No.377066

自由と鳥

notoss-3さん

このサイトでは初投稿になります。ほんとはモフモフ全開で逝きたかったけど、部活で書いたのを一回上げてみます。(以下、作品紹介)
初めにこの小説は自分が書いた「詩」を学校の文芸誌にあげたのが始まりでした。そして、友達兼部長兼女子から「この詩を小説化してみたら?」って言われて///

はっきり言います!!
「訳が分からない作品」です←

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2012-02-13 00:29:00 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:363   閲覧ユーザー数:359

 

自由を知りたかった鳥は

未熟な羽を広げる

 

青い空しか知らない鳥は

黒い地面を知らない

 

落ちる羽根は動くと共に

地面に落ちる

 

そして羽が落ちる

 

風が縦に吹いている

それが平行なのか分からない

 

地面に落ちた羽は

その色と不似合いな

 

その色に染まっていた

ここは完璧な世界です。戦争もテロもありませし、全人類の欲求も満たされております――

 

――全テハ順調ニ進ンデオリマス。

 

 私はいつの間にかこの世界に放り込まれた孤独な鳥。翼は無いけれど、この潔浄な空間に生きていることには変わりない。全人類が穢れることをせずに、ルールに則ってそれと同化しようとする。誰も争わない。誰も不満を抱かない。誰も何も言わない。

 

「私は周りの人と違うのだろうか?」

 青リンゴを片手に不満を込めて(かじ)り付く。特別甘いというわけでもない、大好きなわけでもない。ただこの不満を何かにぶつけたかった。私は、またリンゴに口を付けようとしたが、先に腹からの不満が喉を通った。

 

「はぁ……」

 少女は真っ赤に染まる夕焼けに向かって、食べかけの青リンゴを投げつけた。利き手である「左手」が青い軌跡を描く。しかし、太陽がリンゴをそうあるべき色の様に焼き入れる。

 

 私は誰かの様に染まりたくない。でも、太陽は私を真っ赤に染める。そのうち中身までその赤に染められて、いつか朽ち果てていくんだ。

 私は(きら)びやかな夜の街に飛び出していた。いつもどおりに誰かがショッピングに入る姿や、恋人同士で手を繋ぐ姿、勿論普通の歩行者もいるけれど、私が知っている夜の街では無い。全てが同じ人、全てが同じ服装、ただ座標だけ違うだけ。X軸、Y軸、Z軸、それぞれのアイデンティティは今はそれしか無いのだ。そういう世界に唯一浮いた存在。誰も私を見て何も言わない。何故なら「平和になる条件(全人類がすべきこと)其の一、自分以外に干渉しないこと。ただし、デバイスを使っての干渉は可能」と世界的に決められているからである。

 

「平和になる条件」と言うのは、全世界が統一された年に国連によって決められた世界単位の法律である。他にもそのような法律がいくつも作られて、最終的に「完璧な平和」と言うのが完成させられたのだ。そして、「デバイス」というのは、全世界の人類にそれぞれ配れられる、全世界が統一される前のスマートフォンに近いものだ。ただ、それは個人を主張するものではなく、統合するもの。結果、集計されて現実に反映される仕組みなのだ。

 

 私はそういう世界に今生きている。いや、正確にはこの直線しかない迷路に放り込まれたのと同じ。生きているという実感が全くないのは事実。だけどそのうち、永遠に続く直線の迷路に次第に私は慣れていくの――

 突然、火薬が爆ぜる音が聞こえた。聴きなれた「その音」は間違いなく危険な匂いを漂わすものなんて、当然ながら知っていた。そしてまた、爆ぜた。

 

 何があったのだろうと私は「その音」の元へと走っていくと、そこには中年の男性が一丁の拳銃を震える両手で構えている姿があった。銃口(マズル)の先には正装姿の女性が手を上げたまま無言で男の目を見ていた。

 

「こ、こんな世界消えちまえばいいんだ!!」

 しかし、男の言葉には威勢こそあるものの、それ以外の威圧は何も感じられなかった。私はその一部始終をみることしかできない。何故なら、干渉せずともこの事件は無いから。

 

