No.393431

IS〈インフィニット・ストラトス〉 転生者は・・・

ISさん

第18話『トランザム』

2012-03-17 23:39:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8488   閲覧ユーザー数:8133

 さっき倒したはずの無人機。

 

 

 

 

 

 しかも与えた損傷も左腕以外は修復されていて、俺が断ち切ったはずの左腕の部分は黒い腕……いや、黒いとしか表現の出来ない腕ではない何か。

 そしてコイツから、さっき感じた禍禍しいものを感じる。

 コイツは、膝を折って少し身をかがめると……

 

 ――かがめる? 不味いっ!

 

「楯無後ろだ! 避けろ!」

 

「え? 何が―――ぐっ!?」

 

 ダッシュの要領で急加速・急接近してきた無人機に、楯無は吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた楯無を見ると、ISは解除されていた。

 幸い、ダメージを受けたときはISは腕以外展開していたので命は大丈夫だと思う。装甲を解除した腕も絶対防御で守られる。

 

「楯無ぃっ!」

 

 それでも叫ばざるを得ない。

 もう俺は、親しい人を失いたくは無い……!

 なおさら、自分にそれだけの力があるときは!

 

 

「うっ……。だ、大丈夫よ。戦闘は無理っぽいけど、体は大丈夫」

 

 声は、震えていた。絶対防御で体への損傷は無くせても、衝撃を消しきることは出来ない。

 今のは衝撃だけでも楯無を戦闘不能に出来る威力はあったということだ。

 

「ちっ……一夏、凰!」

 

「な、なんだ?」

 

「なによ!」

 

「楯無を連れてここから出て行け!」

 

 もう扉のロックは解除されてるはずだ。

 

「いや……今度は俺も戦う!」

 

「さっきも言っただろ! お前らは消耗しすぎてる! 邪魔だ!」

 

「そ、そりゃその通りだけどさ……」

 

「わかったなら早く! 楯無に余計なダメージが出る前に保健室に運べ!」

 

くっそ、もう頭に血が上ってる。

 

「で、でも…っ」

 

「ああ、もう一夏! アイツの言ってることが今は正しいの! それくらい分かるでしょ! 早く先輩を拾って逃げるわよ!」

 

「っ……。わ、わかった。行こう」

 

 行ったか。扉も開くみたいだな。

 頭部装甲を再展開展開してから、オープンチャンネルの回線を開く。

 

「織斑先生」

 

『なんだ?』

 

「今の見てましたよね」

 

『ああ。そいつはなんなのだ? 停止は此方でも確認したというのに……』

 

「分かりませんよ。言えることは殲滅すべき対象というところです。それより扉をロックしてシールドバリアもレベル四に引き戻してください」

 

『………わかった。死ぬなよ』

 

『ちょっ、織斑先生!?』

 

『本人が言ってるんだ。やらせてみるさ…』

 

「ありがとうございます」

 

 山田先生が驚いた声を上げた。

 でもこれで良い。少なくとも時間は稼げる。

 それより―――

 

「まだ自分の気持ちが理解できてないんだ……それまでは死ねない」

 

 俺の目下の一番の問題、こんなとこで中断させられてたまるか。

 

 

 ――拓神、これでは……。

 

 ――刺し違えるつもりは無いって。今いった通り死ぬつもりも無い。

 

 ――だが相手は未知数だぞ?

 

 ――ああ、見れば分かる。でもやらなきゃいけない。

 

 ――まったく君は……わかった、全力でサポートしよう。

 

 ――サンキュ。さっそくだ、アストレアTYPE-F2フル装備で展開。

 

 ――了解。

 

 

 自分の持つ装備が、一度全て粒子に戻る。

 その後再構築され右手にはプロトGNランチャー、左手にはNGNバズーカ、左右の腕部ハードポイントにはGNハンドミサイルユニット、両足のハードポイントにはGNピストルとそのホルスター、両腰のラッチにはGNビームライフルが二丁。

 

 俺がここまでを終えたところで、復活した無人機はその頭の中心にあるモノアイをぎょろりと動かし、此方を見つけた。――いや、捕捉された。いままでなぜ動かなかったのかは知らないが、好都合だから気にしない。

 

 

「行くぜ!」

 

 

 その俺の言葉に反応したように、無人機は右手の平の銃口からビームを発射してきた。

 重武装化の影響で機動力は下がっているが、避けることは普通にできる。

 

 ソレを避けて、右手のプロトGNランチャーを放つ。

 太いビームを、無人機は持ち前の機動力で避けた。

 

 バシュッ!

 

 俺はその回避先に向かって、左のNGNバズーカを撃つ。

 その弾は無人機がまた撃った右手からのビームに破壊され、ビームが俺のほうに向かってくる。

 

 ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ!

 

 それをギリギリでかわし、NGNバズーカを連射する。反動で跳ね上がる銃口を押さえつけながら、弾切れまでトリガーを引く。

 

 それも回避または撃墜した無人機は、ビームを連射してきた。

 そのうちの一発が、俺への直撃コース。それに向かって弾切れのNGNバズーカを投げつけ、自分は回避。

 そのNGNバズーカが破壊されたときに生じた爆煙にまぎれて、両腕のGNハンドミサイルユニットを全弾発射。

 

 ズドドドドドドド……ッ!

 

 

 

 

 

 そして……煙が晴れたとき、目の前には未だほぼ無傷の無人機。

 

 

「これでもダメか……。厄介すぎるぞ、テメェ」

 

 無人機に向かって言い放つ。まあ、もとより返答は期待してないし、返答は無い。

 

 

 ――ティエリア。

 

 ――なんだ?

