No.337951

サテライトウィッチーズ 第四話

三振王さん

第四話になります。
シャーリーがメインのお話です。

2011-11-22 17:55:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2175   閲覧ユーザー数:2130

 第四話「はやくて!? おおきくて!? やわらかい……」

 

 

その日、ガロードはDXの整備を終えた後、近くに固定台に置いてあった芳佳達のストライカーをじーっと眺めていた。

 

「それにしてもスゲー作りだよなストライカーユニットって、キッドに見せたら喜んで改造しそうだな……」

「んー? 私のストライカーユニットに何か用かガロード?」

するとそこにシャーリーが現れる。

「いやなんでも、お前こそどうしたんだ? 今ブリーフィングじゃ……」

「私のストライカーの慣らし運転をしに来たのさ」

「へー、熱心なもんだな」

 

そしてシャーリーは台に固定されたままの自分のストライカーユニットを履き、自分の使い魔であるウサギを憑依させエンジンを起動した。

するとストライカーから“ドォン!”と鼓膜を揺さぶるような爆音が発せられ、ガロードは心臓が冷えるような感覚に襲われる。

 

「ぎゃ!? お、おいおい、でかい音出すなら先に言ってくれよ!」

「あーわりいわりい」

 

シャーリーはてへへと笑いながら、耳を押さえて怒っているガロードに謝罪する。

 

 

 

「シャーリーさん!」

「ガロード君!」

 

すると今度は芳佳とリーネが現れガロード達の元に駆け寄る、どうやら先程の爆音で何事かと思って駆けつけて来たようだ。

 

「お? よう二人とも! どうしたんだ二人して?」

 

そう言ってシャーリーはストライカーを履いたまま、呑気に芳佳とリーネに手を振った。

 

「あ、あの……さっきの音は?」

「ああ、シャーリーがストライカーを起動させた音だよ、俺もびっくりしちまった」

「なんならもう一回やってやろうか?」

 

シャーリーはそのままもう一度ストライカーのエンジンを起動させ辺りに爆音を響かせる。

 

「うおおおお!? だからいきなりやんなって!?」

 

再び響く爆音に、ガロード達は反射的に耳を塞ぐ。そして芳佳は音の元のエンジンを止めてもらいため、シャーリーに大声で話しかける。

 

「も、もういいです! わかりましたからー!」

 

しかし芳佳の言葉は爆音によって掻き消され、シャーリーはその事に気付かないまま隣にあった計器を操作する。

 

「ふん……いい感じだ、もう少しシールドとの傾斜回路を……ところで何言ってんだ宮藤?」

「音止めてくれってさー! このままじゃ会話もできねーよ!」

「ああ、すまんすまん」

 

代わりに大声で話しかけてきたガロードに気付き、シャーリーはようやくストライカーのエンジンを止めた。

 

「う~るさいな~」

 

その時、ガロード達のいる格納庫の天井からルッキーニの声がしてきた、ルッキーニは天井を支える骨組みの上で昼寝をしていたのである。

 

「「ルッキーニちゃん!?」」

「お前そんな所にいたのか!? 全然気付かなかった……」

「ふぁ~! 折角いい気持で寝てたのに~、ガロードの声で起きちゃったよ~」

 

そう言ってルッキーニは天井から飛び降りてそのまま華麗に着地した。

 

「ネコかお前は」

 

その様子を見てガロードはまんますぎるツッコミをする。

 

「ルッキーニちゃん、今の音平気だったの?」

 

リーネの質問にルッキーニはあっけらかんに応える。

 

「うん! だっていつもの事だし」

「いつも? シャーリーさんいつもこんな轟音立てて……」

「ストライカーのエンジンを改造しただけだよ」

「エンジンの改造って……どういうことです?」

「ふ……おいで、見せてあげる」

 

 

芳佳達はストライカーユニットを履いて台から降りたシャーリーに連れられて、雲一つない青空の広がる外にやってくる。

 

「あの、改造って……」

「魔導エンジンのエネルギーの割り振りをいじったんだよ」

「攻撃や防御に使う分のエネルギーを変えているんですか?」

「そういうこと」

「一体何を強化したんですか?」

「もちろん速度!」

 

