side焔
名乗り上げ、さっそく、棒状手裏剣を投擲する。むろん、刻枼は避け、あるいは手で払い落した。出し惜しみは無用だ。
「忍法・鬼火」
火球を発火させる。そして放つ。その数20。さてどう出る。刻枼は迷いもせずに火球を避けた。しかもただ避けるのではなく、我に接近する。
「虛刀流・牡丹」
避ける。が、追撃の雨だ。一旦距離を置く。チェーンウイップを装備。
「忍法・渦刀鎖式」
発動させ突貫。だが刻枼は驚かずに、
「虛刀流・桜」
馬鹿な!?発動している鎖を切るだと!?見誤った。桜を左手で防ぐ。装甲にひびが入る。チェーンウイップをしまい、続けざまに放つ。
「断罪円」
しかし刻枼も
「雛罌粟から、沈丁花まで打撃技混成接続」
打ち合う。ガキ、ガキン、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ
side一夏
俺はモニター越しから二人の戦いを見ている。まだまだ序盤だ。焔に至っては鉋を出していない。
「すごいですね~~、二人とも」
こくこくと箒が頷いている。
「二人とも、これくらいで驚いているんじゃ、後が持ちませんよ。焔も刻枼もまだ奥義だしてませんから」
「奥義ですか?」
「おっと、焔は使っているな。断罪円。近距離最強の忍法ですよ」
二人とも手が見えなくなるほど、神速で打ち合っている。
「一夏、焔の変体刀はどんな刀なんだ?」
「あいつの刀、絶刀・鉋。一言でいえば折れず、曲がらず、錆びない刀だ。普通、どんなものでも使っていくうちに不備が起きるけど、あの刀はそうじゃない」
「何だそれは!?永久機関じゃないか」
「例外はあるけどな」
さて、そろそろ打ち終わる頃かな?
side刻枼
埒が明かないのでいったん引く。焔も同様に引いた。
「流石は断罪円。ちょっとばかし、ダメージくらったぜ」
「ちょっとばかしか。まあいい、どんどんいくぞ」
再び鬼火を発動させた。なら俺は
「虛刀流・桜桃」
と衝撃波を放つ。鬼火に当たり粉砕され消える。
「ならば、大嵐小枯!!」
風が吹いた。こっちは向かい風、あっちは追い風。まさか!?
「さらに鬼火だ。名付けて、重ね忍法『百鬼夜行』!!」
成程、分が悪い。避けてはいるが当たるのは時間の問題か。本当は、まだ隠しておきたかったんだが、仕方あるまい。
「IS常時能力発動『属性レジスト』」
鬼火をいくつか避けつつ、またははじく。焔に接近する。
「虛刀流・梅」
しかし焔は鉋を出しそれで防ぐ。一筋縄じゃいかないか、ならば、
「派生技、『梅に鶯』」
蹴り続ける。だがふさがれる。流石は、頑丈な刀だけはある。一旦距離を置く。すかさず焔は、
「報復絶刀!!」
突き技で来た。甘い。
「虛刀流・菊」
てこの原理で武器破壊を狙う。が、気付いたのか、焔はあえて鉋を放した。そのまま、投げ飛ばされ地上に突き刺さった。やるなだが、その隙を逃さず、梅を放った。
side???
