No.403227

死にたがりの第八十一話 それは奇跡か必然か……

奇跡も、魔法も……あるんだよ……?

2012-04-05 20:45:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2769   閲覧ユーザー数:2638

あらすじ

 

 

何か猫二匹が簡単に捕まりました

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

それは、ある休日の昼下がりだった……。

 

 

ピンポーン。

 

 

「あ、誰か来たみたいやな」

 

 

「俺が出ようか?はやてちゃん、今忙しそうだし」

 

 

今日もみんながそれぞれ蒐集に出向いてくれているので、俺とはやての二人きり。

それにしても、こんな時間に……誰が?

 

 

「良いんよ。アニス君は病人やさかい。それに、腕ももうろくに動かないんやし、無理したらアカンよ」

 

 

そう、この数日で、クイーンが言った事が当たってしまったのだ。

日に日に腕が痺れ、ろくに動かせなくなってしまった。

 

 

「……ごめん……」

 

 

「気にせんでもええって。ほな、ちょっと行って来るな」

 

 

はやては笑顔のまま、リビングから出て行った。

……はぁ、どうしたものかな……。

 

 

もう少しで、胃も完璧に動かなくなりそうだし……。

ああ……キツイな……ここまで来ると、不自由って感じがするよ……。

いや、足が動かない時点で不自由か……。

 

 

ああ、一体俺は何処に向かってるのだろうか……。

 

 

その考えてた時。

 

 

「帰りい!!あんたらには話す事なんかこれっぽっちもあらへん!!」

 

 

玄関の方から、はやての怒号が聞こえてきた。

一体どうしたし……。

 

 

俺は痺れてる手で、車いすの自動操縦のレバーを動かし、リビングを出る。

一体どうしたんだろう?

 

 

そして、リビングを出て最初に見えたのは。

バリジャケットを纏っているはやてだった。

 

 

「はやてちゃん?どうしたの?」

 

 

「あ、アニス君!出て来たらアカン!!」

 

 

何故かそう言われた……。

何故に?て言うか、誰が来てる……の……。

 

 

「えっ……何……で?」

 

 

そこに居たのは……。

 

 

「アニス君……」

 

 

「アニス……」

 

 

なのはとフェイト。

そして、リンディとクロノ……その四人だった……。

 

 

「っ!?クイーン!」

 

 

「駄目や!アニス君は魔法使ったら絶対に駄目!」

 

 

「でもっ!」

 

 

どうしてここに管理局が……。

そうか、やっぱりあの猫、捕まったのか……おいおい、マジかよ……。

絶対もう一匹が助けたとばかり……。

 

 

「ア、アニス君落ち着いて!」

 

 

「そうだよ!私達は、アニスを捕まえに来たんじゃない、話し合いに来たんだよ!」

 

 

「誰が管理局の言う事なんか信じるか!アニス君、えぇから早ぅ逃げて!て言うか何であんたらアニス君の事知ってんねん!」

 

 

何かはやてがもの凄い喧嘩腰なんですけど……。

どうしたものかな……。

 

 

「はやてちゃん、ストップ。少し落ち着こうか」

 

 

「で、でもアニス君。管理局が……」

 

 

「そこの二人なら大丈夫だよ。あの二人は知らないけど」

 

 

リンディとクロノを見る。

こら、目をそらすなそこ。

 

 

「どうやら、話し合いに来たってのは本当みたい。現に、なのはちゃんはデバイスを首に掛けてない……それを見るに、残る二人もデバイスは持ってきてないんでしょ?フェイトちゃんとクロノ。リンディさんは知らないけども」

 

 

「うん、私も今日はバルディッシュは預けてる」

 

 

「僕もだ」

 

 

「私もよ」

 

 

ふむっ……まぁ、良いか。

それにしても……。

 

 

「何時まで面食らってるの?はやてちゃん」

 

 

「いやっ、だって……アニス君、管理局の人と知り合いなん?」

 

 

「そこの女の子二人は友達だけどね。後の二人は知らん、塩でも撒いておいて」

 

 

「おい!どうしてそうなる!」

 

 

「うるさい変態!さっさと帰れ!もしくはそのまま死ね!」

 

 

「い、言うに事欠いて、君は!!て言うか誰が変態だ!」

 

 

「クロノ」

 

 

《クロノ》

 

 

「クロノ君」

 

 

「ク、クロノ?」

 

 

「「《いえーい!》」」

 

 

「い、いえーい……」

 

 

フェイト、これは通過儀礼だよ……。

これを越えなければ、クロノ弄りは出来ないぞ!

