No.354172

真・恋姫†無双 外伝:幼なじみはイタズラねーさん ~今日はなんの日?~

一郎太さん

あれ?今日って何日だっけ?25日だよね?え?28日?聞こえない!
という訳で、雛里んとのクリスマスを投稿した時に、山県阿波守景勝氏からリクエストがあったので、投稿。
更新メッセージは書かないぜ!
どぞ。

2011-12-28 17:09:12 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:8035   閲覧ユーザー数:5881

 

 

 

幼なじみはイタズラねーさん ~今日はなんの日?~

 

 

pppppp……―――。

 

「うぅ……」

 

毎朝耳にする電子音が鳴り響いている。もぞもぞと身体の向きを変え、その音源へと腕を伸ばした。

 

「……………朝、か」

 

時計を見れば、短針は時計盤の6を指している。窓へと顔を向ければ、まだ陽も射していない。これは別に、今朝だけ早起きをしたという訳ではない。毎朝の恒例行事だ。

いつものように布団から抜け出して軽く伸びをすると、いつものように着替える為に立ち上がり――――――

 

「………はぁ?」

 

――――――そして、いつもとは違う声が出た。

 

 

 

 

 

 

今日も今日とてトレーニング………を開始する前に、現状を確認してみよう。

柱や壁、窓枠に打たれた釘には金銀のシャラシャラとした飾りが引っかけられ、床一面には真っ白な雪綿が敷き詰められている。真っ暗な筈の冬の朝なのに、勉強机やラックに巻きつけられた電飾は色とりどりの光をピカピカと放ち、部屋の隅には天井まで届きそうなモミの木が据えられていた。

 

「………本物って事はないよな」

 

俺の不安も杞憂に終わる。触ってみればすぐに模造のツリーという事がわかった。………ただし、その木にもたっぷりと装飾が施されており、木の天辺にはご丁寧に銀色の☆が鎮座している。

 

「どうやって片づけろと……ん?」

 

と、そこで俺は、枕元のあるものに気がついた。

 

「なんだ、コレ?」

 

見れば、2つの紙包み。片方はだいたいA6 のコピー用紙サイズで、もうひとつは30cm四方の包みだ。どちらの包装紙も、緑を基調とした様々な絵がプリントされている。

まさかこの歳になって枕元にプレゼントはないだろうと思いつつ、それでいて、それをしそうな人物に心当たりがある自分に嫌気がさしながらも、俺は梱包を解いていった。

 

「………………」

 

予想通りというか何というか………小さい方の包みには、DVDが入っていた。タイトルに目を通せば。

 

『ドキッ☆ミニスカだらけのサンタ祭り』

 

と、その時。

 

「あららぁ、一刀さん、朝から何見ようとしてるんですか?いかにクリスマスとはいえ、きょうびミニスカサンタなんて流行らないと思う――――――」

「おらぁっ!」

「――――――きゃぁっ!?」

 

ガラッっと窓が開き、予想通りの闖入者がすべてを言い終える前に、俺は窓からDVDを投げ捨てた。

 

 

 

 

 

 

「まったく、危ないったらありゃしませんよ、もう」

「うるせぇ。相変わらず人の部屋に手の込んだ悪戯なんかしやがって。どれくらい手間かけたんだっつーの」

「だいたい2時間ですね。ツリーを運ぶのがもう大変で」

 

考えてみればそうだ。わざわざ屋根を伝ってあの馬鹿でかいツリーを運び込んだのか。まったく、こいつの悪戯にかける情熱は凄まじいものがあるな。

 

「よくやるよ。それで、今日は何しに来たんだ?日曜日だというに」

「決まってるじゃないですか」

 

何をバカな事をと、可哀相なものを見る眼で見つめてくる。イラっときた。

 

「一刀さんと毎年恒例のクリ〇☓スパーティーを開く為ですよ」

「………伏せ字にする意味はあるのか?」

「聞いたらアウトです♪」

 

朝からどっと疲れた。

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで毎度の如く2人並んで朝食をとる。

 

「はーい、一刀さん。お婆様特製の出汁巻き玉子ですよー」

「いや、自分で食えるから」

 

いつものように世話を焼こうとする七乃を無視して食事を進める。

 

「もう、お婆様が折角愛情をこめて作ってくれたんですよ?私の愛情もこめないと負けちゃうじゃないですか」

「何にだよ」

 

愛情とか言うなら自分でも何か作ってくれればいいのに。

 

「………………」

「どうした?」

「今のはプロポーズですか?」

 

なんで!?