生徒会室の屋根裏。そこに私は待機している。否、せざるおえないか。
「左近~~、いるんでしょ」
「ここに」
「相変わらず、生真面目ね。映像見えてる?」
「問題ありません」
「で、感想は?相生忍軍の最後の一人として」
「お譲さま、私は忍者ではありません。あくまでも、執事です」
「十人が十人今のあなたのことを見て、執事より忍者だって言うわ。脱線したわね」
「まだまだ、発展途上といったところでしょうか」
「そう。確か、真庭君だったけ。彼が使った断罪円。あれ、左近の忍法の・・・
「生殺しです」
「ああ、それそれ。やっぱり、あの子」
「真庭忍軍の末裔でしょう」
「うちのご先祖様も節穴ね」
「調査したのは、わが先祖です」
「問題ないって許可したのは私のご先祖様よ。左近、この子たちの経歴ちょっと調べてくれない。期限は、そうね。GWの初日がいいわ。その日は、簪や虚ちゃんや本音ちゃん、正雪くんを誘ってご飯食べに行きましょ。その手配も」
「御意」
「ああ、予約は6人よ。ちゃんと自分も入れなさい」
「御意」
そう言って調査にかかる。忍者か・・・私は、忍法よりも刀の方に興味を持った。恐らくあれが完成形変体刀であろう。それらを含め、入念に調べなくては。真庭忍軍か・・・思うところは無くはないが、私はあくまでも影だ。影はあくまでも影だ。生きて死ぬだけだ。
side焔
さて、手詰まりか。急に特攻してきたが、ダメージは見るところ少ない。おそらく、ISの能力であろう。だがそろそろ使えるはずだ。我は棒状手裏剣を構える。
「断罪円か」
「いいや、巻菱指弾応用。一斉射撃」
本来巻菱指弾は精密射撃だ。数を増やすほど、命中率は悪くなる。当然避けられる。接近される。刻枼が技を放つ前に
「爪合わせ」
右手の爪を伸ばす。刻枼は、冷静に手刀で爪を切る。
「虛刀りゅ・・・」
グッサ、本人にも何が起きたか分からないだろう。我はすぐさま刻枼の背中に刺さった鉋を抜き
「報復絶刀!!」
体重を乗せて切る。大ダメージのはずだ。が
「虛刀流・菫」
足が絡まり、手刀で押し倒され地面に投げ飛ばされる。油断した。上を見上げる。
「驚いたぜ。それが、お前の能力か、焔」
「まあな。我は、これが黒鳳の単一使用能力『死翔刀』。ネーミングセンスがないことはご愛敬だ」
「いいんじゃないか、さて、そろそろ時間も押してきたな」
そう言って刻枼は地上に降りた。
「全力でいくぞ!!」
「やってみろ!!」
「だだしその時には、八つ裂きになってるだろうがな!!」
生半可な技では効果は無い。ならば、
「断罪絶刀!!」
「七花八裂・改!!」
神速で切り合い、打ち合う。すでに何百合やりあったのかは分からない。気を抜いたら負けだ。だが、胸に掌底をくらう。続いて、もう一撃強烈なのをくらう。気絶しそうな感覚に陥りながらも、俺は鉋をふるった。それが届いた。好機、もう一度胸を切り裂いた。
勝った。それが命取りだった。刻枼は猛攻にめげずに再び掌底を繰り出した。同時に我も斬りかかる。同時に、ダメージをくらう。その時、
「エネルギー残量0。両者引き分け」
はい?
刻枼も同様に首をかしげる。会場も同様に唖然としていた。
☆
「よくもまあ、あれだけ持ちあげて引き分けか。仕方ないといえば仕方ないな」
ピットに戻り、千冬さんの一言だった。
「まあ、一週間であれだけの動きだ。明日からも精進しろ」
「「分かりました」」
と、訓示が終わり、一夏に
「さて、次は織斑だな。いけるか?」
「ああ」
「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。一夏、気分は悪くないか?」
「大丈夫、千冬姉。いける」
「そうか」
「一夏」
「何だ、焔?」
「勝ってこい」
「同じく、何ならときめかせろ」
「冗談言うなよ、刻枼。あと、箒」
「な、なんだ?」
「行ってくる」
「あ……ああ。勝ってこい」
この男は。ま、一夏らしいなと思う。
「焔」
「何だ、箒?」
「いつまでかぶっているんだ。その・・・鶴みたいな」
「ああ、うっかりしていた。それと、箒。これは、鳳凰だ。断じて鶴じゃない」
我はそう突っ込んだ。何となく、鶴は嫌いだ。理性が受け付けん。
side一夏
「あら、逃げずに来ましたのね」
セシリアがふふんと鼻を鳴らす。鮮やかな青色の機体『ブルー・ティアーズ』。どこか王国騎士を連想させる。
「逃げるかよ。逃げたら、あの二人に笑われてしまうからな」
「そうですか。なら、チャンスはいりませんわね」
「チャンスって?」
「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿をさらしたくなければ、今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ」
