No.408742

仮面ライダークロス 第八話 悪夢なH/異世界からの転校生

RIDERさん

今回は二号ライダーが登場します。

2012-04-15 06:13:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3691   閲覧ユーザー数:3666

右も左も上も下も、全てが灰色の空間。

そこに、一人の男がいた。

そして、その男に話しかける者がいた。

 

「剣崎一真。」

 

男は名前を呼ばれて振り返った。

見ると、灰色の空間の中から、一人の青年が歩いて来ていた。

「君は?」

「紅渡。」

一真と呼ばれた男が尋ねると、青年はそう答えた。

一真は再び尋ねた。

「俺に何の用だ?」

渡は答える。

「あなたに行ってもらいたい世界があります。」

一真は一瞬驚いたが、すぐ苦笑した。

「俺に?よしてくれ。俺に何ができるっていうんだ?俺には何の力も…」

「これを見てもそれが言えますか?」

渡はあるものを取り出した。一真の顔色が、一気に変わる。

「それは…!」

しかし、渡は構わず続けた。

「多少の改修を施してあります。これで力がない、なんてことはないでしょう。」

「…どうしてだ…」

「?何をですか?」

一真は呻くように訊く。

「どうして俺が、『仮面ライダーだった』と知っている!?」

「…」

渡は少し黙ってから、語り出した。

「剣崎一真。ブレイドの世界の仮面ライダー。親友、相川始と、自分の世界を救うために、自らアンデッドとなった男。以降はアンデッドとしての宿命に抗うべく、ライダーであることを捨て、様々な世界を巡る旅に出た…」

「…そこまで俺のことを…」

「知っていますよ。僕も仮面ライダーですから」

「君も?」

一真はさらに驚いたが、渡は気にしない。

「それより、あなたにはこれから、ある世界に行ってもらわなければなりません。」

「…なぜ俺なんだ?」

「これはあなたのためでもあるんですよ。」

「俺の…ため?」

「ええ…」

渡は言う。

「あなたは彼に、相川始に言いましたね。運命と戦って、勝ってみせると…」

「そんなことまで…」

「…力がほしくありませんか?運命にすら打ち勝てる力が。」

「…その世界に行けば、得られるのか?」

「恐らく。」

それを聞いて、一真は少し考える。

そして、

「…わかった。行こう、その世界へ」

一真は了承した。

「それで、なんていう世界なんだ?」

渡は答える。

 

 

「Wの世界の、風都。」

 

 

 

 

僕は目を覚ました。

「………。」

僕は寝起きの頭の中を整理しながら、今見た夢のことを考えた。

 

今の夢は何だったんだろう…夢にしては、鮮明すぎるような…。

 

おっといけない。時間時間っと…よかった、まだ8時前だ。またあの時と同じミスをしたかと思った。

とにかく支度だ。夢のことは、それから考えよう。学園に遅刻したら元も子もない。あの時だって、せっかく理事長にチャラにしてもらったのに…。

僕はそう思いながら、身支度を始めた。

 

 

 

僕は学園で、ダンテ達に夢のことを話した。

「どうせただの夢だろ?気にすんな。」

ダンテは特に気にしていない。

「でも、普通の夢とは、何かこう、違う気がするんだ。」

僕はさらに説明するけど…

「って言われてもなぁ…」

「夢は夢でしょ?」

照山とレディさんの反応も似たようなものだ。

でも、バージルとトリッシュさんだけが違った。

「確かに、妙な夢ではあるな…」

「案外、正夢になるかもしれないわね。」

二人はまともに取り合ってくれている。

「それは考えすぎじゃねぇのか?」

照山が言った。確かに、正夢は行きすぎだと思う。

でも二人はこう言った。

「光輝が嫌な予感を感じた時、必ず何かが起こる。それはお前達も知っているだろう?」

「どこで起こるか場所までぴったり。それも、今まで一回も外れてないわ。」

「このことからも、光輝には『予知能力』のようなものが備わっているのは確かだろう。」

「光輝が見た夢は、『予知夢』かもしれない。」

予知夢っていうのは、未来で起こることを見るっていうかなり特殊な夢だ。

「あながち間違ってないかも…」

それを聞いて、レディさんも顔が険しくなる。

ダンテが尋ねた。

「じゃああれか?コウキが夢で見たケンザキカズマってやつが、いつかこの風都に来るかもしれねぇってことか?」

「可能性はある。」

バージルが答えた。

 

