No.338432

鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第五十三話

NDさん

レノーアの漫画描きたい……。おっと、これは独り言だ。関係ないぜ。

2011-11-23 17:52:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1389   閲覧ユーザー数:1360

~エドワードとカノンノの部屋~

 

『レイサー森林……だと?』

 

エドが、不穏で機嫌の悪い表情になった。

 

そして、その言葉を吐くとコレットは静かに頷いた。

 

エドは、その反応を見て大きく溜息を吐いた。

 

『ちっ……。じゃぁ……カノンノ!』

 

名前を呼ばれたカノンノは、驚きと興奮を抑えられず、裏声で返事をした。

 

『ひゃぁあ!?』

 

その声に、若干嫌悪感を抱きながらも、エドは淡々と話を進めた。

 

『…っ。とりあえず、お前。俺と同行を願えるか?』

 

エドが、そう願いを入れると、カノンノは深くお辞儀をした。

 

『う……うん!がんばる!』

 

『そうか、じゃぁよろしく頼む』

 

そう言って、エドはカノンノに微笑みをかけた。

 

その笑みに、カノンノは少しだけ意識をしたが、エドはそんな事は気にしなかった。

 

『じゃぁ、行くぜ。イアハートを助けによ』

 

エド達は、クレスの所まで歩み寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ガルバンゾ国 騎士団 医務室~

 

ウリズン帝国崩壊調査、生存者3名

 

端から見れば、意味が全く分からないだろう。

 

だが、残念ながら事実である。

 

その驚愕的な事件に、騎士団全員は震撼した。

 

そしてもう一つ、良い知らせがある。

 

エステリーゼ王女が、城に戻られた。

 

だが、それは国王には直々に報告はしなかった。

 

騎士団兵を24名失った代償は大きい。

 

王妃発見のニュース等、掻き消されてしまうような。

 

いや、掻き消される事を王妃は望むだろう。

 

医務室の中で、多くの医療器具によって生かされているフレンの周囲で、

 

切ない目でフレンを見つめている今、その方が望ましい。

 

『…エステリー……ゼ……様…』

 

フレンが言葉を送った。

 

だが、エステルは何も言わなかった。

 

何も返事をしないエステルを見て、フレンも何も言わなかった。

 

そして、ゆっくりとユーリの方を見た。

 

ユーリは、いつもと変わらぬ。

 

フレンが、ヘマをした時と同じような顔をしている。

 

その顔を見て、フレンの表情は微笑んだ。

 

『お前は…変わらないな。』

 

『大分、回復してきたじゃねえか』

 

その言葉に、シャスティルはユーリの襟首を激しく掴んだ。

 

『…………~っ!』

 

だが、シャスティルは何も言えなかった。

 

ただ、声を押し殺して泣くしか出来なかったのだ。

 

『手を…離せ、シャス…ティル。』

 

フレンの言葉で、シャスティルはユーリの襟首を離した。

 

両足を失ったシャスティルは、窓の向こうのどこか遠くを見ている。

 

その姿を見たアルは、ただ俯くことしか出来なかった。

 

この、重い空気の中、言葉を発せられたのはフレンとユーリだけだった。

 

『ユーリ…。お前は…間違って…いないと僕は…思う。』

 

『何がよ』

 

『エステリーゼ…様の…誘拐、王国…の…反抗、どれ…も許しがたい…事だが』

 

フレンがそう言うと、エステルは静かに頷いた。

 

『ええ……。ユーリは何も間違っていないです…。そしてフレン、貴方も……』

 

『いいや、エステル。それは違う』

 

ユーリは、エステルに言葉を送った。

 

『俺達は、何も間違っていないわけが無い。俺がエステルを誘拐した事は、もちろん世界の為になるとも思った。』

 

世界という言葉を聴いて、エステルは歯を食いしばった。

 

『だけど違った。俺達の信じた世界は天地がひっくり返るように間違っていて、最大の敵だった。それに、エステルをそんな顔にしちまった。だからと言ってフレンが正しいとは言えない。』

 

エステルの、布団を掴む手の力が強くなった。

 

『フレンがエステルを取り戻そうとして、実際に早く取り戻せたら、この世界の悪意に気付かなかった。エステルは、何も知らずに世界を信じて、そのまま死んでしまっていたかもしれないんだ。』

 

『ユーリ……止めて下さい』

 

『俺達は、何一つ正しい事をしていない。いや正確には、正しいことが分からなくなってる。』

 

『ユーリ!!』

 

