No.400743

機動戦士ガンダムSEED白式 01

トモヒロさん

福音に撃墜されてしまった織斑 一夏。意識を失った彼が次に目覚めたのは、異世界だった。一夏はその世界で何を見るのか。
IS、ガンダムseedの逆クロスオーバー!
荒れ狂う戦火の中を、駆け抜けろ白式!
これは、あるサイトからの移転です。

2012-03-31 22:27:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:14229   閲覧ユーザー数:13648

 

その名は白式

 

 太平洋上空。織斑一夏は箒を庇って、福音に撃墜された。

 薄れゆく意識の中で、一夏の心は後悔で満ちていた。一夏の意識が消える寸前に見たのは何か大切なものを失ったような、そんな顔をした箒だった。

 

 C.E.70、プラントと地球側との交渉の席で起こった爆破テロを切っ掛けに、「地球連合」はプラントに宣戦布告。農業用コロニー・ユニウスセブンに核が撃ち込まれ、24万名以上にも及ぶ死者が出た。

 血のバレンタイン、それが悲劇の始まりだった。

 

 ヘリオポリス。L3宙域に存在する中立国オーブの資源衛星コロニー。そこの公園で少年が一人退屈そうに大きなあくびをする。今パソコンのディスプレイの端に映る出来事が他人事のように。

 

「キラぁ~」

 

 ディスプレイを眺めていた少年、キラは声をかけられた男女2人組の方を向く。

 

 「こんなとこにいたのかよ。カトー教授がお前のこと探してたぜ」

 「またー!?」

 「見かけたら、すぐ引っ張て来いって」

 

彼らはキラのゼミでの友達、少年の方がトール。少女の方はミリアリア。ちなみに先程キラに声をかけたのはトールの方だ。

 

 「なぁに?また何か手伝わされてるの?」

 「たぁく、昨日渡されたのだって、まだ終わってないのに…」

 

 ミリアリアの伝言にキラは一段とだるそうに肩を落とす。手には一般辞書位の資料が握られていた。

 トールはキラの隣に立ちパソコンのディスプレイを覗き見る。

 

 「お、何だ新しいニュースか?」

 「あぁ、タオシュンだって」

 『こちら、タオシュンでは依然激しい戦闘の音が聞こえてきます』

 「ひぇ~、先週でこれじゃ、今頃もう落ちちゃってんじゃないのタオシュン?」

 

 ディスプレイに映る一週間前のタオシュンの風景はビルに黒い煙が立ち、巨大な人型兵器、MSジンが映っていた。

 

 「タオシュンなんて結構近いじゃない、大丈夫かしら?」

 「なぁに、そらぁ心配ないでしょう。近いったってうちは中立だぜ?オーブが戦場になるなんてまず無いって」

 「そう?ならいいけど」

 

 心配気味のミリアリアに対しトールは起き楽に手をヒラヒラさせて答える。それでもミリアリアの不安は跡を絶たない。

 キラは自分のパソコンの上をチョンチョンと跳ねる鳥のロボットを眺めていた。

 『トリィ』かつて幼少時代を共に過ごした親友が別れ際にもらった親友の証。そして、キラはトリィのカメラの向こうに親友の姿を写し、あの桜並木での事を思い出す。

 

『本当に戦争になるなんて事はないよ。プラントと地球で』

 

 この時、トリィはキラの手の平に飛び移る。

 

 『避難なんて意味ないと思うけど、キラもそのうちプラントに来るんだろ?』

 

そういってキラの思う少年は優しく笑っていた。

 

「キラ?」

「うわぁ!?」

「何やってんだ、早く行くぞ」

「う、うん」

 

 しかし、それはトールの顔面どアップにより、逢えなくも現実に戻される。

 そして、キラがパソコンを鞄へとしまい、腰を上げようとすると…。

 

 『トリィー!!』

 「あ!」

 

 トリィはトール達と正反対の方向へ飛び立つ。

 キラは慌てて、トリィを追いかけると、その後をトールとミリアリアが一旦不思議そうに顔を合わせて、自分達もキラの後を追い始めた。そして、キラは林のだいぶ奥の方に来ると、トリィが何かに止まった。

 

 「ッ!?」  

 「な、何だよこりゃ!」

 「酷い傷…」

 

 そのトリィの止まっているのは、妙にボディラインの分かるピッチリとした服を着た全身傷だらけの少年だった。

 

 

