No.369706

星と白蓮の御話

ひじきさん

本当に数年ぶりに書いたSSです。

最近、恋姫無双をプレイしてどハマリしてしまった私。特に白蓮

言い回しや性格が間違っている可能性があります。その辺りは指摘していただけますと嬉しいです。

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2012-01-28 23:08:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1101   閲覧ユーザー数:1051

 

三国同盟が成り、戦乱の無くなった中華。

そんな平和の中の短い御話です。

 

 

 

「星~……私って本当に影が薄いんだねー…」

「白蓮殿……その辺りにしておいた方がよろしいのでは…」

「あによぉ…呑まなきゃやってらんないっての………星こそ呑んでんのぉ…?」

「はぁ……呑んでますよ。ええ、呑んでますとも」

「じゃあ、私も呑む……」

「呑み方というものがあるのですが………いえ、何でもないです」

 真っ赤な顔で酒を呷る白連、そして窘めつつも付き合う星。

 満天の星空の下、月を愛でながらの酒……少なくとも星はそう思っていたのだが…。

 いつしか、酔いの回った白蓮の愚痴に付き合う羽目になっている。

 白蓮と呑むと毎度の事なのだが、彼女はひどく長い愚痴で絡んでくる。

 飄々としている星でも流石に堪える、或る意味拷問。

 しかし、聞いてあげないと拗ねるしごねるからこれまた面倒くさい。

 だから今日は適度に呑ませて後は持ってきた料理(メンマ主体)でも食わせておこうと思っていた、が甘かった。

 その『適度』の上限があまりにも低すぎた、白蓮が所謂下戸だった為に目論見は飲み会早々に瓦解した。

「はぁ…」

 何度目になるか分からない溜息を吐いて星は天を仰いだ。

(誰か通りすがらんものかな…)

 心の中で通りすがりの誰かに押しつけて逃げようと思っていた時、袖を白蓮に掴まれた。

「星~……聞いてるのぉ……」

 とろんとした目の上目遣いで聞いてくる白蓮。

 こう来られては無碍にも出来ない所に星の時々垣間見える優しさが窺える。

(やれやれ、これが元・主でなければ邪険にも出来るのだが)

 再び心の中で呟くと杯を傾けた。

「白蓮殿、そろそろ戻りませぬか。夜風も心地よいですが、酒も料理も無くなってきましたよ」

「えぇー…持ってくればいいじゃん…」

「そうは申されましても、酔っ払い一人置いて酒を取りには行けますまい」

 深く息を吐いてそう言う星。

 しかし、次の白蓮の言葉が彼女を怒らせた。

 

 

「置いていってもいいじゃん……星だって私が主に相応しくないって思ってたんだろ……」

 

 

 その言葉の直後、星の掌は白蓮の頬を張っていた。

 突然の星の行動に打たれた頬を押さえて呆然とする白蓮。

 そんな彼女の胸倉を掴み上げ、星は声を荒げた。

「もう一度、その言葉を言ってみられよ! 幾ら白蓮殿と云えど容赦致しませぬぞ!」

「せ、星…?」

「白蓮殿が主として相応しくない? ええ、今の白蓮殿は主としては最低でしょうな…」

 胸倉を掴んでいた手を突き飛ばすようにして離す。

「私は自分が見込んだ者にだけ仕える。今までもこれからもその心積もりでいます」

「星…」

 星はぎりっと歯軋りが聞こえる様な力で歯を噛みしめる。

「私は貴女になら仕えてもいいと思った。それだけの魅力が貴女にはあった! …なのに、今の科白は何だ!」

 烈火の如く怒り矢継ぎ早に捲し立てる星。

 反論も口を挟む事も出来ない白蓮に尚も続ける。

「この趙子龍を…星を見縊らないでいただきたい! もう一度言わせてもらいます…今の貴女は最低の主君だ!」

 言い終えると乱暴に杯を掴むと一気にそれを空けてしまった。

「これで酒は本当に無くなりました。今日はこれでお開きです……」

 杯を置くと、星は座り込み手で顔を覆う。白蓮も呆然と座り込んだままだった。

 

 

 二人の間を夜風が吹き抜け、暫くの時が流れた。

 

 

 そして最初に口を開いたのは、白蓮だった。

「ごめん…星。私がどうかしてた…」

「………」

「酔って絡んで愚痴を言って……星は聞いてくれてたのに……」

「………」

「私、酷い事言ったんだよな……私が星の心を踏みにじったんだよな…」

 ぽつり、ぽつりと白蓮の瞳から涙が零れ落ちる。

「本当にごめん、星…」

「…………貴女は」

 星が不意に口を開く。

「貴女は本当に魅力的な人だと思いますよ、私は」

「星…?」

「貴女の魅力は、分け隔てることのない人柄と投げ出さない責任感。私はそこに魅かれた」

 星は立ち上がると白蓮の前に座り込む。

「貴女は日頃から影が薄いだの目立てないだのと仰せになられてますが、分かる者にだけ分かればいいのではないですか?」

「……?」

「白蓮殿の魅力に気付けぬ者など、人生の四分の一…いや、五分の一は損をしているのですぞ」

「いや、その微妙な数字は正直どうなのって話なんだけど…」

「いやいや、人生の全てを白蓮殿で埋めたいとか流石に欲張りだと思うのですが」

 いつもの食えない微笑を見せる星。唐突に手が白蓮の頬に触れると、星が頭を下げた。

「感情に任せて頬を張ってしまうなど、私も精神的に未熟。白蓮殿、痛かったであろう…申し訳ない」

「星も痛かったんじゃないか? 私は打たれても文句は言えなかったんだ…打つ方が堪えるよ」

 頬に添えられる手に触れ、今度は白蓮が頭を下げる。

「本当にごめん! 許してくれなんて言えた義理でもないけど……」

「ふふ……やはり白蓮殿は魅力的な御方だ。自分の非を素直に認め、謝する事が出来る者がどれほどいるものか……それだけで貴女は非凡だと思います」

「星…?」

「私は御主人様に…そして貴女に仕えられている事を誇りに思いますよ」

「ほ、褒めても何も出ないんだからな…」

「ほう、照れた白蓮殿も可愛らしい。褒めちぎるのも悪くないか」

「や、やめてくれ…」

 

 

 意地の悪い微笑、悪意の無い悪戯な言葉。

 

 そんな星の魅力に白蓮もまた魅了されている。

 

 

(ああ、コイツには敵わない)

 

 

 星に、困惑し振り回される白蓮。でもそれが心地よい。

 この二人、主従よりも親友に近い関係なのかもしれない。

 

 

 

 
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