No.408992

特捜戦隊デカレンジャー & 魔法少女まどか☆マギカ フルミラクル・アクション

鈴神さん

見滝原市にて、謎のエネルギー反応が続発する。一連の現象について調査をすべく、見滝原市へ急行するデカレンジャー。そこで出会ったのは、この世に災いをまき散らす魔女と呼ばれる存在と戦う、魔法少女と呼ばれた少女達。本来交わる事の無い物語が交差する時、その結末には何が待っているのか・・・
この小説は、特捜戦隊デカレンジャーと魔法少女まどか☆マギカのクロスオーバーです。

2012-04-15 17:19:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3477   閲覧ユーザー数:3449

Epilogue フォーエバー・フューチャー

 

見滝原市を襲った大災害から2年。未だに街中には竜巻による破壊の爪痕が残るものの、見滝原市の都市としての機能はほぼ正常に戻っていた。人々が行き交う街中の光景は災害襲来より以前のものと変わらず、今日も街や人、そして世界は動いていく。

 

そんな流れの中に身を置く、一人の少女が居た。見滝原高校の学生服に身を包み、町中を歩くその少女は、何処にでも居る様で・・・しかし、数年前には人知の及ばぬ世界に関わっていた。少女の名前は、鹿目まどか。2年前、宇宙警察が関与するに至った、魔法少女事件と呼ばれた事件に関わった当事者の一人である。そんな彼女も、現在では高校生。非日常の世界に居た事が嘘のように、町中の日常に溶け込んでいた。だがその実、彼女の中には、かつての彼女には無かった決意の様な光が宿っていた。

 

そんな彼女の傍に止まる車が一台。白黒のカラーリングのなされた、言わば警察車両である。S.P.D.のマークが付いたその車を見て、まどかは足を止める。車から現れたのは、2年前にまどかと知り合い、事件を解決に導いた刑事の一人だった。

 

「バンさん、お久しぶりです。」

 

「久しぶりだね、まどかちゃん!!」

 

警察車両の運転席から現れた男性――バンに、まどかは微笑みながら挨拶する。こうして街中で二人が出会うのは、何度目になるだろうか。魔法少女事件が起こった2年前の出会いの時も、同じような状況だった。

 

「日曜なのに、学校かい?」

 

「はい。今日は部活です。」

 

「そっか・・・それじゃあ、また学校まで送ろうか?」

 

勤務中にも関わらず、一般人を警察車両に乗せるバンの相変わらずの様子に、まどかは苦笑しながらも、好意に甘えて車に乗せてもらう事にするのだった。

 

「それにしても、何年ぶりかな?」

 

「そうですね・・・魔法少女事件の後、いろいろとありましたから・・・多分、2年以上は会ってなかったと思いますよ。」

 

まどかの言う通り、まどかやバンはじめとした魔法少女事件の当事者等が顔を合わせたのは、2年前の事後処理後のやりとりが最後だった。

 

魔法少女事件を解決した後すぐに、地球署のデカレンジャー一同は上層部により宇宙警察本部に召還された。理由は勿論、命令違反を犯しての独断専行と、インキュベーターとの戦闘を行った事である。

宇宙警察本部の取り調べに対し、署長のドギー・クルーガーは、デカレンジャーの命令違反は自分の独断によるものであると主張した。インキュベーターとの戦闘に参加したデカレンジャーの処罰はどの道免れないが、せめて罪の幾分かを、自分が泥を被る事でドギーは軽減しようとしたのだった。無論、バンはじめとしたデカレンジャー一同はそれを否定。命令違反は各自の意思による物であると主張した。そうした矛盾を孕んだ庇い合いが続いたが、結局地球署の一同には―――

 

「“停職処分”だけだったからなー・・・」

 

「本当に、あの時はほっとしましたよ。」

 

魔法少女事件に関与した地球署の面子に対しての最終的な処分は、命令違反に対する厳重注意と、停職処分のみで済んだのだった。最低限、懲戒免職は免れない事をしたデカレンジャー一同を、この様な“軽すぎる”処分となった理由に、宇宙警察警視総監の一条寺烈や、宇宙警察長官のヌマ・Oがあちこちに手を回していたと言う知られざる真実がある事は公にはされていない。そして、宇宙最高裁判所にインキュベーターの真実を告発し、地球にて戦っていたデカレンジャー達がデリート許可を得るために動いていた事も。

だが、地球署一同の処分軽減の最大要因は、『インキュベーターの存在が全宇宙に知らされた』事にある。ドギーが森山記者を通じて宇宙メディアに流していた捜査情報は、一週間もしない内に銀河中に広がり、インキュベーターの真実をひた隠しにしていた宇宙連合の代表達は、追い詰められた末に真実を公表。糾弾の矛先は宇宙連合へと向けられ、バン達への処分が大幅に軽減されるに至ったのだった。

