No.363981

オーズ × 恋姫  呉 プロト

harushuさん

とりあえず、恋姫とオーズのクロスを書いてみました。

変身も入ったので少々長めです。

アドバイスをいただいて、これでよさそうならばそのまま連載します。

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2012-01-15 23:21:40 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:3316   閲覧ユーザー数:3038

目をあけると一面の荒野が広がっていた。

 

目を何度こすってもその風景が変わることはない。

 

あるのは変わらない、ただ殺風景な荒野のみだ。

 

「おっかしいなぁ」

 

周りを見ると警備していた美術館の展示物が散らばっている。

 

自分の手荷物…と言っても服一式と少しの小銭、それに明日のパンツだけだ。

 

…と、パンツを拾い上げたときに見たことないメダルがこぼれおちる。

 

「なんだろ…これ?バイト代かな」

 

そのメダルには赤い基調にタカのようなレリーフがある。

 

いつものエスニック柄の服を着ながら状況を整理する。

 

「たしか…美術館の警備やって…おごってもらったジュース飲んだら眠くなって…」

周りを見ても先輩警備員の姿は見当たらない。

 

大丈夫かな…いい人たちだったのに。

 

とりあえずここにいても状況は何も変わる様子はない。

「とりあえず歩いてみるか…」

よく目を凝らすと遠くの方に煙が立ち上っている。

 

「よ…っと」

岩場を下ってみると自分が寝転がっていたのは小山のうえと言うのがわかる。

 

「日本にもこんなところがあったんだなぁ」

 

「あんた、大丈夫だったかい?」

数キロ歩いたところで、行商の人に出くわした。

今から30分くらい前にこのあたりで流星が落ちてきたらしい。

その割には集まってくる人が少ないのは今が朝だからだろうか。

「あんた、珍しい服着てるね」

そういって、前に中国の資料館みたいなところで見た服を着た人は俺の服をしげしげ見る。

「そうかな…お兄さんの服も結構珍しいと思うんだけど」

「何いっとるんだい…俺の服なんて珍しくもなんともないだろ。待ちに行けばそこらじゅうで買えるような服だよ」

「ふぅん…あ、お兄さんここってどこだか分りますか?」

「あんた、そんなこともしらねェのかよ…

 ここは荊州南陽、孫策様の城の近くだよ」

「は?孫策様?孫策…って孫伯符?」

聞きなれない…いや、ある意味耳馴染んだ名前が飛び出す。

「そうだよ。まさか、このあたりの人間で孫策様を知らないなんて言わないよね」

「いやいや、もちろん知ってるけど…ありがとうございます」

孫策…なんて人はもう何千年も前に死んでいる人だ。

『そんな馬鹿な』って思ったけど、目の前の人は少しも嘘をついてる目じゃない。

昔の生活でついたいやな特技だ。

そんな人が生きてるわけが…なんてこれ以上言えるような雰囲気ではなかった。

「じゃあ、あんたも気をつけなよ~」

手を振り行商の人に別れを告げる。

俺の手には桃が三つ。さっきの人にもらった。

「おお。おいしい」

桃をほおばりながら、自分の状況を改めて整理する。

 

今ここは三国志の時代で場所は荊州南陽。

 

これだけだ。さっぱりわからない。

 

近くの石に座って、目をつぶって集中して思想にふける。

 

「おい…おい!」

唐突に目の前から声が聞こえる。

 

「なんだ…うわぁあ!!」

手が浮いている。

何の脚色もなしに、ただ手が浮いている。

 

「そのメダル…おれんだ。返せ」

手から声が聞こえる。

「メダル…?」

その手は俺のポケットを指さしている。

「あれ…お前の?」

「そうだ。返せ」

「いやいや、俺もう持ってないって!さっき渡しちゃったよ!」

「はぁ?おい、どういうことだ!!」

「どうもこうも、さっきも桃くれたお兄さんに代金って言って渡しちゃったんだよ」

「てめぇ…!なんでそれを先に言わねぇ!…待て、ヤミーだ」

「『やみー』?なんだそれ、お前の仲間か?」

「欲望のカタマリだ。そういう意味では俺たちの仲間かもな」

「は…?おい、ちょっと待てって。どこ行くんだよ!」

 

1キロ走ったところで奇妙な二人組がを目に入る。何かもめてるようだった。

「なんだ。ついてきたのか」

「当たり前だろ。仲間のお前がメダルを集めてるってことはそいつもメダルを集めてるってことだろ」

俺のせいで誰かが襲われるかもしれない…そんな事は許せるわけない。

「普通はそんなことはないんだがな…今回ばかりはお前の勘が当たったようだ。見ろ」

俺たちは近くの岩山に身を隠し、聞き耳を立てる。

 