自信満々に答えるシャーリーを見て、芳佳とリーネは思わず顔を見合わせる、攻撃や防御を無視してまで速度に拘る彼女の考えに驚愕しているようだ。

 

「シャーリー!」

 

その時、速度計測機を抱えたルッキーニからシャーリーに相図が送られる、するとシャーリーの足元の魔法陣がさらに大きくなる。

 

「GO!」

 

そしてルッキーニのGOサインと共に、シャーリーは勢いよく空へ飛び出していった。

 

「いっけーシャーリー!!」

「すごい……! なんて加速……!」

「MSでもあれだけの速度を出せるのはそうそういないぜー」

「まだまだ!」

 

するとシャーリーはそのまま物凄いスピードで雲に届きそうな位置まで上昇した。

 

「おお、一気に上がった……1000メートルぐらいを一分もかからずに上昇するなんて……」

 

 

 

一方飛び続けているシャーリーはさらに飛行スピードを上げた。

 

「いくよマーリン、魔導エンジン出力最大!」

 

シャーリーは自分の体を魔法で輝かせながら飛行スピードをさらに上げた。

 

「シャーリーさんまだ加速している……!」

「時速770キロ! 780! 785! 790! 795! ……800キロ! 記録更新だよ!」

 

そしてシャーリーはそのままガロード達の横を光速で横切っていった。

 

「うわっ!?」

「あんにゃろう……こっちをおちょくってんのか!?」

 

「もっとだ……もっとだ!」

 

しかしシャーリーのストライカーユニットはそれ以上加速することが出来ず、ガタガタときしみ始めた。

 

 

「あー、800を超えたあたりで減速してきたな」

「もうちょっとで音速だったのに~!」

 

ルッキーニはまるで自分の事のように悔しがる、そして彼女達のもとにシャーリーが戻ってきた。

 

「シャーリー記録更新だよ!」

「「すごかったです!!」」

「おお! やった~!」

 

芳佳達から称賛の声を受け、シャーリーは嬉しさのあまりガッツポーズした。

 

 

 

そして地上に降りたシャーリーが一言。

 

「あ~! お腹減った~!」

 

 

 

数分後、格納庫に戻ったガロード達はストライカーの整備をしているシャーリーからある雑誌を見せてもらっていた。

 

「これなんですか?」

「『グラマラスシャーリー新記録』って……バイクの記録ですか?」

 

雑誌にはジェットエンジンの付いた筒状の形をしたバイクと共に映るシャーリーの写真が乗っていた。

 

「シャーリーはパイロットになる前はバイク乗りだったんだって!」

「ボンネビル・ソルトフラッツって知ってるかい? リベリオンの真ん中にある、見渡す限りすべて塩でできた平原さ」

「そんなところがあるんですかー」

「そこは私らスピードマニアの聖地なんだ……」

 

シャーリーは瞳を閉じながらその時の様子を思い浮かべていた。

 

「そこで記録を破った日に耳にしたのさ、魔導エンジンを操って空を舞う世界最速の魔女の話をね……その日に私は軍に志願して入隊、今ここでこうやっているってわけ」

「それで任務の無い日にこうやってスピードの限界に挑戦しているんですね?」

「最速かあ……スゴイなあ……!」

 

リーネと芳佳は様々なチャレンジをしてきたスケールの大きいシャーリーを尊敬の眼差しで見る。

そしてリーネは自分の中に生まれた疑問をシャーリーにぶつける。

 

「でもそれってどこまで行けば満足するんですか?」

「そうだなあ……いつか音速、マッハを超える事かな?」

「ふえ? 音速ってなんですか?」

「音が伝わる速度だよ、大体時速1200キロメートルぐらいさ」

「ほあああ……」

 

あまりにも現実離れというか、自分にはとても到達できない領域の話に、芳佳はため息まじりに息を吐いた。

 

「そんな速度を出すなんて、本当に可能なんですか?」

「さてね……でも、夢を追わなくなったらおしまいさ、今日はここまでっと」

 

そう言って整備を終えるシャーリー、そしてある事を思い出し芳佳達に質問する。

 

「ところで……二人は何か用かい?」

「ふえ?」

「ん?」

「「ああ~!!? 忘れてた~!?」」

 