 

「だって、『お前の作ったご飯が食べたい』だなんて、プロポーズ以外の何ものでもないじゃないですか」

「………………………」

 

こんなやり取りにも慣れて、2人で会話に花を咲かせている爺ちゃん達が羨ましいぜ。

 

 

 

 

 

 

食事と午前中の鍛錬も終え、俺は七乃と街に繰り出していた。

 

「それで、どこに行くんだ?」

「今日の予定は決めてありますよ」

 

隣を歩く七乃は、バッグから小さな手帳を取り出し、パラパラとページを捲る。

 

「まずは駅前の喫茶店で軽く昼食をとり、

 (※ただし一刀さんの奢りで)

 次にブラブラとウィンドウショッピングをします。

 (※ただし買いたいものがあったら一刀さんの奢りで)

 疲れたらまた喫茶店で一服です。コーヒーだけでもいいですけど、どうせだからケーキも食べたいですね。

 (※ただし一刀さんの以下略)

それからお互いのクリスマスプレゼントを買って。

 (※ただし一刀以下略)」

夕食は夜景の見えるホテルのレストランですね。

 (※ただし以下略)

その後は――――――

 (※以下略)

――――――もうっ、こんなところで言えるわけないじゃないですか!」

 

いきなり赤くなり、俺の背中をバンバンと叩く七乃。

 

「行間に凄まじいものが見えた気がしたんだが………」

「あら、一刀さんも行間を読めるようになったんですね。大人になったんですよ、きっと。お姉さんがナデナデしてあげましょー」

「いいから。恥ずかしいから」

 

背伸びをして俺の頭を撫でようとしてくる。ったく、いつまで経っても子ども扱いしやがって。

 

 

 

 

 

 

「言っておくが、全奢りは無理だからな」

「なんでですか?だって、一刀さん。二学期が始まってからバイトしてたじゃないですか」

「確かにしていたが、いまはバイト代もあんま残ってない」

 

デカい買い物をしちまったからな。

 

「ダメですよ。ちゃんと経済観念はしっかりしておかないと。今度から私が一刀さんの財布を預からせて頂きます」

「断る。七乃に預けるとエログッズに消えそうだ」

「『七乃さん』です。そんな人を淫女みたいに言わないでください、もぅ」

「痛いから。耳を引っ張るな」

 

どれだけ俺を子ども扱いするのかね。

 

 

それはともかく。俺は七乃の予定通りに街を散策した。

 

「はい、あーん」

「いや、恥ずかしいから」

 

喫茶店で軽食をとり、

 

「これとか一刀さんに似合うと思いませんか?」

「子供服の店だぞ、ここ」

 

ウィンドウショッピングをして回り、

 

「はい、あーん」

「いや、いいから」

「イチゴはあげませんよ?私のものです」

「食べればいいじゃん」

 

別のカフェで一服―――七乃はケーキも食べた―――をして、

 

「それじゃぁ、プレゼントを買いにいきましょうか」

 

俺はこの日、初めての自発的行動に出た。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり贈り物なら駅の反対側のお店ですかね。こっちは家族向けの店が多いですし」

「あー…ちょっと待て」

 

そう言って駅に入ろうとする七乃を引き止める。

 

「はい、なんですか?」

「店に行く前に、渡すものがある」

「?」

 

首を傾げる七乃の手を引いて、俺は少し離れた公園まで歩いていく。さすがにこの雑踏の中で実行するのは恥ずかしい。

さきほどまで晴れ渡っていた空は、だいぶ陽も陰り、公園の中にも人影はなかった。

 