『コアメダル…渡せ』

そういうのは緑の化け物。手にはカマキリのような鎌がついている。

『ひぃ…何だ、お前は!』

「やっぱりか…」

おびえていたのはさっきの桃のお兄さん。手にはメダルを持っている。

「おい!待て!」

謎の手の制止も聞かず、俺はヤミーとお兄さんの間に割って入った。

 

「待てよ!」

「なんだ。お前は?」

「このお兄さんの友達だ」

「ふん…もう一度言うぞ。コアメダルを渡せ」

「やれないね。それに…そのメダルはあいつのらしいから」

そう言って指さした先に目をやる化け物。

「お前は…アンク!」

「ちっ…バカか!お前は!」

すーっとこちらに飛んでくる『アンク』と呼ばれた腕。

 

「いいから…渡せ!」

鎌のようなものを分裂して飛ばしてくる。

「ぐっ!」

アンクはそれをすべて払いのける。

しかし、その間に距離を詰めたヤミーに切りつけられ、弾き飛ばされる。

「ぐぁぁああ!!」

大きく飛ばされたアンクに追い打ちをかける。

 

「おいおい。一方的すぎるだろ…ちょっと待てや!!」

さらにアンクに追撃をかけようとしたヤミーのうしろに飛びつく。

「ふん!!」

「うわぁ!」

抵抗も空しく、すぐにはじき返される。

とどめを刺そうとしたのか、ヤミーは俺に近づいてくる。

あと数歩のところまで詰めたとき、ヤミーの足が止まり、一点を見つめている。

「あいつ…」

その目線の先を追うと、お兄さんは数十メートル先のところを逃げている。

「ふん…逃げられると…思うな!!!!」

そう言ってヤミーはさっきの鎌の分身を作りお兄さんに投げつけた。

「やめろ!!」

 

その鎌は少しのぶれもなくお兄さんの体を切り裂いた。

体がバラバラになっていないが、遠目にもわかる。あれは致命傷だ。

その体がかつて助けられなかった女の子と重なる。

 

「ちくしょおおおお!!!」

 

俺は激情に任せて殴りかかるが全く歯が立たない。

 

「もうこれ以上、邪魔をするな。お前には関係ない」

「ある!!」

「ん?」

「あるよ…お兄さんも…あいつも…朝からの長い付き合いだから!!」

 

もう一度殴りかかるも、結果は同じ。また吹き飛ばされる。

「うわぁぁああああ!!」

うしろには大きな岩山。このまま当たれば間違いなく…死ぬ。

 

もう駄目だ…と思い目を閉じた瞬間。

首に力がかかりそのまま減速し岩山のすんでで止まる。

 

「お前…」

俺の首はアンクにつかまれていた。

 

「アンク…人間を助ける気か?」

ヤミーが何か言ってるが、アンクはお構いなしだった。

「お前…名前は?」

唐突に名前を聞かれる。

「えっ…火野映司だけど」

「そうか…映司。あいつを助けたければひとつだけ道がある」

「えっ…マジで!?早く教えろよ!!」

がくがくとアンクを揺さぶる。

「止めろ!!その前に俺たちが助からなくちゃいけない」

そう言ってアンクは俺のところまで飛んできて腰に石のカタマリのような物をあてがう。

次の瞬間、石ははがれおち、何かが飛び出して俺の腰に巻きつく。

「それは…封印の!」

ヤミーはひどくあわててるようだった。

その様子から察しがつく。このベルトはあいつを倒す力をもつものだ。

「俺がこの手に握ってきたのはコアメダルだけじゃなくてなぁ。

 映司。メダルを三枚ここにはめろ」

アンクはベルトの穴を指さす。

「そうすれば、力が手に入る。とんでもない力がなぁ」

「でもこれ…危険なものなんじゃ」

「おい!多少のリスクがなんだ!今はそんなこと言ってる場合じゃない!!」

確かに。

目の前のあいつを倒さなきゃここで俺たちは殺されるだろう。

そんなのは…

「ごめんだよな。やっぱり」

アンクの差し出してきた三色のメダルを受け取る。

 

「楽して助かる命がないのは…どこも一緒だな!!」

メダルをスロットに差し込む。

同時にベルトも少し傾く。

「映司。これを使え」

アンクはベルトの右部についていた円形のものを手渡す。

「変身しろ」

言われるがままに受け取り、ベルトの溝にそってそれを流す。

 

「変身」

 

『タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!』

 

スキャナーを流すと同時にベルトから飛び出し奇妙な歌とともに俺の体をとりまく。

光が消えるとともに俺の体に違和感が。

ふと、手を見てみると、黄色い装甲が俺の手にまとわりついている。

 

「力が、内から出てくる!!」

「あっちは俺に任せろ」

そう言ってアンクが指さしたのはお兄さん。

「頼む!」

俺は狼狽しているヤミーに殴るかかる。

 

 

「ぐっ!!」

打撃を受けたヤミーの様子がさっきと明らかに違う。

効いてる!!