「お、おい! 早くサブコントロールシステムの(パス)をよこせ!!」

 男はそう脅迫すると、拳銃のトリガーを引く。否、絶命のトリガーが引かれた。ゆっくりと、中年の男性は頭から倒れ出した。そして、着実に地面に近づき、最後には静かにうつ伏せになった。その一瞬一瞬でも世界は動き続けていた。誰も干渉しない、そんな世界なのだ。

 

 女性の方は、何事も無かったかのように設定されたルートに沿って歩きだした。歩くその足は命がないようで、まるで、アンドロイドのように一定の力を使って移動しているように見えた。

 

 私はその事件の後、慣れた手付きで腰の(ふところ)から男と同じ様な拳銃を取り出し、女性のあとをついて行った。しかし、女性はその危険を感じ取って居ないように歩き続けている。私はチャンスだと思い、拳銃を女性の頭蓋にキスさせた。

 

「動かないで! さもないと撃つよ」

 しかし、彼女に怯えた様子は無かった。むしろ、堂々としていた。恐らく、さっきのことを私にも(ほどこ)そうとしていると思う。

 

 歩く人と街灯とビル群が今のこの時のベースを想像していた。ただ、異物と化しているのが、この二人である。一人は拳銃を構えて、もう一人は全くと言っていいほど動いていない。

 

「あなたはこの世界のシステムの一部に過ぎない――」

 突然、彼女の冷たい唇から発せられた。そして、続けて言う。

「――私たち人類は、毎日『平和』を望んでいた。戦争、金融危機、震災などなど……、それによって起こる混乱を私たちは望んでいなかった」

 

「だからお前らはこういう世界にしたのか!」

 再度、憎しみを握りしめる様に拳銃を突きつけた。

 

「あなたもそう言う世界を望んでいない。むしろ人類皆、摩擦(ストレス)を感じたくない」

「いい加減、その戯言をやめろ!」

 たんたんとプログラムされたように語る彼女は私の質問と感情に全くもって何も反応していない。これは本当に人間なのかと私は疑う。

 

「あなたに私は撃てない」

「そんなこと分かるわけないじゃないか!!」

 私の手に冷たい雨が当たった。寒さのためじゃない。自分のせいだ。ガタガタと震える手で引き金(トリガー)を引けなかった。

 雨はさらに激しさを増した。

 

 気付けば深夜の零時(れいじ)を指していた。街の明かりは輝き続け、歩行者達は行くべき場所へ移動を繰り返している。ここにいる二人を除いて。

 

 拳銃の先を彼女は細く白い両手で優しく包み込み、胸に近づけた。

「私は、今生きている。でも、あなたにその証明は出来ない。この世界が生きているか、死んでいるかなんてあなたには分からない。唯一分かることは、自分の暮らしやすい世界を望んでいること。このシステムを作った人はもう亡くなっている。でも、その人が望んだ世界は今も脈々と生き続けている。今の貴方にこの世界を包み込む思想なんて持ち合わせていない」

 

 彼女は、私の握っている拳銃をさらに心臓に引きつけた。

 

「お前らはいつもそうやって人を騙してるんだ!」

 私は拳銃を彼女の両手から引き離し、照準を合わせる。しかし、それは無駄な事だった。

「私たちの世界を統治するのがAIなら、私たちもアルゴリズムに則って規則正しく行動する。もし、あなたがこれを壊すのなら、世界はまたカオスの渦に飲まれてしまう」

 

 震える拳銃の先にあるものは彼女では無く、自らの恐怖だった。

「だからあなたの様な人は邪魔なの」

 自分には大きすぎる『チカラ』。それに(あらが)うことも、すでに許されない命だということも、私は知ってしまった。

 

 彼女は冷たい瞳で私を見ながら右手を上にあげようとしている。

 

さよなら、愛しき人。

 今日も空は青い。雲一つ無い天気だ。アラームはまだ鳴り続けている。

 

「まだ眠いよ……」

 ベッドの中で彼女は生きている。毎日毎日同じような朝の光景。

金属で出来たベッドと、人を模した機械。

彼女達は、確かに今も生きている。広く狭い世界(ボックス)の中で、本当の世界の基盤となるように……

 クラウドコンピューティングのサーバーは今も増え続けている。 

 

 
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