No.34987

宇宙(ソラ)の人

華焔さん

SEED~DESTINY間のお話です。
アスランがオーブに移住して直ぐの頃設定。

2008-10-09 23:03:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:925   閲覧ユーザー数:893

宇宙(ソラ)から降りてきたアイツは、ちょっと変わってる。

 

「なあ・・・何してるんだ?」

「ん?」

 

ぼんやりと、ベランダから海を眺める事・・・既に30分が経過。

未だ残暑漂う海風を受けながら、ただただそこでジッと佇んでいるのだ。

 

「海が・・・そんなに好きなのか?」

「え?あぁ・・・いや。不思議だなって思って。」

「・・・何が?」

「まるで生きているみたいだな・・・。」

「・・・海が、か?」

「あぁ。」

 

その時ようやくこちらへと向いた深くも淡くもある碧色。

思わず、ドキンと胸が跳ねた。

 

「そ、そりゃ!母なる海っていうぐらいだから・・・生き物みたいなモノかな!」

「そうだな・・・。月の満ち欠けに合わせて、満ちたり引いたりもして。」

「ふふっ、お前・・・まるで哲学者みたいだぞ?」

「いや、別にそんなんじゃ・・・。」

 

私の言葉に軽く顔を緩めた彼。

その微妙な表情の変化が嬉しくて・・・つい、自分の頬も緩んでいく。

 

「今度、キラ達の居る孤児院に行った時にでも、じっくりと海を堪能してきたらどうだ?」

「ふふっ・・・あそこに居ると、それどころじゃないだろう?」

「まぁ、確かに・・・騒がしい事この上ないか。」

 

身の上はそれぞれに『幸せ』とは言い難いものの、マルキオ導師様の元集う子供達は逞しく元気に生きている。

笑って泣いて怒って・・・その感情は物凄いエネルギーだ。

時折訪れるだけの自分とアスランを、笑顔で迎え入れてくれる彼等。

一緒に居ると明るくて賑やかな事この上ない。

だが・・・やはり日々生活を共にしているキラやラクスが凄いと思える事も多々あり・・・。

 

「あそこからこっちへ戻ってくると、この屋敷がやたら静かに思えてならないよ!」

「うん。でも・・・あの子達を見ているとホッとするな。」

「え?」

「戦いの果てに残されたモノが、『悲しみ』や『悼み』だけじゃないんだって思える。」

「そう・・・だな!」

 

柔らかくソッと微笑む彼。

私も同じように微笑んで、でも直ぐにハッとなる。

 

「でも!でもでもだ!!」

「え?」

 

パッと両腰に手を当てて、私は彼の事を睨み見た。

お前って奴は、物思いに耽るのも良いけれどだ!

 

「あんまり独りでボンヤリしてると、若くして老けるぞ!?お前!」

「・・・老けるって?」

「だからさ!何か思いつめる前に、私に話せよ?」

「っ・・・。」

「話なら、いくらだって聞いてやるから!な?」

 

二カッとした笑みを向けて、私はアイツの顔をジッと覗き込んでやった。

大体、海辺のベランダで男が独り佇んでいる姿というのが気になって仕方ない!

同い年なんだし、一応こっち(オーブ)では私が引き取り手のようなモノなんだから!!

 

・・・もっと、頼れよな!

 

私は胸の奥でそう強く念じ唱えた。

どうか、未だその胸を強く深く傷つけたままであろう彼に向かい・・・。

 

途端に、綺麗なその目が眩しげに細められていった。

気がつけば陽は傾き、西日が辺りを黄昏色に染めて。

 

「その・・・ここでこうしていると、時の流れを身に感じられるから・・・。ついついボンヤリとしてしまうんだ。」

「うん。」

「でも・・・そうだな。」

「う・・・ん?」

 

スーッと伸びてきた手が、頬に触れた。

瞬間、ビクンと身体が震えて、でも・・・。

 

「ありがとう。」

「っ・・・。」

 

ジッと見つめてきたその翡翠色の双眸。

感じる熱に、私の身体が一気に妬かんでいく。

あの・・・えと、その・・・・っ!?

 

焦って動揺した結果、降りてきた彼の顔、その唇が触れたのは私の口の横だった。

その感触に大きく照れ入りながらも、自分の行動の情けなさと彼の唐突な行為にカッと胸が怒りに染まる!

 

「おっ、お前は!いきなりっ・・・!!」

「あ・・・いや。ゴメン。つい・・・。」

「ついって・・・!!」

「うん。でも・・・その・・・したくなった、から?」

「したくなったからって・・・!!」

 

思わず滲み寄った顔と顔。

そのあまりの距離に、また互いにハッとなりカッとなって・・・。

プッと噴出したのは彼の方。

私はそれにまたムッとなりつつも、でも可笑しさに気持ちは和んでいったのだ・・・。

 

 

 

宇宙(ソラ)に住んでいたアイツは、やっぱり・・・何処か変わっているのだ!

だって・・・この胸を、ドキドキとざわめかして止まないから・・・。

 

それが『恋』というものだと気づくのは、もう少し後の事だった。

 

 


 
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