「あいにく、そういうのはいらないな」
「そうですか。それなら―――」
俺は、目をそらさず、動けるように警戒する。
「お別れですわね!」
避ける。あとからやってくるソニック・ブームに翻弄されながらも、避けていく。が、ところどころ当たっていく。
「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」
武器検索をする。あるのは、近接用ブレードと針のみ。まずは、近接用ブレードを展開する。
「中距離射撃型のわたくしに、近距離格闘技装備で挑もうなんて……笑止ですわ!」
「やってやるさ」
激戦が始まった。
side刻枼
「圧倒的不利だな」
「そうだな」
焔が頷く。セシリアは油断はしていない。恐らく
「オルコット嬢が油断するのが先か、一夏が倒れるのが先か……あるいは、一時移行を待っているのか」
「針は扱いにくいからな。一時移行だな」
「針はどういった刀なんだ?」
と、箒が尋ねた。
「軽く、美しいそして脆い。だが…」
「奥の手がものすごく厄介だ。まあ、見ればわかるさ」
side一夏
「はあ、はあ」
打開できない。セシリアの油断を待っているが、なかなか油断しない。
「ほらほら、どうなさいました」
容赦なくブルー・ティアーズで攻撃してくる。
「くそ!!」
闇雲に降ったが当たりはしない。落ち着け、クールダウンだ。
一旦距離を置き、深呼吸をする。よし、近接用ブレードをなおす。
「あら、降参ですか?」
「誰が。使いやすい慣れてない刀から、使い難い慣れた刀に換えるだけだ!!」
右手に、白い鞘の刀を持ち、抜刀する。
「薄刀開眼!!」
目が瑠璃色に変化する。短時間で倒す。ブルー・ティアーズがレーザーを放つ。その攻撃を避ける。針が非常に軽いため、移動も早い。先ずはビットに近づき、舞う。
「零の舞・雪月花!!」
ビット三台に雪、月、花と刻みこむ。ビットは音もなく壊れた。
「なっ!!」
残る一台もレーザーを放っていたが、壊す。セシリアに近づく。
「おあいにく様、ブルー・ティアーズは6機あってよ!」
とミサイルが放たれる。
「一の……うっ」
なんで、5分経ってないのに……強制的に能力(力)の使用が閉ざされた。
ドガァァァン!!
side箒
「一夏っ………!」
さっきまで圧倒していたのに。薄刀・針。実際その刀身は美しかった。そして、それを手にし変化した一夏の瑠璃色の目も……。
「薄刀開眼が切れたか」
「おかしくないか?一夏の許容時間は平均5分。やっと、3分ってところだぞ」
「実戦だ。いつもより、緊張はするものだ。負けたか……」
そんな……。
「―――――ふん」
織斑先生が鼻を鳴らした。
「機体に救われたな、馬鹿者め」
黒煙がはれ、その中心には、純白の機体があった。真の姿で―――
side一夏
設定完成。そう声が聞こえた。唐突に変化した。
ISが光の粒子にはじけて消え、新たに形をなした。工業的な凸凹はきえ、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的などこか中世の鎧を思わせるデザインに変化した。情報を整理し変っていたのは武器もだった。「雪片弐型」ああ、まったく。
俺は針をなおした。どの道、薄刀開眼は使えない。雪片弐型を構え、宣言する。
「白刀開眼!!」
目が浅葱色に変化する。これ以上、みっともないところは見せたくない。守られるだけではいやだ。俺も、守りたい。
俺は、再びセシリアに接近した。セシリアもライフルで撃ってきたが、あたる気がしない。
「一の舞・月下氷刃」
セシリアの機体を切り裂いた。薄刀開眼に比べれば、ランクは落ちるが十分使える。
『試合終了。勝者―――――織斑一夏』
決着を告げるブザーが鳴った。
☆
「やったな一夏」
「ああ」
腑に落ちなかった。月下氷刃一撃で倒せた理由が。白刀開眼は線は見えず、ただ勘で切ったようなものだからだ。
「なんで勝てたか分からない顔をしているな。それこそ、単一使用能力じゃないのか?」
あ、言われてみれば。
「そうだな。白式というより、雪片の特殊能力だ。『バリアー無効化攻撃』相手のバリアー残量に関係なく、それを切り裂いて本体に直接ダメージを与えることができる。そうするとどうなる篠ノ之?」
「は、はい。ISの『絶対防御』が発動して、大幅にシールドエネルギーを削ぐことができます」
「なるほど。直にあたる分大ダメージなうえに急所に当たれば尚更だ」
すごいな。白刀開眼+バリアー無効化攻撃。薄刀開眼より使えるコンボじゃないか
「そううまい話があるわけないだろ一夏」
あれ、心読まれた?