 何故か浮遊感を感じる。それにおそらく撃墜されたのだから海に落ちたであろう、しかし肌は海水の住めたさは感じない。

 不思議と思い、一夏はその瞳開く。

 

 「うぅ…ここは…。ッ‼そうだ箒は!?福音はどうなったんだ!!?」

 

 気がつけば、一夏は闇の中をさまよっていた。状況も分からず、上下前後左右をも渡すもそこはただ一面の闇だった。

 

 「こんな事している場合じゃ無い!早く箒の所に戻らないと…」

 ーーその必要はないよ。

 「ッ⁉」

 

 いきなり背後から声をかけられた一夏は反射的に後ろを振り向いた。そこには、ポォっと白く光る少女がいた。

 

 「必要無いっていう事だとだよ!」

 ーー無意味って事。

 「何だと!?」

 ーーだって、あなたはもうあの世界にはいないもの。

 

 少女の言葉に一夏はサーっと血の気が引く。

 

 「そ、そんな…」

 ーー心配しないで、別にあなたが死んだわけじゃないから。

 「え?そうなのか?」

 ーーそう。ただ、戻れないっというだけ。

 「どう言うことだ?」

 ーー簡単に言うなれば、あなたは世界を越えてしまったの。

 

  一夏の頭に更にハテナマークが増えていく。

 

 ーー…じゃあ、まずはあの後、何が起きたきたか説明してあげる。あなたはあの福音にやられて海に落ちた。そして、そこで異変が起きたのよ。

 「異変?なんだその異変って?」

 ーー突然、海底に次元の歪が発生したの。

 「はあ!?」

 ーーあなたはそれに飲み込まれてしまったってわけ。

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!次元の歪?意味分かんねぇよ!!どこ世界にそんな漫画みたいな事が起きるんだよ!!」

 ーーここ。

 「……」

 

 一夏は開いた口が塞がらないとはこのことだと、身思って実感した。

 

 ーー信じられないと言った顔ね。でも、あなたが目が覚めたら嫌でもそのことを実感するしかないでしょうけど。

 「それより何で君がそんな事を知っているんだ?」

 ーーそれは、私があなたの「剣」であり、「翼」だから。

 「?それってどういう…」

 

 しかし、一夏がそれを聞く前に、少女の体が薄れてゆく。

 

 ーーもう、時間ね。

「待ってくれ!君はいったい何者なんだ!!」

 ーー言ったでしょ私はあなたの「剣」であり「翼」だって。大丈夫だよ、私はずっとあなたのそばに…。

 「うわああああああ!!?」

 

 一夏は眩い光に包まれた。

 

 

 「…知らない天井だ」

 

 開口一番に出てきたのは、某新世紀の少年Sのセリフだった。

 どうやらココは何処かの病院らしく、一夏は病院服に着替えさせられていた。

 

「あ!君、気が付いた?」

 

 一夏が体を起こすと、茶髪の男女2人がドアから入ってきた。

 

 「え、あ…はい」

 「その傷どうしたんだよ?どっかの不良に身包みはがされた?」

 「トール!ごめんなさい悪気があって言ったわけじゃないの」

 「だ、大丈夫です。それよりあなた達は?」

 「俺達か?俺はトール・ケーニヒ。んでこっちが」

 「ミリアリア・ハウよ」

 「どうも、織斑 一夏です」

 トールは一夏の質問に親指で自分を指して自己紹介をする。そしてそれが終わると、今度はミリアリアを指し、ミリアリアが自己紹介をする。

 一夏は少々かしこまって少し頭を下げてから自己紹介をした。

 

 「あとキラって奴もいたんだけど、今は教授の手伝いで先に行っちまった」

 「そのコが君を見つけてくれたんだよ」

 「そうだったんですか!それはありがとうございます!」

 

 今度は深々と一夏は頭を下げる。

 

 「いいって!困ったらお互い様じゃん?」

 「そうそう、それに君は歳下なんだから、そーゆーのはお姉さん達を頼りなさい」

 「あれ?歳下って、ミリアリアさんて俺より歳上だったんですか?」

 「はははは!!歳下に見られてやんの~!」

 「くぉらー!トール!!」

 

 ミリアリアはトールの首をロックしてしめる。トールはペシペシとミリアリアの腕を叩くが、一向に緩む気配はない。そんな二人を見て一夏は耐えきれず、お腹を抱えて笑出してしまった。

 その後、一夏の病室はしばらく賑やかになり、看護婦さんから怒られた。

 看護婦さんが去ったあとも、三人は目を合わせて、段々と頬が緩む。そしてまた、三人は笑い出そうとしたその時。

 

ズドォオオオオオオオッ!!!!