 

「それに、バンさん達が地球から居なくなるって聞いた時には、とても不安だったんですよ。魔法少女や魔女も、この地球にはまだ他に居たんですから・・・」

 

「でも、小津家の人達が協力してくれたおかげで、地球側の問題は解決できただろう?」

 

バン達地球署の面子が、事件解決後に宇宙警察本部に召還される事は、予測されていた事である。ドギーは事件発生後からその対策を練り、親交ある魔法使いの一家である小津家に協力を要請。自分達が地球を離れた後の魔法少女や魔女への対応を任せたのだった。

魔法少女達のソウルジェムに封印された魂は、事件後小津家の魔法により解放され、魔法少女となった少女達は魂の呪縛から解放する事に成功。これにより、ほむらやマミの魂は解放された。他の地球上の魔法少女達は、『I.N.E.T.』が開発した魔力探知レーダーにより、地球上のどの位置にいるかを特定した後、小津家の魔法使い達が世界中を飛び回ってその魂を解放したのだった。

魔女及び使い魔に関しては、魔法少女同様に魔力探知レーダーを利用して居場所を特定した後、小津家が密かに繋ぎを付けた、モヂカラと呼ばれる力を行使する、志葉家率いる侍達の協力を得て殲滅に乗り出し、およそ2年かけてこれに成功。回収したグリーフシードは、小津家が処分する事となったのだった。

 

「それにしても、俺達に出来た事って、案外少なかったよな・・・」

 

「何言ってるんですか。バンさん達が戦ってくれたおかげで、私達の地球の今があるんですよ。それに、ほむらちゃんやさやかちゃん、杏子ちゃん、マミさんだって助けられたじゃないですか。」

 

デカレンジャーの活躍によって救われた人間の名を挙げるまどか。実際には、見滝原市の人々を含めれば大勢の人々を救済した事になるのだが、それでも所詮一握りの人間でしか無い。もっと早く、インキュベーターの正体を掴む事が出来たら、さらに犠牲者を減らせたかもしれないのだ。

 

「皆、あの事件を乗り越えて、しっかり生きて行こうって心に決めたんです。私もそうです。バンさん達が切り開いてくれた未来を無駄にしないためにも、精一杯生きるつもりです。」

 

魔法少女事件の当事者として関わった者達のその後を語るまどか。

さやかは杏子の命がけで行った魂の救出によって、再び人間へと戻る事に成功した。だが結局最後まで、想い人に気持ちを伝える事は出来ず、恭介と仁美の姿を遠くから見つめるしか出来なかった。しかしそれでも、後悔は無かった。魔女にまで堕ちた自分を助けようと戦ってくれた仲間達の厚意に報いるためにも、もう二度と後悔しないような生き方をしたいと胸に誓ったと言う。

魔法少女として長く戦ってきたマミは、魔法少女と言う存在の枷が外れた事で、改めて自身の人生について考えるようになった。魔法少女としてインキュベーターと契約してからの戦いの日々に決別し、一人の少女としての新たな道を、自分自身の手で探し出す事を目指すと言っていた。

マミ同様、長く戦いの日々に身を置いていた杏子は、さやかを救出した事を切欠に、かつて自分が願った救済の意味について改めて考えるようになった。かつて父が道を踏み外した理由を、そして自分がこれから出来る事とは何か、その答えを得るために。

そして、時間と言う名の永遠の迷路から脱出した暁美ほむら。長い時間の中で再び親友であるまどかとの平和な時間を取り戻す事が出来た事を、当事者の中で最も喜んでいた。まどかとは中学卒業で別々の道を歩む事となったが、他の面子も同様、今も連絡を取り合って時々会っている。

事件に関わった魔法少女達が普通の少女としての時間と笑顔を取り戻す事が出来たと言うまどかの言葉に、バンの顔には自然と笑みが浮かんだ。

 

「・・・でも、きっと俺達だけじゃここまでの事は出来なかった。俺達と戦ってくれた人たちが大勢居て・・・力を合わせる事が出来たからこそ、俺達は勝つ事が出来たんだと思う。」

 

デカレンジャーだけではない、この星を守るために戦い続けてきたスーパー戦隊、そして魔法少女達によって齎された“大いなる力”・・・それこそが、あの日の戦いで勝利を得る事が出来た要因だった。あの戦いで掴み取った勝利は、人と人とを繋ぐ絆の力で得たものだと、バンは思い返す。