芳佳達はようやく本来の目的を思い出し顔を見合わせる。

 

「あ、明日明朝1000時に海に行くことになんたんです! 水着持参で……」

「ガロード君も来てほしいってミーナ隊長が……」

「それってつまり……海水浴?」

「ほお! それは楽しみだな!」

「え? 何がです?」

 

芳佳の質問に、シャーリーは意地悪く笑って答える。

 

「二人の水着姿が見れるじゃん? ついでにガロードの」

「「えええ~!!?」」

 

シャーリーにそう言われ、二人は恥ずかしさで顔を真っ赤にする。

 

「俺はついでかよ!?」

「まあまあ、そんじゃ持っていく水着選ばないとな~」

 

そう言ってシャーリー達は格納庫から去っていった。

 

 

 

数分後、誰もいなくなった格納庫に一人昼寝して残っていたルッキーニは、大きなあくびをしながら目を覚ました。

 

「ふあ~……ん?」

 

その時ルッキーニはシャーリーのストライカーに引っ掛かっていた彼女のゴーグルを発見する。

 

「いっただき~!」

 

ルッキーニはゴーグルを自分の頭に掛けようと引っ張る、するとゴーグルのゴムがストライカーの翼に引っ掛かり、ストライカーはそのまま引っ張られガタンと地面に倒れてしまった。

 

「へ? うきゃー!?」

 

倒れた衝撃でオイルが漏れてパーツがバラバラになったストライカーを見て、ルッキーニは事の重大さを認識し思わず叫んでしまう。

 

「どどどどどうしようどうしよう!? え、えーっとこの部品どこだっけ? こっち? こっちだっけか?」

 

ルッキーニは自分で修理を試み、あいまいな記憶でストライカーの部品をはめていった……。

 

数分後……オイルまみれになりながらルッキーニはストライカーの修理を完了した。

 

「ふう! これで元通り! ……だよね?」

 

ルッキーニは自分の修理に不安を感じながらも、とりあえずお腹がすいたので格納庫から出ていった……。

 

 

 

 

 

次の日、水着姿の501の面々は海岸に到着し、まずシャーリーとルッキーニが真っ先に海に飛び込んでいったいった。

 

「「やっほぉー!!」」

 

 

「ほ! ふ!」

「ふんふーん」

 

一方バルクホルンとエーリカは泳ぎの練習を始める、もっともバルクホルンは綺麗なクロールのフォームに対し、エーリカはどう見ても犬かきなのだが。(アニメでは泳いでいる時海面に突き出したお尻が可愛いので是非そちらもチェック)

 

 

「肌がひりひりする……」

「腹へったなー」

 

サーニャとエイラは泳ごうとはせず、砂浜で二人仲良く並んで座り、皆が泳いでいる様子を眺めていた。

 

 

そして芳佳達はというと……。

 

「な、なんでこんなの履くんですか~!!?」

 

芳佳とリーネは水着姿のまま、訓練用のストライカーユニットを履いて崖の上に立っていた。

崖下には海が広がっている

 

「何度も言わすな、万が一海上に落ちた時の為だ」

「他の人達もちゃんと訓練したのよ? あとはあなた達だけ」

「つべこべ言わずにさっさと飛びこめ!」

「ふえええー!!?」

「きゃあああ!!?」

 

美緒に催促され芳佳とリーネは慌てて海に飛び込んだ。

 

 

 

数十秒後……。

 

「……浮いて来ないな」

「ええ……」

 

しばらくした後、美緒とミーナは芳佳達が浮いて来ない事に焦り始める。

 

「やっぱり飛ぶようにはいかんか」

「そろそろ限界かしら」

 

その時、突如海面に芳佳とリーネが浮かび上がってきた。

 

「ぶはぁ!」

「ぷはぁ!!」

「あら、上がってきた」

 

美緒はとりあえずほっとしつつも、芳佳とリーネに叱責の言葉を掛ける。

 

「いつまで犬かきやっとるかー、ほら、ペリーヌを見習わんかー」

 

溺れかけている芳佳とリーネの後ろでは、ペリーヌが悠々自適に平泳ぎをしていた。

 

「まったくですわ……」

 