 

 病室が凄まじい揺れに包まれた。

 「じ、地震!?」

 「コロニーに地震なんか起きるかよ!」

 「隕石かな!?」

 「多分な」

 

 一瞬、一夏には何のことだかサッパリ分からなかったが、それよりも窓の外に一夏にとって信じ難いモノが見えた。

 

 「な!?何だあれ!!」

 

 一夏にはトサカの生えた一つ目の巨人が飛んで行くように見えた。

 

 「ザフトのMSじゃないか!?」

 「ヘリオポリスは中立のコロニーなのに、何で!?」

 

 この時、一夏は唖然としていた。外には見たこともない巨人がバーニアを吹かして飛んでいるのだから、しかし、一夏にとって驚く所は他にもある。地面が筒上になっているのだ。空はないし、ガラス張りになっているところからは星がみえる。

 そして一夏はあの夢のことを思い出す。

 

 ーーあなたは世界を越えてしまったの。

 

 (なんだよ!?あれただの夢じゃなかったのかよ!)

 「何ボーっとしてんだ一夏!早く行くぞ!!」

 「え!?行くって、どこへ?」

 「避難シェルターに決まってんだろ!避難警報がなってんだ、グズグズするな!」

 

 そういってトールは一夏の手を取り走り出そうとしたが。

 

 「ちょっとトール!一夏君は病人なんだよ!」

 「おっと、そうか!わりぃ…」

 「平気です。それより早く行きましょう!急いでいるんでしょ」

 

 

 「これが…戦争」

 

 一夏は外の惨状を見て、驚愕した。遠くからではあるが、今一夏がいる位置からでも十分にトサカの巨人、ジンがマシンガンを撃ち、着弾したところから爆発するのが見えた。

 

 (もしかしたら、ISでもこんな戦争は起きてたのかな…)

 

 一夏は自分の腕にあるガントレットを撫でる。

 

 「トール!ミリアリア!」

 

前からメガネを掛けた金髪の青年と小柄な少年が一夏達の所に駆け寄って来た。

 

 「サイ!カズイ!」

 「いったいどうしたんだ!?」

 「ザフトだ!ザフトのMSがコロニーに入り込んで攻撃してるんだ」

 「何だってザフトが!?」

 「知らないわよそんな事。…あれ?キラは」

 「教授のお客さんってのを追っかけていってる。捕まえたら、近くのシェルターに避難するだろう。俺達はこの先のシェルターに向かおう…ん?君は?」

 「俺、織斑 一夏って言います」

 「キラが行くいつもの公園で倒れていたの」

 「オリムラ・イチカ…日本語読みか?…あぁいや、今はコッチが先だ!君もコッチに…」

 

 ボォオオオン!!!

 

 また一つ爆音と共に黒い煙が立ち登った。そしてその中から現れたのはまたしてもMSだった。しかし、先程の一つ目のジンとは違い、カクッとしたシャープなラインに額から伸びるV字アンテナ、顔はフェイスマスクで覆い目の部分は、人間のように二つのデュアルカメラがある。

 一機はそのまま、着地したが、もう一機は危な気に着地した後もヨロヨロと歩いている。

 

 「危ない!」

 

 一夏は遅れていたミリアリアの腕を勢いよく引っ張る。ミリアリアは一夏に抱き寄せられた形になる。ミリアリアはいったい何が起きたのかわからなかったが、それは次の瞬間、理解した。

 

…ズゥン!!

 

 さっきのMSの足が、今さっきミリアリアのいたところに落ちてきた。

 もし一夏がミリアリアを引っ張らなければミリアリアは今頃あのMSの下敷きになっていただろう。

 MSはそのまま静止した。

 

 「大丈夫ですか?」

 「う、うん。…ありがとう」かぁ…

 

 ミリアリアは顔を真っ赤にしながら一夏にお礼を言った。サイとカズイは「ヒュー」などと眺めている。トールにいたっては、何だか面白くなさそうにみていた。

 

 「ザフトのMSが突っ込んでくるぞ!!」

 

 どこから聞こえた叫び声に一同は一斉にマシンガンを腰にマウントしサーベルを引き抜いたジンへと注目する。

 駆け出したジンの向かう先にはミリアリアを踏み潰そう(故意にではないが)としたMSが立ち尽くしている。

 

「まずい!あのままじゃやられる!」

 

 誰もがそう思った時、二つ目のMSの色が地味な灰色から、白、赤、青のトリコロールカラーに変わった。

 そして、白いMSはその腕でジンのサーベルを受け止めた。

 ジンは一旦、白いMSから距離をとる。その直後、もう一機のMSは今度は紅へと色が変わった。

 

 (よし、コレで戦況は2対1。形成逆転…)

 

 しかし、紅いMSはジンに見向きもせず、何処かへと飛んで行ってしまった。

 

 (に、逃げた⁉何で!)

