No.393436

黒猫さん家でその3

tanakaさん

いやぁ……だいぶ壊れてきてるなぁ……
そんな感じですよ。

2012-03-17 23:46:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1360   閲覧ユーザー数:1325

 京介が泊まることになったわ。泊まるってことは当たり前だけど夜ご飯を食べるってことよね?

 今日は腕によりをかけて美味しいのを作らないといけないわ。

 ええ、京介に美味しいって言ってもらわないといけないわね。そして私の料理の虜になればいいのよ。

“男を捕まえるには胃袋を虜にしなさい”って誰かが言っていたような気がするわ。ま、まぁ……私は

別にそんな言葉信じてなんかいないけど京介はお客様だからね、美味しい料理を出すのは当たり前のことだわ。

「ふ、ふふふ……ふっ」

「おい、黒猫さんが変な笑い方してるぞ?」

「あぁ……このルリ姉はいつものことだから気にしないでいいよ」

「お、おう……」

 京介と日向が失礼なことを言っているような気がするけど、そんなことを気にしてる場合じゃないわね。

 今日はどんな料理を作ろうかしら? とりあえず日向にはニンジンとピーマンを与えるとして――

「ねぇ、京介。あなた食べたい物とかあるかしら?」

 せっかくだからリクエストがあれば応えてあげるわよ。

「食べたい物か? 別に嫌いな物があるわけでもないし、なんでもいいぞ」

「なんでもいいって……」

 その台詞が一番困るのだけれど。あなたには、どうせなら好きな物を食べて欲しいって私の気持ちが分からないのかしら?

「黒猫の料理は上手いからな。なんでも美味しいだろ。あー楽しみだな」

「ば――っ!?」

 こ、この男は……どうしてそんなことを平気で言えるのかしら? こうやって他の女も落としてきたに違いないわ。

「…………」

「あの……黒猫? 何故に俺をそんな目で睨んでるんだ?」

「……別に何でもないわよ」

 無自覚の天然。何も考えずに女に甘い言葉を囁いていく。ほんと、ズルいわね。

「晩御飯の準備をしてくるわ。あなたは日向や珠希と遊んでなさい」

「へーい」

 もう他の女にそんな言葉を吐かせないために今日一日できっちりと教育しておく必要がありそうね。

 私に忠誠を誓えるようにきっちりと……ふふっ、覚悟してなさいよ京介。

 

 トントンと包丁がリズムよく踊る。コトコトと煮物を蒸かしながら、ふと京介を見やる。

「あははっ♪ 高坂くん最高だよ♪」

「日向ちゃんも、なかなかだぜ」

「お兄ちゃんもお姉ちゃんもすごいです……」

 何をしているのかは分からないけど、とても楽しそうにしているのはよく分かる。

 あまりに楽しそうにしているから、私も一緒にその場に居たいと思うけど今は料理を作る方が先だわ。

 美味しい料理を作って、京介に美味しいって言ってもらいたいんだから。だから集中して料理を作らないと……

「ちょっ、高坂くん!? 何処を触ってんのさ!?」

「わ、悪い! つい当たっちまった」

「お兄ちゃん、エッチです……」

 ザクッ!!

 あのバカは一体何をしているのかしら……? 日向の何処を触ってというのかしら? これは一度問い詰めないといけないわね。

「高坂くんったら、そこはもう少しあたしが大きくなってからね♪」

「お、おう……」

 …………ニンジンの買い置きあったかしら? それとピーマンも大量に日向のご飯に混ぜておきましょう。

 そんな若干の嫉妬心を込めながら京介のためにご飯を作っていく。

 