ペリーヌは溺れかけている二人を見て、やれやれとため息をつきながらそのまま横切っていった。

 

「そんな……いきなり……無理……」

 

そして芳佳とリーネはついに力尽き、ぶくぶくと海の底に沈んでいった……。

 

「あらあら……仕方ないわね、ガロード君頼める?」

『オッケーだぜミーナさん!』

 

すると海面から何故かDXがグモモモモと浮かび上がってきた、ちなみにその手にはぜーぜー言ってる芳佳とリーネが乗っていた。

 

「ライフセーバー役ご苦労だなガロード」

『いやいや、お役に立てて何よりだぜ』

「それにしてもMSって水中も入れるのね、高性能ね……」

『まあレオパルド程じゃないけどね! MSにも水中用ってのがあるし……』

「ふむ……もしもの時の為に水中用の装備の開発を上申したほうがいいかもな……それはそうと皆、休憩時間だー」

 

美緒に言われてそれぞれ海で泳いでいた隊員達が一斉に砂浜に上がってくる、そして最後にストライカーユニットを抱えた芳佳とリーネが満身創痍と言った様子で陸に上がってきた。

 

「はぁ……はぁ……もう動けない……」

「私も……」

 

そして力尽き砂の上に倒れ込む二人。

 

「あ、遊べるって言ったのに……ミーナ中佐の嘘吐き……」

「ありゃりゃ、大分お疲れのようで」

 

するとそこに様子を見に来たガロードとシャーリーが現れた。ちなみにガロードは軍から支給された長ズボン状の海パンを履いている。

 

「なあにすぐ慣れるさ、それにこうやって寝てるだけだって悪くない……」

「は、はあ……」

 

そう言って芳佳、リーネ、シャーリーは仰向けに寝て日光浴を楽しむ、そしてガロードは彼女達の隣に座り込む。

 

「お日様……あったかい……」

「うん、気持ちいい……」

「だろ?」

「平和だなあ」

「あれ?」

 

その時、芳佳は太陽を見て異変に気付き、身を起こした。

 

「? どうしたの?」

「今……太陽のとこ、何か横切った」

「何が?」

 

シャーリーとリーネ、そしてガロードも目を細めて太陽を見る。そしてシャーリーはその物体の正体を察知した。

 

「……! 敵だ!」

「ふぇ!?」

「ネウロイ!」

「こんな時にかよ!?」

「……!」

 

シャーリーはすぐさま自分のストライカーが置いてある格納庫に向かって駆けていき、芳佳とリーネも彼女を追いかけていく。

 

「「シャーリーさん!」」

「やべっ! 俺も行かなきゃ!」

 

すると島全体に敵の襲来を告げる警報が鳴り響く。それを聞いた501の面々も格納庫に向かって行った。

 

一方美緒とミーナは近くにあった連絡用電話で管制室から状況の確認を行っていた。

 

「敵は一機、レーダー網を掻い潜って侵入した模様」

「もう、また予定より二日早いわ」

「誰が行く?」

「すでにシャーリーさん達が動いているわ」

 

 

一方格納庫に一番乗りで着いたシャーリーは自分用の武器であるBAR、M1911A1を抱えストライカーを履いた。

 

「イェーガー機……出る!」

 

そしてシャーリーは勢いよく滑走路を駆け、そのまま空へ飛び出していった。

 

「シャーリーさん……きゃあ!?」

「あいたた、私達も行こう!」

 

シャーリーが飛んでいく様子を目の当たりにした芳佳とリーネもすぐさま格納庫に向かった。

 

ネウロイに向かって高速で飛翔するシャーリー、すると彼女が耳に装備しているインカムにミーナからの通信が入ってきた。

 

『シャーリーさん聞こえる?』

「中佐?」

『敵は一機、超高速型よ、すでに内陸に入られている』

「敵の進路は?」

『ここから西北西、目標はこのまま進むと……ロンドン!』

『ロンドンだ! 直ちに単騎先行せよ! シャーリー……お前のスピードを見せてやれ!』

「了解!」

 

美緒の言葉を聞いて気合を入れたシャーリーは、ゴーグルを付けて加速する。

 

「「うわぁあ!?」」

 