「俺の死翔刀とてエネルギーを使った。一夏の能力も」
「その通りだ。雪片の特殊攻撃にはシールドエネルギーを使う。使い道を誤れば」
「自滅ってわけか」
なるほど。そううまい話は無いらしい。
「まあ、初陣にしては上出来だ。これからも精進しろ。一つのことを極める方が、お前に
は向いているさ。何せ――――私の弟だからな」
その後、山田先生からまた電話帳並みの厚さのルールブックをもらい退出した。はあ~。
ちなみに白式の待機状態は指輪だ。針と同化したらしいとのこと。
「そう言えば、お前ら。どっちが副代表なんだ?」
「俺だ」
と焔。
「最終的にじゃんけんで決めた」
さよで。
「ま、今日は疲れた。飯を食って寝るに限る」
「だな」
「あ、箒」
「なんだ?」
「明日の放課後からも稽古つけてくれないか?」
強くなりたい。まだまだ、こいつらにはかなわないからな。あれ何で赤くなってるんだ?
そして、何でお前らはニヤニヤしているんだ?
「ま、いやなら―――
「いやとは言ってない!!その何だ。特別に付き合ってやる。いいな!!」
「ああ、よろしく頼む」
「暑いな」
「まったくだ」
お前らさっきから何なんだと思いつつ食堂に向かった。
sideセシリア
「・・・・・ふぅ」
蛇口を閉じて、シャワーから流れる音を止める。掛けてあったタオルを手に取って、顔にそっと当てた。
(先ほどの試合)
正直侮っていた部分があったかもしれない。事前に彼の友人たちの試合を見て驚いたものだ。とくに最後の激突は凄まじかった。それでも近距離だということで彼のことを甘く見ていた。
「織斑…一夏」
あの瞳を思い出す。最初に見せた瑠璃色、最後に見せたライトブルーの瞳を。あの強い意志の宿った瞳を。父とは逆連想をさせる。父を含め男なんて野蛮だと思っていたのに……
ときめいてしまった。あの人の……織斑一夏(理想の人)のことをもっと知りたい。
「どうしましょう?」
どうやって彼のことを知ればいい?そうだ!!
「あの人たちならまちがいありませんわ!」
死闘を繰り広げた彼の友人たちなら答えてくれるだろう。
side焔
さて、食事がすんだ。そのまま、俺と刻枼は部屋で休んでいた。刻枼はシャワーを浴びているときだった。
コンコン
控えめなノックの音がした。さて?誰かな。真庭語 (裏)を閉じ、ドアを開いた。
「オルコット嬢?」
何故?とりあえず、部屋に招き入れた。
「して、なに用だ?」
「織斑一夏さんについてですわ」
一夏さん?まさか、
「まった。一つ、問おう。あいつにときめいたのか?」
頷く。あの男は……
「要するに、一夏のことを知りたいのだろう」
「まあ、おおむねそうですわ。それと、わたくしのことはセシリアで構いませんわ」
「分かった。まあ、一言で言うならいい奴だ。良くも悪くもな。それがたたって、何人もときめかしてるからな……
「焔~~、シャワーいいぞ~~」
失念していた。後ろを見ると半裸の刻枼が立っていた。
「って、セシリアさんじゃねえか」
「ああ、セシリア。後ろを向くな。刻枼、何か羽織れ」
「夜分遅くに失礼してますわ。鑢さん」
「刻枼でいいさ、でなに用だ?」
「一夏のことを聞きたいそうだ」
「一夏の?まあ、一言でいえば良くも悪くもいい奴だな」
「ダブってますわね」
事実なのでしょうがない。
「まぁ、俺らに根掘り葉掘り聞くよりかは、直で聞いた方がいいぞ。あいつは、細かいことは気にせん奴だ。気軽に話しかけてみればいいさ」
「だな」
「そうですか。ありがとうございます。先週は心ないことを申して申し訳ありませんでしたわ」
「べつにいいぜ。それと、一夏口説くのは大分難しいぞ。俺の見たところ狙ってる人3人はいるかな」
「まあ、俺らは基本悪人でもない限り一応は平等に応援する。がんばれよ」
そう話を打ち切った。まったく、あの男は。そう思いつつ、激動の一日を終えた。
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