エステルの大声で、この病室は完全に静まりかえった。

 

そのまま、沈黙の時間が進んだ。

 

そして、その沈黙を打ち破ったのは、またフレンだった。

 

『もう…良いです…よ。エステリー…ゼ様。…無理は…言いません。』

 

その言葉を聴いて、エステルはフレンの顔を見た。

 

『もう…私は、騎士団として…やって…いけませんから…』

 

『隊長?』

 

フレンは、大きく咳き込み、

 

落ち着いた所で、話の続きを話した。

 

『僕は……もう動けない…らしいのです。腕と足……感覚が…無いんですよ』

 

その言葉を聴いて、エステルは言葉を失った。

 

その言葉が信じられなくて、耳を疑って。

 

シャスティルも、固まっていた。

 

『ヒスカ…は、義足を使えば…何とかなるらしいの…ですが、僕の…場合、脊髄から…神経に駆けて、…修復…不可能…な所まで…来ている…みたいです。』

 

『………』

 

言葉を失い、何も言えなくなっていた。

 

白いカノンノから攻撃を防いだ結果、エステルを守った結果、

 

最後が、こんな事になるなんて

 

『こんな……世界ならず、運命も……残酷なのですか?』

 

『誰…一人、運命と…現実には…逆らえない…のですよ。エステリーゼ…様。』

 

エステルは、大きく首を横に振った。

 

『隊長!諦めないで下さい!!まだ……まだきっと可能性があります!!』

 

励ますシャスティルの後ろで、医者が言葉を発した。

 

『残念ですが……ほぼ不可能でしょう。』

 

『どうして!』

 

医者の言葉に、シャスティルは不満を感じたが

 

次の言葉に、不満から絶望に変わった。

 

『フレン隊長の身体は、傷口から壊死してきており、徐々に侵食しています。余命は……おそらく二ヶ月。いやそれ以下かもしれません。』

 

医者のその宣告に、何も言えなくなっていた。

 

エステルは、その場から首も動かさずに、ただ震えていた。

 

『その二ヶ月の間、フレンさんの身体を修復する事は、……魔術を用いても、人体物質をいじくる以外不可能です。この世界で、そのような事が出来るはずがありません。』

 

”人体物質”という言葉を聴いて、エステルは震えを止めた。

 

説明の言葉を吐いて、医者は一礼して出て行った。

 

『失礼します。』

 

まるで、その場から逃れたいかのように、早足で出て行った。

 

寿命二ヶ月

 

その言葉で、この病室の者ほとんどが絶望に陥っただろう。

 

だが、エステルはその中で、希望の光が輝いていた。

 

『……アルフォンスさん。』

 

アルは、エステルが何をやろうとしているのか、すぐに分かった。

 

『錬金術の本から……見たもので、一つだけ…フレンを救う方法があるのを……知っています。』

 

その言葉を聴いて、アルは反応した。

 

『エステリーゼ様!本当ですか!?』

 

アルの思いとは別に、シャスティルは希望の光を掴み取ろうとするように立ち上がった。

 

『エステル!!君がやろうとしている事……どういう事か分かってるの!?』

 

アルの反応から察したのか、フレンは表情を強張らせ、エステルに言葉を送った。

 

『エステリーゼ…様、無茶は……しないで…ください……』

 

だが、エステルはフレンの頬を撫でて、言葉をかけた。

 

『大丈夫です。フレン……。私を信じて…。』

 

エステルは立ち上がり、アルに目を向けた。

 

『賢者の石……。』

 

その言葉を聞いて、ユーリもエミルも表情を変えた。

 

『それさえあれば……きっと…いえ、絶対にフレンは助かるはずです…。』

 

『でも、それを使ってしても、フレン程の重傷者に使う生態練成は、極めて危険だよ。それに、』

 

アルは、言葉に出すべきか、否かを迷った。

 

だが、エステルのやろうとしている事は、賛成も出来るし反対も出来る。

 

アルは、自分の考えを、エステルに提示した。

 

『賢者の石を使う事は……。兄さんが賛成するかどうか。』

 

『私は、破門された身です。』

 

『生態錬金を、エステルさんが使いこなせるかどうか…。』

 

『人体と医療の勉強は……。王室で学びました。』

 

『それ以前に、エステルの身体が持つかどうか。』

 

『私の身なんて、身分が付いている以外、何の価値もないです。』

 

その言葉を聴いて、ユーリとエミルが立ち上がった

 

『エステルさん!!!』

 