その衝撃波は後ろを飛んでいた芳佳とリーネにも襲いかかり、彼女達の飛行バランスを大きく狂わせた。

 

「も、もうあんなところに!」

「リーネちゃん急ごう! ガロード君も来てくれる!」

 

そう言って芳佳とリーネはシャーリーの後を一生懸命追いかけていった。

 

 

「シャーリーさん……」

 

一方基地では美緒とミーナがシャーリー達の戦いぶりを見守っていた、そこに……。

 

「あああ~! シャーリー行っちゃった……まさかあのままなのかな?」

「何があのままなんだ?」

 

美緒の質問に、ルッキーニはショボンとしながら指を咥えて答える。

 

「えっとね、夕べ私シャーリーのストライカーをね……ひっ!?」

 

その時ルッキーニは自分の背後から物凄い殺気を感じ、秘密にしなきゃいけないことを迂闊にもしゃべってしまった事に気付き、錆びたロボットのようにギギギと後ろを向いた。

 

「あ、あの……なんでも無いです」

 

そんな言葉を聞くミーナさんではなく、彼女はルッキーニの肩をガッと掴みながら怒気を含んだ視線を向けた。

 

「続けなさい……フランチェスカ・ルッキーニ少尉……うふふふふ!!」

「あわわわわわわわわわ」

 

ルッキーニはこれから自分の身に降りかかる恐怖を野生の勘で感じ取り、体から大量の冷や汗を流していた……。

 

 

 

ルッキーニから事情を聞いた美緒はすぐさまシャーリーに帰還するよう指示を出す。

 

『大……! 帰……! ただち……!』

(なんだ? 加速が止まらない……今日はエンジンの調子がいいのか?)

 

しかし計器の不調で美緒の指示は届かず、シャーリーはいつもと調子が違うストライカーを気にかけていた。

 

(この感じ……似てる……似てる! あの時と!)

 

シャーリーの脳裏にボンネビル・ソルトフラッツで記録を破った時の記憶が浮かび上がる。

 

『ただ……せよ!……尉!……!』

「いっっっっけぇーーーーー!!!」

 

シャーリーはそのまま超加速の魔法を発動させ、空気の壁を切りながら加速していった。

 

 

 

「……はっ!?」

 

気がつくとシャーリーは自分が未踏の領域にいる事に気がつく……そう、彼女は今音速を超えた世界の中にいたのだ。

 

「あ、あたし……マッハを超えたの? これが超音速の世界……! すごい! すごいぞ! やった! わたしやったんだ!」

 

歓喜のあまり、シャーリーは自分が今置かれている状況などすっかり忘れて喜びの雄たけびを上げた。

 

『聞こえるか大尉!? 返事しろ!』

 

するとようやくインカムの調子が戻り、シャーリーの耳に美緒の言葉が届いた。

 

「少佐やりました! あたし音速を超えたんです!」

 

自分の喜びを美緒にも伝えようとするシャーリー。

 

『止まれー! 敵に突っ込むぞー!』

「へ?」

 

するとシャーリーの正面にネウロイが高速で接近してくる、シャーリーは加速する事に夢中でネウロイの事をすっかり忘れていたのだ。

 

「へ? ……ふええええええ!!!?」

 

シャーリーは反射的に自分の目の前に魔力シールドを展開する、するとシャーリーの体は高速で放たれた銃弾のように、ネウロイをコアごと突き抜いてしまった。

 

「……! 敵撃墜です!」

 

同じころ、シャーリーを追っていた芳佳とリーネはネウロイが爆散した事を美緒達に伝える。

 

『シャーリーさんは!?』

「えっと……あ! 大丈夫です!」

 

すると芳佳は、ネウロイの爆煙の中からシャーリーが上空に向かって飛び出してきたのを確認した。

 

「無事です! シャーリーさんは無事です!」

 

そう言って二人はシャーリーの元に向かう、すると彼女達はシャーリーの異変に気付く。

 

「あれ……?」

 

シャーリーはどうやら気を失っているようで、(顔は笑ったまま)音速を超えたことで燃え尽きた自分の水着の燃えカスを撒き散らしながら上昇する、そして魔力が切れてストライカーユニットが脱げると、彼女はそのまま海へ真っ逆さまに落ちていった。

