No.377705

Aの悲劇 1話 僕とハス餅

雷者さん

これは、ある大学生の平凡な日常が徐々にグズグズになっていく小説のような何か・・・! はたしてエイジは大家さんとくんずほぐれつキャッキャウフフしてしまうのだろうか・・・!? そして彼の隠された中学時代と性癖とは・・・!? 部分部分ノンフィクションらしい不安定な物語の結末とは・・・!? そして肝心の物語は次回からというが果たして大丈夫なのだろうか!!!???

2012-02-14 11:25:07 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:403   閲覧ユーザー数:403

 

「最初」というのは何事においても肝心だ。例えば入りたての学校で、後々良い成績を残したいと思うのなら、とにかく前期の科目、つまり後期やそれ以降の授業の基礎となる科目を押さえておけば、後々勉強が楽になる。

 

人間関係にしても、会って最初の数秒で相手の自分に対する印象が決まってしまい、その印象は3年続くという。

 

論文にしてもそうだ。最初に書く研究の緒言部分さえうまく書ければ、あとは研究方法とか研究結果について淡々と書けばいい。また緒言が分かり易ければこいつは何でこんな研究したのかということが読み手にも伝わりやすくなる。といっても自分はこのいずれにおいても欠如していると・・・

 

・・・ここまで読んでもらうと分かるかもしれないけど、要するに、論文の概要部分に全体の作成時間の3分の1

ひどい時には半分以上の時間を費やすこの小説の作者は、小説の始め方が分からないらしい。

 

ずばぬけた個性があふれかえるこの世の中ならこんな始まり方はある意味普通かもしれない。だから無理して個性を主張しなくても、主人公の平凡自慢とか、あるいは幼馴染の異彩ぶりとか、時は世紀末とか夏休みとか・・・そういうありふれた始め方をしても別に恥ずかしいとかありきたりだとか思う必要はない。

 

なので、普通に自己紹介すると、僕は「安藤エイジ」理系の大学生だ。どこにでもありふれる普通の主人公、体型は中肉中背だし、学力も普通、そして、秘密も人並みに持っている。普通オブ普通、まさにトヨタ・カローラの様な奴だ。

 

それでまあ、僕は田舎から離れて普通に一人暮らしの学生生活を始めたんだけど・・・まず、大家さんが普通じゃないんだよなぁ・・・・・・。

 

あれは僕の一人暮らし記念日,僕はあいさつ回りにと田舎土産のハス餅の手提げ袋を手に,インターホンを鳴らす・・・

・・・鳴らす・・・

この部屋も出ない・・・

 

(このアパートは僕以外住んでいないのだろうか,はたまた皆留守か.)

 

そう思い立ち去ろうとすると,ギギッと僅かに扉が開き,チェーンロック越しにイラついた女性の視線が僕を突き刺す.

その眼光の鋭さや田舎でヤンキーにカツアゲされそうになったときの事を思い出すほどであった.

 

「なっ何か・・・!」

(いかん,動揺しすぎだ.用があるのはこっちだってのに,何言ってんだよ・・・)

 

そうやって僕がうろたえている間も,その視線は僕に向けられている.

 

(よ,よし・・・お土産渡そう!)

 

僕はハス餅の入った手提げ袋を差し出し,恐る恐る挨拶をした.

 

「下の階に引っ越してきた安藤と申し・・・」

 

そう言い切る間の無くか細い腕が素早く飛び出た.そして僕の手から一瞬で手提げ袋を奪い取り,声をかける間もなく扉を閉められてしまった.僕は慌ててのけぞり,背後のフェンスによりかかった.

 

(ああ,都会人のなんと恐ろしさたるや・・・いや,きっと僕と同じくシャイなんだ.だからあんな不器用な対応だったんだ・・・うん.)

 

僕は一息つき,そう思い込むことにした.その矢先フェンスからミシミシと嫌な音が聞こえてきたが時すでに遅し,

 

「あ.」

 

 ビンテージ感漂う錆びついたフェンスは崩れ落ち,僕は3階から地面にまっさかさまというまさかの出来事が起ころうとしていた.なんというか,こう,もっと良いアパート選べばよかった,家賃高めだけど学校近くのあの物件にしとけばこんな事にならなくて済んだかもしれない.僕はそんな回想をしつつ,落下しつつあったが,どうにもできない.3階から頭から落ちたら死ぬかな,それとも身体に深刻な障害が出るだろうか.そうなったらこの先どう生きていこうか.そんな後ろ向きな考えをしてしまったが,やはり助かりたいものは助かりたい.そう思った瞬間,何かに左足首を掴まれ,とりあえず落下は免れた.ただ片足だけで宙ぶらりんというのは,かなり股関節にくるものがある.

 

「さ・・・裂けそ・・・」

 

 それに僕の足を掴んでいるものも問題だ.可能性的に先程のか細い腕で殺意に満ちた視線の女性なのだろうが,あのか細い腕から察するに,体重63㎏の僕を吊り下げたままでいられる時間は,そう長くはないだろう.しかも足を掴まれての宙ぶらりん状態だ,もし落下すれば間違いなく頭から落ちる.さっきよりも状況が悪化した,間違いなく死ぬ.ああ,死ぬ.そう思ってはみたものの,実際のところ人生そう簡単に死ぬようには出来ていないらしい.予想に反して僕の体はズルズルと引き上げられていた.完全に引き上げられた僕の目には,黒いロングヘアで黒い目をした,黒いロングワンピースの女性が目に映った.

 

 
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