もし僕の見た夢が本当に予知夢なら、その人が風都に来る。

でもどんな人なんだろう?悪い人には見えなかったけど…

 

 

 

結局その日は何事もなく終わった。夢のことで一日中何も手につかなかったけど。

 

それで今僕は、自分の家で、ヘッドホンのようなものを手に取っていじくり回している。

 

これが何なのか、それは今から数時間前のこと…

 

翔太郎さんから連絡を受けて、僕は風都大学に行った。

そこでは、夢に関する研究をしていた生徒が、夢の中に現れるドーパントの手によって、眠ったまま目を覚まさなくなるという事件が起きていた。

「夢の中に現れるドーパント?そんな特殊なドーパントが…」

勘弁してほしかった。今僕は、ただでさえ夢のことで悩んでるっていうのに…

でも、困っている人がいるなら、どんなに嫌なことでも見捨てちゃいけない。僕は仮面ライダーなんだから。

聞くところによると、翔太郎さんと照井さんはこの事件を解決するために、夢の中に乗り込むつもりらしい。

でも僕は不安だった。だって、夢の中に現れるドーパントでしょ?恐らくそのドーパントには、夢を操る力がある。

そんなやつにどうやって勝つんだ?はっきり言って勝てる気が全くしない。蜘蛛の巣に自分から飛び込んだいくようなものだし…

 

そう思いつつも、僕は協力を了承してしまった。

 

というわけだ。

今僕が持っているヘッドホンのようなものは、何でも、自分が夢を見ていると実感できる夢、明晰夢を研究するためのものらしく、これを使って眠った学生さんが、目覚めなくなったようだ。

「夢、か…」

僕がこの依頼に協力した理由は、学生さん達を助ける以外にもう一つある。

僕が見た夢を調べるためだ。ひょっとしたら、何かわかるかもしれない。

 

僕はヘッドホンをかけて、ベッドに入った。

すると、眠気が襲ってきて、僕はひとたまりもなく眠りについた。

 

 

 

風都大学の研究室。

 

〈NIGHTMARE!〉

 

何者かが、ガイアメモリを起動させた。

 

 

家が、燃えていた。

「え……」

光輝は炎の中に立ちつくしている。

「こ、これって…」

この光景は彼にとって見覚えのあるものだった。

 

それはそうだ。一年前見たものと全く同じ光景なのだから。

光輝は戸惑いから歩き出す。

と、自分の足が何かに触れた。

「?」

光輝は見てみる。

彼の足に触れたのは…

 

ボロボロになって転がる隼人と優子だった。

 

「父さん!!」

光輝は隼人を抱き上げて揺する。

だが彼はすでに事切れていた。

「母さん!!」

優子にも飛び付いて同じく揺するが、こちらも息絶えている。

「そ、そんな…」

光輝がうろたえていたその時、

 

「はっはっはっはっはっはっはっ!!」

 

高笑いが聞こえた。

「!?」

驚いて見てみると、そこには光輝から家族を奪った張本人、テラー・ドーパントがいた。

「貴様…!」

光輝は怒りの眼差しを向ける。だがテラーは笑っていた。

「…笑うな…」

光輝は怒りを込めて言う。しかし、テラーはそれを聞こうとしない。

「笑うな…!」

さらに怒気を強める光輝だが、テラーは笑うのをやめない。

 

ついに光輝の怒りは頂点に達した。

 

「笑うなあああああああああ!!!!!」

 

〈CROSS!〉

 

「変身!!!」

 

〈CROSS!〉

 

光輝はクロスに変身し、

「うおああああああああああ!!!!!」

レクイエムサーベルを手に突撃する。

 

怒りのクロスは、テラーをめちゃくちゃに斬りつける。テラーも余裕の笑いが消え、クロスに追い詰められる。

「さあ、暗黒に沈め!!」

クロスは休めることなく攻撃を加え、最後にテラーを蹴り飛ばした。

「あの世に送ってやる……!!」

クロスはレクイエムサーベルにレクイエムメモリを装填し、引き金を引いた。

 