 

「わああああ!?」

「全然無事じゃなーい!」

 

慌てて助けに向かおうとする芳佳とリーネ、すると彼女達の横を追いかけてきたガロードのDXが横切った。

 

『俺に任せろ!』

「「ガロードくん!」」

 

ガロードはDXを海上まで先まわらせ、そのままシャーリーを空中でキャッチする。

 

『おっしゃ! シャーリー無事か!?』

 

ガロードはシャーリーの無事を確認するため、手元にMSのカメラを向ける。

 

「!!!? ぶー!!!!」

 

そして豪勢に鼻血をコックピットの中にぶちまけた、そりゃそうですよ、だって部隊一どころか世界レベルのナイスバディを持つ少女がMSの手の上で全裸で眠っているんですよ? 思春期真っ盛りの15の少年でガンダムシリーズで1、2を争う純情ボーイにはきついってもんがありまっせ。

 

 

 

「はやくて! おおきくて! やわらかい……」ガクッ

 

それがガロードの遺言だった。

 

 

 

「わあ~!? DXが沈んでる!? なんでぇ!!?」

「が、ガロードくーん!」

 

数分後、残りのウィッチ全員によって引き上げられたDXのコックピットの中には、鼻血で真っ赤に染まったガロードが発見された……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、ガロードは基地の外で涼しい夜風に当たっていた。

 

「はあ……今日はエライ目にあった……」

 

「ようガロード!」

 

するとそこに、そのエライ目に合わせた張本人ことシャーリーが現れた。

 

「シャーリー? もう体はいいのか?」

「へーきへーき! 魔力は減っていたけど寝て食ったら治っちまった!」

 

シャーリーを気遣うもそれは杞憂に終わり、ガロードは呆れてため息をつく。

 

「単純な体しているなお前……今日は大活躍だったじゃん」

「おうよ! でもまだまだ私は記録更新を目指すぜ~! 音速の次は光速だ!」

 

手をぎゅっと握りしめて熱く語るシャーリー、ガロードはそんな彼女を羨ましいそうに見つめていた。

 

「いいなシャーリーは……輝いているって感じだぜ」

「あん? なんだ急に……」

「俺ってさ、その日を生きる事に精一杯でそう言った夢中になれる事を持った事無いんだよ、だから夢を持っているシャーリーが羨ましいぜ」

「はっはっは! どんだけ過酷な環境にいたんだよお前は!?」

 

少し元気のない様子のガロードの背中を、シャーリーはバンバンと叩く。

対してガロードは、シャーリーに対して感じた思いを素直に口にした。

 

「たはは……だから今日の飛んでいるシャーリーの姿はカッコ良くて綺麗だったぜ、ただそれだけさ」

「お!?」

 

シャーリーはガロードに褒められて思わず顔を赤くする。

彼にそう言った意図はなかったのだが、シャーリーはそう捉えてしまったようだ。

 

「どうした?」

「い、いやー……綺麗なんて言われたの初めてだからさ……ちょっとドキッとしたというか……」

「ふーん? 俺はただ率直な感想を言っただけだぞ?」

「そ、そうか……私が綺麗……」

 

シャーリーはガロードの言葉はそこそこに、バックンバックンなっている自分の心臓の鼓動の音を聞きながら、初めて感じる気持ちにどうしていいか解らずオロオロしていた……。

 

 

 

そんな状態のシャーリーをよそに、ガロードは離れ離れになった想い人の事を想い、月と星が輝く夜空を見上げた。

 

(ティファ……俺、お前と離れ離れになっちゃったけど、今は元気でやってるよ、もしまた会えたら……ここの皆を紹介するよ、きっとティファもこいつらと仲良くなれると思うから)

 

想い人に早く会いたいという気持ちが、ガロードの心に小さな隙間を生み出していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのガロードの視線の遥か先に、バイザーのような仮面を付けた、黒いレオタードを着て芳佳達のとは違う何かゴツゴツとしていくつもの砲台が付いたストライカーを履いたウィッチが、501基地を見下ろしていた。

 

「目標確認……ターゲット、ストライクウィッチーズ隊及びガンダムダブルエックス……」

 

 

 

 


 
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