑君のかっこいいけどザラ君のかっこいいわね……」

 

(正直、視線が辛い……)

 

俺がそんな事考えていると織斑 一夏が俺に声をかけてきた。

 

「あの、初めまして、俺、織斑 一夏って言います」

 

その自己紹介に俺は嘗ての後輩でシン・アスカの面影をその少年に見た。

 

(懐かしい感覚だ)

 

そんな感傷を無理やり脇へ追い遣り、改めて自己紹介をした。

 

「そんな堅苦しくならなくていい。俺の事はアスランでいいし、敬語もいいよ。改めて、アスラン・ザラだ。よろしく」

 

そう言いながら俺は織斑 一夏に握手を求めた。

 

「それじゃあ、俺のことは一夏、改めて宜しくアスラン」

 

そう言い頭をかきながら握手を返す一夏。

 

その様子に周りの女子が色めき立つ。

 

「いい!! いいわ!! 男同士の友情!! 凄く絵になるわ!!」

 

「ガチBLキタコレ!!」

 

「シャメで保存ですね。わかります」

 

「ぐへへへへ……」

 

「ザラ様が攻めよね!?」

 

「織斑君も捨てがたいわ!!」

 

俺は思わずこう思った。

 

(俺は……間違ったのかな……この学園に入る事を選択した事を……)

 

と。

 

「何か……いずらな……」

 

一夏のその台詞に俺は万感の想いの丈を込めてこう言った。

 

「ああ」

 

と。

 

その後、篠ノ之 箒が現れ、一夏を借りて何処かに行ってから、この801空間と言うか乙女空間に晒される破目になった。

 

 

 

 

 

休み時間も終わり、授業を開始する。

 

山田先生が教団に立ち教鞭をとる姿は正に教師の姿だ。

 

俺はその姿にヤッパリ教師なんだなと失礼なことを思いながらデェスク備え付けのタッチスクリーン型画面に筆記していく。

 

「とまあ、ISに関する説明はここまでです。この時点で何か質問はありますか?」

 

その質問に誰も挙手しなかった為に山田先生は暫く生徒を見回した後、一夏を当てた。

 

「ん~それじゃあ、織斑君、何か質問はありますか?」

 

その問いかけに一夏は脂汗を掻き始める。

 

「えっと……あの……その……」

 

「? 何ですか? 織斑君?」

 

観念したのか一夏は蚊の羽音並みに小さな声で答えた。

 

「全体的に解りません……」

 

「へ?」

 

もう一夏はヤケクソ気味に言う。

 

「全体的に解らないんです」

 

ソレを聞いた山田先生は唸るような声を上げた。

 

「ぜ、全部……ですか……」

 

「はい……全部です……」

 

その言葉に織斑先生が一夏に語りかける。

 

「織斑、お前、入学前に読むテキストを読んでいないのか?」

 

その質問に一夏は思い出したように答えた。

 

「ああ、あの分厚い教本? 読まずに捨てたけど?」

 

その言葉を聞いた瞬間、織斑先生は強烈な拳骨の一撃を一夏の頭に見舞った。

 

アレは痛いぞ。

音からして痛い。

 

「イッ!?」

 

「馬鹿者! あれに必読と書かれていただろうが。まったく……ザラ、この馬鹿にISについての基本を教えてやれ」

 

俺は織斑先生の指示に従い暗証した事を言う。

 

「ハイ、IS『インフィニット・ストラトス』は宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォームスーツです。ISを形成するパーツは核となるコアと腕や脚などの部分的な装甲であるISアーマーから形成されています。また、その攻撃力、防御力、機動力は非常に高いが故に『究極の機動兵器』と呼ばれています。特に防御機能は突出して優れており、シールドエネルギーによるバリアーや『絶対防御』などによってあらゆる攻撃に対処でき、操縦者が生命の危機にさらされることは殆どありません。また、ISには武器を量子化させて保存できる特殊なデータ領域があり、操縦者の意志で自由に保存してある武器を呼び出すことができ、さらに、ハイパーセンサーの採用によって、コンピューターよりも早く思考と判断ができ実行へと移せます」