『おいエステル!!!』

 

アルも、当然反対をした。

 

『エステルさん!やっぱり…賢者の石は……あの石は!!』

 

『お願いします!!!』

 

エステルは、全身を地に伏せ、土下座をした。

 

涙を流しながら、額を床に擦り付けながら、必死にアルに願った。

 

『もう……私は、これにすがるしか無いんです……!賢者の石が、どれ程恐ろしく、どれ程愚かで最悪で醜悪な石かはご存知の通りです!でも!!それでも私は!!……賢者の石に頼るしか無いんです……!!』

 

床と、エステルの皮膚が擦れる音が、部屋に響き渡った。

 

最早、王妃の品格など、どこにも無かった。

 

『お願い……します……。フレンを……助けてください……』

 

涙交じりの声は、必死さが現れていて圧倒されていた。

 

エステルは、実感していたのだ。

 

フレンのその傷は、星晶の力では恐らく力が弱すぎて直せない。という事を。

 

ユーリも、エミルもアルも、その事は感じていた。

 

 

アルは、その姿のエステルを見て、ただ見下ろすことしか出来なかった。

 

胸が痛くても、共に泣きたくても、泣けない。そう言う事が始めて苦しいと感じた。

 

エステルの背中が悲しみに震えていると。アルは首を横に振った。

 

そして、エステルに手を差し伸べた。

 

『エステル…、顔を上げて。』

 

アルがそう言うと、エステルは言われたとおりに顔を上げた。

 

アルは、エステルの方を完全に見ては居なかったものの、答えは決まっていた。

 

『……フレンさんを、助けましょう。』

 

その言葉を聴いてエステルは、一瞬しばらく黙り込んでいた。

 

フレンは、ただ静かに涙を流していた。

 

そのまま、しばらく動かない手足を見て、

 

情けない自分を罵倒したかった。

 

そして、次第にエステルは涙をこぼした。

 

表情が段々と崩れていき、最後に、アルの手を両手で握って、額をつけて泣き叫んだ。

 

病室の周りにも、恐らくは二つ先の部屋にも響き渡るような声だったが、

 

誰一人、病室の中には入ろうとしなかった。

 

その泣き叫びの意味が、騎士団兵は分かっていたから。

 

ただ、病室の周りで心の奥底で応援をしていた。

 

悲鳴のような、泣き叫ぶ声は、まだ止まない。

 

フレンは、顔を上げてユーリと目を合わせた。

 

そして、ユーリはフレンの隣まで移動した。

 

『………ユーリ……』

 

フレンは、精一杯の声で、ユーリに言葉を送った。

 

『エステリーゼ様を……よろしく頼む』

 

そう告げた後、フレンは頭を深く下げた。

 

そのまま、起き上がろうとしなかった。

 

ユーリは、その言葉に返事をした。

 

『くたばんじゃねーぞ。』

 

ただ、そう言葉を言い残して、病室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城の外へ、王都の外へと移動したユーリはそのまま歩き続けた。

 

ギルドに戻らないと。早く戻らねえと。ずっとそう考えていた。

 

エステルを、こう言っては悪い気がするけれども、

 

レイサー森林に行かなければ、フレンは間違いなく死んでいた。

 

生存者は、0名になっていただろう。

 

だが、だからと言って俺達は良い事をしたんじゃない。

 

責任者になったのだ。

 

『………畜生…。』

 

フレンが、後二ヶ月で死ぬ。

 

そんな事が、現実で起こることなんて考えもしなかった。

 

”死”

 

もうすぐ、全ての人類が滅ぼされようとしている。

 

それを防げたとしても、フレンはいずれ死ぬのだ。

 

賢者の石を、探さない限り。

 

『絶対……絶対死ぬんじゃねーぞ!!!!』

 

ユーリは、剣を引き抜いて、目の前の石を一刀両断した。

 

綺麗に真っ二つとなった石は、上の部分だけ、そのまま地に落ちた。

 

『うるぁぁああああああああああああああ!!』

 

ユーリは、剣を持ちながら真っ直ぐギルドに戻った。

 

行く道の邪魔となる木や石は、全て切り落としながら

 

真っ直ぐ、バンエルティア号へと駆け走った。

 

それは、ユーリ一人だから出来る事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~バンエルティア号~

 

『そうか……。エドワード君とカノンノ君……か。』

 

クレスが、納得したような声でそう言った。

 

だが、アーチェは微妙に不穏な表情で、二人を見つめていた。

 

『………ちっこい子供二人で、大丈夫かしらね。』

 