 

 

「はやてちゃん、取り敢えず、お客さん」

 

 

「う……うん……」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「それで、どうやってこの家が分かったんですか?一応、ウチの守護騎士の一人が補助魔法で隠していたと思いますけど」

 

 

「その前に、やっぱり君が闇の書の主って事で良いのか?」

 

 

「……まぁ、そうなっちゃってるみたいだね」

 

 

あれから四人とも家の中に入れて、お話し中。

どうしてこうなった……。

 

 

「何時から君は闇の書の主に?」

 

 

「う~ん……かれこれ数か月前からかねぇ。あ、ちょっと待って。ちょっとそこの三人。いがみ合っちゃ駄目だよ?」

 

 

何かなのはとフェイトが、はやてと言い争いになってた。

何これ見苦しい……。

 

 

「貴女はアニス君の何なのかな?」

 

 

「そうだよ?アニスの何なのかな?」

 

 

「ウチの事はえぇねん、でも君達は何なんかな?なれなれしくアニス君の名前呼んじゃって」

 

 

……よし、あっちはスルーでいいや。

何かめんどくさい。

 

 

「君は自分がやってる事の重大さが分かっているのか?」

 

 

「ふぅ……あのねぇ。そんなの俺が一番分かってるに決まってるっしょ。俺がやってくれなんて頼むと思う?むしろ止めてたわこのアホ。だけどねぇ……聞かないんだよ、俺の話」

 

 

ずずーと紅茶をすすりながら話を続ける。

おおう、腕が振るえる震える。

 

 

「闇の書の事は、どうせ調べたか何かしたんでしょ?闇の書はランダムで転移し、主を選ぶ。そして守護騎士が目覚めて、闇の書を完成させる為に魔力を蒐集し続ける……。まぁ実際、闇の書を完成させたら主事巻き込んで死ぬんだけどねぇ」

 

 

「それを知っていて、どうして蒐集をしているんだって聞いてるんだ!」

 

 

「黙れよ小僧。テメェなんかにはあいつらの事なんか分かんねぇよ」

 

 

「っ!」

 

 

俺は殺気を込めてクロノを黙らせる。

ふぅ……俺もこれ位なら出来るしね。

 

 

「俺がやれ何て一言も言っていないって言っただろ。守護騎士達は自分の意志で蒐集をしている。俺はそれを止める手立てが無かった……て言うか、思いつかなかった。そして時間ばかりが取られて、この様さ……」

 

 

自分の足を……体を見て、もう一度、クロノとリンディに向き合う。

 

 

「今じゃ腕にも呪いが来て、物を持つのも辛い。足は完全に動かないし……やんなるよ、ホント……」

 

 

「それじゃあ……この事件は、貴方の意志ではないのね?」

 

 

「そうなりますけども……俺は納得いっていない。むしろ、悔やんでる。あいつらは悪くない、俺の呪いを解こうと必死で動いてくれている……俺ならどうなっても良い。あいつらだけは見逃してやってくれないかな?」

 

 

「……アニス君……」

 

 

はぁっ……どうしたものかな……。

ここでつかまると、計画がなぁ……それは痛い……せめてそれが終わってからでも……。

 

 

「はぁっ……君は完全に自分の立場を忘れている様だね?」

 

 

「?俺の立場?」

 

 

「そうよ。アニス君はクロイツベル一族の子。この事件の八端が、アニス君の守護騎士なら、罪には問われないわ」

 

 

「……あー……そういやそうか……クロイツベル一族は捕まえられないんだったっけ?でも、守護騎士は無関係じゃ……」

 

 

「闇の書の守護騎士はプログラム。そして、それを使っているのがクロイツベル一族なら、話は簡単よ」

 

 

「ふぅーむ……俺自身、プログラム扱いされるのは嫌なんだけど……まぁ、あいつらが無事ならそれに越したことはないか。それよりも、聞いて良いですか?」

 

 

「何かしら?」

 

 

「どうして俺の居る場所が分かったんです?」

 

 

「……そうね、これは話さなきゃいけないわね……」

 

 

「……実は、君を……いや、正確にはそこの八神はやてって子を監視していた人が居たんだ……そしてつい最近、その人の使い魔を捕まえて……」

 

 

「それで、監視してる奴が分かったと……」

 

 

クロノは静かにうなずく。

まぁ、そうなるわな……信頼を置いていた人が、まさかこんな事をしていたとは思わんわな。

 

 

「それで、その人を捕まえて居場所を発見したと?」

 

 

「そうなる。だが、その人が言うには……」

 

 

「闇に書の主は、本当は俺じゃなく、はやてちゃんだっ、て言いたいんでしょ?」

 

 

「そうだ。だから、どうして君が闇の書の主になっているのか聞きたい」

 

 

「……そんなの、逆にこっちが聞きたいくらいさ。俺だって、どうしてこうなったか全く分からないんだよ」

 

 

「そう……分かったわ」

 

 

ありゃま、随分と素直だね。

こりゃ何かあるのかね?

 

 

「おお、怖い怖い。提督ともあろう方が、こんなに素直とは」

 

 

「それは皮肉と取っても良いのかしら?」

 

 

「さぁ、どうでしょうね?」

 

 

「……はぁ、やっぱり貴方って、食えない子ね」

 

 

「だからこんなガキ相手に何をしようとしてるんだって話ですよ。全く……おっと!」

 

 

ガシャン!