〈REQUIEM・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「デスティニーグレイブ!!」

テラーに必殺技が直撃し、

「眠れ。深淵の底で」

「ぐあああああああああああああ!!!!」

テラーは爆発した。

「…やった…ついに…勝った…僕は、奴を倒したんだ!!」

 

クロスは変身を解き、両親の亡骸に歩み寄る。

「父さん、母さん。やったよ、僕勝ったよ。二人の……仇………取った…………よ……………」

光輝の目から、涙が溢れていた。

光輝は思う。

(どうして…僕は二人の仇を取ったのに……嬉しいはずなのに……)

 

 

嬉しくない。

 

 

気付けば光輝は膝を付いており、声をあげて泣いていた。

「こんな……憎しみで戦うこと、が…こんなに、こんなに、むなしい、なんて……!!」

光輝は泣きながら後悔する。

 

確かに光輝は勝った。だが、いくら勝ったところで、二人は生き返らない。どうにもならないのだ。

今の光輝の胸の内を、果てしないむなしさが支配していた。

 

と、光輝は気付く。

 

「おかしい。あいつがこんな簡単に倒せるわけがない」

そうなのだ。今倒したテラーからは、あの時感じた圧倒的なまでの恐怖が、微塵も感じられなかった。

それだけ自分が強くなったと言われればそれまでの話だが、どうにも違和感がある。

 

「そういえば…」

光輝はここに至るまでの経緯を思い出してみる。

そもそも、なぜ自分は一年前と同じ状況を見ているのか。

「僕は翔太郎さんに協力を頼まれて、夢を研究する装置を着けてから眠った………夢?」

光輝の脳内に決定的なワードが浮かび上がった。

「そうか、これが明晰夢!」

夢を夢だと認識できるこの夢の中では、夢の内容をある程度コントロールすることができる。

そうでもなければ、あいつを倒せるわけがない。

光輝が思い至った、その時、

 

「正解。」

 

背後から声が聞こえて、光輝は振り返る。

「私の姿を見たな?もう帰れないぞ。」

そこにいたのは三つの頭を持つドーパント、ナイトメア・ドーパントだった。

「そうか、お前が夢を操って、僕にこの光景を見せたのか。」

「それも正解。」

ナイトメアは答えた。

「学生さん達を眠らせたのもお前だな?」

「大正解。」

「やっぱり…よくもこんな夢を見せてくれたな!」

光輝が怒ると、ナイトメアは肩をすくめる。

「何を怒っている?この夢の世界では、お前の中の最も強い思いが具現化される。私はそれを利用しただけで、あとはお前が勝手に動いただけだ。」

「それでもだ!」

 

〈CROSS!〉

 

「変身」

 

〈CROSS!〉

 

光輝は再度クロスに変身した。

「無駄なことを…」

「うるさい!!」

クロスはナイトメアに戦いを挑んだ。

 

 

クロスの懸念は現実となった。ナイトメアは、夢を操る力を持っていたのだ。

カンタービレの光線はナイトメアの武器、ドリームキャッチャーで防がれ、アレグロの高速移動を仕掛けても追い付かれ、トーンの振動剣も通用せず、必殺技も効かなかった。

「こんなことが…!」

「わかっただろう?この世界にいる限り、私に勝つことは絶対にできない。」

「くっ…!」

ナイトメアの言う通りだ。このままでは勝てない。

(この世界から出ないと…!)

クロスは夢から覚めるため、あちこちに自分の頭をぶつけ始める。

だが、いくらやってもクロスの夢は覚めない。

ナイトメアは笑う。

「お前の意思でこの世界から出ることは不可能だ。」

しかし、それでもクロスは諦めない。

「覚めろ…覚めろ…!」

クロスは頭を抱えて、力強く念じた。

「無駄なことが好きなんだな。まあいい。あの刑事と同じように眠らせてやる」

ナイトメアはドリームキャッチャーを手に迫る。

 

次の瞬間、

 