 

 実際のところ逃げたのではなく、ザフトの兵士があのMSを奪い去って行ったのだが、現場にいなかった一夏が知る由も無いことである。

 ジンは気にせず、白いMSにサーベルを叩きつける。例え白いMSの装甲がどんなに頑丈だろうと、あれではそうもたない。一方的な戦闘に一夏は見過ごせないでいた。

 

 「何であのMS反撃しないんだ?」

 「多分、俺達がいるからだろう。むやみに動いたら、俺達が潰されちまう」

 「じゃあ、急いだ方がいいんじゃないか?」

 「そうだな」

 

 サイ達は再びシェルターへ向かうために走り出すが、一夏はMSどうしの戦闘をまだ見上げていた。

 

 「一夏君!コッチ!」

 

 ミリアリアが叫ぶも一夏はそこを動こうとしない。一夏はそっと振り向くと、なんともその場には不釣り合いな程の優しい笑顔を見せた。ミリアリアは一瞬、その笑顔にドキッとしてしまう。

 

 「先に、行っててください」

 「な⁉、何を言っているの!私達がどうこう出来る問題じゃないんだよ!?」

 「大丈夫です。俺に考えがありますから。ですから、ミリアリアさん達は、シェルターに行っててください」

 「どう…するの?」

 「こうするんです」

 

 一夏は腕のガントレットに手を当て、そして念じる。

 

 (白式、俺にはまだ、戦争っていうのはどういうのかよく分からないけど…。今はミリアリアさんを、トールさんを、ここの人達を守りたい。だから、…お前の気持ちが俺と一緒だというのなら!白式、俺に力を貸してくれ!!)

 

 ーーその言葉をまってたよ。

 

 一夏のガントレットからかつてないほどの輝きが放ち、そして、光はどんどん膨れ上がり巨人の姿へと変わっていく。

 光が収まると、一夏の目の前に、その白いMSに顔がそっくりなV字アンテナを付けた純白のMSが現れた。一夏は相棒の変わり様にかすれた声で驚いている。

 

 「一夏君!?これどうなってるの!!?それにこのMSは…」

 「ミリアリアさん、その話は後で、ミリアリアさんはトールさん達と一緒に避難しててください」

 「でも、一夏君は…」

 「大丈夫、俺は大丈夫ですから」

 「……分かったわ。いってらっしゃい」

 「はい!」

 

 一夏は白式のハッチから垂れ下がったワイヤーを伝い、胸部のコックピットへと乗り込む。

 

 「もう、男ってみんなこうなのかしら?」

 

 

 白式のコックピットで一夏は瞳をつぶり“白式”を感じていた。

 左右にあるグリップを握った途端に、馴染んでいくのがわかる。何をすればいいのか直接伝わってくる。

 

 (やっぱり、お前なんだな…白式)

 

 ジンのパイロット、ミゲルは目の前状況が理解できないでいた。突然、モニターが光で潰れたと思ったら、次の瞬間には謎の真っ白なMSが現れたのだから。人間の常識の範囲を超えている。

 だがしかし、唯一彼にとってわかっているのは…。

 

「フン、ナチュラルも味な真似をしてくれるじゃないか。どんなマジックを使ったか知らないが、だったらその機体も頂く!」

 

 ジンは標的を白式に変え、白いMS同様走り出す。

 一夏は迫り来るジンに恐怖した。これはISどうしのようなスポーツ的な戦いではなく、命と命を掛けた殺し合いなのだ。それは一夏にとっても感じることができた。

 

 「でも、絶対に引くわけにはいかない」

 

 一夏は背中にマウントしてあった雪片二型を抜く。そして一閃。

 

 斬!!