 

「人は支え合い、助け合って生きている・・・その絆がくれる力に、インキュベーターは気付けなかったんですね・・・」

 

宇宙の寿命を延ばすために活動してきたインキュベーターの姿を思い出し、悲しげな顔をするまどか。宇宙の寿命を延ばすために活動し、魔法少女を利用しようとした事から敵対し、滅ぼす以外に道の無かった存在。目的が手段を肯定するとは限らない、故にまどかやデカレンジャーは彼を否定し、手を切った。対するインキュベーターは、自分達の過ちを認め、未来を自分達に託すと残して消滅した。

 

「でも、あの戦いは無駄じゃなかった・・・俺達は、新しい可能性を切り開く事が出来たんだ。そして、インキュベーターも・・・」

 

デカレンジャーの活躍によって変える事が出来たのは、事件の当事者たちの運命だけではなかった。それは、地球で活動していたインキュベーターを倒してからすぐの事だった。仲間のインキュベーター達が、地球含む多数の惑星に生きる人類に対し、公的にコンタクトを取ってきたのだ。

仲間をデリートされた事に対して報復を行うための宣戦布告を行うのかと、全宇宙が緊張に包まれた中で開かされた彼等の行動は、全く予期せぬ物だった。彼等インキュベーターは、これまで秘匿してきた自分達の存在・所業を公にし、これまでの自分達と全惑星人類との関係全てをリセットし、ゼロから関係を築きたいと申し出てきたのだ。

それは、感情を持たない彼等が、初めて知的生命体の持つ心と言う物に興味を持った瞬間でもあった。彼等は、自分達の同胞が最期に気付いた過ちを、そして知的生命体の持つ可能性を理解しようと動き出したのだ。宇宙に生きる者全てに幸福がもたらされる、新しい未来を築く術を模索するために。

 

「今度はインキュベーターだけじゃない・・・私達も力を合わせて、未来を作らなければならないんです。」

 

「そうだな・・・俺達宇宙警察の戦いも、永遠に終わりそうにないな。ところで、まどかちゃんは今何やってるの?やりたい事とか、将来の夢とかは見つかったの?」

 

「・・・実は、2年前からやりたいと思っていた事があるんです。私・・・宇宙へ行ってみたいと思っているんです。」

 

「宇宙へ?・・・どうしてそう思ったの?」

 

「インキュベーターが解決しようとしていた問題を私自身のこの目で確かめて、魔法少女の様に誰かを傷つける方法ではない、新しい道を探したい、そう思ったんです。結局あの時、私は何も出来なかった・・・だから、これから私にも出来るかもしれない事を、精一杯やってみたいんです。私が信じた人が持つ可能性をただの夢で終わらせないためにも、私達自身の手で未来を掴みたいんです。」

 

あの事件の中で、まどかが最期までインキュベーターと魔法少女の契約をしなかったのも、そのためだった。魔法少女としてではなく、一人の人間として運命に抗い、未来を切り開く。インキュベーターですら気付けなかった、人が持つ可能性を信じてこの道を行きたい。それがまどかの願いだった。

 

「そうか・・・その願い、まどかちゃんならきっと叶えられるよ。俺や他の皆も応援してるぜ!!」

 

既に恒星間飛行が現実の物となっている今、地球人が頻繁に宇宙へ出る事が当たり前になる日は近い。だが、インキュベーターが取り組んでいた問題は決して簡単なものではない。自分達は他者を犠牲にして成り立つ世界を否定したが、綺麗事だけが罷り通る程この世界は甘くは無い。もしかしたらこの先、インキュベーターの所業を否定した事を後悔する時が来るかもしれない。自分達の力だけで未来を切り開くと言う事は、それだけ困難な事なのだ。だがそれでも、自身の手で運命を切り開くと言う選択をしたまどかならば、願いを叶える事が出来るように思えた。

 

「ありがとうございます。私、頑張ります!!」

 

「おっと、そうこう言っている内に・・・着いたみたいだな。」

 

バンとまどかが会話している内に、車はまどかの通う高校へ辿り着いた。車を道路脇に止め、まどかと一緒に車から出る。

 

「そういえば、まどかちゃんはどんあ部活をやってるの?」

 

「ええと、私が所属している部活は「おーい!!まどかー!!」

 

突如呼ばれるまどかの名前。ふと校門の先へ目を向けると、グラウンドの方から走ってくる二人の学生の姿が見えた。一人は髪型がリーゼント、服装は短ラン・Tシャツ・ボンタンという不良の様な出で立ちの少年、もう一人は明るく元気な、活発なイメージのある少女だった。

