震える手でナイフを握りしめた。
貴方の視線の先を追いかけて、ギリリと歯噛みする。
貴方の視線の先のあの子を、貴方のものにしたら。
貴方は私を見てくれる?
それとも……貴方が見ているあの子など、殺してしまおうかしら。
気づいたのはいつだったかしら。
兄さんがあの子を見ていると気づいたのは。
たぶん、ずっとずっと昔。
だって、ずっと見てたもの。
視線の先に、大好きなあの人。
零れかけた言葉は、呑んだ息と一緒に喉の奥に押し込まれた。
ナイフから真っ赤な血が滴った。
思わず唇から漏れ出でる笑い声。
ナイフを持っていても、実際に人を殺したことはなかった。
初めてこのナイフを伝った血が、あの子の血。
真っ赤だったそれが、赤黒く広がって。
……ねぇ。これで私を見てくれますか?
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