『んだとコラァ!!誰がちっこいじゃコラ!!』

 

ちっこいという言葉に反応し、エドは激怒した。

 

『だって身長あんま変わんないじゃん』

 

『身長の事言うなっつってんだろうがぁぁああ!!おいクレェース!こいつ一発ぶん殴って良い!?ねぇ!!』

 

クレスは、当たり前のように首を横に振った。

 

そして、改めて本題に入った。

 

『それじゃぁエドワード君。イアハートの救出依頼の同行人だけど、二人では足りないんじゃないのか?もっと募集してみようか?』

 

クレスが別の話題に変えた事で、エドは苛立ちが増したが、押し殺して、普通の返事をした。

 

『………いや、二人だけで良い』

 

その答えを聞いた瞬間、カノンノはビクリと反応した。

 

という事は、二人だけで依頼に行くという事なのだろうか。

 

という事は、これはつまり……。

 

『おい、どうしたカノンノ?』

 

『あっ!?いえ……なんでも……』

 

カノンノは、思いを押し殺して落ち着いた。

 

エドと二人きりになるのは初めてだが、

 

今は仲間を助けに行くのが先だ。そんな下心は要らないのだ。

 

『それに、向こうに着いたら合流する仲間が結構居るからよ』

 

エドのその言葉を聴いて、カノンノの感情は止まった。

 

そして、心の中で大きく脱力した。

 

『おい、だからどうしたんだカノンノ。お前はここで残ってるか?』

 

『ううん!行く!』

 

カノンノは、力の限り思い切り首を横に振った。

 

その反応に、エドは何の不満も無かった。

 

そして、クレスはエドの言葉に返事をした。

 

『駄目だ。』

 

『は?』

 

エドは、行っている意味が分からなかった。

 

そして、アーチェの肩に手を置いてエドに言葉を送った。

 

『アーチェも同行を義務付ける。』

 

『『はぁぁぁ!?』』

 

エドとアーチェは、その勝手な答えに、不満を言い放った。

 

『ざっけんな鎧野郎!!俺は嫌だぞ!!こんな頭が痴呆の箒野郎なんかよぉおお!!』

 

『私だって嫌よ!!こんなチビでノロマで重々しい手足付けてる奴なんかよぉおおお!!』

 

同時に言ったであろう不満を、クレスは上手く聞き取れなかった。

 

聞き取れなかった為、受け流すことにした。

 

『アーチェが居れば、イアハートを救う確立はぐんと上がるだろう。なんたって空を飛べるのだから。それに、二人は息がピッタリだと僕は思う。』

 

『『誰が息ピッタリじゃコラァァァァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』』

 

ほぼ同時に、同じ言葉と言語をぶれる事無く、タイミング良く発した。

 

その音声を聞いて、クレスは笑顔になり、大きく頷いた。

 

『よし。決定だ』

 

そのクレスの勝手さに、アーチェとエドは怒りの形相で睨みつけた。

 

だが、クレスは何一つ気にしていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~バンエルティア号 外~

 

機嫌の悪い二人は、離れて歩いて移動していた。

 

アーチェがブツブツ文句を言ってそっぽを向いている。

 

エドは、何も言わずに歩いている。

 

前にも、こんな状況があった。

 

そう思いながら、カノンノは再び起こった重い空気に耐えていた。

 

このまま、言葉を出して裏目に出たら最悪だと思い、怖くて何も言わなかった。

 

『おい!クエストが始まったら、別行動だからな!!』

 

『言われなくても分かってるわよ!豆!!』

 

『ぁああん!?』

 

『ぉおおん!?』

 

何故、これ程にまで仲が悪いのだろうか。

 

『行っておくけどねぇ、アンタに顔面殴られた事は絶対に忘れてないからね!!』

 

『俺もなぁ!!変な指輪の偽者掴まされて、一日無駄にした事は絶対に忘れねえ!!分かったなぁ!!!!』

 

どうやら、第一印象がいずれも最悪だったらしい。

 

こんなはずでは、と溜息を吐いたカノンノは、沈んだ雰囲気でトボトボと歩いた。

 

ここから先にある、谷

 

その下に存在する巨大な施設のような物が、暁の従者の真の拠点だ。

 

そこにイアハートが居るかは分からないが、そこに頼るしかなかった。

 

『『ふん!!』』

 

カノンノは、二人を見て ああ確かにこの二人は似てるな と思った。

 

そして、少しジェラシーになった。


 
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