「こんなところに連れてきてどうしたんですか?あ、わかりました。久しぶりにブランコで遊びたくなったんですね?もう、仕方がないですねぇ。いつまで経っても子どもなんですから」

「違う」

「あれ、違うんですか?じゃぁ、滑り台ですか?あれはあれで楽しいですが、この時期は冷た過ぎると思うんですけど」

「違う」

 

話を逸らそうとする七乃を、再度遮る。七乃はこういう女の子だ。

 

「えと……あはは、一刀さんにそんな真面目な顔は似合いませんよ?いつものように、お馬鹿さんな顔をしてくれないと」

「俺がいつもアホ面を晒しているように言うな。それと……ちゃんと聞きなさい」

「………………はぃ」

 

茶化す言葉にも表情を変えない俺を見て観念したのか、七乃は小さい声で頷いた。

 

 

 

 

 

 

「まぁ、七乃の性格なんてとうの昔に承知済みだけどな」

「七乃さんです。私はそんなに底の浅い女じゃありませんよ」

 

ぷくと頬を膨らませる七乃も、その語気はいつものような飄々としたものとはかけ離れている。

 

「どれだけ一緒にいると思ってるんだ。その深い部分を知ってるくらいには、付き合いがあると思うけどな」

 

ベンチの隣に座った七乃が、ふと動きを止めた。

 

「今日の一刀さんは、なんだかおかしいです。こんなの私の一刀さんじゃないですよ…」

「今日くらいは、な」

「………あらら、やっぱり一刀さんも、いつもと様子が違いますね」

「俺『も』?」

「あ…」

 

しまったという顔で固まる七乃は、なんだか可愛らしい。いつも年上ぶっているくせに、本当に予想外だと人間味が出るのだろうか。

 

「もぅ……ヒドイです………」

「たまにはな」

「……たまになら、いいかもです」

「そっか」

 

甘えたいという意思表示なのか、七乃はそっと、俺の左肩に頭を乗せた。

 

「それで…渡したいものって何ですか?」

 

甘えた、それでいてほんの少しだけ拗ねた声で彼女は問う。そんな声音すら愛おしく、俺は右手でポケットを探り、ずっと温めてきたものを取り出した。

 

 

 

 

 

 

「………なんですか、コレ?」

「開ければ分かる」

 

俺から()()を受け取ると、七乃はゆっくりと包みを開いた。

 

「………………ぁ」

「メリー・クリスマス」

 

七乃の手のひらには、鈍い銀光を放つ、2つの環。

 

「どうしたんですか…コレ………」

「言っただろう。メリー・クリスマス、って。3ヶ月かけた計画だったからな。七乃は勘がいいから、いつかバレやしないかと不安で仕方がなかったよ」

「七乃さん、です……」

 

無理するな。声が震えてるぞ。

 

「だって……だってぇ………」

「なんで泣いてるんだよ。いつも惜しげもなく『好き』とか『愛情が』とか言ってるくせに」

「だって…私が言ったからって、一刀さんもそうとは限らないじゃないですか………」

「言った筈だ、『七乃の性格なんてとうの昔に承知済みだ』って。自分ではあぁ言いながらも、俺の気持ちなんて聞こうとしやしない。七乃はそういう女の子だよ。だから、言葉じゃなくて行動で示したんだ」

「だから、七乃さん、って――――――」

 

それ以上彼女が訂正の言葉を口にする事はなかった。その瞳からは涙が溢れ、口を開くことなど出来なかったからだ。

 

「仕方がないな」

「うるさいですよぉ…」

 

言い返す声も涙に濡れている。両手でぐしぐしと涙を拭う彼女は、今日ばかりは年下の少女に見えるのだった。

 

 

 

 

 

 

あれから。しばらくして泣き止んだ七乃と共に、帰り道を歩く。交わす言葉はない。

 

「………」

「………」

 

いつもと違うのは、繋がれた手と俺達の距離。指を絡ませて手を繋ぎながらも、ぴったりと身体を寄せてくる。

 