 

俺の説明に感心したように頷く山田先生と対照的に当然だと頷く織斑先生。

 

「その通りだ。織斑、コレくらいは教本を暗記していれば誰でも理解できる内容だ。後でテキストは再発行してもらえ」

 

 

 

 

三時間目が終了し、俺は一夏にノートを貸してやり説明をしながら教えていく。

 

「とまあ、こんな所だ。コレが基本だからここさえ抑えておけば応用が利く」

 

その説明に一夏は頷きながら俺にお礼を言った。

 

「サンキュなアスラン。正直、俺一人なら途方に暮れていたぜ」

 

そんな時だった、金髪を優雅に靡かせながら一人の少女が俺達に語りかけてきた。

 

「そこの二人、よろしくて?」

 

それもかなり高圧的な態度で。

 

「ん?」

 

「は?」

 

その俺達の返事が御気に召さないのか少女は何と無礼なと言わんばかりに俺達に言い放った。

 

「まあ!? 何ですの、そのお返事!? 私に話しかけられるだけでも光栄なのですからそれ相応の態度と言うものがあるのではないのかしら?」

 

悪いが、俺は君みたいな礼儀を守らない子供に礼儀を尽くす謂れは無いのだよ。

 

一夏は少女を見ながらこう言った。

 

「悪いな……俺、君の事知らないし……アスラン知ってるか?」

 

「いいや、知らないな……」

 

俺達の回答に信じられないと言わんばかりに彼女は俺達を捲くし立てた。

 

「まあ!? 私を知らないのですの!? イギリス代表候補生、セシリア・オルコットを!?」

 

知らない者は知らないし、一々、高々代表候補生の名を知る必要など無い。

 

しばらく一夏は熟考した後、セシリアに問いかけた。

 

「なあ、一つ質問いいか?」

 

「ハン、下々の者の要求に答えるのは貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

オルコットは優雅な振る舞いで一夏の質問に答えようとする。

 

「代表候補生って……何?」

 

その瞬間、聞き耳を立てていた周囲の女子は盛大にすっ転び、セシリアは転びそうな状態を自前の優雅さで押しとどめた。

 

しかし、器用な女だ。

 

俺は右手をやりながらヤレヤレと言いたげに頭を左右に振った。

 

仕方ない、爆発しそうだから一夏に教えるか。

 

「代表候補生はな、各国のIS操縦者の候補生として選出される奴等で、国家やスポンサーたる企業から専用ISを与えられる。その国の代表選抜に参加することができる者達の事だ。当然、ISはコアが限られているからその席も少ないその狭き門を通りぬけた奴等だ」

 

その説明にセシリアは目を光らせ誇らしく語る。

 

「そう!! 限られた、一握りのエリートですわ!!」

 

だが、所詮は候補であって代表ではない。

 

さらに代表とは1人、本当に狭い門を潜り抜けた1人がなる権利がある。

 

高が代表候補生で其処まで自分を喧伝できるオルコットの厚顔さに俺は呆れた。

 

少なくとも山田先生は自身が凄腕の代表候補生であったにも関わらず“所詮”と切り捨てている。

 

だからこそ俺はそんな謙虚な山田先生を人として尊敬できる。

 

織斑先生も自身がISの世界大会、モンド・グロッソで総合優勝を飾り、『ブリュンヒルデ』と呼ばれているのにソレを誇る気は更々無い。

 

本当の優れた人は自分の栄光や経歴を声高には叫ばない。

 

行動で示しているからこそ、彼女達を俺は尊敬できる。

 

俺はオーブの准将だが其処まで自身の肩書きに興味は無い。

 

あくまで行動と結果が全てであってソレが国や世界を平和にすると言う信念があったから戦えた。

 

俺はオルコットが立ち去るまでそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 


 
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