辺りの空間が、粒子化するように消えだした。

「な、何!?そんな馬鹿な!私の支配する夢の中で起きることなど…!!」

うろたえるナイトメア。

 

そして、

 

「うあああああああああああああ!!!」

クロスの存在は、この世界から消えた。

 

 

 

「…っ!!!」

 

光輝は飛び起きた。

「…起きれた…やればできるじゃないか…」

ため息をついたあと、光輝は汗だくの身体を洗うため、浴室に向かった。

 

 

 

「そりゃあ大変だったな。」

光輝から話を聞いたダンテは言った。

「でも、肝心なことは何もわからなかった。」

そうなのだ。ナイトメア・ドーパントの正体も、自分が見た夢のことも、何も…

「お前が無事ならそれでいい。予知夢といっても、可能性の問題だ。あまり気にするな」

「…うん」

バージルに言われて、光輝は渋々納得した。

トリッシュは一人考えている。

(ただ、夢を操るドーパントの力を、『夢の中で』はねのけたというのは気になるけどね…)

と、照山が話し掛ける。

「今思ったんだけどよ、なんかクラスが騒がしくねぇか?」

レディはため息をつく。

「このクラスが騒がしいのは、今に始まったことじゃないでしょ?」

「そういう意味じゃねぇよ。いつもよりってことだ」

光輝はクラス中を見渡した。言われてみれば、確かにそんな気がする。

 

そこへ、ディスクが来た。

「今日は転校生が来るらしいわよ?」

「転校生?珍しいな…」

バージルの言う通り、この時期に転校してくるなんて珍しい。

「で、どんなやつが来るんだ?」

ダンテが尋ねた。

「確か名前は…」

ディスクが答えようとした時、

「お前ら、席につけ~」

銀八が入ってきた。全員が席につく。

 

そして、ホームルームが始まった。

 

「えー、今日は転校生を紹介する。入れ」

銀八の声を聞き、一人の男子生徒が入ってくる。

 

その転校生を見た時、光輝は目を疑った。

 

そっくりなのだ。光輝が夢で見た男性と。

 

銀八が転校生を紹介した。

「転校生の剣崎一真だ。みんな仲良くするように」

光輝はさらに目を疑う。

しかし剣崎一真は気付かず、自己紹介をした。

「剣崎一真です。今日からよろしくお願いします」

「はい、じゃあ席は……白宮の隣が空いてるな。そこに座れ」

「はい。」

一真は光輝の隣の席に座る。

「今日からよろしくね。」

光輝は呆然としている。

「…どうしたの?」

「え?あ、いや。僕、白宮光輝。よろしくね、剣崎さん。」

「俺のことは一真でいいよ。」

「じゃあ僕のことも光輝でいいよ。」

こうして、一真はこのクラスの一員となったわけだが、光輝は、はっきり言って気まずかった。

 

 

 

「光輝、話がある。」

「いいよ。」

光輝はバージルに呼び出され、教室の外に出た。

バージルは尋ねる。

「これはどういうことだ?」

「こっちが聞きたいよ。まさか、本当にこんなことになるなんて…」

剣崎一真。それは光輝が夢で見た存在。

まだ仮面ライダーかどうかはわからないため、同一人物かは不明だが、恐らく間違いないないだろう。

「やはりお前が見た夢は予知夢だったか…」

「とにかく、僕はこのまましばらく様子を見るよ。」

「…それがいいだろうな…」

二人は教室に戻った。

 

「うーん…」

二人の会話を盗み聞きしていたドナルドは唸った。

 

 

 

あれから光輝は一真から話を聞き出そうとしたが、どうにも気が進まないため、断念。結局今日は一真から話を聞き出せないまま、終わってしまった。

「…はぁ…」

光輝はため息をつきながら家路を行く。

 

その時、

 

「おやぁ?ずいぶんと気が重そうですねぇ。」

 

帽子を被り、細い雨傘を持った紳士の姿をした井坂が現れた。

「井坂!」

「悩みがあるなら診察しますよ?」

「誰がお前なんかに…何の用だ。」

「もちろん、君を倒しに来たんですよ。あいにく今非常に腹が立っていましてね…」

「…いいだろう、相手になってやる。来い!」

光輝は人気のない場所に向かった。井坂もついてくる。

 