 

 ジンの手首から先が無くなる。

 切断面からスパークが飛び散り、ふきとんだジンのサーベルはクルクルと回転し、ジンの半歩後ろに突き刺さった。

 

 「何ィ!!?」

 

 白いMS、ストライクの中でマリューとキラはほうけていた。

 

 「す、すごい…」

 「いったい何なの、あのMS」

 「え?知らないんですか!?」

 「ええ…、あんなMS連合では開発されてなかったはずだもの」

 「でも、こっちに味方してくれるみたいですね」

 

 その頃、白式のコックピット内で一夏自身も驚きを隠せないでいた。

 

 「つ、強い…白式ってこんなに強かったのか?」

 

 しかしジンは態勢を立て直して腰のマシンガンの銃身を持つ、そしてマシンガンを軽く宙へ投げ、グリップを掴みトリガーを引く。

 ダダダダダダダダダダダ!!!!

 

 「生意気なんだよ。ナチュラルがMSなどと!」

 

 だが白式はソレを避け、雪片二型を構えジンに斬りかかる。

 

 「はあああああああああーッ!!」

 

 命を奪わないために、一夏はジンの足を狙うが、ジンはソレをジャンプする事で回避する。一夏もジャンプしジンを追うとするが、ジンはマシンガンで牽制し一定の距離を保ち続けている。

 

 「ふん、その機体、射撃兵装は無いみたいだな!」

 

 ミゲルは白式の武装があのブレードだけだとふんでいるのだろう。実際のところそのとおりなのだが、白式にはまだ切り札がのていていた。

 

 一夏は少し焦っていた。目の前には一つ目のMSがいるのに、近づけず、マシンガンの牽制によってジワジワと減っていくシールドエネルギー。おそらく、コレが0になると、絶対防御は消え、いとも簡単にこのコックピットまで装甲を貫くだろう。

 

 「一か八か、やってみるか!」

 

 一夏は出力を最大限にまで上げ、フットペダルを思いっきり踏み込んだ。

 

 刹那、ミゲルの視界から白式は消えた。

 

 「何!?…うあぁッ!!?」

 

 ジンのコックピットに衝撃が走る。

 白式が瞬時加速(イグニッションブースト)でジンの懐に飛び込みショルダータックルを決めたのだ。

 

 「クッ、思ったよりもGがきつい!?」

 「…ッ!?なんてスピードだ!」

 

 ジンの腹部の装甲が凹み、気を失いそうになるが、ミゲルは奥歯を噛み締め、ジンのバーニアを吹かし再び白式との距離をとる。

 

 「ん?」

 

 地面に着地すると今度はストライクが、立ち上がった。

 

 「チッ、あの真っ白なMSは厄介だな、手を組まれると面倒だ。先に、トリコロールからやってやる!」

 

ジンは銃口をストライクへ移すがストライクは両腰からアーマーシュナイダーを取り出し、バーニアを吹かして飛び込んでくる。

 

 「何だコイツ!?さっきと動きが…!!」

 「はあああぁぁーーーーッ!!!」

 

『 違う』そう言いかけた時、アーマーシュナイダーの切っ先はジンの首筋に深く食い込んだ。

 切り口から火花を散らすジンはダランとその腕を垂らし、そのまま機能を停止した。

 

 「ハイドロ応答なし、多元不動システム停止、えぇい!!」

 

 ミゲルはシートベルトを外すと、シートの横に設置されたレバーを引く。モニターにはカウントダウンの数字が表示される。

 

 ジンのハッチが吹っ飛び、その中から緑色のライダースーツのような格好をした人間が飛び出してきた。

 

 「ッ!!まずいわ!ジンから離れて!!」

 「え?」

 

 ジンの異変に気付いたマリューだったが、その時には既に遅く、刹那、目の前のMSは一瞬の閃光を発した後、ストライクと白式を巻き込んで自爆した。

 

 「「うわぁーーーッ!!?」」

 「あぁーッ!!」

 

 その頃、宇宙では…。

 

 一機のMSとMAが戦闘を繰り広げていた。そして、その少し離れたところに青い宇宙艦、ナスカ級が停滞していた。

 

 「ミゲル・アイマンよりのレーザービーコンを受信。エマージェンシーです」

 「ミゲルがエマージェンシーだと!?」

 

 驚愕する艦長の右後ろの席に座っている仮面を付けた男は、何か考えるように顎に手を当てると、ワンテンポ遅れてその姿勢を解き、椅子から立ち上がった。

 

 「…ふむ、ミゲルが機体を失う程に動いているとなれば…最後の一機、そのままにはしておけん」

 

 仮面の男は、そのままブリッジを後にした。

 

 
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