「――――――着いたな」

「はぃ……」

 

気がつけば、七乃の家の前。俺の言葉に、七乃は名残惜しそうに手を離した。

 

「そういえば、まだプレゼントを渡していませんでしたね」

「そうだったな。でも、結局買い物はしなかったじゃないか。気にしなくていいんだぞ?」

「私が気にするんです」

 

そう言いながら、七乃は先ほどまで繋いでいた右手で、バッグを探る。取り出したのは、茶色い無地の紙袋。

 

「はい、どうぞ」

「うん」

 

眼を合わせるのが恥ずかしいのかな。七乃は赤い頬でそっぽを向きながら、無造作に紙袋を突きつける。

 

「開けてもいいか?」

「むしろ、いま開けてください」

「はいはい」

 

少しずつ調子を取り戻した七乃に笑みが零れる。俺は丁寧にシールを剥がし、紙袋の中を覗きこんだ。

 

「………マフラー?」

「はい。あ、愛情たっぷりの七乃さんお手製マフラーです」

 

恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。

 

「もう、うるさいですよ」

「いてっ」

 

両手が塞がった俺の鼻を、七乃はピンと指で弾いた。

 

 

 

 

 

 

そのまま七乃は、手を伸ばしてくる。

 

「寒いですから、つけてあげます」

「家なんてすぐそこなのに?」

「つけてあげます」

「………へーい」

 

隣家なのに。そんな言葉を無視して、七乃は俺の手から受け取ったマフラーを、首に巻いていく。少し背伸びをしながら首の後ろに手を2度回し、そして首の前で軽く結んでくれた。

 

「着け心地はどうですか?」

「あぁ、暖かいよ」

「当然です。私が愛情をこめて編んだんですから」

「間違いない」

 

これまでは敢えて冗談と受け取っていた単語も、今では彼女の本音として受け入れられる。そんな少しだけ変わった関係を嬉しく思いながらも、俺は別れの言葉を切り出した。

 

「それじゃ、そろそろ戻るよ。寒くなってきたしな。七乃も暖まるんだぞ」

「……………」

「七乃――――――」

 

しかし、俺の言葉に応えない。その様子を訝しんで顔を覗きこもうとすれば、にゅっと手が伸び、七乃は俺のマフラーを引っ張った。

 

「………」

「………」

「……………初めてなんですからね。大事にしてください」

 

一瞬だけ触れた、七乃の唇。

 

「………」

「それじゃ、また」

 

淡泊に告げる顔は、再び真っ赤。そんな真っ赤にした頬でいつものようなお姉さんの笑顔を浮かべ、七乃は家へと入っていった。

 

「………」

 

茫然としたまま、俺は空を見上げ――――――

 

「唇じゃないというのが、また、なぁ?」

 

――――――誰にともなしに呟き、自宅へと戻る。左頬に、ほんの少しの熱を感じながら。

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

夕食と風呂を終えて部屋に戻ると、普段とは違う光景が目に入った。

 

「………あ?」

 

すでに敷かれた布団は、その中心を盛り上がらせ、布団の横には、今朝開けずに置いていたままだった包みの包装紙が無造作に破り散らかされていた。

 

「………ったく」

 

そんな事をする人物は、生憎と1人しか心当たりがない。溜息を吐きながらも布団を捲れば。

 

「何やってんだよ、七乃――――――」

「メリー・クリスマスです」

 

胸元と腰回りだけを隠し、頭には三角の帽子を被った少女。

 

「さぁ、1日遅れの性夜を過ごしましょう♪」

「いや、ま…ちょ………………きゃぁぁぁぁあああああああああっ!!?」

 

俺は、ミニスカサンタに布団の中へと引きずり込まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

はい、というわけで某氏のリクに応えた結果こうなった。

3日遅れだけど、気にしないでおくれ。

 

流れに乗れてないので、こっそり投稿。

 

そろそろ恋たんも書いてあげないと怒られそうで怖いぜ。

 

ではまた次回。

 

バイバイ。

 

 

 


 
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