No.411426

エレベーター(前編)

俺の代わりに書いてくれ!!というひと言から生まれた作品です。原案者の許可を得て公開してます。  原案:デカ猫 作:グラムウェル

中編 http://www.tinami.com/view/411429
後編 http://www.tinami.com/view/411431

2012-04-20 18:01:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:471   閲覧ユーザー数:471

某区にある10階建ての雑居ビル。

その古くさい外壁に掲げられたピンクのやたら派手な看板を見上げる華奢な体つきをした、ショートヘアーのボーイッシュな感じの人物、葉月 真央の姿があった。

 

看板に踊る「萌えっ娘♪メイド☆カフェ」という文字を網膜に焼き付ける様にガン見している。

 

「秋葉原からこっちに流れて来たメイド喫茶なのかな?」

 

某雑誌社に勤める関係上、情報は漁れば幾らでも得られる。

加えて、趣味を兼ねてそういった店の取材も手伝っている真央に、知らないメイド喫茶があったというのが驚きだ。

 

「これは行くしかない(キリッ」

無駄にニヒルな微笑みを浮かべ、雑居ビルに入っていく真央。

その背後をじんわりと湿っぽい風が吹き抜けていった。

 

 

 

ビルのなかは外見同様に古くさいものの、それなりに手入れは行き届いていた。

 

入り口からすぐのところに階段とエレベーターが見える。

 

見た目が華奢なのを少しでもどうにかしてやろうと、真央は日頃から空手や柔道で鍛えてはいる。

(全くもって効果は現れないけれど)

 

しかし、エレベーターがあるのにわざわざ階段を使うほどストイックではないので速攻エレベーターの↑ボタンをプッシュした。

 

幸いにも待ち時間ゼロでエレベーターの扉が実にスムーズに開いた。

 

素早く乗り込み最上階である⑩のボタンを押す。

 

扉がゆっくりと閉じて最上階へ真央を運び始めた。

 

その数秒後、僅かな浮遊感と共にエレベーターが止まる。

 

表示は2F。

扉が開く。

 

が、誰も乗らない。

 

ついついフロアを覗いてみたが誰もいない。

 

エレベーターの扉が閉まる。

 

何事も無かった様にエレベーターは10階を目指して……、いたはずなのに3Fで止まる。

 

扉が開く。

やっぱり、誰も乗らないしフロアには誰もいない。

 

扉が閉まりエレベーターは動き、そして4階でまたまた止まる。

 

(故障してる?)

 

閉まってゆくエレベーターの扉を眺めながら真央はぼんやり考えた。

 

その視線の先。

扉が閉まりきる直前、チラリと白い何かが見えた気がした。

 

エレベーターは順調に各駅停車の鈍行列車の様に各階に止まる。

 

5階。

扉が開いた。

フロアを見ると白い人影が立っている様に見えたがエレベーターには誰も乗り込まなかった。

 

6階。

扉が開くと白地に紺の襟とスカートといった古めかしいセーラー服姿の少女が立っていた。

少女はエレベーターには乗らなかった。

 

7階。

先ほどの少女がじっと真央を見つめているだけだった。

 

8階。

真央を見つめるセーラー服の少女がやはり立っていた。

 

9階に止まるエレベーター。

 

扉が開くとやっぱりセーラー服の少女が立っていた。イタズラかと思うが、真央は話しかけてみた。

 

「キミ、10階のお店の子?」

 

少女は何も反応しなかった。

 

扉が閉じたあと、独りきりのエレベーターの中で真央は凹んだ。

 

そうして、エレベーターはようやく10階に着く。

 

扉が開いた。

そこには……。

 

 

 

白いエプロンが眩しいメイド服を着用したおねーさんやロリっ娘が営業スマイルで「お帰りなさいませ、ごしゅ……お嬢様♪」と真央を迎えてくれていた。

 

エレベーターでの出来事を気味悪く思いながらも真央はとりあえずこのメイドカフェを堪能する事にしたのだった。


 
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