「……出来たわよ」

「おっ、すげー美味そうな匂いだな」

「うげっ、ルリ姉!? あたしのご飯だけなんかおかしくない!? 必要じゃないのが大量に乗ってるんだけど!?」

「日向には特別な物を用意したのよ」

「ひ、酷いよルリ姉……」

「美味しそうですね、姉さま♪」

 日向だけ変な反応をしてるけど、気にしないでおきましょう。これも立派な躾なのだから。

「それじゃ」

「「「「いただきますっ!」」」」

 全員で手を合わせていただきますを言う。

「――おっ! 見た目や匂いだけじゃなくて味もやっぱり美味いな」

「そ、そう? 当たり前でしょ。誰が作ったと思っているのよ」

「ははっ、そうだな。黒猫が作ったんだもんな。美味いに決まってるよな」

「ふ、ふん……」

「にししっ♪ ルリ姉ってばまた照れてる?」

「日向。残さず全部食べるのよ」

「うぎゃーっ! ごめんなさいルリ姉!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぎながらご飯を食べていく。

 普段よりも騒がしい我が家の食事はうっとおしいと思いながらも、どこか楽しく感じた。

 ただ一人――京介が追加されただけだっていうのに、こうも雰囲気が変わるのね。

 なんだか、そういうのは楽しいわ。

 

「――さて、ご飯も食べ終わったわけだけど……」

 食器を片づけ、京介の隣にちょこんと座り今回のお泊りでの重要な要件を話す。

「お、お風呂はどうする……?」

「ん、風呂か? 入れるんならありがたいけど、最悪一日くらいなら別に――」

「それはダメよ。臭い状態のあなたを家に置いておくわけにはいかないわ」

「そこまで言うかよ……」

 だって、お風呂に入らなかったら京介の匂いが強く残るってことでしょ? そんなの耐えられないわよ。

 強い男の人の匂いを発している状態で京介の隣なんかに居たら私――って、何を考えてるのよ!?

 京介の男の人の匂いを嗅ぎたいだなんて……その匂いを私に移して欲しいだなんて……

「お風呂に入って綺麗にしないとダメよ!」

 私が危なくなっちゃうからお風呂には入ってもらわないといけないわね。

 それにお風呂でしなければならないこともあるし。

「服とかはお父さんのを用意するから京介はさっさとお風呂に入りなさい」

「あ、ああ。分かったよ」

 渋々といった感じで京介がお風呂場へと向かっていく。

「わたしも一緒にお風呂に入りますぅ~♪」

「「え゛っ!?」」

 た、珠希!? あなたは何を言って――いえ、これはこれで好都合なのかもしれないわね。

「京介、悪いけど珠希と一緒にお風呂に入ってあげて」

「ま、マジかよ……」

「ええ。京介が妹好きでロリコンなのは分かっているけど、人の妹に手を出すようなことはしないわよね?」

 もし仮に出したら本気で怒るわよ。

「あ、ああ、当たり前だろ! お前は俺を犯罪者にしたいのか!?」

「だったら一緒に入ってあげなさい。珠希もあまり京介に迷惑をかけたらダメよ?」

「はい姉さま♪」

「マジかよ……」

 トボトボと歩いていく京介にトテトテと嬉しそうに後ろをついていく珠希。

「ルリ姉……ほんとにいいの? たまちゃんと高坂くんが一緒にお風呂に入るだなんて」

 やけにげっそりとした日向が心配そうに問いかけてくる。何で日向はそんなにも疲れたような顔をしてるのかしらね?

「大丈夫よ。これも作戦の一つだから」

「作戦?」

「ええ。この後、私もお風呂場に突撃して一緒にお風呂に入るわ」

「えぇっ!? だ、大丈夫なのルリ姉!? ただでさえ恥ずかしがり屋のルリ姉が高坂くんと裸の付き合いなんて出来るの!?」

「も、もも、勿論、余裕に決まっているでしょ。私を誰だと思っているの? この程度で私が怯むとでも? はん、笑わせないでちょうだい」

 この程度。私にしてみたら赤子の手を捻るよりも簡単なことなんだから……

 京介と一緒に裸でお風呂に入るだなんて――

 

「――って、自信満々だった割にはバスタオルはきちんと巻くんだね♪」

「あ、当たり前でしょ! いきなり裸で行くことなんで出来るわけないでしょ!」

「でもたまちゃんは裸だったような気がしたんだけど……あと高坂くんも」

「――」

 た、珠希はまだ幼いからいいかもしれないけど、京介がタオルすら巻いていないなんてどういうことなの!?