 

「遅かったな!もう部活始まっちまうぞ!!」

 

「ゴメン、弦太朗君、ユウキちゃん。あ、紹介するね。この人は私の知り合いで、宇宙警察の刑事の赤座伴番さん。」

 

「赤座伴番だ。バンって呼んでくれ。」

 

まどかに紹介され、挨拶するバン。対する弦太朗、ユウキもバンに向き直り、自己紹介する。

 

「はじめまして。城島ユウキです。」

 

「俺は如月弦太朗!この学園の生徒全員と友達になる男だ!!」

 

威勢よく指を突きつけて自己紹介する弦太朗。バンはそんな弦太朗の姿に、勢いで突っ走っていた頃の自分を重ねたのか、妙な親近感を覚えていた。

 

「よろしくな!」

 

そう言って拳を突き合わせる二人。初対面とは思えないほど意気投合した様子で拳と拳をぶつけあわせる二人。

 

「それじゃ、俺はこの辺で仕事に戻るよ。三人とも、部活頑張ってな!!」

 

バンはそれだけ言うと、学校に残された三人に手を振りながら車へと戻って行った。その後ろ姿を、まどか達もまた、手を振りながら見送っていた。

 

 

 

車へと戻ったバンは、宇宙警察としての仕事へ行くべくハンドルを握る。あの事件以来、久しぶりに会ったまどかと会い、決意を新たに未来へ踏み出そうとする少女達の姿を見て、バンは胸が熱くなる想いだった。それと同時に、自身もまた決意を新たにする。

 

「宇宙へ行く、か・・・なら、俺達がまず何とかしなくちゃな!!」

 

つい先日、地球署へ宇宙警察本部から新たな報告が届いた。それによれば、宇宙侵略を企む宇宙帝国ザンギャックが近隣の銀河で行動を開始。猛烈な勢いで侵略活動を進めるザンギャックの魔の手は、刻一刻と地球に伸びていると言う事だった。

このままザンギャックの侵略の手が地球に伸びれば、まどかの願いは永遠に叶わない。バンは新たな戦いの幕開けを予感していた。

 

「ボスが言っていた、『レジェンド大戦』が近づいているのかもしれないな・・・」

 

バンの記憶に新しい、こちらも先日ドギーから聞かされた話。デカレンジャーを含む、地球を守り抜いてきた歴代スーパー戦隊が一同に会しての大戦、『レジェンド大戦』。聞く話によれば、小津家はじめとしたスーパー戦隊達は、ザンギャックの侵略の魔の手を退けるために他のスーパー戦隊達に繋ぎを取り、戦力を整えつつあるとの事だった。無論、デカレンジャーもこのレジェンド大戦には無関係ではない。むしろ率先して戦いに赴く立場にあり、本人達もそれを望んでいる。

 

「問題は、俺達の力が失われるって事か・・・」

 

ザンギャックとの戦いが熾烈を極めれば、スーパー戦隊達は勝利を掴むためにその力は光となって宇宙の果てへ消えてしまう可能性が大きいと言う事だった。自分達だけならいざ知らず、この地球を守ってきた戦士全員が力を失えば、この星は今度こそ光を失うかもしれない。

 

「でも、やるしかないよな・・・」

 

だが、それでもバン達デカレンジャーの胸中には、戦う以外の選択肢は無かった。譬えどれ程の代償を払う羽目になったとしても、自分達はこの星の未来を切り開く人々を守らねばならないのだ。

 

「俺達も負けてられないな・・・絶対に守ってやる!!」

 

まどかは魔法少女の力無しで未来を切り開こうとしている。ならば、自分達もスーパー戦隊としての力を失う事を恐れるわけにはいかない。人の持つ可能性を押し止めないためにも、自分達は立ち止まっている暇は無い。決意を新たに、バンは再び宇宙警察の仕事へ赴くのだった。

 

 

 

物語は、未だ序章でしかない。デカレンジャーをはじめとしたスーパー戦隊達の戦いは、これからも果てしなく続いて行く。この星を救うために戦ってきた正義の心は決して途絶える事無く受け継がれて行く。そして、彼等が守ろうとしてきた愛と勇気は、あらゆる運命を変える力を持つ。

デカレンジャーもまた、この事件を通して歴代スーパー戦隊との絆が生み出す力と、魔法少女達の運命を変える事に成功した。誰もが幸せになれる未来を切り開くために、今日もデカレンジャーは、スーパー戦隊は、そして宇宙に生きる人々は戦っている。

これからも頼むぞ、デカレンジャー

戦え、特捜戦隊デカレンジャー

 

FIN

 


 
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