 

 ――エクシアをフル装備で用意してくれ。

 

 ――了解。

 

 

 空いた左手で右腰のビームライフルを持つ。

 あらかじめ機体に装備しておいた武装を取るほうが、展開より面倒じゃなくて良い。

 

 ビームライフルで射撃。

 それがかわされたのを確認して、そこに向け右手のプロトGNランチャーを撃つ。

 これもまた回避され、地面に当たって砂埃を巻き上げた。

 

 

 ――準備は完了した、いつでも。

 

 ――了解。

 

 

 ビームライフルを収納、プロトGNランチャーを右側のグラビカルアンテナを外して装備。GNドライヴと直結して、両手で構える。

 こちらが攻撃を止めてなにやら始めたのを確認して、無人機はビームを撃ってくる。

 それを回避してるうちに、粒子のチャージが完了した。

 

「食らっとけ!」

 

 ズガア――ッ!!!

 

 さっきまでのビームとは違う威力を秘めたビームが、無人機のビームとぶつかる。

 此方のビームはぶつかった瞬間に、相手のビームを弾きながら突き進んだ。

 それで結果はかすり程度。それでも当たったから良いとしよう。

 

 

「モード選択エクシア」

 

『モード選択GN-001『ガンダムエクシア』』

 

 装甲が一瞬で粒子に返還され、装甲を再構築する。

 初めての楯無戦で使ったと同じトリコロールの装甲。

 

 エクシア セブンソード

 

 

 

「エクシア、目標を…殲滅する」

 

 今までのでわかったことは、この無人機には近接武装は無い。

 その代わりに、接近させないことに主眼を置いてる。そのための各部に装備されたスラスターとビーム。

 なら、それを突破してやれば良い。解決策は簡単だった。

 先ほど楯無を吹き飛ばしたのは、ただの体当たり。不意打ちでしか使えないような技だ。

 

 

 スラスターを全開にして、一気に接近する。

 無人機はいままでの対応通り、体中のスラスターでその場から飛びのいた。

 俺は機体の向きを無理矢理にでも変えて追撃する。

 PICで相殺できなかった慣性が体をきしませるが、戦闘には何の問題も無い。

 無人機に追いついた俺は、右腕のGNソードの刀身を展開して切りかかる。

 

 

 だがそれは、黒くなった左腕で“受け止められた”。

 GN粒子のコーティングで切れ味を高めたGNソードを。

 そして右手の平、ビームの銃口を向けられる

 

「チッ、食らうかよ!」

 

 空いたままだった左手でGNショートブレイドを腰のアタッチメントから引きぬいて、ビームを止めるために無人機の右手の平に突き刺した。

 

 突き刺さった? 絶対防御が消えてるのか?

 どうしてだ? 絶対防御はISの根幹を成す機能で解除は出来ないはず……でも、それなら壊すのには好都合だ。

 

 ザシュッ!

 

 右手はGNソードを黒い左腕で受け止められて動かせないため、左手のショートブレイドだけで無人機の右腕を切り落とす。切断力だけならGNソードよりも、これとロングブレイドの方が上だ。

 

 右腕を切り落とされた無人機は、左腕を振り払う。

 それでGNソードを弾かれて、俺はバランスを崩す。

 その隙に、無人機は一度距離を取った。

 

 ……どうするつもりだ?

 

 見ていると、右腕の切断面から黒いナニカがズズズッとあふれ出していって……右腕を構築した。

 

「……なんなんだよ、お前はっ!」

 

 これ以上余計なことをされても困る。

 だから俺は、両手の剣を構えて無人機に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 最後の手段を使って。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――トランザム!」

 

 

 

 機体が赤に染まる。

 正確には、機体に蓄積された高濃度圧縮粒子を開放している影響で赤く染まる…が、そんなことはどうでもいい。

 俺は口を開いた。誰に伝えるでもなく、自分に言い聞かせる。

 

 

「俺は―――」

 

 トランザムの発動でさっきまでの三倍の性能を手に入れた俺は、残像を残しながら無人機を切りつけた。

 

 左手のショートブレイドで黒く変化した右腕を刺し貫き、そのままアリーナの壁に押し付けて右腕を壁に縫い付ける。

 

「俺は守る!」

 

 残った左腕での抵抗をかわしてロングブレイドを引き抜くと、それを左肩の付け根に突き刺し、こちらも壁に縫い付ける。

 

「俺と、その周りの世界を!」

 

 抵抗できなくなった無人機の胸部に、リアスカートからビームダガーを二本とも引き抜いて突き刺す。

 

「それが自己満足でも! 己のエゴでも!」

 

 さらに両肩のビームサーベルを引き抜いて、無人機の腹部に。

 

「俺とガンダムで!」

 

 最後にGNソードの刀身を展開。無人機を縦一文字に切り捨てる。

 

「それが――俺だ!」

 

 

 

 ダメージを負った無人機の各部で、スパークが弾ける。

 それは広がっていき、黒いナニカを撒き散らしながら、無人機は爆発した。

 そして黒いナニカは、その場に無人機の残骸だけを残して消えていく。

 

「はぁっ、はぁっ――一体、なんだったんだ?」

 

 俺の疑問も、虚空に消え去っていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 残ったのは、その場に立つエクシアと無人機の残骸のみ。

 エクシアは、その機体を粒子に返還され拓神に戻る。

 

 そして拓神は――その場で崩れるように倒れた。

 


 
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