 一人で入るのなら問題はないわ。でも、珠希も一緒に入っているのよ!? それなのに裸ってあなた――

「このままルリ姉まで入ったら、高坂くんの全裸を見ることになるね」

「ぜ、全裸――っ!?」

 京介のあの場所や、あんなところまで視界に入るっていうの!? そ、そんなの……

「どうするのルリ姉? 諦めて高坂くんが上がるのを待つ?」

 日向のこの顔。絶対に私が入れないと思っている顔だわ。ふ、ふん、今宵の姉はこの程度では挫けないのよ。

 京介を調教するためにこの程度の辱めは我慢出来るんだから。

 勢いよくお風呂場のドアを開けて中に入っていく。

「る、ルリ姉っ!? あ、ほんとにいっちゃったよ……」

 

 ガチャッ!

「く、黒猫っ!?」

「あ、姉さまも一緒に入るんですか♪」

「ええ。この私が京介の背中を流してあげるわ」

「ま、マジですか……黒猫さん?」

「私に洗われるのが嫌なの?」

「いや、そんなことはないんだが……」

「だったら早くこっちに来て座りなさい」

「お、おう……」

 恥ずかしさを我慢して京介の後に腰を下ろす。こ、こうして見ると京介の背中って大きいのね。

「い、いくわよ……?」

「おう。どんとこい……よ?」

 変な空気感の中、京介の身体をゴシゴシと洗っていく。ゴツゴツとした身体に触れるたびに、男の人なんだと思い知らされる。

「…………」

「……」

 沈黙なのが妙に気恥かしい。二人して黙っているものだから、珠希が不思議そうな顔をして私達を見ているわ。

「姉さま、どうかしましたか?」

「な、なんでもないわよ! ちょっと京介の身体を洗うのに集中してただけだから!」

「そうなんですかー♪」

 あぁ、珠希の笑顔が眩しい。嘘を吐いてしまっているのに、それを疑っていない珠希の笑顔が眩しい。

 嘘なんて吐かずに本当のことを言えば……ううん、言えるわけないわ。京介の身体に照れてしまっているだなんて。

 それにしても、これが京介の身体なのよね……

「く、黒猫……? 背中に柔らかいモノが当たっているような気がするんだが……?」

「んな――っ!? なな、何を言っているのよあなたは!」

「いや、だって……ふにふにとしたモノが……」

「ば、バカ――っ!?」

「うがっ!?」

 勢いよく京介を殴ってしまった。で、でも仕方ないでしょ? 京介が変なことを言うのが悪いのだから。

 胸が当たっているとか……柔らかいとか、気持ちがいいとか。そんなこと言われたら誰だって殴ってしまうわよ。

「っ……うぅ、いきなり殴ることはないだろ……」

「う、うるさいわよ! あなたが変なことを言うのが悪いのよ」

「だからって言ってもな…………っ!?」

「何を驚いた顔をしてるのよ? ただでさえ間抜けな顔がより一層変になっているわよ?」

「……えっと、なんつーか、見えてる……ぞ?」

「はぁ? 何が見えていると言うの?」

「いや、だからその……黒猫の身体が……」

「私の身体……?」

 チラリと自分の身体に視線を向けるとそこには――

「姉さま。バスタオルが取れてますよ?」

「い、いい…………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「へぶっ!?」

 京介を記憶が消し飛ぶほどの勢いで殴りつけてお風呂場から出ていく。

 

 み、見られた……京介に裸を見られちゃった。私の全部を見られてしまったわ。

 うぅ、お嫁にいけなくなるわ……これはもう、京介に責任を取ってもらうしかないわね。

 うぐ……っ、ショックだわ。

 


 
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