そんな二人を見ている存在があった。

「…」

彼もまた、二人を追った。

 

 

 

〈CROSS!〉

 

「変身」

 

〈CROSS!〉

〈WEATHER!〉

 

光輝はクロスに、井坂はウェザーに、それぞれ変身した。

「照井さんには悪いけど、今日でお前を倒す!」

「やれるものなら、やってみなさい!」

クロスとウェザーは戦いを始めた。

クロスはウェザーの打撃をかわしつつ、レクイエムサーベルによる攻撃を打ち込んでいく。

ウェザーも負けじと、炎を宿した拳を放ってくる。

「君のことは知っていますよ?両親を奪われたとか…」

「それがどうした!」

「いいえ。ただ、同じ復讐者でも君くらい強くなければ面白くない、と思いましてね。」

「黙れ!照井さんを馬鹿にするな!!」

ウェザーの一言がクロスの怒りに火を付け、クロスはウェザーをめった斬りにしたあと蹴り飛ばした。

 

〈REQUIEM・MAXIMUM DRIVE!〉

 

「デスティニーグレイブ!!」

間髪入れずに必殺技を放ち、ウェザーにダメージを与える。

 

だがウェザーはメモリをブレイクされていなかった。

「やっぱり今の僕じゃ、単独でお前のメモリをブレイクすることはできないか…ならもう一度…!!」

クロスはレクイエムサーベルを置き、クロスインプレッションを発動すべく、クロスドライバーに手を伸ばした。

 

(馬鹿め…!!)

 

だがウェザーは、この瞬間を待ち望んでいたのだ。

「はっ!」

ウェザーは左手から電撃を放つ。

「!!」

クロスはレイブンクロークを盾に電撃を防いだ。

しかし、クロスをこの体勢にさせることこそが、ウェザーの真の狙いだった。

「ぬあっ!!」

ウェザーは左手で電撃を放ちつつ、右手で竜巻を生み出してクロスに飛ばした。

「ぐっ!?」

クロスは竜巻を防ぎきるべく、両足に力を込める。

「ぬあっ!ぬああ!!」

ウェザーの方はさらに竜巻を発生させ、それらをクロスにぶつける。

クロスは耐え続けるしかない。

 

そして、

 

「うわあっ!!」

クロスはついに吹き飛ばされた。

「はあっ!!」

待ってましたとばかりに最大パワーの電撃を放つウェザー。

「ぐああああああああああああ!!!」

クロスは身動きが取れないまま電撃を食らい、変身が解けてしまった。

 

「油断しましたねぇ少年君?まあ、君を油断させるために、わざとあのような安っぽい挑発をしたのですが。」

「く…うう…」

光輝は這いつくばりながら、悔しそうに呻く。

「さあ、死んでもらいましょう。」

ゆっくりと歩み寄るウェザー。

 

 

「待て!」

 

 

そこに、一人の男が割り込んだ。

「お前にこの子はやらせない!」

光輝は驚く。

「一真!?」

ウェザーは忌々しげに一真を見る。

「何ですか君は?もう少しで、この街の仮面ライダーを一人始末できるというのに。」

「…」

一真は無言でバックルを取り出した。

「?」

「それは…!」

ウェザーにとってそのバックルが何なのかはわからなかったが、光輝は知っていた。

夢の中で、紅渡が一真に渡していたものだ。

一真はさらに一枚のカードを取り出す。これも渡が一真に渡していたものだ。

 

一真はカードをバックル、ブレイバックルに挿し込み、腰に当てた。

すると、バックルがベルトに変化し、腰に装着。一真は構えを取る。

 

「変身!」

 

〈TURN UP〉

 

一真がブレイバックルのターンアップハンドルを引くと、青いエネルギーのシルエット、オリハルコンエレメントが出現し、それが一真に迫ってくる。

 

一真がオリハルコンエレメントをくぐり抜けた時、一真は仮面ライダーに変身していた。

 

ウェザーは尋ねる。

「…もう一度訊いておきましょう。何ですか君は?」

一真は答えた。

「ブレイド。仮面ライダーブレイドだ!」

 

 

 