何度もパンチを浴びせているうちに、手に力がたまっているのがわかる。

意識を集中させた瞬間、手の大きな爪のようなものが飛び出す。

「おおおおぉぉぉっ!!」

その勢いのままヤミーに斬りかかる。

「ぅぐあああっぁぁ!!」

爪の形についた傷からはチャリンチャリンと何かがこぼれおちている。

「メダル…?」

さっきのメダルとは明らかに違う。

しかし、今はそんな事を気にしている場合じゃない。

 

今度は足に力がたまっているのに気づく。

また力を集中させると、今度は大きく跳びはね、蹴りの連打を浴びせる。

 

「くそ!」

ヤミーは着地した一瞬のすきを見逃さずに、攻撃してきた。

「ぐぅ!!」

攻撃された胴体から力が逃げていくのを感じる。

 

「映司!!」

「アンク!!お兄さんは!!?」

「いまいく!それより、真ん中のメダルをこいつに変えろ!!」

そう言ってアンクは黄緑色のメダルを渡す。

さっきと同様にメダルを入れ替えスキャンする。

 

『タカ!カマキリ!バッタ!』

 

姿が変わると同時に手からは鎌が出てくる。

斬りかかってきたヤミーをいなし、そのまま反撃する。

「はぁ…はぁ…くそ」

「映司!とどめだ!」

遠くからアンクの声が聞こえる。

方角からお兄さんの方らしい。

「どうすればいい!?」

「もう一度メダルをスキャンしろ!」

「分かった!!」

言われるがままにもう一度メダルをスキャンする。

 

『スキャニングチャージ!!』

 

さっきとは比べ物にならない力が体内を駆け巡るのを感じる。

 

「せいやぁぁ!!」

その全ての力をぶつけるようにヤミーの体を切り裂く。

 

「ぐっ…うわぁぁぁああ!!」

一瞬の為の後爆散するヤミー。その体から無数の銀色のメダルが飛び出した。

「なんだったんだ…これ」

 

「それはセルメダルだ。俺たちの体を構成するものだ」

「アンク。お兄さ…ん…は」

振り返った先にいたのはアンクが右腕についたお兄さん。

「こいつはもう瀕死だった。医者に行くまでに死んじまう」

「だからって…お前…」

「それに、こいつは身寄りがないようだ。この体は…俺がもらう」

「なんでそんな事がわかるんだよ」

「こいつの記憶を見た」

「記憶?」

「ああ。どうやらとりついたヤツの記憶は俺も共有できるらしい」

「でも!!」

「あまりガタガタ言うな。どっちみち俺が外れたらこいつの命は終わる。なら俺が完全な体を取り戻すまで、こいつの体を借りといてやる」

「分かった。でも、お前の体が戻ったらすぐにお兄さんから離れろよ」

「ああ、構わない。俺の体が戻ったら…な」

「どうすればいいんだ?」

「まずは、俺のコアメダルを集める」

一応の話の決着を見てどうしようかと考えていた矢先。

 

「あら?ここで戦闘があったみたいらしいんだけど、あなたたち何か知ってる?」

そう言って現れたのは、とても美しい女性。

 

やわらかそうな桃色の髪に、桜の花のような髪留めでうしろを結えている。

赤が基調の大きく胸元の露出した服を着て、腰には剣を携えている。

 

アンクをちらと見ると右腕は元に戻っている。

どうやら擬態できるようだ。

 

「ああ、俺とこいつがけんかしたんです。お騒がせしました」

「ふぅん…それにしても、あなた変な恰好してるわね」

「え?いや…」

やたらめったら未来から来たなど言っていいものか悩んでいると。

 

「策殿。あまりおいぼれをいじめんでくれ」

うしろから妙れ…ゲフンゲフン。

大人の女性がうしろから現れた。

「ごめんごめん、祭。いてもたってもいられなくてね~」

うしろの女性に言い訳している『策殿』と呼ばれた女性…『策殿』?

「あ、あの~」

「なに?」

「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

そう聞くと『策殿』は少し眉をひそめ

「名前を名乗るんなら自分から…じゃない?」

「ああ、すいません。俺の名前は火野映司です」

「ひのえいじ?変な名前ね。それホントに本名?」

「ええ…なにか…」

『おかしいですか?』と口に出しそうになったところで思いとどまる。

「まぁ、いいわ。私の名前は孫策。字は伯符よ。すぐそこの南陽の主よ」

やっぱり…か。

 

どうやら、俺は本当に三国志の世界に来てしまったらしい。

 

しかも、どういうわけか、目の前にいる孫策は女で。

 

変な化け物のおまけつきだ。

 

ともあれ、本当ならこの人はとんでもない偉人だ。

だったら、とりあえずこの人に事情を説明して、アドバイスをもらおう。

もし怪しいって言って殺されそうになったら…その時はその時だ。


 
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