No.413356

真・恋姫無双 魏アフター 簡雍伝 第一幕

光る宇宙さん

連続投稿ですが・・・夜遅くて眠い。

細かい構成の直しは明日やりたいと思います。

色々と試行錯誤しながら投稿してるのですが。

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2012-04-24 02:12:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5461   閲覧ユーザー数:4748

その目は暗く、何も写していない。

 

焦点は合わず、そこには絶望しかなかった。

 

何も考えたくなかった・・・。

 

つい数日前までそれほど裕福ではなかったがそれでも幸せだった。

 

父さんは優しく、母さんは厳しくも暖かく、そんな家で私は生きていた。

 

外は賊が跋扈する危ない世界で、私にはこの村と家族それが全てだった。

 

だけど・・・あの日私の目の前で父さんと母さんが賊に殺された。

 

この世界では良くあること・・・弱いものは生きる事も許されない。

 

あの日から私はずっと父さんと母さんの墓の前で泣いていた。

 

村長さんや村の人たちは私に気を使ってくれる、でも私にはそれら全てが煩わしく感じた。

 

「こんな世界、悲しみしかないこんな世界で生きていたくない・・・。」

 

絶望・・・それが今の私の全てだった。

 

 

真・恋姫無双 簡雍伝 1幕 出会い

 

目を覚ますとそこは俺の知らない景色だった。

 

ずきりと痛む頭を振って辺りを見回す、以前のように目が覚めたら目の前に賊がなんて状況じゃなくて

 

本当によかった。見た事の無い風景どこか寂しげな石が並ぶそこは光の中で見た墓場だった。

 

「どういうことだ?華琳と別れて、変な場所に行って。そこで光の中で泣いてる子供を見て・・・。」

 

そこで俺は気付く。そう、ここは光の中で見た場所だ・・・女の子はいないみたいだが。

 

「訳わかんねえ・・・。」

 

だがふと気付く、ここがあの光の中に映っていた場所ならば。ここにはあの栗色の髪の女の子が

 

いる、もしくはくるはずだ・・・と。

 

「とりあえず、隠れるか・・・。」

 

ここが何処なのかも、何時なのかもわからない。

 

あの時代の続きなのか、それとも・・・。情報を手に入れないとならない、それは分かっている。

 

だけどそんな事を置いておいても俺がここに来た理由は分かりすぎている。

 

「放っておけないよな・・・やっぱ。」

 

見てしまったから、なのに泣いてる小さな子供を放っておくなんて俺には・・・北郷一刀には絶対にできない事だった。

 

俺は近くの茂みに身を隠して女の子が来るのを待つ事にした。

 

来ないなら来ないでそれでいい、その子が立ち直ったという事だから。

 

だがそんな俺の願いもむなしく、女の子はその姿を現した。

 

墓石に縋って小さく泣くその姿に俺は声も出せなかった、どう慰めていいかわからなかったのだ。

 

だけど・・・突と彼女が泣きながら小さく言い放った言葉を聞いて俺は咄嗟にその子の前に飛び出してしまった。。

 

「お父さん・・・お母さん・・・。私もそっちに行っていい?」

 

「駄目だ!!」

 

「え?」

 

 

 

 

今日も私は父さんと母さんのお墓の前で泣いていた。

 

いくら泣いても泣いても涙は止まらない、村の人達は私を連れ戻すことを諦めたようで。

 

ここで泣いていても誰も来なくなった、今の私にはその方が嬉しい。

 

ここは私とお父さんとお母さんだけの場所だから・・・。

 

静寂の中私の泣き声だけが響き渡る。

 

「お父さん・・・お母さん・・・。私もそっちに行っていい?」

 

「駄目だ!!」

 

「え?」

 

私のすぐ側にある茂みから飛び出した男の人が悲しそうな少し怒ったような顔をしてそう言い放った。

 

茂みから姿を現した、光り輝く服を纏った一人の男の人・・・。

 

月の光を受けて柔らかく輝くその服はとても神秘的で、不思議と怖くなかった。

 

突然の出来事に驚きで声も出せない私にその人はそっと語りかけてくる。

 

「事情は分からない、でも・・・なんとなく察せる。それ・・・ご両親のお墓なんだね?」

 

まるで太陽のような暖かさを感じさせる、その男の人は距離を保ったまま膝をつき私と目線を合わせて

 

そっと口を開いた、私はその言葉に頷くことしかできなかった、その目がとても寂しそうだったから。

 

「だったら君は生きるんだ。生きて生きて、それからお父さんとお母さんに会いに行くんだ」

 

きっとこの人は私の事情は知らないはず・・・。お父さんやお母さんを亡くした私の気持ちなんて分からな

 

いに決まってる、そう村の人達や村の子供たちと同じように・・・。

 

だけど・・・どうしてこんなにも、この人の言葉が胸に響くんだろう。

 

「でも・・・もう生きていたく・・・ない・・・。苦しいだけだもん!悲しいだけだもん!」

 

その手をぎゅっと握り合わせて私は感情を爆発させる。

 

「生きてても!いい事なんてないもん!!」

 