光輝は目の前の光景を唖然として見ていた。

「仮面ライダー、ブレイド…」

このライダーは見た覚えがある。前にディケイドと共闘した時だ。

あの時はブレイドという名前さえ知らなかったが、そのブレイドが、今こうして、自分の前にいる。

(そういえば、あの渡って人が、ブレイドの世界って…)

光輝は考えたが、すぐにやめた。

今はウェザーを倒すことが先決である。

光輝は再び変身すべく、立ち上がろうとする。

ブレイドはその光輝に声を掛けた。

「君は無理をしなくていい。奴は俺が倒す!」

「え…」

「ハハハッ!強気な台詞ですねぇ。この私に勝てるとでも?」

「ああ、勝てる。」

「…ガイアメモリも使わずに変身するライダーなど、聞いたこともありません。正直言って、君の力は未知数ですが、それでも私を倒せる要素にはならな「ごたくはいい。」…いいでしょう。ならば…」

ウェザーは構えを取り、

「あなたから死になさい!!」

両手から電撃を放った。

ブレイドはベルトに装着してあった醒剣ブレイラウザーを抜き、電撃を跳ね返す。

「ほう、それなりにやるようですね。」

「はあああっ!!」

ブレイドはウェザーに斬りかかった。

 

一見ブレイドが優勢かに見えた戦いだが、ウェザーはやはり強く、ブレイドは追い詰められていく。

「どうしました?そんなことでは、私に勝てませんよ?」

「…」

しかしブレイドは落ち着いた様子で、左腕の籠手、ラウズアブゾーバーのカードホルダーから、二枚のカードを取り出し、そのうちの一枚、アブゾーブカプリコーンのカードをセット。

 

〈ABSORB QUEEN〉

 

さらにもう一枚のカード、フュージョンイーグルのカードを、ラウズアブゾーバーのスラッシュリーダーにラウズする。

 

〈FUSION JACK〉

 

すると、ブレイドの装甲の一部が、黄金の金属、ディアマンテゴールドに変化し、背部に金属の翼、オリハルコンウイングが装備された。

 

ブレイドジャックフォーム。ブレイドの強化変身態である。

「翼が生えましたか。それで?」

「こうする!」

ブレイドが言うとオリハルコンウイングが開き、ブレイドは空へと舞い上がる。

そのままウェザーに斬りかかるブレイド。

ジャックフォームに強化変身することによってブレイラウザーも強化されているため、その分ダメージも大きい。

だが、

「調子に乗るな!!」

ウェザーが発生させた落雷によって、ブレイドはあっけなく撃ち落とされてしまった。

「よく頑張ったと褒めてあげたいところですが、その程度ではねぇ…」

「…まだだ…!」

ブレイドは立ち上がり、ラウズアブゾーバーからエボリューションコーカサスのカードを取り出し、それをラウズする。

 

〈EVOLUTION KING〉

 

すると、ブレイドのスーツは、オリハルコンウイングが消え、全身がディアマンテゴールドの装甲となった。装甲のあちこちにレリーフが刻まれている。

 

ブレイドキングフォーム。ブレイドの最強形態である。

「ほほう、これはゴージャスなライダー君ですねぇ。ですが!!」

ウェザーは再び落雷を発生させ、さらに電撃を放って攻撃した。

「そのような見かけ倒しに惑わされるほど、私は甘くありませんよ?」

言って笑うウェザー。

だが、

「何!?」

ブレイドは無傷だった。

「見かけ倒しかどうかは、やってみてから決めるんだな。」

ブレイドが右手を上げると、ブレイドの全身にあるレリーフのうち五ヶ所から、カードが飛び出してブレイドの手に収まった。

ブレイドはそれを、キングフォームになることによって出現した大剣、重醒剣キングラウザーにラウズしていく。

 

〈SPADE TWO,SPADE THREE,SPADE FOUR,SPADE FIVE,SPADE SIX〉

〈STRAIGHT FLASH〉

 

すると、先ほどまで消えていたブレイラウザーが、ブレイドの左手に出現し、キングラウザーとブレイラウザーに、五枚のカードの力が宿る。

「おおおおおお!!」

ブレイドは雄叫びを上げながら駆け出し、

「はあっ!!」

二本の剣を降り下ろした。

「くっ!!」

ウェザーも両腕を燃やし、炎の拳で迎え討つ。

 

 

ドガァァァァァァァァァァン!!!!!