 

 

あー、やっべ、カップ落しちまった。

やれやれ、手の自由がきかないって、困るなホント。

 

 

「アニス君大丈夫か!?」

 

 

「あ、うん。ごめんはやてちゃん、滑ってカップ落しちゃった」

 

 

「良いんやこれ位。それに、アニス君腕があんまり動かないんやから仕方ないで」

 

 

「ありがとう」

 

 

いやはや、どうしてものかな、本当に……。

あー、手の感覚ねぇや……。

 

 

「所で……アニス君の事だし、今回も何か策があるのかしら?」

 

 

「あー、そうですね……あるっちゃあるんですけども……まぁ……ねぇ……」

 

 

絶対にこいつら駄目だとか言いそうなんだけど……どうしたものかな……。

賛同してくれるかどうか……。

 

 

「アニス君、策があるってホントなの!?」

 

 

「私達が出来る事なら何でもするよ!」

 

 

「ちょっ、君達!?」

 

 

まだ何も言ってないのに、賛同すんのはぇぇ……。

どうしてこうなってんの?

 

 

「落ち着いて、二人とも。先ずはアニス君の話を聞かないと」

 

 

「そ、そうだ!落ち着くんだ!」

 

 

何とかリンディとクロノが二人を止める。

いやぁ、良かった。

 

 

それからはやても戻って来たので、二期でなのは達がやっていた方法を伝える。

まぁ、アルカンシェルの話は伏せておいた。

だって、局員でもない俺が知ってたら不自然でしょ?

 

 

「それで、その核を何処かで完全に消し去りたいんですけど……何か無いですか?」

 

 

「待て待て……その方法はどうやって見つけたんだ?そして、どうして君が知っている?それも、管理局の情報には無い物ばかりだぞ……」

 

 

「クロイツベルの情報網を舐めてもらっちゃ困る。これ位、三歳の時座学で覚えさせられたわ」

 

 

「さ、三歳って……まだ言葉も曖昧な時期じゃないか……」

 

 

「それでこんな規格外に……」

 

 

「よしはやてちゃん、後で頭突きな」

 

 

規格外とはこれまた酷い……。

せめてチートと言ってほしい!

 

 

「そうね~……それを消し去るくらいの威力がある物は、あると言えばあるんだけども……」

 

 

「まさか艦長、あれの事を言ってます?」

 

 

「そうよ?」

 

 

「ん?あれってなんです?」

 

 

「そうね。アニス君ならこの話も習ったかも知れないから言うわね?あれって言うのは、アルカンシェルの事よ。だいぶ前に起こった闇の書事件にも使われた広範囲の魔導砲。その闇の書の核を消し去るのなら、その魔導砲を使うのが一番よ」

 

 

「だけど、それを何処で撃つかが問題なんだ。こんな所で撃ってしまったら、大変な事になる」

 

 

「……ふむぅ……それって、宇宙で撃つことって可能ですか?」

 

 

「えっ?えぇ、それ位なら大丈夫だと思うけど……」

 

 

「もしかして君……」

 

 

「……そう、核を宇宙で消し去ろうと考えたよ……」

 

 

まぁ、まんま受け売りなんですけどね……。

でも、今の俺の状況から見て、時間が無いしね。四の五の言ってられない。

 

 

「でも、それをするには……管理局の……リンディさん達の協力が必要になってくる。お願いできますか?」

 

 

「……まぁ、ジュエルシード事件での恩もありから……これで貸し借りはチャラって事で言いかしら?」

 

 

「はい、それで構いません」

 

 

「分かったわ。それじゃあ、今日から私達局員も、アニス君の作戦に賛同します」

 

 

「「やった!!」」

 

 

「はぁっ……艦長がそう言うのなら……」

 

 

なのはとフェイトは喜び、クロノは呆れている。

そして、はやては。

 

 

「アニス君……助かるん?」

 

 

「……まぁ……正直言って、このタイミングで、この人達が来たことは奇跡かな?何とか、助かり確立を上げれたっぽい」

 

 

「良かった……ホンマに良かった……」

 

 

泣き崩れてしまった。

はぁ、迷惑かけっぱなしだな、俺……。

 

 

「……今日の所は、帰ってもらえませんか?守護騎士達と話さないといけないので」

 

 

「分かりました、ではまた日を改めて伺います」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

「それじゃあアニス君、またね」

 

 

「ばいばい、アニス」

 

 

「うん、ごめんね?見送り出来なくて」

 

 

「ううん、気にしてないよ」

 

 

「そうだよ。アニスは、ゆっくり休んでて?」

 

 

そう言って、皆は帰って行った。

ふぅ、何とかこれで行ける……。

 

 

「はやてちゃん、いつまで泣いてるのさ?」

 

 

「だって……アニス君が……グスッ……アニス君がぁ……」

 

 

「全く……よしよし……」

 

 

もう力が入らない手で、はやての頭を撫でる。

……もう、感覚も無くなってきている……。

 

 

早く守護騎士を説得しないと……。

いや、でも……案外すんなり受け入れてくれたりして……。

 

 

今後の事を考えながら、俺ははやての頭を撫で続ける。

 

 

……ホント、奇跡ってあるんだね……。


 
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