大声で叫ぶ私にその男の人は静かにこう言った。

 

「それでも生きるんだ・・・それこそが一番お父さんとお母さんが喜ぶ事だから。」

 

男の人は私に逃げ場をくれなかった。

 

気付けば、男の人はもう目の前にいた。それでも私はそこから離れるなんて思いつかなかった。

 

「だって・・・だって・・・。」

 

言い淀む私を男の人はとても優しく抱きしめてくれた。

 

「もう苦しいのは嫌なの・・・悲しいのは嫌なの・・・。寂しいのは嫌なの・・・。」

 

その腕の中は大きくて暖かくて・・・どこまでも優しくて・・・まるでお母さんやお父さんに抱きしめられてるよ

 

うで。何時しか私はその腕の中で大きく声を上げて泣いていた。その身体に力一杯縋りつきながら。

 

そして私はいつしか眠りに落ちていた。父さんと母さんが死んでから初めて暖かい気持ちで眠りにつくことができた。

 

 

 

安らかな寝息を立てる小さな女の子を胸に抱いて俺は言いようもない気持ちを持て余していた。

 

華琳が目指したものをなんとなく理解していた気でいた、そんな自分が恥ずかしくなる。

 

俺は本当の意味でこの地の事を知らなかったのだと、華琳の庇護のもと暮らしていたと実感できてしまった。

 

「これが真実か・・・、華琳も劉備さんも孫策さんもきっと知っていたんだろうな。その上でこういう現実を無くす為に戦っていたんだろうな」

 

俺は小さく溜め息をついた、華琳の元にいたときだっていくつもの地獄を見た気でいた。

 

でも結局甘かったのだ・・・と、やっとこのことで気付く。

 

俺はそっとその娘を抱き上げて、道の向こうに見える炊事の煙が上がるこの子が住むと思われる村へと向かう事にした。

 

眠ったこの子を放って置くわけにもいかないし、俺自身に情報が必要だったからだ。

 

 

 

予想もしていたし予感もしていた、この子の父と母が殺されたのは最近らしいと言う事は予想していた。

 

それは即ち、この村に賊が押し入ったと言う事になる、そんな状況で俺がいけば・・・。

 

まあこうなるよな・・・・・・・・・。

 

俺は村人にしてみれば格好からして怪しげ100%これ以上にないくらい不審者だ・・・。

 

見た事のない服に、昨今父と母を喪った子供を抱きかかえて村に来ているのだ。

 

そして今の俺の状況を簡潔に説明すると・・・十数人の武器を持った村の男たちに囲まれています。

 

対する俺はフランチェスカの学生服に丸腰・・・・・・どうしろと?

 

「貴様・・・見慣れない服を着て一体何者だ!そんな光る服見た事がないぞ、妖の類か!!」

 

「・・・化け物断定かよ。」

 

俺は軽くショックを受け項垂れると力無く目の前の男に返答する。

 

「別に怪しいものじゃないし、化け物でもない。旅の途中で迷って上にある墓場に出てしまったのだ。」

 

「本当か?そんな意匠の服ここらでは見た事ないぞ?」

 

「見慣れない服を着ているのは俺がこの土地の人間じゃないからだ、これは俺の国では普通に皆が来ている服だ。」

 

この状況で俺は随分と落ち着いている。

 

華琳との暮らしは俺に並外れた度胸をもたらしてくれたらしい。

 

まあそりゃそうか・・・毎日が生きるか死ぬかの瀬戸際だったしな・・・・・・。

 

「この子は墓場で墓石に縋って寝ていたのをみつけたんだ。さすがに放っておけるわけがないんで、あそこから見えた炊事場の煙に向かって歩いてきたんだ。」

 

いくつかの事柄を抜かせば俺は嘘を言っていない。

 

そこまで言った俺は武器を持った男達の中でリーダー格らしき男に近づくと女の子をそっと差し出す。

 

「この女の子はこの村の子で間違いないか?」

 

「ああ、そうだ劉さんとこの阿備だ。」

 

俺の手からその子を抱き寄せると男は後ろに控えていた女性に声をかけた。

 

「頼む、阿備を村長のところへ」

 

女性は頷くと女の子を抱いて背を向けて歩き出した、俺はそれを眺めてほんの少しだけホッとした。

 

「無礼の程、平にご容赦願いたい。」

 

気付けば俺を囲んでいた男達は武器を下ろしていた。

 

「いえ、情勢を鑑みればその応対になんの間違いもありません、気にしていませんよ。」

 

そして俺は武器を降ろした男衆に疑問を投げかけたのだった。

 

「すいませんがいくつかお聞きしたいことがあるのですが。」

 

そうして俺は今この場所、この時代の事を村人に聞いた。

 

その返答はある意味俺の予想通りで・・・ある意味おれの予想を遥かに上回っていた。

 

その事実の中の一つにこの村の名前が含まれていた。

 

即ち、『幽州 琢郡 楼桑村』 彼の大徳 劉備玄徳が故郷・・・。

 

そしてそこがこの世界に置ける俺の物語の始まりの場所だった。

 


 
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