 

 

轟く爆音と巻き起こる爆風。

壮絶な激突に目を細める光輝。

 

「がはっ!!」

ウェザーが膝を折った。メモリブレイクこそできていないが、ブレイドの勝ちだ。

「なるほど、これは強い…ここは退かせてもらいましょうか…」

言うが早いか、ウェザーは霧を発生させて逃げた。

 

戦いに勝利したブレイドは変身を解く。

だが次の瞬間、

「…くっ…」

一真は崩れ落ちた。

「一真!」

光輝は慌てて駆け寄り、抱き上げる。

「待ってて。僕の家はこの近くなんだ!」

光輝は一真を抱えて、自分の家に向かった。

 

 

 

家に着いた光輝は、一真に水を飲ませて落ち着かせた。

「ありがとう、助かったよ。君を助けるつもりが、逆に助けられるなんて…」

「そんなことはいい。それより、僕は君に訊きたいことがあるんだ。」

光輝は、自分が見た夢のことを聞かせた。

「驚いたな。そんな夢を見ていたなんて…」

「じゃあ、今度は君のことを訊かせて?」

光輝に言われて、一真は語り出す。自分がこの世界の住人ではないということ、アンデッドと呼ばれる不死の生命体であるということ、自分のいた世界で起こった出来事、全てを。

「じゃあ、一真は自分がアンデッドになることと引き替えに、友達と自分の世界を救ったの?」

「ああ。」

「そんな…」

「大丈夫。俺は永遠に死ねない身体になったけど、そこまで悪いものじゃない。それに、俺一人の犠牲で、多くの人が救えたんだ。大したことないよ」

軽めに話す一真。だが、光輝は重かった。

「でも…でもこれは悲劇だよ…」

「…優しいんだな、君は。」

「だって…!」

「さっきも言ったろ?この身体はそこまで悪いものじゃない。永遠の命を手に入れたおかげで、こうしていろんな世界を旅できているんだ。心配はいらないよ」

「一真…」

それから、一真はキングフォームのことを伝えた。

キングフォームとは本来、カテゴリーKと呼ばれるアンデッドと融合するものだが、自分はアンデッドとの融合率が高すぎるため、自分が持つ十三体のアンデッド全てと融合してしまっているらしい。そのため体力の消耗が激しく、あまり多用すると自分の中のアンデッドの本能が目覚め、暴走してしまうらしい。

「それで倒れたのか…」

「俺は、渡にこの世界を救ってほしいと頼まれた。だからこの世界を救うまでいるつもりだけど、その間に俺が暴走しないとも限らない。だから頼む」

一真は真剣な顔で光輝を見る。

「俺が暴走したら、止めてくれ。」

「…わかった。でも、暴走なんてさせない。僕が頑張って、一真の負担を減らすから。」

「…ありがとう。」

一真は礼を言った。

 

「さて、俺はもう行く。ありがとう」

不意に立ち上がった一真を、光輝が止める。

「ちょっと待って一真。行くあてとかあるの?」

「ないよ。だから野宿。」

「…じゃあ家にいなよ。」

「…えっ?」

一真は耳を疑った。

「だから、この世界を救うまでの間、家に住みなよ、って言ってるんだ。」

「…いいのか?」

「うん。僕一人しかいないから、寂しかったんだ。」

「はぁ…」

こうして、急展開ながらも二人は同居することになった。

 

 

「そうだ!」

今度は光輝が不意に立ち上がった。

「どうしたんだ?」

「返しに行かなきゃいけない物があるんだ。ちょっと留守番しててもらっていいかな?」

「いいけど…」

「ありがとう。じゃあちょっと行って来るね」

光輝は明晰夢研究装置を持って、風都大学に向かった。

 

 

 

風都大学に着いた時、かなりの人だかりができていた。何が起きたのかと思って光輝が行ってみると、翔太郎と亜樹子を発見した。

「翔太郎さん。」

「おお、光輝か。」

「この騒ぎは一体…」

「事件が解決したのよ。ふぁーあ、よく寝た。」

亜樹子があくびをしながら言った。

すると、学生の一人であり今回の事件の犯人、福島元が連行されて来た。

「お前のおかげで久しぶりによく眠れたよ。」

照井が言った。

(…そういえば、照井さんも眠らせたって言ってたっけ…)

光輝は今さらながら思い出す。

 

その時、

「すいません!通して下さい!」

今回の事件の依頼人、雪村姫香が人混みをかき分け、さらに真倉刑事をもはねのけ、福島に駆け寄った。

「福島くん、ごめんなさい。」

「え…?」

「待ってます。王子様じゃなくて、福島くんが帰ってくるのを…」

「姫香りん…」

福島の目から、一筋の涙が流れ落ちた。

「…刑事さん。出して下さい」

福島がそう言うと、運転手はパトカーを出した。

姫香はパトカーが見えなくなるまで手を振っていた。

 

「びっくり。」

亜樹子は驚いていた。

そこで光輝も思い出す。

彼女は優しくされると、相手を王子様と思い込でしまうらしく、光輝も抱き付かれた。光輝は、自分は王子様なんかにはなれないと言って突き放したが。

(そうだ。僕は王子様なんかにはなれない。僕みたいな弱い人間には…)

光輝が一人思っていると、

「姫香りん!」「姫香りん!」「姫香りん!」

姫香を慕う学生達がやって来た。

「いやぁまた君の笑顔が見れてよかった!」

研究部の赤城教授が言った。

「ありがとう!姫香、みんなみんな大好き!」

その言葉を聞いた学生の一人が尋ねる。

「えっ?一番好きなのは俺だろ?」

それに弾かれるように、他の学生達が反論する。

「いや俺だろ!」「違う!俺だ!」「俺だって!」「私だ!」

やがて耐えられなくなった姫香が言う。

「みんな、ケンカはやめて!姫香、みんな同じくらい大好きですー♪」

 

「全く変わってないじゃん…」

「さあ、お前の罪を数えろ。」

「あ、あはは…」

光輝は苦笑いするしかなかった。

そして、思ってはいけないと思いつつ、思っていた。

ウザイ、と。

 

 

 

一真は留守番をしながら考えていた。

光輝が夢で見ていなかったことである。

光輝が見た夢には、まだ続きがあったのだ。

 

『Wの世界の、風都…いや、クロスの世界と言った方が正しいかもしれません。』

『クロスの世界?』

『ええ。これからあなたに行ってもらう世界は、様々な世界が融合したにも関わらず、消滅どころか、新たな世界として新生した、Wの世界のパラレルワールド。それゆえに、本来誕生するはずのなかったライダーが誕生しました。』

『それがクロス?』

『ええ。もはやその世界を救えるのはクロスのみ…あなたにはその手伝いをしてもらいたいのです。あなたは彼とともに戦う中で、運命に打ち勝つための力を手に入れる…』

 

(本来誕生するはずのなかったライダークロス…運命に打ち勝つための力…一体何の関係があるんだ?)

一真が考えていると、

「ただいま~」

光輝が帰ってきた。

(…詮索はやめよう。俺はこの世界で成すべきことをするだけだ)

「おかえり!」

一真は笑って光輝を迎えた。

 

 

 

ドナルドは携帯電話で電話を掛けていた。

「もしもし、ドナルドです。シュラウドさんですか?」

「私に何の用だ?」

ドナルドはある一言を告げる。

「光輝君の覚醒が近いです。」

それを聞いたシュラウドは少し黙ったが、すぐにまた話し出す。

「そう。なら、近々出向く必要がありそうね。」

 

 

 

 

何かが、動き出そうとしていた……。

 

 

 

 

 

************************************************

次回、

仮面ライダークロス!!

 

バージル「誘拐事件?」

ヴィータ「はやてを、なのはを、助けなくちゃ!!」

なのは「私達、どうなるんだろう…」

スパーダ「ドーパント風情が…この私を怒らせたことを後悔させてくれる!」

クロス「助けよう。みんなで!」

 

第九話

命知らずは誉め言葉ではない

 

これが裁きだ!!


 
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